もし伊織くんが葦名一心を召喚したら   作:NEST中毒者

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※注意

・なんか収まりが悪いです。今話の前半分は前話に回した方が良かったと後悔するも後の祭り。

・捏造アンド捏造アンド捏造です。独自解釈もモリモリ含みます。

・紅玉の書とセイバーの口調が区別しにくいです。今後どうしよ。



第一章
見出


 

「霊地、逸れ、令呪……か」

 

 日の落ちた吉原。

 夜になってなお灯火が煌々とするその街並みを、伊織とセイバーは歩いていた。

 

「それに、並行世界とやら、のう……そう容易く腑に落ちるものでもないが……」

 

 彼らは、高尾太夫とそのサーヴァントであるというバーサーカー……伊織の師である宮本武蔵と話を付け、いくらかの情報を交換し約定を取り付けた末に帰路へ付いている最中である。

 

「ああ、師匠が俺の知るそれより随分若いのも、女であるのも……その並行世界から来た故、らしい」

 

「うむ、それにあの女武者、どうやら儂の事も見知っている風であった……じゃが儂には覚えがないし、あのような強者を忘れる筈もない……まったく異な事よ」

 

 高尾太夫、そして武蔵から聞いた言葉を歩きながら反芻する二人。

 彼女らの齎した情報は、セイバーが盈月より与えられた知識の中に無かったものであり、大きな収穫であったといえるだろう。

 

「そうだな……それはそれとして、今後の方針だが」

 

 そして、高尾太夫らとしたもう一つの話。

 それは、知らずとはいえサーヴァントを伴って彼女らの拠点である吉原を荒らしたことを手打ちにする条件として提示された、ある約定の話であった。

 

「盈月の儀に集った他の陣営について調べる……であろう」

 

「ああ」

 

 情報収集。大夫から提示された条件はそれだ。

 他のマスターの名や拠点――それらを調べ上げ、大夫に伝える。

 それが吉原での狼藉を不問にする対価、という事だ。

 

「儂もそれに異存は無い。情報を集めれば、儂らにとっても身の振り方を決める指針になろう」

 

「決まりだな。なら明日からは、主要な霊地を――」

 

 

「そう云う事なら、儂に任せておけい!」

 

 威勢のいい言葉と共に、伊織の懐から何かが飛び出した。

 それは、赤い装丁の古めかしい洋書――伊織の魔術の師、紅玉の書である。

 

「……爺さん」

 

「儂はこの辺りの霊地を一通り知っておるし、その流れを辿ることもできようて!」

 

「それは有難い。頼りにさせてもらうぞ、爺さん」

 

 宙を浮き喋る書物と自然に会話する伊織。

 それを見やるセイバーは、若干物珍し気だ。

 

「うーむ、未だ慣れんな、喋る書物と云うものは……」

 

「はっはっは、そうじゃろうそうじゃろう、儂のような書物はそうそうおらんよ!」

 

「……喋る掛け軸の噂なら、小耳に挟んだことがあるがな」

 

「葦名に、爺さんの同族が……?」

 

「ほーう、それは是非会ってみたいのう!」

 

 話を弾ませつつ、吉原からの帰路を進む三人。

 だが、ふと吉原の外れに差し掛かったあたりでセイバーが立ち止まり、同時にその声色が変わった。

 

「ところで、あの高尾大夫と云う者じゃが――ちと引っかかるな」

 

「……何?」

 

「……盈月の儀もまた一つの(いくさ)なれば、そこには関わった者の願いや企てやらが渦を巻きおる。そしてあ奴もまた、その渦の一角という事じゃ」

 

「高尾太夫が、何かを隠していると?」

 

「さあな。まだ少し匂ったに過ぎん……ともあれ伊織よ。一つ、肝に銘じておくがいい」

 

「…………」

 

「戦が引き起こす、願いや企ての渦……迷えば、そこに呑まれ……」

 

「敗れる……か」

 

「そうじゃ、伊織よ。迷えば、敗れるぞ」

 

「……ああ。肝に銘じておく」

 

 セイバーが、再び歩き出す。

 こうして二人と一冊の影は、浅草へと帰っていった。

 

 

 

 

 夢を、見ていた。

 江戸ではない、どこか北の地。

 

 伊織は普段より幾分か高い目線で、その地と()()()を見ていた。

 

「落ち谷の……飛び猿よ」

 

 目の前に立つのは、ボロボロの忍び装束に身を包んだ一人の男。

 その左手には、無骨だが重厚な斧が握られている。

 

 だが、何より目を引くのは――酷く吊り上がり、狂笑を浮かべる口角だった。

 

「お主、何故に人を斬っておる。何のために殺す?」

 

 視点の主が、男に問いかける。

 その声は、伊織が知るより幾分か若いが、確かにセイバーのものだ。

 

「――――さあな」

 

 目の前の男は、その問いに対し一層口角を吊り上げる。

 

「そんなもの、とうに忘れてしまったわ」

 

「そうか。ならば、斬ってやろう」

 

 視点の主の手が、腰に佩いた刀に添えられた。

 

「ほざけ! 斬られるのは、貴様だ――」

 

