【本編完結】仄かな焔は璃月を舞う   作:サツキタロオ

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この作品も折り返しなので次作の更新を頑張って進めます。

今回は短め。恋愛ムード的な奴。


第35幕:静止する世界

 

「まずいな。」

「何が?」

玲瓏が眉をひそめると、刻晴が背後から問いかけた。

 

「俺だけ、あの“強そうな姿”になってないんだよ。」

「ああ、あれね。確かに、あなたまだなってないけれど……」

 

玲瓏は唇を噛みながら、腕を組んで考え込む。

(くそっ、俺だけ置いてかれてるみたいじゃねぇか……)

 

内心の焦りを隠そうとするが、

――“モテたい・かっこよく見られたい・自慢したい”――

そんな下心は、刻晴にはお見通しだった。

 

「ふふ、素直じゃないんだから。」

「なんだよ。」

「なんでもないわ。」

 

刻晴はそっけなく言いながらも、その瞳にはどこか優しさが宿っていた。

 

「でもやっぱり俺もなりたいぜ。イグニスに負けっぱなしは、どうにも腑に落ちないからな。」

「それで焦っちゃ、むしろもっと負けるわよ?」

「ぐぬぬ……」

 

玲瓏が頭を掻いたその瞬間、刻晴がふっと距離を詰め――抱きついた。

柔らかな香りと温もりが伝わってくる。玲瓏は、目を見開いたまま動けない。

 

「……玲瓏。」

「………」

「私じゃ……貴方の支えになれない?」

 

彼女の声は小さく、雨のあとみたいに澄んでいた。

玲瓏の喉が、言葉を飲み込んだまま動かない。

 

(……なんだろう。刻晴から、すごくいい匂いがする……)

玲瓏は胸の奥が熱くなるのを感じながら、そっと手を伸ばした。

 

刻晴はその手を、ためらいもなく握り返す。

指先が触れた瞬間、心臓の鼓動が静かに跳ねた。

 

二人の間を流れる空気は、静寂と温もりが混じり合うようで――

どこか甘く、どこか切ない。

 

「……玲瓏。」

「……刻晴。」

 

視線が交わった刹那、世界の音がすっと遠ざかる。

残ったのは、二人の呼吸の重なりだけ。

 

距離が、ほんの少しずつ縮まって――

互いの唇が、そっと触れ合った。

 

…………………………

 

〜玲瓏視点.

「「…………」」

 

……気まずい。

たぶん、いや確実にやり過ぎた。

刻晴の顔なんて、今はまともに見られない。

 

そんな時、よりによって玄鳥と蛍が歩いてきた。

 

「ん?玲瓏、もしかして──」

玄鳥、その先は言うな。言ったら殴る。

 

「筋トレしてた? 汗かきすぎだぞ?」

「刻晴も筋トレしてたの? 汗はちゃんと拭かないと肌荒れするよ。」

 

……頼む、違う意味で汗かいてるんだ。

だが今はそれでいいかもしれない。

 

「こ、刻晴……」

「な、何よ……」

「後で……汗、拭きに行くか。」

「……うん。」

沈黙。

だけど、その沈黙が少しだけ心地よかった。

 

…………………………

 

それから数時間後、空を裂くようにして──巨大な影が現れた。

ゲートから姿を現したのは、イグニスたち。

彼らは今度、黒鉄のような装甲を持つ巨大戦艦に乗っていた。

 

「来たな……。」

玄鳥が低く呟く。その声に、場の空気が一瞬で張り詰める。

 

「伏龍、行けそうか?」

「任せとけ。もう負ける気はしねぇぜ!」

 

伏龍の目には炎が宿っていた。

どうやら──甘雨と無事に付き合えたらしい。

その幸福が、力を確かに強くしていた。愛ってすげー。

 

「いい顔してるじゃない。」

刻晴が微笑むと、玲瓏も剣を構えながら頷いた。

 

俺も剣を握り直す。

……守りたい人がいる。

もう、あの頃みたいに“ただ戦うだけ”じゃない。

 

「イグニス──今度こそ、お前に一泡吹かせてやる。」

心の奥で、静かにそう誓った。





まだ付き合ってなかったんすねぇ。

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