ナタです。
〜玄鳥視点.
刻晴から呼び出しを受け、塵歌壺で待っていると、やがて刻晴と甘雨が姿を現した。彼女たちの表情はどこか硬い。
「刻晴、一体僕たちを呼び出して……何かあったのかい?」
俺が尋ねるよりも先に、フリーナが勢いよく身を乗り出した。
「ウチらに関係してる事があったんか?」宵宮も腕を組んで刻晴を見つめる。
刻晴は無言で懐から一通の手紙を取り出した。
「昨日、これが届いていたの。」
「手紙か。」俺は眉をひそめる。
「読んでみようぜ!」
待ちきれない様子の伏龍と玲瓏が、刻晴の手から手紙を奪い取るようにして開いた。
――そして、二人は同時に首をかしげた。
「……『ナタにて待つ』……これだけか?」
伏龍があっけにとられたように手紙を甘雨に投げ渡す。甘雨は困惑しつつも受け取り、何度か読み返したが、やはり意味は分からないらしい。
「ナタって……どこだっけ?」玲瓏が首をかしげる。彼は完全にピンときていない顔だ。
「地理は任せとき。ナタってのは、フォンテーヌより西にある火の国や。」宵宮が腕を組みながら答える。
「ナタか…確か戦闘の国だったよな。」俺は手紙を見つめたまま、ナタの事を思い浮かべる。なんか暑そうだ。
「なんでそんな所からわざわざ呼び出しなんだ?」ファングが不満げに言う。
刻晴は腕を組んで考え込んだ。
「差出人は不明。でも……このタイミングで送られてきた以上、例の光る餅と無関係じゃないでしょうね。」
その場に微妙な沈黙が落ちた。
一瞬、場が静まり返る。
「俺は行くぜ。ナタは行ったことないからな。」
最初に口を開いたのはファングだった。力強い声に、すぐ隣でニィロウが手を挙げる。
「ファングが行くなら、私も行くよ。」
二人はまるで当然のように頷き合う。旅慣れした者同士の呼吸とでも言うべきか。
「面白そうだし、ウチも行くわ。」宵宮がにやりと笑う。
「じゃあ私も……ナタは火の国、地質調査のいい機会ですし。」甘雨は控えめに頷いた。
フリーナは少し考え込み、やがていたずらっぽい笑みを浮かべる。
「ねえ、マルク。一緒に行こうよ。」
「……僕に拒否権は無さそうだな。」マルクは苦笑しながら肩をすくめた。
そして十夜は腕を組んで、しばし沈黙。やがて小さく息を吐いた。
「……ま、仕方ねえな。どうせ誰かがやらかすのは目に見えてる。だったら最初からついてった方が安全だ。」
こうして気づけば、ほとんど全員がナタ行きに賛成していた。
刻晴はこめかみを押さえながらも、小さく頷いた。
「じゃあ決まりね。出発は――明日の朝。各自、準備を整えておいて。」
………………
「――というわけで、やってきました、ナタ!」
俺が胸を張って声を上げると、灼熱の空気が容赦なく顔に当たった。火山地帯特有の熱気と、赤茶けた大地の匂い。空は薄いオレンジ色で、遠くには噴煙を上げる山が連なっている。
「急だね。」藍硯が涼やかな笑顔で返す。
どこか楽しそうだが、目は地形の隅々まで観察しているようだった。
「……大人数……」
蛍が少し驚いた声でつぶやく。確かに、これだけのメンバーが集まると移動も大変だ。
「俺、胡桃、藍硯、燕、蛍、伏龍、玲瓏、十夜、ファング……マルク……甘雨……刻晴……宵宮、ニィロウ、フリーナ……確かに大人数だね。」
一人ひとり数えながら呟くと、皆の顔がちらりとこちらを見た。緊張している者、楽しそうに笑う者、表情は様々だ。
俺は大人数ゆえのやや混沌とした空気に軽く肩をすくめる。けれど、同時にどこかワクワクする気持ちも湧いていた。
「さて、ここからどう動くかだな……」
ナタの赤い大地に、俺たちの冒険の第一歩が静かに刻まれた瞬間だった。
ナタ来ました。
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