今回も3000文字になりました
かなり強かった猿の遊び相手をした日の翌日、空から何かが此方へと降ってくるのを感じ取った俺は、食欲のエネルギーを形にした大きな先割れスプーンで、その何かを受け止めた。
俺の父、珍師範は食欲のエネルギーをスプーンに変えることが可能であり、様々なものを掬うことができる。
俺の場合はそれが先割れスプーンとなるが、スプーンだけではなくフォークとしても使える先割れスプーンは、攻撃にも使用可能だ。
猿の遊び相手をしている時は食欲のエネルギーを無駄遣いしている暇はないと考えて、使わなかった先割れスプーン。
それで受け止めたのは秒速923キロメートルの速さで降ってきた巨大な飛来物。
酸っぱい匂いを漂わせる巨大な赤い物体は天災として恐れられている梅星で間違いない。
宇宙から稀に降ってくる酸っぱい星である梅星は宇宙食材と呼ばれるもので、通常は普通の梅干し程度の大きさである筈の梅星だが、今回降ってきたのは明らかに巨大だった。
宇宙から降ってやって来た梅星という食材の声を聴くと、俺に食べてほしいと思っていた梅星。
巨大過ぎて一気に一口で食べることはできそうにない梅星を包丁で切り分けていくと、梅星の内部に何かが埋まっている。
埋まっていたそれは、輝きを放つ金色の金属。
金色の金属は通常の金属とは違って旨みで出来ており、この金色の金属を使って調理器具を作れば、何年使っても朽ちることがない調理器具が作れそうだ。
新たな金属を知り、それを【自在金属】で出せるようになったことを喜んだ俺は、切り分けた梅星を梅星おにぎりにすることを決めて米を炊いていく。
使う米は、1粒ずつ洗い、1粒ずつ炊くことによって本当の星のように輝く星米。
オカズの味を打ち消してしまう程に美味い星米は、それだけを食べることが多いみたいだが、そう簡単には打ち消されない程に強い味なら、星米の味を更に引き出せる筈だ。
切り分けた梅星を炊いた星米でふんわりと包み込むように握った梅星おにぎりを幾つも作っていき、巨大な梅星全てを完全に使いきる。
食べる時は米を凝視して決して瞬きせずに食べなければ味が劣化する星米は、特定賞味期限食材。
そんな食材である星米の声を聴き、劣化することがないように調理した星米は、味が落ちることはない。
夜空に輝く星のような星米と、宇宙から来た梅星の組み合わせは、素晴らしい味を生み出す。
噛めば噛む程に米の旨味と、ほんのりと優しい甘味が口に広がり、極上な梅干しのような梅星の塩味と酸味が星米の美味しさを更に引き出していき、組み合わさる2つの食材の味。
とても美味しい梅星おにぎりは、今まで食べたおにぎりの中でも格別な味だ。
星米と梅星を組み合わせたものが適合食材であったようで、更に進化した俺のグルメ細胞。
俺1人だけでも梅星おにぎりは全部食べれるが、家族にもちゃんと分けておこうと考えて、畑仕事が終わった千優とダンにも梅星おにぎりを渡してみた。
星米と梅星で作った梅星おにぎりは千優とダンの適合食材でもあったようで、細胞が進化していた千優とダン。
それから俺のグルメ細胞が進化したことで可能になったことを試す為に、千優から許可を取って土だけしかない畑に向かい、かざした手から旨味のエネルギーを畑に送り込むと、瞬く間にグルメ食材が生えてきた畑。
旨味のエネルギーにより、栄養に溢れた土地へと変貌し、グルメ食材までもが生えてくるような場所にもなった千優の畑の1角。
新たな能力を実際に試したところで、俺には新たなスキルが発現していた。
【旨味譲渡】
・蓄えたカロリーを旨味のエネルギーに変えて、様々なものに譲渡することが可能
【旨味譲渡】は畑の土地に旨味のエネルギーを与えたことで、発現したスキルであるのは間違いないだろう。
土地に旨味のエネルギーを与えれば、瞬く間にグルメ食材が生えてくるような栄養と旨味が溢れる土地へと変えることが可能だが、食材に旨味のエネルギーを譲渡したらどうなるかが気になるところだ。
