この作品も折り返しなので次作の更新を頑張って進めます。
今回は短め。恋愛ムード的な奴。
「まずいな。」
「何が?」
玲瓏が眉をひそめると、刻晴が背後から問いかけた。
「俺だけ、あの“強そうな姿”になってないんだよ。」
「ああ、あれね。確かに、あなたまだなってないけれど……」
玲瓏は唇を噛みながら、腕を組んで考え込む。
(くそっ、俺だけ置いてかれてるみたいじゃねぇか……)
内心の焦りを隠そうとするが、
――“モテたい・かっこよく見られたい・自慢したい”――
そんな下心は、刻晴にはお見通しだった。
「ふふ、素直じゃないんだから。」
「なんだよ。」
「なんでもないわ。」
刻晴はそっけなく言いながらも、その瞳にはどこか優しさが宿っていた。
「でもやっぱり俺もなりたいぜ。イグニスに負けっぱなしは、どうにも腑に落ちないからな。」
「それで焦っちゃ、むしろもっと負けるわよ?」
「ぐぬぬ……」
玲瓏が頭を掻いたその瞬間、刻晴がふっと距離を詰め――抱きついた。
柔らかな香りと温もりが伝わってくる。玲瓏は、目を見開いたまま動けない。
「……玲瓏。」
「………」
「私じゃ……貴方の支えになれない?」
彼女の声は小さく、雨のあとみたいに澄んでいた。
玲瓏の喉が、言葉を飲み込んだまま動かない。
(……なんだろう。刻晴から、すごくいい匂いがする……)
玲瓏は胸の奥が熱くなるのを感じながら、そっと手を伸ばした。
刻晴はその手を、ためらいもなく握り返す。
指先が触れた瞬間、心臓の鼓動が静かに跳ねた。
二人の間を流れる空気は、静寂と温もりが混じり合うようで――
どこか甘く、どこか切ない。
「……玲瓏。」
「……刻晴。」
視線が交わった刹那、世界の音がすっと遠ざかる。
残ったのは、二人の呼吸の重なりだけ。
距離が、ほんの少しずつ縮まって――
互いの唇が、そっと触れ合った。
…………………………
〜玲瓏視点.
「「…………」」
……気まずい。
たぶん、いや確実にやり過ぎた。
刻晴の顔なんて、今はまともに見られない。
そんな時、よりによって玄鳥と蛍が歩いてきた。
「ん?玲瓏、もしかして──」
玄鳥、その先は言うな。言ったら殴る。
「筋トレしてた? 汗かきすぎだぞ?」
「刻晴も筋トレしてたの? 汗はちゃんと拭かないと肌荒れするよ。」
……頼む、違う意味で汗かいてるんだ。
だが今はそれでいいかもしれない。
「こ、刻晴……」
「な、何よ……」
「後で……汗、拭きに行くか。」
「……うん。」
沈黙。
だけど、その沈黙が少しだけ心地よかった。
…………………………
それから数時間後、空を裂くようにして──巨大な影が現れた。
ゲートから姿を現したのは、イグニスたち。
彼らは今度、黒鉄のような装甲を持つ巨大戦艦に乗っていた。
「来たな……。」
玄鳥が低く呟く。その声に、場の空気が一瞬で張り詰める。
「伏龍、行けそうか?」
「任せとけ。もう負ける気はしねぇぜ!」
伏龍の目には炎が宿っていた。
どうやら──甘雨と無事に付き合えたらしい。
その幸福が、力を確かに強くしていた。愛ってすげー。
「いい顔してるじゃない。」
刻晴が微笑むと、玲瓏も剣を構えながら頷いた。
俺も剣を握り直す。
……守りたい人がいる。
もう、あの頃みたいに“ただ戦うだけ”じゃない。
「イグニス──今度こそ、お前に一泡吹かせてやる。」
心の奥で、静かにそう誓った。
まだ付き合ってなかったんすねぇ。
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