【本編完結】仄かな焔は璃月を舞う   作:サツキタロオ

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日常会…だと思う。


第33幕:新しき旗

 

〜玄鳥視点.

「胡桃。そろそろ離れてもいいと思うんだけど…」

「やだ。」

「………」

俺はあれから数時間はくっつかれていた。

この力に目覚めてから、身体が異常に軽くなった感じがする。

「診断の結果ってどうだったの?」

藍硯がそう聞いてきた。

「うん。俺の中にある元素が爆発的な方法で活性化してて、それが解放されてこんな姿になったんだって聞いた。」

「へー…なんか辛くないの?」

「今は平気だよ。今はね…」

そうして少し間を空けて燕が話してきた。

「そういえば…玄鳥って誰が好きなの?」

「へ?」

「「「!!」」」

その言葉に胡桃、蛍、藍硯の3人も反応した。

「そういえばぁ…聞いてなかったよね。」藍硯が笑顔でそう言うが声が笑ってない…

 

「……え、えっと……その……」

俺は一瞬で冷や汗が噴き出した。

さっきまで命を懸けて戦っていたというのに、今は別の意味で命の危機を感じる。

 

「な、なんでそんな話に?」

「そりゃ気になるでしょ。あんなに守ってくれたら。」蛍が頬を染めて言う。

「しかも“抱きつかれ慣れ”してたしね。」藍硯がわざとらしく肩をすくめる。

「べ、別に!わたしは感謝の気持ちを表しただけで!」胡桃は耳まで真っ赤だ。

 

「……で、玄鳥。」燕が静かに詰め寄る。その目は鋭く、まるで尋問官。

「あなたの“今の答え”を聞かせてもらおうかしら?」

 

俺の喉が鳴った。

逃げたい。でも胡桃はまだ腕にしがみついて離してくれない。

蛍は笑顔だけど、目が全く笑っていない。

藍硯は面白がって煽り、燕は真顔で観察している。

 

「こ、これは……もしかして四面楚歌ってやつ……?」

「……答えは?」胡桃の声が小さく震える。

 

俺は観念して、ゆっくりと息を吐いた。

「――好きなのは、みんなだよ。」

 

一瞬の静寂。

次の瞬間――

 

「「「「………」」」」

部屋の温度が三度は下がった気がした。全員の視線が一点、俺に突き刺さる。

……こわっ!なんで!? 今、俺めっちゃ誠実なこと言ったはずなのに!?

 

「玄鳥…それはないよ。」胡桃が眉をひそめて、声を震わせながら言う。

「うんうん、そういうの一番ずるいタイプ。」蛍がニコニコしながらも目が全く笑っていない。

「あり得ない。」藍硯は腕を組み、冷ややかに見下ろしてくる。

「軟弱ね。」燕はため息混じりに吐き捨てた。

 

「え、えぇ……ちょっと待って、今のってダメな答えだったの?」

「ダメに決まってるでしょ。」

「誠実とか思ってる時点でずれてる。」

「ハーレム宣言みたいなもんよ。」

「軟弱通り越して愚鈍ね。」

 

「……あの、全員でリンチするのやめてもらえません!?」

「ダメ♡」と四人同時に返され、俺は心の中で崩れ落ちた。

 

沈黙が流れたあと、胡桃がふっと息をつく。

「……もう。ほんとに鈍感なんだから。」

「え?」

「そういうとこが……好きなんだけどね。」

その一言に場が一瞬だけ和らぐ。

 

「ま、次はちゃんと“誰かひとり”を選ぶ覚悟を決めなさい。」燕が言うと、

藍硯がにやりと笑った。

「その時は私が勝つけどね♪」

「いや私だってば!」蛍が食い気味に叫ぶ。

「ちょ、ちょっと待ってって!」

 

再び騒がしくなる部屋。

戦いより怖い空気に包まれながら、俺は心の底から思った。

 

――もう一回イグニスと戦う方がマシかもしれない。

 

………………………………

 

〜三人称視点.

「え、俺たちにも?」

伏龍と玲瓏は並んで椅子に座らされ、腕にセンサーを巻かれていた。

検査を担当するマーヴィカが眉を寄せながら言った。

「どうやら君たちの中でも、元素エネルギーが活性化しているようだ。玄鳥ではないが、安定していない。」

 

「なんで急に……」玲瓏が顔をしかめる。

「……もしかして、あの時に玄鳥に治療してもらったせいか?」伏龍が呟いた。

「その可能性が高い。彼の炎はただの治癒能力じゃなかったからな。」

 

二人は顔を見合わせる。

「……ていうかさ、あの時のお前の情けない顔、まだ覚えてるぞ。」玲瓏がニヤッと笑う。

「はあ!?お前だって“痛い痛い!”って騒いでたろ!」

「俺はお前より傷が浅かった。……フッ。」

「今笑ったな!?何だそのドヤ顔!」

 

口論が加速する中――。

 

「はいはい、静かにしてくれませんかね。」

ホルスが無表情で近づき、首筋に何かをプスッと刺した。

「ぶべっ」「ごぬっ」

見事な同時撃沈だった。

 

「まったく、外まで聞こえてましたよ。騒音治療は予定にないんでね。」

ホルスは無造作に二人をベッドに寝かせ、器用に包帯を巻いていく。

その手際の良さは医者というより、もはや職人。

 

「わーお。大丈夫なの、ホルス?」

隣で見ていたムアラニが、口を半開きにして聞いた。

 

「安心しろ。寝て起きりゃ元気だ。……たぶんな。」

「“たぶん”てなんで?」

「いや、ほら。彼ら、どうせまた起きたら喧嘩するでしょ。」

ホルスがぼそりと呟くと、ムアラニは吹き出した。

 

…………………………………………

 

その頃――。

 

イグニスはサイバースペース内部、赤黒く脈動するホールの中央に跪いていた。

足元の床は液体金属のように波打ち、上空では電脳の稲妻が蠢いている。

 

『なるほど……この者が、そうか。』

空間の奥から、無機質な声が響いた。だがそれはただの機械音ではない。

何か、生きた“意思”を感じさせる圧。

 

「は。この者――玄鳥というガキが、我らの侵略行為の邪魔をいたしました。」

イグニスは深く頭を下げた。

 

『ならば、消すしかあるまいな。』

 

「と、言いますと?」

 

『これを使え。』

 

前方の虚空が波打ち、そこから重厚な金属カプセルが転送されてきた。

中には淡く光る黒紫の液体。触れただけで神経を焼き切りそうなほどの“力”が渦巻いていた。

 

『“ケミカルボルト”――コズモノーザやハードダトマスを更に進化させる為の薬剤だ。その身に投じれば、貴様の機能は臨界を超え、神の領域に踏み込むだろう。』

 

イグニスは口角を上げ、狂気を含んだ笑みを浮かべる。

「なるほど……これにより、俺はさらに強くなるというわけか。」

 

『そうだ。我らの計画の礎となれ。リヴォルトの名の下に。』

 

低い轟音と共に空間が震える。

その声の主――リヴォルトの姿は、幾千万のデータ片が集まって形成された影のようだった。

その瞳だけが紅く、静かにイグニスを見下ろしている。

 

「はは……リヴォルト様の仰せのままに。」

イグニスは再び頭を垂れ、ゆっくりと立ち上がった。

 

『もうすぐだ。我らの“秘密兵器”が完成する。それまでに――奴らのデータを、さらに集めよ。』

 

「御意。」

 

イグニスはカプセルを掴み、背後に現れたワープゲートへと歩み入る。

ゲートが閉じる直前、わずかにその目が赤黒く光った。





玄鳥くんモテモテすね。

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