メタルキングの素材を使って剣を1本作成したが、メタルスライムと違って身体が大きいメタルキングの素材は、まだ残っている。
剣ならあと2本は作れそうだが、既に剣は有るので同じものを作る必要はない。
このメタルキングの素材を使えば、オリハルコンとまではいかないが、かなり良質な装備を作ることが可能だ。
素晴らしい素材であるメタルキングの素材は、使い道を選んだ方が良いだろう。
そんなことを考えながらダイ達と合流しようとルーラで移動した先では、剣で鬼岩城とやらを真っ二つにするダイの姿があり、早速「ダイの剣」が役立ったらしい。
顔すらも覆い隠す白い衣を身に纏った魔王軍の軍団長らしき存在が、両断された鬼岩城を見て、僅かな間だけ完全に動きが止まっていた。
数秒後、魔王軍の軍団長が我に返ると、今度は怒り狂って自らの顔を隠す衣を脱ごうとする。
そんな軍団長の行動を止めに入ったのは大鎌を持つ道化師のような存在だったが、アレがキルバーンで間違いなさそうだ。
直接キルバーンを見たのは初めてだが、アレは生物ではなく操り人形のような感じがするな。
操作している存在が近くに居るとすれば、あのひとつめピエロが1番怪しい。
使い魔を装って近くに居ることで、人形を操作していることに気づかなくさせている可能性が高そうだ。
大鎌を持つ道化師が生物であるかどうかを確かめる為に、実際にキルバーンを名乗る道化師を殴ってみて確認してみるとしよう。
俺のスキル【完全破壊】には、物を破壊する時に発展アビリティの破砕が一時的に発現する効果もある。
つまりキルバーンを殴って破砕が一時的に発現すれば、相手が物質であり生きていないことの証明となる筈だ。
という訳でトベルーラを用いて高速で飛び、キルバーンに接近した俺は軽くキルバーンの腕を殴ってみた。
軽くだとしても俺の力で殴られた片腕は完全に砕け散り、空中で吹き飛ぶ道化師の身体。
道化師の片腕を砕いたその瞬間、発展アビリティ破砕が一時的に発現。
生物ではないことが確認できたキルバーンを名乗る道化師が、単なる人形であると俺だけが理解する。
「いきなり痛いじゃないか、ボクの片腕が無くなっちゃったよ。酷いことするねキミ」
俺に対してそんなことを言ってきた道化師の人形は、喋ることも出来る高性能なお人形であるらしい。
実際は痛みを感じていないのに痛みを感じているようなフリをするところは芸が細かいと感じたが、人形であることがバレていることには気付いていないようだ。
「そうだ、そうだ。酷いぞ」
道化師のような人形の近くで、此方に向かってそんなことを言ってきたひとつめピエロが、やはり人形の操り主であるような気がする。
キルバーンという名前にも意味があるとすれば、バーンを殺す手段を持ち合わせている筈だが、人形に爆弾でも仕込んでいるのかもしれない。
魔界の神を名乗るバーンとやらを殺せるような爆弾となると、かつて父から聞いた黒の核晶を人形に仕込んでいる可能性もありそうだ。
人形に黒の核晶が仕込まれているとした場合、怪しいのは人形の頭部だな。
瞬くよりも速く高速で思考を巡らせて、思い付いたことを実行に移す前に、ひとつめピエロに一言だけ言っておく。
「今度は痛い程度じゃ済まねぇぞ」
俺が親指を弾いて飛ばした空気が見えない指弾となり、ひとつめピエロの眼球を潰すだけではなく頭部を貫通。
一瞬で死亡したひとつめピエロと同時に、全く動かなくなった道化師の人形が空中から落ちそうになったので、人形を掴んでトベルーラで、かなり空高くまで運ぶ。
「待て!キルをどうするつもりだッ!」
なんてことを言いながら追いかけてきたのは人形にミストと言われていた軍団長。
怪しい外見のわりには意外と仲間を大切にしているのかもしれない。
ミストに追われながら掴んでいる人形の頭部にある仮面を剥がして中身を確認してみると、人形の頭部に仕込まれた怪しい黒い物体を発見。
「馬鹿なッ!黒の核晶だとッ!」
そう言って驚くミストは黒の核晶の形を知っていたようだ。
流石に黒の核晶の形までは知らなかったので、ミストが教えてくれて助かった。
「こいつはただの操り人形で、本物のキルバーンとやらは、あのひとつめピエロだったんだろうさ」
「まさか、そんなことが」
信じられないといった様子であるミストは、意外と感情表現が豊かなのかもしれない。
