CクラスでもDクラスでもEクラスでも少年少女たちは頑張ります!!   作:酒匂馬酔木

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3月1日 入学試験初日 入浴 夕食 茶柱佐枝

国語の試験は5時に終了。

綾小路は長文読解問題の解答に迷い悩んでいたのだろう、と茶柱は見て取る。

最後まで、消しゴム片手に数枚綴りの解答用紙をあちこち見返していた。

だが、茶柱は何も言わない。

言うべきことは夕食の場で言うことにしよう、と思う。

 

試験終了後、直ぐ、校長に頼まれて幼年の子供たちの入浴を世話する。

湯船はかなり大きい。

大人でも10人は楽に浸かれる。

「おばさん、おっぱいおっきいねぇ!」「あたしもオトナになったらそんなカラダになれるかなぁ?」と、おばさん呼ばわりし、乳イジりをしてくる子供たちを往なしながら、湯船の中で茶柱は綾小路との面談について考える。

どうすべきか? 慰撫すべきか、叱咤激励すべきか?

未だどうにも決められない。

溜息を吐きながら遠くに目を遣ると、茶柱の双乳をじっと見詰める男の子たちに気付く。

「何だ? 君たち、お乳が好きなのかなぁ?」とストレートに訊く。

お乳と言う語彙に男の子たちは反応する。

「ボクたち、そんな赤ちゃんじゃないやい!」

女の子たちは「エッチ、エッチぃ~!」と囃し立てる。

「まぁまぁ、良いじゃないか。男の子が女性の身体に興味を持つのは自然なことだ。」

それを聞いて、「いや~ん!」と自分のぺったんこな胸や無毛のお股を腕や手で隠す女の子たち。

うむ、いつもはスレた学生どもを相手にして神経を磨り減らしているが、こうして幼い子らを相手にするのは、ほっこりした気分になれて良いもんだな、と茶柱はしみじみ想う。

もし自分に子供がいたら毎日こんな感じなのだろうか? と、ふと思う。

が、アラサー、彼氏なし、その上、年中ほぼ休みなしというとんでもなくブラックな職場で、疲れ切って夜遅く帰るのは、一般人がなかなか立ち入れない学区の中にある職員寮。

……! 結婚出来るわけがない!

急激に、理事長を始め、学校上層部への怒りが募る。

立ち上がって激昂する茶柱、乳も下の毛も丸出しだ。

いきなりの黒いオーラの奔流に、何故そうなったか解らず畏怖して茶柱から遠ざかる子供たち。

茶柱がカラダをバスタオルで拭いてやっても、子供たちは茶柱にビビりまくったままであったが、茶柱は気にしない。

思うことはただひとつ。

上のクソなヤツら、いつか全員ぶっ潰してやる!

 

子供たちと茶柱が入浴してから、小学校高学年以上の女子、その後、男子全員の入浴。

茶柱たち大人と清隆、七瀬、そして栄一朗の夕食は7時過ぎからとなった。

が、理事長は居ない。

ホテルか有名店か、どこかで奥多摩牛のステーキでも食ってるんだろう、と茶柱は心の中で唾棄する。

いや、理事長なんぞどうでも良い。それよりも今は、綾小路と何をどう話すべきか、なのだが、決めかねるまま夕食の席に着く。

校長は厚意から、子供たちと五人の席を離してくれた。

「さぁいただきましょうか。」と七瀬。「いただきます。」と皆で応える。

夕食は、熊肉のカレー、だ。

「実に食欲をそそる良い匂いですな!」と福谷。

茶柱は、懸案の綾小路を後回しにして、先ず七瀬と栄一朗へ「次の年は君たちだな。期待してるぞ。」と声を掛ける。

ふたりは「頑張ります。」と殊勝に応える。

「うむ。」と返すが、いつまでも綾小路を放ってはおけない。

それこそが夕食での面談の目的だ。

なのだが──何をどう話すべきか、思考は堂々巡りだ。

黙々と熊肉のカレーを食す。

そのあと「なぁ、綾小路……。」と口を開いてみたものの言葉が続かない。

それを見て「国語の試験のことですね?」と綾小路から本筋へ触れる。

「あれは……何と言うか、実に意地悪な問題揃いでしたね。長文読解問題に限らず。」

「あぁ、まぁウチの入試問題は昔っから評判極悪だからな。特に国語は、だ。流石のお前でも苦労しただろう?」

「国語のテストなんて8歳のころからしたことありませんでしたからね。それに加えて、出題者の性根が腐っているんじゃないかと思うほどの、あの底意地の悪さ。戸惑いました、参りましたよ。日本語というものがこんなに難解だとは思ってもみませんでした。」

そう素直に弱気な言葉を吐く清隆。

夕食前に、試験の手応えを聞いたのだろう、いつも清隆を鼓舞する七瀬も、清隆の熱心なサポーターになった福谷も、無言だ。

皆の様子を観た茶柱は、叱るのではなく慰めに舵を取ることに決めた。

「もしかしたら、理事長はお前の国語の点数を見て何かしら皮肉を言うかも知れんがな、まぁ構わん、気にするな。ウチは入試だけじゃなく平素の試験も国語は数学ほど重要視しないからな、今回、お前の国語の成績がトップじゃなくても、最高傑作くんの名に傷は付かん、大してな。安心しろ。」

敢えて、もうやめると約束した最高傑作くんという呼称を使ってみたのだが、清隆は「そうですか。」と、ひとこと返すだけ。

どうも空気が重い。

これ以上は、慰めの言葉など思いつかない。

あぁ、これじゃ私はいつまでも無能な教師のままじゃないか、と嘆く。

仕方なく茶柱は、寝室として割り当てられた幼年の女子部屋へ行く前に、優しく穏やかに、とだけ意識してひとこと告げる。

「明日は英語と理科だ。頑張れよ、綾小路。」

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