レプリフェイザーの元ネタ?
……もう少し先で…
「やっぱり分からないな。」
「何がだよ。」
「ルクスだよ。アイツの情報が無さすぎる。」
玄鳥、藍硯、玲瓏、伏龍の四人は、夕陽の残光に染まる空を飛びながら話し合っていた。
雲の切れ間から見える璃月の街が、遠く橙色に輝いている。
「どうやって来たのか、どうして玄鳥を狙ってるのか……あー、もうわかんねぇな。」
玲瓏が額を掻きながらぼやく。
「悩んでても仕方ないし、璃月に戻ろう。」
伏龍の冷静な声に皆が頷き、光の軌跡を残して帰路についた。
………………
「……はあ……はあっ……」
その頃、璃月の外れ。
夕闇に沈む森の中で、ファングは黙々と拳を振るっていた。
額から滴る汗が地面に落ち、乾いた音を立てる。
「やっぱり……しんどいな。」
呼吸を整えながら、ファングは拳を握りしめた。
拳の皮は破れ、血が滲んでいる。それでも彼は立ち止まらない。
「ファング、大丈夫……?」
木の影から小走りで駆け寄る足音。
顔を上げると、薄明かりに照らされたニィロウの姿があった。
心配そうな瞳がこちらを見つめている。
「ニィロウ……」
彼女の名を呼ぶ声は、少し掠れていた。
「ファング……そろそろ休んでもいいんじゃない?最近ずっとここにいるじゃん。」
ニィロウがそっとタオルを差し出す。
その手は優しく、それでいてどこか必死だった。
ファングは少し視線を逸らして、息を吐いた。
「……もう少しだけ。あと少しで掴めそうなんだ。」
「何を?」
「“強さ”だよ。」
森の木々が風に揺れ、葉擦れの音が静かに響く。
ニィロウは言葉を詰まらせ、ただその背中を見つめていた。
「玄鳥達が強くなって、すげぇ羨ましいんだ。」
ファングは拳を握りしめたまま、どこか遠くを見るように呟いた。
「俺も同じぐらい強くなりたい。守れなかったアイツらを……今度こそ守れるような奴に……」
ニィロウの胸に、ふとスメール三人衆の笑顔が浮かんだ。
そして、彼の言葉が胸に重く沈む。
「悪いな。飯、作ってくれたんだろ?ありがと。」
そう言って、ファングは彼女の手から弁当を受け取ると、一口だけ頬張って笑った。
「うまい。……これで、もう少し頑張れそうだ。」
そして彼は、汗と土の匂いを残したまま、また森の奥へと駆け出していった。
木々の間にその背が消えていく。
「ファング……」
ニィロウは立ち尽くしたまま、彼の姿を見送った。
――しばらくして。
森を抜け、璃月の街の明かりが見える頃。
ニィロウは深く息を吐き出した。
「はぁ……もう、どうすればいいのかな……」
「どうしたんだい?元気がないじゃないか。」
柔らかな声と共にフリーナが現れた。彼女の後ろから、宵宮が心配そうに覗き込む。
「何か……嫌なことでもあったんか?」
「実は――」
ニィロウは二人に、森での出来事を静かに話した。
フリーナと宵宮は真剣に耳を傾けていた。
話を終えた頃、宵宮が腕を組みながら小さく頷く。
「なるほどなぁ……壁にぶち当たったってことやな。」
「うん、そうかも……」ニィロウは俯いた。
「僕もマルクから同じ話を聞いたよ。」フリーナが穏やかに言う。
「焦ってるんだと思う。みんなが進んでいく中で、自分だけ置いていかれた気がして……」
宵宮は笑って、ニィロウの肩を軽く叩いた。
「せやけど、焦ることないよ。ファングは努力家やろ?きっと、自分のペースでちゃんと強くなる。」
フリーナもうなずく。
「そう。無理に追いかけるより、今は支えてあげる方がいい。君にしかできない形でね。」
ニィロウは二人の言葉に少しだけ笑みを取り戻した。
「……うん。ありがとう!二人とも。」
璃月の夜風が三人の髪を撫でていった。
遠くで灯篭が揺れ、優しい灯りが彼女たちを包み込んだ。
…………………
そして翌日。
層岩巨淵の奥深く、地鳴りのような轟音が響いていた。
黒鉄の巨影が岩盤を砕きながら暴れ回る。その名は――レプリプライガ。
博士が昨夜仕上げた、新たなる実験兵器である。
「で、デカい……!」
玄鳥が息を呑む。
その巨体は前に戦ったレプリフェイザーと同等。
全身から淡い青紫のエネルギーが漏れ出していた。
「前のヤツと同じぐらいのサイズか……」
伏龍が剣を構えながら呟く。
「気をつけろ。あの博士の作ったもんだ、何してくるか分かんねぇぜ。」
玲瓏が鋭く叫ぶ。
玄鳥たちは頷き合い、武器を構えた。
岩壁の裂け目を吹き飛ばすほどの咆哮が、戦いの始まりを告げる。
レプリプライガが首を振り回し、牙を剥く。
噛みつき攻撃と爪の一閃が、地面を削り取るように迫った。