「危険物は、さっさと処分しておくに限るな」
それだけ言うと更に遥か上空に人形を投げた俺は、指先から熱線のようにした【ギラ】を放ち、正確に人形の頭部にある黒の核晶に命中させる。
閃熱呪文で俺が起爆させた黒の核晶が空中で巻き起こしたのは凄まじい大爆発。
遥か上空に人形を投げていなければ、確実に大爆発に巻き込まれていただろう。
実際に大爆発を見て、黒の核晶がとんでもない爆弾であることが理解できた俺は、大魔王とやらも黒の核晶を持っているんじゃないかと考えてしまった。
有り得ないとは言い切れないのがなんとも言えないが、大魔王も黒の核晶を持っていると仮定して動いた方が良さそうだ。
爆弾を使う隙を与えないのが1番なんだろうが、大魔王の居場所自体が判明していないから、今の俺にできることはダイ達の装備を整えて、一緒に魔王軍と戦うことくらいだな。
俺がそんなことを考えていると白い衣を纏う軍団長が「人形に仕込まれていた黒の核晶について、バーン様に報告しなければならんな」と言うと一瞬で消え去る。
俺と戦うことよりも大魔王への報告を優先した軍団長は、敵を倒して手柄を得ることには拘っていないらしい。
爆弾処理が終わったなら一旦地上に戻ろうと思った俺が下に降りていくと、超魔生物と化したハドラーとダイが一騎討ちで激しく戦っている姿が見えた。
竜闘気を全開にして「ダイの剣」を振るうダイと張り合っているハドラーの右腕からは、本物の「覇者の剣」が生えていて、魔炎気を纏うハドラーの剣は、かなりの威力を持っているようだ。
互いのオリハルコン製の剣が打つかり合う度に硬質な金属音が響き、激しさを増すダイとハドラーの戦い。
戦いを見守っているダイの仲間達は手出しをしないようにダイに頼まれたようで、ダイは1人だけでハドラーと戦っている。
今にも飛び出しそうなポップをマァムとヒュンケルが抑えていて、クロコダインは眼前の戦いを見逃すまいと瞬きすらしていなかった。
逆手に持った剣で竜闘気を全開にし、ライデインを使った魔法剣とアバンストラッシュを組み合わせた「ライデインストラッシュ」を放つダイ。
それに対してハドラーは、強力な魔炎気を纏わせた闘気剣「超魔爆炎覇」を繰り出す。
互いの必殺技が正面から打つかり合い、真っ向勝負となった結果、相討ちのような状態となって両者が倒れたが、ハドラーの方がダメージは大きそうだ。
ダイの仲間達が急いで倒れたダイに駆け寄った時、同時に何処からか現れた魔族によってハドラーも助けられ、ミストと同じく一瞬でその場から消え去るハドラーと魔族。
ハドラーは現れた魔族のことをザムザと言っていた。
ザムザには若干ザボエラと似ているところがあったが、もしかしたらザボエラの息子だったのかもしれない。
お宅のお父さんポップにキスされて凄い蕩けたメスの顔してましたよ、なんてことをザムザに言ってみたい気持ちもあるが、そんなことを言われたら誰だって嫌だろう。
ザムザへの精神攻撃になるとしても、ポップも精神的なダメージを受けそうだから、止めておいた方が良さそうだ。
とりあえず今はダイを魔法で治療しておくとするかな。
仲間達に抱えられているダイに急いで近付いて身体に手を当てる。
「ソル兄ちゃん」
力無い声で俺を呼ぶダイは明らかに弱っていたが、魔法力と竜闘気を使い過ぎたせいなのは間違いない。
ハドラーとの戦いで凄まじく体力を消費しているダイは、完全に疲れきっていた。
「待っていろダイ、今治療する【ベホマ】」
体力も傷も一緒に回復する俺の【ベホマ】によってダイの治療が完了したが、ダイがハドラーと比べて特に大きな負傷をしていなかった理由は「ダイの剣」がダイを守ったからだ。
弟を守ってくれた剣にも感謝しておき、元気になったダイを仲間達に任せておく。
立ち去ろうとした俺を呼び止めた占い師のメルルが「ランカークスで貴方に良き出会いがあるようですよソルさん」と言ってきたが、ランカークスと聞いたポップが何故か物凄く驚いていた。
ポップに話を聞いてみると、どうやらランカークスの村はポップの故郷であるらしい。
以前ランカークスに行った時は、特に良き出会いは無かったが、占いがよく当たるメルルが言うからには、今のランカークスに行けば何かしらの出会いがある筈だ。
