【本編完結】仄かな焔は璃月を舞う   作:サツキタロオ

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初のコミカル短編が終盤寸前てマジすか。


おまけ 短編・その他集
ハッピーなハロウィン


 

「トリック・オア・トリート!」

「お菓子くれないとイタズラしてやるぜ!」

「……いきなり何だよ。」

十夜は玄関先で叫ぶ二人――フリーナとマルクを呆れ顔で見つめた。

 

「今日はハロウィンだよ!」とフリーナ。

「無料で三倍返しのお菓子を貰う日だからな。」とマルク。

 

「違うよ、マルク!それただの強奪祭りじゃん!」

「取るか取られるかの精神だろ、祭りってのは!」

十夜は二人の言い争いに溜息をつき、庭の柿の木に目をやった。

熟れた柿を二つもぎ取って、それぞれの手に押し付ける。

「はいはい、これでいいだろ?」

「お菓子じゃないじゃん。」とマルク。

「文句言うな。くれてやったんだから感謝しろ!」

 

「……渋いハロウィンだなぁ。」

フリーナの苦笑をよそに、十夜はもう一度ため息をついた。

 

………………………

 

「トリック・オア!」「……トリート。」

今度はファングとニィロウが尋ねてきた。

ニィロウは楽しげに笑っているが、ファングの方は明らかに乗り気ではない。

「なんでわざわざ稲妻まで来たんだ?」

「マルクが『ここなら絶対ある』って言ってたから……」

「――あいつ!」

十夜はこみ上げる苛立ちをぐっと堪え、二人にお菓子を手渡した。

「わぁ!タフチーンだ!」

「こっちは鳥飯……いや、これお菓子じゃな――」

「文句はあとで聞くから。」

十夜は苦笑しながら二人を見送り、扉を閉めた。

しばらくして、遠くから元気な声が聞こえてくる。

「おいしいよ〜!」

十夜は小さく笑みを浮かべ、心の中でつぶやいた。

(……作っといて良かったな。)

 

………………………

 

「はあ……疲れた。」

十夜は溜息をつき、山積みの仕事を放り投げて布団に身を投げ出した。

「まったく、どいつもこいつもお菓子目当てで押しかけやがって……。玄鳥なら手作りのお菓子くらいくれそうなのにな。」

ぼやいたその瞬間、玄関の方からコンコンと小さなノックの音が響いた。

 

「んー……今度は誰だよ。」

重い腰を上げてドアを開ける。

「トリック・オア・トリート!」

そこに立っていたのは――宵宮だった。

しかも、狼の耳と尻尾を付けた狼人間のコスプレ姿で。

「……」

十夜は言葉を失い、ただ見つめるしかなかった。

「へへっ、どうや? 似合っとる? ウチ、十夜が喜びそうなん選んできたんやけど……」

「……? 十夜?」

宵宮が不思議そうに顔を覗き込む。

十夜は固まったまま、しばし何かを飲み込むように黙り――そして、ぽつりと呟いた。

 

「……イタズラ、してほしい。」

「……へ?」

宵宮の頬がみるみるうちに赤く染まり、尻尾の先がふわりと揺れた。

その沈黙の中、十夜の顔にも、少しだけ悪戯っぽい笑みが浮かんでいた。

十夜は宵宮を無理矢理家に引っ張る。

 

「ちょっ…十夜…」

 

 

 

 

……………

 

翌日…

「なんか十夜達なんであんな距離離れてるんだろう。」

玄鳥が不思議そうに呟いた。

二人はソファに座っていたが、妙に間が空いている。まるで、空気の中に見えない線が引かれているようだった。

「さ、さあ…もしかして腰痛じゃない…?」

燕は恥ずかしそうに話す。

「それは大変だ。俺腰痛に効く薬取ってくるよ!」

玄鳥は慌てて立ち上がり、足早にその場を離れた。

 

「じゅ…十夜って意外と大胆なのね…」

燕は頰を赤らめて静かに呟く。

 

――残された二人の間に、気まずい沈黙が流れる。

宵宮はそっと頬を赤らめ、十夜は視線を逸らしたまま小さく咳払いをした。

 





エチじゃないです。

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