樹脂が…樹脂が足りない…
「刻晴、私たちで行くわよ!」
「分かったわ!」
燕と刻晴が並び立ち、武器を構える。
稲妻が空を裂く中、二人の視線の先には――不敵に笑うルクスの姿。
『面白い。ならば――相手してやろう!』
杖の先端に紫電が収束し、瞬間、眩い雷撃が奔った。
地面が焼け焦げ、爆風が二人を包む。
「くっ……やっぱり雷撃はキツいわね……!」
刻晴が歯を食いしばる。
その横顔には、迷いにも似た焦りの色。
(このままでは……私たちでは、あの力に届かない……!)
刻晴は決意を込めて顔を上げた。
「玲瓏!」
「えっ?」
「私に――雷を当てなさい!」
「……お前気が狂ったか…???」
「早く!信じて!」
玲瓏は一瞬だけ迷ったが、頷いた。
「……分かった。お前を信じるぜ!」
紫の雷球が刻晴へと放たれ、同時に燕が叫ぶ。
「玄鳥、私にも!」
「了解ッ!」
玄鳥が炎の球を放り投げる。
二つの元素が二人を包み込み、光が爆ぜた。
『何をしたかは知らんが――邪魔ならば、容赦はせん!』
ルクスが再び杖を掲げ、雷撃を放つ。
しかし――その瞬間、光の球体を突き破って二人の影が飛び出した。
「「――はあああっ!!!」」
轟音。閃光。ルクスの身体が後方へ吹き飛ぶ。
『なっ……何だと!?』
玄鳥が目を見開いた。
「あの姿…律者だ!」
光が弾ける。
そこに立つ燕と刻晴の姿は、かつてとはまるで違っていた。
衣装は輝きを帯び、その存在は、まるで“神と人との境界”に立つような神秘。
「いいわね、この感じ……!」
「玲瓏、行くわよ!」
「分かってるよ!」
玲瓏が剣を構え、疾風のように飛び出した。
『無駄だッ!』
ルクスが杖を突き出し、冷凍の閃光を放つ。
氷の奔流が空間を切り裂き、玲瓏の体を包んだ。
「ぐっ…」
玲瓏が吹き飛び、伏龍が援護に入るが――ルクスの蹴りが伏龍の腹を撃ち抜いた。
「くっ……!」
再び刻晴に冷凍光線が放たれる。
だが、刻晴はすでに動いていた。
「!」
空間に召喚された盾が、彼女の前に現れる。
ビームが直撃した瞬間、轟音と共に雷が弾け飛んだ――だが、盾はびくともしない。
『……ほう。私の攻撃を完全に防ぐか。』
ルクスの表情がわずかに歪む。
『中々やるではないか……人の身にしては、な。』
刻晴は静かに構え直す。
「人の力じゃない――“皆の絆”が、私を守ってるのよ!」
「そうよね!」
燕がアサルトライフルを構え、鋭くトリガーを引いた。
『チッ…!』
無数の弾丸がルクスを包み込む。だが、彼は咄嗟に結界を展開して受け止めた。
「守ったわね!」
燕が叫び、レールキャノンを持つ。
「――ハイパーレールキャノン!」
轟音と共に、凄まじい閃光が走る。
『しまった!』
電磁の奔流が一直線にルクスを貫き、爆発が空間を揺るがせた。
ルクスは衝撃に吹き飛ばされ、地面へと叩きつけられる。だが、瞬時にテレポートして体勢を立て直した。
『なるほど……やるな。』
焦げた衣の端を払いつつ、ルクスが不敵に笑う。
玄鳥たちが前に出て包囲する。
「ルクス! ここまでだ!」
『ここまでだと? ふっ――まだまだこれからだ!』
雷鳴のような声とともに、ルクスは右手を掲げた。
次の瞬間、雷光が収束し、竜の意匠を刻んだ漆黒の剣が現れる。
玄鳥もまた剣を構え、地を蹴った。
「でぇぇぇぇいっ!!」
二つの刃が激突し、火花が弾ける。
金属音が嵐のように響き、互いの斬撃が交錯する。
『ふんっ!』
ルクスが豪快に剣を振り抜く。その一撃は玄鳥の防御を弾き飛ばし、彼の身体を空へと打ち上げた。
「ぐっ……!」
だが玄鳥は空中で翼を展開し、すぐさま体勢を立て直す。
炎の羽根が散り、彼は重力を切り裂くように急降下した。
「おおおおおっ!!!」
ルクス目掛けて一直線に落下し、閃光のような剣撃を叩き込んだ。
『ぐおおっ!!』
ルクスが地面を転がり、土煙を上げながら体勢を立て直す。
焦げた外套を払い、鋭く玄鳥を睨みつけた。
『この私を――跪かせるとはな……貴様、名は?』
「……玄鳥だ!」
一瞬の沈黙。
ルクスの唇が、愉快そうに歪んだ。
『玄鳥……覚えておこう。』
そう呟くと、彼は倒れている空を軽々と担ぎ上げる。
杖の先端に亀裂のような光が走り、空間が歪んだ。
「待てっ!」
玲瓏が叫ぶが、間に合わない。
ルクスは冷笑を浮かべたまま、空間の裂け目の中へと消えていった。
「……逃げられた……」
玄鳥が剣を握り締めたまま呟く。
「お兄ちゃん……」
蛍の声が震えていた。
「大丈夫?」
玄鳥がそっと尋ねると、蛍は涙を堪えながら小さく頷いた。
「うん……ありがとう。」
二人はただ、歪んだ空間の残滓――光の粒が消えていくのを黙って見つめていた。
………………………
数時間後。
ナド・クライのファデュイの拠点の何処かの研究施設の奥、無数のモニターが淡く光を放っていた。
「……面白い。これは実に面白い……」
仮面を付けた男が、先程の戦闘映像を眺めながら不敵に笑う。
彼の名は
ファデュイの執行官にして、狂気のマッドサイエンティスト。
「このデータ……今後の実験に大いに役立ちそうだな。」
冷たい声で呟くと、背後の機械から低い駆動音が響いた。
「今までのも回収しておいて正解だったな。」
隣の机には、ダトマスの頭部カメラが置かれている。
そこからは玄鳥たちの戦闘データが断片的に再生されていた。
博士はその映像を見つめ、ゆっくりと口角を上げる。
「月神のサンプルは既に手中にある……ふふ……これで私の計画は――完璧だ。」
無数の光が実験室の中で点滅し、闇の中に博士の笑い声が響いた。
博士出ます。敵です(確信)。
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