 だが、その時にはすでに、目の前の男は動きだしている。

 飛び猿と呼ばれたその名に違わぬ膂力で跳躍したその男は、左手の斧を重量のままに振り下ろさんとした。

 

 その重き刃は、視点の主の頭部を叩き割って余りある威力で迫り――――

 

「――遅い」

 

 そして、それを握る左腕ごと宙を舞った。

 

 

 ――――奥義・葦名十文字。

 

 刹那に抜き放たれたその刃は十字を描き、飛び猿と呼ばれた男の左腕を斬り飛ばしたのだ。

 

「馬鹿、な……!」

 

 左腕から血を吹き出し、倒れ伏す男。

 視点の主はそれに歩み寄り、云った。

 

 

「お主、未だ堕ち切ってはおらぬ……なれば、戻れる道もあろう」

 

 

 視界が切り替わる。

 先ほどとは違う場所、違う季節。

 

 だが目線の高さは先ほどと同様であり、同じ人物の視点であると解る。

 

 目の前には、こちらに跪く一人の男。

 先ほどとは異なる忍び装束を身に纏っているが、それは先ほど左腕を斬られた男に違いない。

 

 そして、斬り飛ばされた左腕には――――()()()()()()()()()が嵌められていた。

 

「あの日、飲まれかけたところを救っていただいた恩……この身命を賭して、お返しする所存にございまする」

 

 そう云う男の顔に、先程のような笑みはない。

 ただ深い恩義と忠誠を感じさせる所作で、男は深々と頭を下げた。

 

「良いじゃろう……その力、儂に貸してくれい」

 

「はっ。今より飛び猿の名は棄て、葦名の忍びとして生きまする」

 

 

「そうか。ならば……今後はお主をこう呼ぼう。猩々、あるいは隻猩と」

 

 

 

 再び視点が切り替わる。

 

 目の前にはまたも同じ男――だが、幾分か老いたその姿や、左手の義手に刻まれた大小の傷から、先程よりかなりの時が過ぎ去ったことが察せられた。

 

「忍びを、辞するか……隻猩よ」

 

「申し訳、ありませぬ」

 

 そう云う男の顔は――先のいずれともまた違う、苦悩の刻まれたものになっていた。

 

「……抑えきれなんだか」

 

「はっ。……これを」

 

 男は腰の忍び刀を右手に持ち、同時に左腕を構える。

 すると、左腕――その義手に備え付けられた一本の筒から、煌々と炎が溢れ出した。

 

「……ほう」

 

 男はその炎を、右手に持った刀にゆっくりと翳す。

 するとどうだ。揺らめく炎は、刀を炙るのではなく――刀を覆うように、移っていったのだ。

 

「奥義――――纏い斬り」

 

 刀に纏わせた炎は、燃料も無く燃え続け――しばらく後に、消えた。

 

「この技に至った時、気付いたのです……極め、殺し過ぎたと」

 

「故に、辞するか」

 

「……こうなってしまった以上、殺しを止め、仏を彫り怨嗟を鎮める他無いと存じます。……誠に、申し訳ありませぬ」

 

「……よい。恩ならば、十分過ぎるほどに返して貰った」

 

「有難き、幸せ」

 

「城の外れに、一つの寺がある。天守からの抜け道が通じておる寺じゃ。そこに住まい、何かあれば参るがよい」

 

「はっ。……それと」

 

「何じゃ」

 

「エマを、頼みます」

 

「無論よ」

 

 その言葉を聞いて、男は深々と頭を下げる。

 そうした後に、ゆっくりと立ち去った。

 

 

 

 

「夢……か」

 

 朝。

 寝床より起き上がった伊織は、先程まで観ていた光景が夢であったことを自覚する。

 

「……奇妙な夢だったな」

 

 独り言ちつつ、周囲を見渡す。

 セイバーの姿はない。どうやら姿なき霊体となり、休息をとっている様だった。

 

「仏を彫る……か。そうだ、久しぶりに……」

 

 伊織は、夢の中で出てきた仏を彫ると云う言葉で思い立ったのか、部屋の隅より(のみ)と木材を取り出した。

 彼は、師である宮本武蔵に倣って彫仏を嗜んでいるのだ。

 

「鋭き水の流れの如く……」

 

 畳に座り込み、精神を集中させる伊織。

 そのまま、丁寧に木材を削り出し始める。

 

 その腕はかなりのものだ。

 ただの四角い木の塊だったものが、みるみる仏の形を成してゆく。

 

「……っ」

 

 だが、いよいよそれが完成しようという間際で、伊織は僅かに眉を顰めた。

 

「……手元が狂ったか」

 

 彼は、穏やかな表情を浮かべた大日如来像を彫ろうとしていたのだが――出来上がったものは、その意図を外れていた。

 

 

 

 そう。

 (かお)の部分を僅かに彫り違えたそれは、まるで怒りを湛えているようにも見えたのだ。

 

 




この世界では葦名が特異点になっているのかも知れません。誰か書いて。

一心様の属性は

  • 混沌・善
  • 中立・善
  • 秩序・善
  • 混沌・中庸
  • 中立・中庸
  • 秩序・中庸
  • 混沌・悪
  • 中立・悪
  • 秩序・悪
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