という訳で、実際に食材に旨味のエネルギーを譲渡して与えてみることにしたが、最初に選んだ食材は何の変哲もないただの林檎。
グルメ細胞も宿しておらず、特にグルメ食材ではないただの林檎に旨味のエネルギーを譲渡していくと、明らかに変化していった林檎は皮が鮮やかな赤色となり、重さも倍以上に増していた。
旨味のエネルギーを与えた林檎の皮を剥いてかぶりついてみたが、その味は以前に父が食べさせてくれたレベル90のビックリアップルよりも美味く、ただの林檎から格段に味が上がっていたことは確かだ。
食材をより美味なものに変えることが可能なこの能力は、料理人としてはありがたい。
それにこの【旨味譲渡】を用いれば別の世界でも、美味いものを食べることができるだろう。
この世界の食材で舌が肥えてしまった自覚がある俺は、別世界に生まれ変わったら食事に苦労するんじゃないかと考えていたが、スキル【旨味譲渡】で食材を美味しくすることが可能になった今なら大丈夫だと安心できた。
様々な食材に旨味のエネルギーを与えてみて、より美味しくした食材を調理して食べるということを繰り返している間に、俺のグルメ細胞は更に進化を続けていく。
進化した細胞はより強靭になり、強さを増した俺はダンと組み手をすることも忘れない。
日々の食事で強くなり、捕獲レベル4000にまで到達しているダンの攻撃。
真正面から受けたそれを完璧にダメージも無く受け流すことが可能になっている俺は、猿武の技量で完全にダンを上回っているようだ。
やはりグルメ界から来た猿の遊び相手をしたことが、俺の猿武の技量を高めたようで、以前とは比べ物にならない程巧みに猿武を使えるようになっていた俺。
捕獲レベル4000のダンという猛獣相手でも、危機を感じることなく相手ができており、俺の猿武が乱れることはない。
真似るのが上手いダンは猿武の技量も徐々に上がっていて、捕獲レベルが上がって強くなった攻撃の威力も、日を増すごとに高まっていた。
とてつもなく強かった猿と戦いが成立する位に強くなっておきたい俺は、強くなる為にできることは何でもやっておこうと考えて行動に移す。
更なるステイタス上げも兼ねて、旨味で作られた金色の金属を用いた各種調理器具を鍜冶師として作成していくと、一揃いが完成した金の調理器具。
朽ちることがない金色の素材で作成した調理器具は母にも渡しておき、長く使える道具であることも教えておいた。
俺からの贈り物に喜んでいた母を見て、ちょっと羨ましそうにしていた父には、普段の食事に使える金の箸を渡しておく。
両親に贈り物をしたなら、弟にも何か渡しておこうと思った俺は、畑作業に使う道具を金色の金属で作成して千優にプレゼントしてみた。
金色に輝く鍬を見て「外見が派手だね」と言っていた千優だが、錆びることなく土の粒子を切り裂く見事な刃を持つ鍬に「うん、いい鍬だ。ありがとう兄さん」と喜んでいた千優。
旨味で出来た金色の金属が、この世界ではかなり優れた素材であるのは確かだ。
年月が経過しても錆びることがなく、何年でも使い続けることが可能な金の道具。
恐らく、この金の調理器具を使わなければ調理できない食材も存在しているのだろう。
まだ見たこともない食材に心が踊るようになってきたことを考えると、俺も心底料理人になってきているのかもしれない。
腕のいい料理人は、この世界では貴重な存在として大切にされている。
食材を調理して、美味いものをより美味くできる料理人は、この世界には欠かせない存在だ。
今回降ってきた梅星の中に埋まっていた金色の金属は、グルメマテリアルで、金の調理器具の素材となる金属でもあります
朽ちることがないその素材を本作主人公は、スキル【自在金属】を用いて生成できるようになりました
今回発現した【旨味譲渡】のスキルは、三虎のグルメスパイスを小規模にして、効力を更に高めたようなものですね
通常の食材をグルメ食材並みに美味しくすることが可能です