【本編完結】仄かな焔は璃月を舞う   作:サツキタロオ

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ナタです。


第27幕:アビスの存在

 

〜玄鳥視点.

 

刻晴から呼び出しを受け、塵歌壺で待っていると、やがて刻晴と甘雨が姿を現した。彼女たちの表情はどこか硬い。

「刻晴、一体僕たちを呼び出して……何かあったのかい?」

俺が尋ねるよりも先に、フリーナが勢いよく身を乗り出した。

「ウチらに関係してる事があったんか?」宵宮も腕を組んで刻晴を見つめる。

刻晴は無言で懐から一通の手紙を取り出した。

「昨日、これが届いていたの。」

「手紙か。」俺は眉をひそめる。

「読んでみようぜ!」

待ちきれない様子の伏龍と玲瓏が、刻晴の手から手紙を奪い取るようにして開いた。

 

――そして、二人は同時に首をかしげた。

「……『ナタにて待つ』……これだけか?」

伏龍があっけにとられたように手紙を甘雨に投げ渡す。甘雨は困惑しつつも受け取り、何度か読み返したが、やはり意味は分からないらしい。

「ナタって……どこだっけ?」玲瓏が首をかしげる。彼は完全にピンときていない顔だ。

「地理は任せとき。ナタってのは、フォンテーヌより西にある火の国や。」宵宮が腕を組みながら答える。

「ナタか…確か戦闘の国だったよな。」俺は手紙を見つめたまま、ナタの事を思い浮かべる。なんか暑そうだ。

 

「なんでそんな所からわざわざ呼び出しなんだ?」ファングが不満げに言う。

刻晴は腕を組んで考え込んだ。

「差出人は不明。でも……このタイミングで送られてきた以上、例の光る餅と無関係じゃないでしょうね。」

その場に微妙な沈黙が落ちた。

 

一瞬、場が静まり返る。

「俺は行くぜ。ナタは行ったことないからな。」

最初に口を開いたのはファングだった。力強い声に、すぐ隣でニィロウが手を挙げる。

「ファングが行くなら、私も行くよ。」

二人はまるで当然のように頷き合う。旅慣れした者同士の呼吸とでも言うべきか。

「面白そうだし、ウチも行くわ。」宵宮がにやりと笑う。

「じゃあ私も……ナタは火の国、地質調査のいい機会ですし。」甘雨は控えめに頷いた。

フリーナは少し考え込み、やがていたずらっぽい笑みを浮かべる。

「ねえ、マルク。一緒に行こうよ。」

「……僕に拒否権は無さそうだな。」マルクは苦笑しながら肩をすくめた。

そして十夜は腕を組んで、しばし沈黙。やがて小さく息を吐いた。

「……ま、仕方ねえな。どうせ誰かがやらかすのは目に見えてる。だったら最初からついてった方が安全だ。」

こうして気づけば、ほとんど全員がナタ行きに賛成していた。

刻晴はこめかみを押さえながらも、小さく頷いた。

「じゃあ決まりね。出発は――明日の朝。各自、準備を整えておいて。」

 

………………

 

「――というわけで、やってきました、ナタ!」

 

俺が胸を張って声を上げると、灼熱の空気が容赦なく顔に当たった。火山地帯特有の熱気と、赤茶けた大地の匂い。空は薄いオレンジ色で、遠くには噴煙を上げる山が連なっている。

 

「急だね。」藍硯が涼やかな笑顔で返す。

どこか楽しそうだが、目は地形の隅々まで観察しているようだった。

 

「……大人数……」

蛍が少し驚いた声でつぶやく。確かに、これだけのメンバーが集まると移動も大変だ。

「俺、胡桃、藍硯、燕、蛍、伏龍、玲瓏、十夜、ファング……マルク……甘雨……刻晴……宵宮、ニィロウ、フリーナ……確かに大人数だね。」

一人ひとり数えながら呟くと、皆の顔がちらりとこちらを見た。緊張している者、楽しそうに笑う者、表情は様々だ。

俺は大人数ゆえのやや混沌とした空気に軽く肩をすくめる。けれど、同時にどこかワクワクする気持ちも湧いていた。

「さて、ここからどう動くかだな……」

ナタの赤い大地に、俺たちの冒険の第一歩が静かに刻まれた瞬間だった。





ナタ来ました。

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