【本編完結】仄かな焔は璃月を舞う   作:サツキタロオ

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ネフェル引きました。美しい…


第43幕:到来する悪意

 

………………………

 

「ここが――璃月か。」

空は街の景色を眺めながら、静かに呟いた。

「蛍が……居るんだな。」

その声には、懐かしさと何か別の感情が混ざっていた。

やがて彼は踵を返し、人混みの中へと姿を消していく。

 

遠くの屋根の上、その様子を狙撃銃で見つめる影があった。

甘雨だ。彼女は端末を起動して通信を繋ぐ。

「やっぱり居ました。――旅人のお兄さんです。」

『そうか。だが、何の目的で璃月に?』

「……分かりません。もう少し、観察してみます。」

短く答え、甘雨は再びスコープを覗いた。

彼女の瞳に映る空の姿は、どこか――“別の誰か”のようにも見えた。

 

――数日前。

「えっ、蛍のお兄ちゃんが?」

「うん……。」

蛍は机を囲む玄鳥たちに、空と再会したことを話していた。

 

「様子が変だったってことか。」

玄鳥が腕を組み、真剣な表情を見せる。

「そう。何か……他の存在が一緒にいるような、そんな感じで。」

「おいおい、それってまさか――やべぇ妖怪に取り憑かれてんじゃねぇの!?」

「伏龍さん!不謹慎です!」

甘雨が慌てて突っ込むが、場の空気はどこか重かった。

 

蛍は俯いたまま、小さく拳を握る。

「……でも、やっぱりお兄ちゃんに何かあったと思うの。だから――次に会ったら、力づくでも聞いてみるつもり。」

玄鳥は少しの沈黙の後、柔らかく笑って言った。

「分かった。協力するよ。」「ありがとう!」

蛍の顔がぱっと明るくなり、思わず玄鳥に抱きつく。

玄鳥は照れくさそうに笑いながら、その頭を軽く撫でた。

 

…………………

 

空が再び空間を開き、その中へ姿を消そうとした――その瞬間。

 

「――逃がすかよッ!」

裂けるような叫びと共に、空間の裂け目から三つの影が飛び出した。

十夜、マルク、そしてファング。三人の動きはまるで打ち合わせたかのように見事だった。

 

「!? 何者だお前たちは!」

空が振り返る。

「見つけたぜ、旅人のバカ兄貴!」

十夜が剣を構え、容赦なく斬りかかる。

しかし、空は冷ややかな表情のまま、漆黒の光で剣を受け止めた。

「チッ、やっぱり防いできやがったか!」

「妹の頼みでな!」ファングが拳を構え、跳び上がる。「アンタと話をしに来たんだよ、バカ兄貴ッ!」

 

轟音と共に拳が振り下ろされる。

だが空は軽く後方へ跳び、手のひらからアビスの闇を放った。

「お前たちと話すことなど――無いッ!」

 

放たれた闇の奔流が地面をえぐる。

だが三人はそれぞれの動きで難なく回避した。

 

「ふん、派手なだけで大したことないな。」

マルクが静かに居合の構えを取る。その刃に青い雷光が走った。

「僕は君に興味は無い。ただ――友が、君と“もう一度”会いたがっているだけだ。」

 

一閃。

マルクが地を蹴ると同時に、十夜とファングも動く。三方向からの同時攻撃。

 

「教えてもらうぞ――お前が“今”、何をしているのかを!」

 

衝撃が走り、空と三人の衝突で周囲の岩壁が震えた。

空の瞳が一瞬だけ、かすかに光を帯びる――まるで“別の何か”がそこに潜んでいるかのように。

「お兄ちゃん!」

「蛍……!」

 

「お兄ちゃんにその気が無くても――こっちには“用”があるから!」

叫ぶと同時に、蛍は大型ブラスターを引き金ごと押し込む。

轟音と共に放たれた弾丸が空へ直撃した。

衝突の瞬間、液体が弾けるような鈍い音が響く。

 

「……これは……セメント液……!」

動こうとするが、空の身体の一部が瞬く間に硬化していく。

 

「玄鳥!」

「任せろッ!」

玄鳥が蛍の頭上を跳び越え、一直線に空へ迫る。

刃を抜き放ち、風を裂くような速度で繰り出す燕返し。

 

「――はああっ!!」

 

閃光のような斬撃が走り、空の防御を貫いた。

爆風が巻き起こり、空の身体が後方へ吹き飛ぶ。

 

「お兄ちゃんっ!」

蛍が駆け寄るが、空は意識を失い、地に崩れ落ちた。

 

その直後――。

空の身体から、黒い靄がゆっくりと滲み出す。

まるで世界そのものを蝕むかのような、冷たい悪意。

 

『……まさか、この私の正体に気付いていたというのか?』

 

声は空から発せられていたが、それは空本人のものではなかった。

禍々しい闇が形を成し、やがて一人の少年の姿となる。

玄鳥と同じほどの背丈。

しかしその瞳は底知れぬ金色の光を宿していた。

 

「……誰だ、お前は。」

『我が名は――ルクス。』

闇の少年が、静かに杖を掲げる。

杖の先には龍の装飾が絡みつき、まるで神話の遺物のように輝いていた。

 

『この世界を支配する者――それが私だ。』

「支配だと!? お前、空の兄さんに取り憑いて何をしようとしてる!」

ファングが怒鳴る。

 

『どうするもこうするも……私は“力”を求めているのだ。そのためには、この器――“アビス”の力が必要なのだよ。』

 

言葉と同時に、杖の先端から雷撃が奔った。

大地を割るほどの閃光が炸裂し、周囲が一瞬で白く染まる。

 

「――ぐっ!?」

玄鳥たちは爆風に飲み込まれ、地面に叩きつけられる。

 

「くっ……なんて強い元素力なんだ……」

玲瓏が歯を食いしばりながら立ち上がる。

 

ルクスはただ静かに笑った。

『この世界に満ちる光と闇――どちらが真に“秩序”をもたらすか、見せてやろうではないか。』

 





コテコテの敵役だぁ…

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