まあ、試しにランカークスに行ってみるのも悪くはないか。
そう思った俺がランカークスに向かう為にルーラを使おうとすると「俺達も一緒に行っちゃ駄目かな、ソル兄ちゃん」と聞いてきたダイ。
どうやらダイだけではなくポップやマァムにメルルも一緒に着いていきたいと考えているようだった。
「ランカークスにルーラするなら俺も手伝えるぜソルさん」
ランカークスに行くことに乗り気になっているポップは、久しぶりに家族の顔を見たいのかもしれないな。
「じゃあダイは俺が連れていくから、マァムとメルルは頼んだぞポップ」
「任せてくれソルさん」
それからランカークスまでルーラで移動し、ポップの実家に立ち寄ってみると、何故かポップの父親であるジャンクさんに放り投げられることになったポップ。
そんなこともあったが武器屋でもあるポップの実家にある武器を確認していると、1つだけ気になる剣を見付けた。
明らかに手抜きで作られているが、それでも他の武器と質が違う剣は、作成者の鍛治師としての腕前が段違いであると示している。
「この剣だけ質が違いますね、是非作成者が知りたいんですが」
「そいつに気付いたか、その剣を作った奴は知り合いの魔族だ」
此方の問いに答えたジャンクさんに更に詳しい話を聞いてみると、どうやらランカークス村の近くに住んでいる魔族がいるそうだ。
その魔族は鍛治師でもあるようで、名前はロン・ベルクというらしい。
どんな相手であるかは、実際に会ってみれば分かるだろう。
ジャンクさんに案内されて向かった先で、対面した魔族は顔に特徴的な斜め十字の傷があり、真っ昼間から酒瓶を片手に持っていた。
そこだけ見れば単なる酔っ払いだが、酒を飲んでいてもロン・ベルクは完全には酔っていない。
それでも全くやる気が感じられない顔をしていたロン・ベルクだったが、俺とダイが装備している剣を一目見ると「おい!その剣をよく見せろ!」と完全に目の色を変える。
言われるがままに鞘から抜いた「ダイの剣」と「メタルキングの剣」をロン・ベルクに見せてみた。
「神の作りし剣すらも越える剣が此処にある!絶対に折れぬ剣を作れる奴がいるとはな!」と言うロン・ベルクは剣を見ただけで完全不壊にも気付く。
「しかもこの剣達が作られたのは最近で、作成者はお前だな」
此方を見て言ったロン・ベルクは、俺が剣を作ったことにも気付いたようだ。
「名を聞かせてもらおうか」
「ソル」
「ソルか、覚えたぞ。それで何をしに此処まで来た?鍛治師ならソルだけで間に合ってるだろう」
純粋に疑問に思ったことを聞いてきたロン・ベルクに 、俺は「貴方と鍛治師として話がしたいと思って此処まで来たんだ」と嘘をつかずに正直に答えた。
此方を真っ直ぐに見たロン・ベルクは「嘘は言っていないようだな。確かに俺も鍛治師として、お前と話してみたいとは思った」と言うと「酒は飲めるか?」と続けて聞いてくる。
「飲めるが、酔えないぞ」
「そいつはいい。幾ら飲んでも酔い潰れないなら聞きたいことが全部聞けそうだ」
そう言って笑いながら酒瓶を放って、軽く投げ渡してきたロン・ベルク。
互いに酒を飲みながらロン・ベルクと鍛治師としての話をしてみると想像以上に盛り上がり、丸一日語り明かすことになった。
その後、鍛治師として意気投合した結果、技術交流や互いに技法を教え合うことにもなったが、お互いの技術が向上したのは確かだ。
自分の全力には並みの武器では耐えられないという点も、俺とロンは共通していたな。
鎧化の技術をロンに教えてもらった礼として、完成していない星皇剣を完成させる手伝いをすることにした。
残っていたメタルキングの素材を使用して魔界の名工と共に作成していった2本の剣。
完全不壊だけではなく、相手を斬る度に持ち主を癒す効果と、柄を握っていると発動する常時回復効果も付与し、魔界の名工と協力してついに完成させた星皇剣。
壊れることのない完成した星皇剣なら、ロンが星皇十字剣を放っても問題なく耐えきれる。
これでロンも本気を出せる筈だ。
鍛治師として良い仕事をした後は、気分が良いな。
確かにランカークスでは良き出会いに巡り会えた。
教えてくれたメルルにも感謝しておくとしよう。
ちなみにザムザは本当にザボエラの息子で、ダイの大冒険の原作では超魔生物に変身します