【本編完結】仄かな焔は璃月を舞う   作:サツキタロオ

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レプリフェイザーの元ネタ?

……もう少し先で…


第46幕:睡蓮の華

 

「やっぱり分からないな。」

「何がだよ。」

「ルクスだよ。アイツの情報が無さすぎる。」

玄鳥、藍硯、玲瓏、伏龍の四人は、夕陽の残光に染まる空を飛びながら話し合っていた。

雲の切れ間から見える璃月の街が、遠く橙色に輝いている。

 

「どうやって来たのか、どうして玄鳥を狙ってるのか……あー、もうわかんねぇな。」

玲瓏が額を掻きながらぼやく。

「悩んでても仕方ないし、璃月に戻ろう。」

伏龍の冷静な声に皆が頷き、光の軌跡を残して帰路についた。

 

………………

 

「……はあ……はあっ……」

その頃、璃月の外れ。

夕闇に沈む森の中で、ファングは黙々と拳を振るっていた。

額から滴る汗が地面に落ち、乾いた音を立てる。

 

「やっぱり……しんどいな。」

呼吸を整えながら、ファングは拳を握りしめた。

拳の皮は破れ、血が滲んでいる。それでも彼は立ち止まらない。

 

「ファング、大丈夫……?」

木の影から小走りで駆け寄る足音。

顔を上げると、薄明かりに照らされたニィロウの姿があった。

心配そうな瞳がこちらを見つめている。

 

「ニィロウ……」

彼女の名を呼ぶ声は、少し掠れていた。

「ファング……そろそろ休んでもいいんじゃない?最近ずっとここにいるじゃん。」

ニィロウがそっとタオルを差し出す。

その手は優しく、それでいてどこか必死だった。

 

ファングは少し視線を逸らして、息を吐いた。

「……もう少しだけ。あと少しで掴めそうなんだ。」

「何を?」

「“強さ”だよ。」

森の木々が風に揺れ、葉擦れの音が静かに響く。

ニィロウは言葉を詰まらせ、ただその背中を見つめていた。

 

「玄鳥達が強くなって、すげぇ羨ましいんだ。」

ファングは拳を握りしめたまま、どこか遠くを見るように呟いた。

「俺も同じぐらい強くなりたい。守れなかったアイツらを……今度こそ守れるような奴に……」

ニィロウの胸に、ふとスメール三人衆の笑顔が浮かんだ。

そして、彼の言葉が胸に重く沈む。

 

「悪いな。飯、作ってくれたんだろ?ありがと。」

そう言って、ファングは彼女の手から弁当を受け取ると、一口だけ頬張って笑った。

「うまい。……これで、もう少し頑張れそうだ。」

そして彼は、汗と土の匂いを残したまま、また森の奥へと駆け出していった。

木々の間にその背が消えていく。

 

「ファング……」

ニィロウは立ち尽くしたまま、彼の姿を見送った。

 

――しばらくして。

 

森を抜け、璃月の街の明かりが見える頃。

ニィロウは深く息を吐き出した。

「はぁ……もう、どうすればいいのかな……」

 

「どうしたんだい?元気がないじゃないか。」

柔らかな声と共にフリーナが現れた。彼女の後ろから、宵宮が心配そうに覗き込む。

「何か……嫌なことでもあったんか?」

 

「実は――」

ニィロウは二人に、森での出来事を静かに話した。

フリーナと宵宮は真剣に耳を傾けていた。

話を終えた頃、宵宮が腕を組みながら小さく頷く。

「なるほどなぁ……壁にぶち当たったってことやな。」

「うん、そうかも……」ニィロウは俯いた。

「僕もマルクから同じ話を聞いたよ。」フリーナが穏やかに言う。

「焦ってるんだと思う。みんなが進んでいく中で、自分だけ置いていかれた気がして……」

 

宵宮は笑って、ニィロウの肩を軽く叩いた。

「せやけど、焦ることないよ。ファングは努力家やろ?きっと、自分のペースでちゃんと強くなる。」

 

フリーナもうなずく。

「そう。無理に追いかけるより、今は支えてあげる方がいい。君にしかできない形でね。」

ニィロウは二人の言葉に少しだけ笑みを取り戻した。

「……うん。ありがとう!二人とも。」

 

璃月の夜風が三人の髪を撫でていった。

遠くで灯篭が揺れ、優しい灯りが彼女たちを包み込んだ。

 

…………………

 

そして翌日。

層岩巨淵の奥深く、地鳴りのような轟音が響いていた。

黒鉄の巨影が岩盤を砕きながら暴れ回る。その名は――レプリプライガ。

博士が昨夜仕上げた、新たなる実験兵器である。

 

「で、デカい……!」

玄鳥が息を呑む。

その巨体は前に戦ったレプリフェイザーと同等。

全身から淡い青紫のエネルギーが漏れ出していた。

 

「前のヤツと同じぐらいのサイズか……」

伏龍が剣を構えながら呟く。

「気をつけろ。あの博士の作ったもんだ、何してくるか分かんねぇぜ。」

玲瓏が鋭く叫ぶ。

 

玄鳥たちは頷き合い、武器を構えた。

岩壁の裂け目を吹き飛ばすほどの咆哮が、戦いの始まりを告げる。

レプリプライガが首を振り回し、牙を剥く。

噛みつき攻撃と爪の一閃が、地面を削り取るように迫った。

 