「近付けな〜い!」
藍硯がチャクラムで牽制するが、風圧で弾かれる。
「だったら、俺がやるぜッ!」
ファングが叫び、岩を蹴って一気に距離を詰めた。
拳に崩壊エネルギーを纏わせ、巨体の胸部を狙って叩き込んだ。
しかし。
「なっ……効かねぇ!?」
鈍い金属音と共に、拳の衝撃は霧散した。
レプリプライガの装甲は黒曜石のように硬く、
傷一つすら付いていなかった。
次の瞬間、尾部の装甲が展開し、
内蔵された多銃身砲が唸りを上げる。
「チッ――!」
ファングが反応するより早く、
尻尾のガトリング砲が火を吹いた。
無数の弾丸が嵐のように降り注ぎ、
ファングの身体を吹き飛ばす。
「ファング!!」
ニィロウの悲鳴が響く。
ファングは岩壁に叩きつけられ、土煙の中に沈んだ。
蛍はファング達の方を見た後レプリプライガを睨んで、剣を構え直す。
「博士…またあの様なのを作って…!」
「ぐっ…」
地に叩きつけられたファングは、息を荒げながら立ち上がろうとしたが、膝が震え、思うように力が入らなかった。
「ファング! しっかりして!」
駆け寄ったニィロウの声には、焦りと悲痛が混じっていた。
「すまない、ニィロウ……こんな事に巻き込んじまって……」
ファングは苦しげに笑う。
「本当なら、お前はズバイルシアターで楽しく踊ってたはずなのにな……」
その言葉に、ニィロウの瞳が揺れる。
「でも……大好きな人がこんな目にあってたら、私……見てるだけなんて、できないよ……」
「ニィロウ……」
互いの手が触れ合い、指が自然と絡んだ。
その瞬間――。
眩い光が二人を包み込む。
「この光……律者の光だ!」
玄鳥が叫んだ。
光は激しく脈打ち、雷鳴と共に爆ぜる。
やがて光の中から、二つの影が飛び出した。
「ぐおおおおっ!!」
雷を纏った拳がレプリプライガを殴り飛ばす。
地面が大きく抉れ、岩片が空へ舞い上がった。
「ファ、ファング……!? その姿……!」
「ニィロウ……お前も変わってるぞ!」
「わ、ホントだ! え、ええぇ!?」
二人は互いの姿を見て驚いたが、レプリプライガの咆哮がその動揺をかき消した。
「ニィロウ、やれるか!」「うん! 全力でサポートするね!」
ファングは再び前へ。
左ストレートが地響きを伴って炸裂し、続く右フックでレプリプライガの角を粉砕した。
「私も頑張るよ!」
ニィロウは背中に浮かんだ杖の一つを掴み、水元素を練り上げる。
「――流れに身を委ねて!」
水の奔流がビームとなってレプリプライガを包み、全身をずぶ濡れにした。
「あれれ……全然効いてない?」
「いや、効いてるさ。助かるぜ!」
ファングは不敵に笑い、背中の浮遊アーマーを右腕に連結させた。
「よし……連結完了!」
電磁の火花が散り、右腕のガントレットが唸る。
「喰らいやがれッ!」
雷光と共に放たれた拳がレプリプライガを直撃。
次の瞬間、敵の全身を雷撃が貫き、轟音が層岩巨淵に響き渡った。
「“感電”反応だ!」胡桃が叫ぶ。
「考えたな……ニィロウの水を利用したか。」
玲瓏が唇を吊り上げる。
「トドメを刺してやる!」
ファングの全身に雷光が迸り、空気が焦げるような音を立てた。
彼の背後に、雷の紋様が浮かび上がる――そしてそこから、巨大な弓矢のような武器が形を成した。
先端には高速回転するドリルブレード。轟音が周囲を揺らす。
「でぃやああああああっ!!!」
叫びと共に、ファングは雷の尾を引きながら突撃した。
その一撃は大地を割る勢いで一直線にレプリプライガへ迫る――
しかし、その瞬間。
「――ッ!?」
上空から青白い閃光が走る。
レプリフェイザーが突如として降下し、巨大な腕でプライガの体を抱え上げた。
「何ッ!」
ドリルの刃先はわずかに掠め、岩盤を抉って爆ぜる。
二体の機兵は空高く舞い上がり、層岩巨淵の上空で爆音を残しながら彼方へと消えていった。
「逃げたの……?」
フリーナが呟く。風に揺れる髪が、まだ戦闘の余熱で光っていた。
「……ああ。だが、今の連携は悪くなかったな!」
伏龍が武器を下ろし、息を整える。
ファングはしばらく空を睨んでいたが、すぐに笑みを浮かべてニィロウのもとへ歩み寄った。
「とにかく、みんな無事でよかった。」
そしてニィロウの前で立ち止まり、柔らかく言う。
「お疲れ、ニィロウ。」
「えへへ……ファングこそ。」
二人は自然に手を取り合い、指を軽く握り返した。
その間を、戦場を包んでいた雷光が静かに散っていく。
空にはまだ雷雲が残っていたが――
二人の間には、確かな絆の光が宿っていた。
次の連載
-
続編
-
リメイク