日常会…だと思う。
〜玄鳥視点.
「胡桃。そろそろ離れてもいいと思うんだけど…」
「やだ。」
「………」
俺はあれから数時間はくっつかれていた。
この力に目覚めてから、身体が異常に軽くなった感じがする。
「診断の結果ってどうだったの?」
藍硯がそう聞いてきた。
「うん。俺の中にある元素が爆発的な方法で活性化してて、それが解放されてこんな姿になったんだって聞いた。」
「へー…なんか辛くないの?」
「今は平気だよ。今はね…」
そうして少し間を空けて燕が話してきた。
「そういえば…玄鳥って誰が好きなの?」
「へ?」
「「「!!」」」
その言葉に胡桃、蛍、藍硯の3人も反応した。
「そういえばぁ…聞いてなかったよね。」藍硯が笑顔でそう言うが声が笑ってない…
「……え、えっと……その……」
俺は一瞬で冷や汗が噴き出した。
さっきまで命を懸けて戦っていたというのに、今は別の意味で命の危機を感じる。
「な、なんでそんな話に?」
「そりゃ気になるでしょ。あんなに守ってくれたら。」蛍が頬を染めて言う。
「しかも“抱きつかれ慣れ”してたしね。」藍硯がわざとらしく肩をすくめる。
「べ、別に!わたしは感謝の気持ちを表しただけで!」胡桃は耳まで真っ赤だ。
「……で、玄鳥。」燕が静かに詰め寄る。その目は鋭く、まるで尋問官。
「あなたの“今の答え”を聞かせてもらおうかしら?」
俺の喉が鳴った。
逃げたい。でも胡桃はまだ腕にしがみついて離してくれない。
蛍は笑顔だけど、目が全く笑っていない。
藍硯は面白がって煽り、燕は真顔で観察している。
「こ、これは……もしかして四面楚歌ってやつ……?」
「……答えは?」胡桃の声が小さく震える。
俺は観念して、ゆっくりと息を吐いた。
「――好きなのは、みんなだよ。」
一瞬の静寂。
次の瞬間――
「「「「………」」」」
部屋の温度が三度は下がった気がした。全員の視線が一点、俺に突き刺さる。
……こわっ!なんで!? 今、俺めっちゃ誠実なこと言ったはずなのに!?
「玄鳥…それはないよ。」胡桃が眉をひそめて、声を震わせながら言う。
「うんうん、そういうの一番ずるいタイプ。」蛍がニコニコしながらも目が全く笑っていない。
「あり得ない。」藍硯は腕を組み、冷ややかに見下ろしてくる。
「軟弱ね。」燕はため息混じりに吐き捨てた。
「え、えぇ……ちょっと待って、今のってダメな答えだったの?」
「ダメに決まってるでしょ。」
「誠実とか思ってる時点でずれてる。」
「ハーレム宣言みたいなもんよ。」
「軟弱通り越して愚鈍ね。」
「……あの、全員でリンチするのやめてもらえません!?」
「ダメ♡」と四人同時に返され、俺は心の中で崩れ落ちた。
沈黙が流れたあと、胡桃がふっと息をつく。
「……もう。ほんとに鈍感なんだから。」
「え?」
「そういうとこが……好きなんだけどね。」
その一言に場が一瞬だけ和らぐ。
「ま、次はちゃんと“誰かひとり”を選ぶ覚悟を決めなさい。」燕が言うと、
藍硯がにやりと笑った。
「その時は私が勝つけどね♪」
「いや私だってば!」蛍が食い気味に叫ぶ。
「ちょ、ちょっと待ってって!」
再び騒がしくなる部屋。
戦いより怖い空気に包まれながら、俺は心の底から思った。
――もう一回イグニスと戦う方がマシかもしれない。
………………………………
〜三人称視点.
「え、俺たちにも?」
伏龍と玲瓏は並んで椅子に座らされ、腕にセンサーを巻かれていた。
検査を担当するマーヴィカが眉を寄せながら言った。
「どうやら君たちの中でも、元素エネルギーが活性化しているようだ。玄鳥ではないが、安定していない。」
「なんで急に……」玲瓏が顔をしかめる。
「……もしかして、あの時に玄鳥に治療してもらったせいか?」伏龍が呟いた。
「その可能性が高い。彼の炎はただの治癒能力じゃなかったからな。」
二人は顔を見合わせる。
「……ていうかさ、あの時のお前の情けない顔、まだ覚えてるぞ。」玲瓏がニヤッと笑う。
「はあ!?お前だって“痛い痛い!”って騒いでたろ!」
「俺はお前より傷が浅かった。……フッ。」
「今笑ったな!?何だそのドヤ顔!」
口論が加速する中――。
「はいはい、静かにしてくれませんかね。」
ホルスが無表情で近づき、首筋に何かをプスッと刺した。
「ぶべっ」「ごぬっ」
見事な同時撃沈だった。
「まったく、外まで聞こえてましたよ。騒音治療は予定にないんでね。」
ホルスは無造作に二人をベッドに寝かせ、器用に包帯を巻いていく。
その手際の良さは医者というより、もはや職人。
「わーお。大丈夫なの、ホルス?」
隣で見ていたムアラニが、口を半開きにして聞いた。
「安心しろ。寝て起きりゃ元気だ。……たぶんな。」
「“たぶん”てなんで?」
「いや、ほら。彼ら、どうせまた起きたら喧嘩するでしょ。」
ホルスがぼそりと呟くと、ムアラニは吹き出した。
…………………………………………
その頃――。
イグニスはサイバースペース内部、赤黒く脈動するホールの中央に跪いていた。
足元の床は液体金属のように波打ち、上空では電脳の稲妻が蠢いている。
『なるほど……この者が、そうか。』
空間の奥から、無機質な声が響いた。だがそれはただの機械音ではない。
何か、生きた“意思”を感じさせる圧。
「は。この者――玄鳥というガキが、我らの侵略行為の邪魔をいたしました。」
イグニスは深く頭を下げた。
『ならば、消すしかあるまいな。』
「と、言いますと?」
『これを使え。』
前方の虚空が波打ち、そこから重厚な金属カプセルが転送されてきた。
中には淡く光る黒紫の液体。触れただけで神経を焼き切りそうなほどの“力”が渦巻いていた。
『“ケミカルボルト”――コズモノーザやハードダトマスを更に進化させる為の薬剤だ。その身に投じれば、貴様の機能は臨界を超え、神の領域に踏み込むだろう。』
イグニスは口角を上げ、狂気を含んだ笑みを浮かべる。
「なるほど……これにより、俺はさらに強くなるというわけか。」
『そうだ。我らの計画の礎となれ。リヴォルトの名の下に。』
低い轟音と共に空間が震える。
その声の主――リヴォルトの姿は、幾千万のデータ片が集まって形成された影のようだった。
その瞳だけが紅く、静かにイグニスを見下ろしている。
「はは……リヴォルト様の仰せのままに。」
イグニスは再び頭を垂れ、ゆっくりと立ち上がった。
『もうすぐだ。我らの“秘密兵器”が完成する。それまでに――奴らのデータを、さらに集めよ。』
「御意。」
イグニスはカプセルを掴み、背後に現れたワープゲートへと歩み入る。
ゲートが閉じる直前、わずかにその目が赤黒く光った。
玄鳥くんモテモテすね。
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