「近付けな〜い!」

藍硯がチャクラムで牽制するが、風圧で弾かれる。

 

「だったら、俺がやるぜッ!」

ファングが叫び、岩を蹴って一気に距離を詰めた。

拳に崩壊エネルギーを纏わせ、巨体の胸部を狙って叩き込んだ。

 

しかし。

「なっ……効かねぇ!?」

鈍い金属音と共に、拳の衝撃は霧散した。

 

レプリプライガの装甲は黒曜石のように硬く、

傷一つすら付いていなかった。

次の瞬間、尾部の装甲が展開し、

内蔵された多銃身砲が唸りを上げる。

 

「チッ――!」

ファングが反応するより早く、

尻尾のガトリング砲が火を吹いた。

無数の弾丸が嵐のように降り注ぎ、

ファングの身体を吹き飛ばす。

「ファング!!」

ニィロウの悲鳴が響く。

ファングは岩壁に叩きつけられ、土煙の中に沈んだ。

 

蛍はファング達の方を見た後レプリプライガを睨んで、剣を構え直す。

「博士…またあの様なのを作って…!」

 

「ぐっ…」

地に叩きつけられたファングは、息を荒げながら立ち上がろうとしたが、膝が震え、思うように力が入らなかった。

 

「ファング! しっかりして!」

駆け寄ったニィロウの声には、焦りと悲痛が混じっていた。

 

「すまない、ニィロウ……こんな事に巻き込んじまって……」

ファングは苦しげに笑う。

「本当なら、お前はズバイルシアターで楽しく踊ってたはずなのにな……」

 

その言葉に、ニィロウの瞳が揺れる。

「でも……大好きな人がこんな目にあってたら、私……見てるだけなんて、できないよ……」

「ニィロウ……」

互いの手が触れ合い、指が自然と絡んだ。

 

その瞬間――。

 

眩い光が二人を包み込む。

「この光……律者の光だ!」

玄鳥が叫んだ。

光は激しく脈打ち、雷鳴と共に爆ぜる。

やがて光の中から、二つの影が飛び出した。

 

「ぐおおおおっ!!」

雷を纏った拳がレプリプライガを殴り飛ばす。

地面が大きく抉れ、岩片が空へ舞い上がった。

 

「ファ、ファング……!? その姿……!」

「ニィロウ……お前も変わってるぞ!」

「わ、ホントだ! え、ええぇ!?」

 

二人は互いの姿を見て驚いたが、レプリプライガの咆哮がその動揺をかき消した。

 

「ニィロウ、やれるか!」「うん! 全力でサポートするね!」

 

ファングは再び前へ。

左ストレートが地響きを伴って炸裂し、続く右フックでレプリプライガの角を粉砕した。

「私も頑張るよ!」

ニィロウは背中に浮かんだ杖の一つを掴み、水元素を練り上げる。

「――流れに身を委ねて!」

水の奔流がビームとなってレプリプライガを包み、全身をずぶ濡れにした。

 

「あれれ……全然効いてない?」

「いや、効いてるさ。助かるぜ!」

ファングは不敵に笑い、背中の浮遊アーマーを右腕に連結させた。

 

「よし……連結完了!」

電磁の火花が散り、右腕のガントレットが唸る。

「喰らいやがれッ!」

雷光と共に放たれた拳がレプリプライガを直撃。

次の瞬間、敵の全身を雷撃が貫き、轟音が層岩巨淵に響き渡った。

 

「“感電”反応だ!」胡桃が叫ぶ。

「考えたな……ニィロウの水を利用したか。」

玲瓏が唇を吊り上げる。

 

「トドメを刺してやる!」

ファングの全身に雷光が迸り、空気が焦げるような音を立てた。

 

彼の背後に、雷の紋様が浮かび上がる――そしてそこから、巨大な弓矢のような武器が形を成した。

先端には高速回転するドリルブレード。轟音が周囲を揺らす。

 

「でぃやああああああっ!!!」

叫びと共に、ファングは雷の尾を引きながら突撃した。

その一撃は大地を割る勢いで一直線にレプリプライガへ迫る――

 

しかし、その瞬間。

 

「――ッ!?」

上空から青白い閃光が走る。

レプリフェイザーが突如として降下し、巨大な腕でプライガの体を抱え上げた。

 

「何ッ!」

ドリルの刃先はわずかに掠め、岩盤を抉って爆ぜる。

二体の機兵は空高く舞い上がり、層岩巨淵の上空で爆音を残しながら彼方へと消えていった。

「逃げたの……?」

フリーナが呟く。風に揺れる髪が、まだ戦闘の余熱で光っていた。

 

「……ああ。だが、今の連携は悪くなかったな!」

伏龍が武器を下ろし、息を整える。

ファングはしばらく空を睨んでいたが、すぐに笑みを浮かべてニィロウのもとへ歩み寄った。

「とにかく、みんな無事でよかった。」

そしてニィロウの前で立ち止まり、柔らかく言う。

 

「お疲れ、ニィロウ。」

「えへへ……ファングこそ。」

二人は自然に手を取り合い、指を軽く握り返した。

その間を、戦場を包んでいた雷光が静かに散っていく。

 

空にはまだ雷雲が残っていたが――

二人の間には、確かな絆の光が宿っていた。

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