もし伊織くんが葦名一心を召喚したら   作:NEST中毒者

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三度目の邂逅

 

 ――――月の美しい夜だった。

 それを見た誰もが夜明けを惜しむような、鋭く輝く望月の照らす夜。

 

 そこに、一人の男が佇んでいた。

 

「…………」

 

 藍色の着物を身に纏い、二刀を携えた男。

 彼は、一人の少女を抱き留めている。

 

 否、正確に云うのならば、ただの少女ではない。

 

 刀で喉を貫かれ、今にも絶命せんとする少女であった。

 

「兄……ちゃ……」

 

 少女は、潰された喉で何か言の葉を紡ごうとする。だが、それはほとんど声になることは無かった。

 

「…………」

 

 その様を眺める男は、何も答えない。

 ただ、少(・)女(・)の(・)血(・)で(・)汚(・)れ(・)た(・)刀(・)を手に、薄らと口元に笑みを浮かべるのみであった。

 

 

「――――伊織よ」

 

 男の背後から、声を掛ける者が居た。

 

「お主、なかなかどうして憎めぬ奴であった……あ(・)奴(・)と同じようにな」

 

 声の主は、老人だ。

 枯れ枝の如く痩せ細り、何時病に斃れても可笑しくないような風体であった。

 

 されど、その老骨が纏う剣気は、尋常のものではない。

 

 其れは正に、研ぎ澄まされた刃が如し。

 技を研ぎ澄まし、束ね、無駄という無駄を削ぎ落した果てに辿り着いた境地である。

 

 あるいは其れは、と(・)あ(・)る(・)剣(・)豪(・)が求めた「 」の境地にも近しいものであったやも知れない。

 

「――――さあ」

 

 老人は、ゆるりと刀を抜く。

 構えは無い。されど、その立ち姿には一片の隙も存在しなかった。

 

 対する男も、少女の身体を投げ捨て、もう一方の手で残る一刀を抜いた。

 

 

「修羅に墜ちる前に、斬ってやろう」

 

「――――修羅、か」

 

 これまで一言たりとも発さなかった男が、口を開いた。

 

「何のために斬るかを忘れ、ただ斬り続ける――其れが修羅というのなら、俺は修羅で構わない」

 

 剣の極致というべき老人。それに相対する男の剣気もまた、尋常のものではない。

 

「俺は総てを理解し、凡てを斬り捨て……剣の道を極める。それ以外は、何も彼も余分に過ぎないんだよ」

 

 男はその果てなき深淵が如き瞳孔をきつく細め、目の前の老人を見据えた。

 

「――――そうか」

 

 その言葉を聞いた老人が浮かべるのは、哀愁か、慈悲か、あるいは――歓(・)喜(・)か。

 

「ならば、こう云うべきか」

 

 その感情が何であるか、男が理解する暇は無かった。

 それより早く、老人の圧倒的な剣気――死の気配が、場を覆い尽くした故だ。

 

 

「よもや、三(・)度(・)も修羅と相見えることになろうとはなぁっ!!」

 

 

 声と共に、老人、そして対する男の剣気が更に勢いを増す。

 斯様な剣気が二つ、一堂に会したならば――――その先にあるのは一つ。死合だ。

 

「ゆくぞ、伊織ぃっ!!」

 

 "剣聖" 葦名一心

 

「来いっ、セイバー!!」

 

 "万理一空" 宮本伊織貞次

 

 ――――冷ややかなる望月の下、斯くも美しき可惜夜にて。

 

 一刀と二刀が、激突する。

 

一心様の属性は

  • 混沌・善
  • 中立・善
  • 秩序・善
  • 混沌・中庸
  • 中立・中庸
  • 秩序・中庸
  • 混沌・悪
  • 中立・悪
  • 秩序・悪
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