――――月の美しい夜だった。
それを見た誰もが夜明けを惜しむような、鋭く輝く望月の照らす夜。
そこに、一人の男が佇んでいた。
「…………」
藍色の着物を身に纏い、二刀を携えた男。
彼は、一人の少女を抱き留めている。
否、正確に云うのならば、ただの少女ではない。
刀で喉を貫かれ、今にも絶命せんとする少女であった。
「兄……ちゃ……」
少女は、潰された喉で何か言の葉を紡ごうとする。だが、それはほとんど声になることは無かった。
「…………」
その様を眺める男は、何も答えない。
ただ、
「――――伊織よ」
男の背後から、声を掛ける者が居た。
「お主、なかなかどうして憎めぬ奴であった……
声の主は、老人だ。
枯れ枝の如く痩せ細り、何時病に斃れても可笑しくないような風体であった。
されど、その老骨が纏う剣気は、尋常のものではない。
其れは正に、研ぎ澄まされた刃が如し。
技を研ぎ澄まし、束ね、無駄という無駄を削ぎ落した果てに辿り着いた境地である。
あるいは其れは、
「――――さあ」
老人は、ゆるりと刀を抜く。
構えは無い。されど、その立ち姿には一片の隙も存在しなかった。
対する男も、少女の身体を投げ捨て、もう一方の手で残る一刀を抜いた。
「修羅に墜ちる前に、斬ってやろう」
「――――修羅、か」
これまで一言たりとも発さなかった男が、口を開いた。
「何のために斬るかを忘れ、ただ斬り続ける――其れが修羅というのなら、俺は修羅で構わない」
剣の極致というべき老人。それに相対する男の剣気もまた、尋常のものではない。
「俺は総てを理解し、凡てを斬り捨て……剣の道を極める。それ以外は、何も彼も余分に過ぎないんだよ」
男はその果てなき深淵が如き瞳孔をきつく細め、目の前の老人を見据えた。
「――――そうか」
その言葉を聞いた老人が浮かべるのは、哀愁か、慈悲か、あるいは――
「ならば、こう云うべきか」
その感情が何であるか、男が理解する暇は無かった。
それより早く、老人の圧倒的な剣気――死の気配が、場を覆い尽くした故だ。
「よもや、
声と共に、老人、そして対する男の剣気が更に勢いを増す。
斯様な剣気が二つ、一堂に会したならば――――その先にあるのは一つ。死合だ。
「ゆくぞ、伊織ぃっ!!」
"剣聖" 葦名一心
「来いっ、セイバー!!」
"万理一空" 宮本伊織貞次
――――冷ややかなる望月の下、斯くも美しき可惜夜にて。
一刀と二刀が、激突する。
一心様の属性は
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混沌・善
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中立・善
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秩序・善
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混沌・中庸
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中立・中庸
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秩序・中庸
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混沌・悪
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中立・悪
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秩序・悪