【完結】この銀翼は後退れない――あるいは戦闘機でこの先生きのこれるか――   作:河畑濤士

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次回更新は7月29日を予定しております。



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■29.FF-7Bst(2)

 

 北米打通作戦“クロスロード”。

 

 前述のとおりジオン地球攻撃軍は第2次降下作戦によって旧アメリカ東海岸、西海岸の双方を占領し、政治的・軍事的拠点を手中に収めることに成功していた。が、結局のところは点と点、線と線の支配にすぎず、なおかつ地球連邦軍北米方面軍の諸隊は緒戦の混乱の中でも独自の判断で降伏せずに徹底抗戦を決意――その後、ジャブローとの連絡を再開しつつ、陸路・海路・空路から補給を受けて、頑強に抵抗を続けていた。

 そこでジオン地球攻撃軍は北米中央部に増援を軌道上より投入することを決定、それに呼応して東海岸と西海岸の2個軍団が前進し、両軍団間の連携を可能とするための北米打通作戦が発動された。

 この北米打通作戦だが、成功すれば東海岸・西海岸の陸上連絡線が確立すると同時に、東アジアからベーリング海峡を経由する地球連邦軍の有力な補給路を断つことが可能になる。

 勿論、リスクはある。北米中央部に軌道上からの強襲突入が行われるとはいえ、作戦の主力は東海岸と西海岸の占領部隊だ。もしも作戦中に大損害を被れば、“現状維持”さえ厳しくなる。

 が、この点、彼らは楽観的であった。彼らは兵站に不安を抱えているものの、戦略単位で動く攻勢作戦は最終的にはすべて成功させてきた。正面装備のぶつかり合いならば、絶対に負けないという自信があったし、MSを中心とする機械化部隊を支援する戦車部隊や攻撃空母や戦闘機といったエアカバーも万全だった。

 

「え」

 

 故に薄桃(はくとう)の光が一閃したとき、北米戦線のジオン軍将兵は唖然とした。次の瞬間、正面装甲に膨大な熱量をぶつけられた地上戦仕様ザクⅡは赤熱する破片をばら撒き、爆炎を噴きながら、轟ッ、と音を立てながら仰向けに倒れた。

 強力な電子攻撃によって機能を喪失していた対空機関砲塔搭載型マゼラアタックが、メガ粒子砲の狙撃を受け、砲塔をびっくり箱のように空中へ噴き上げる。逃げ惑う将兵をメガ粒子の束が薙ぎ、砂煙が舞い上がった。その砂煙を吹き飛ばして、減衰してもなお強力なビームが翔け、突然の出来事に硬直していたザクⅡの頭部を焼き潰した。

 

「メガ粒子砲――!?」

 

 空を仰げば、目立って見えたのは敵影ではない。十数本のビームを浴び、主翼を失い、火焔と黒煙を噴きながら下降していく巨影――満身創痍の攻撃空母ガウの姿であった。遅れてパッ、パッ、と火球が生まれる。これは制空戦闘機ドップが、メガ粒子の擦過によって一瞬で爆散していくさまであった。戦闘機にさえ回避を許さない。亜光速というには遅いが、超音速というには速すぎる、発射されてから回避するには困難の一撃。

 

「敵の航空要塞か!」

 

 奇襲を受けた機動師団の幹部たちは、誰もがそう思った。連邦軍もまたメガ粒子砲を搭載した攻撃空母ガウのような巨大航空機を戦線投入してきたのだ、と。それが昨日までの常識だった。熱核反応炉とそこから供給されるミノフスキー粒子を加工して放つメガ粒子砲、その戦闘システムは艦艇でなければ搭載できないほどのサイズであり、小型化しても攻撃空母ガウに収められる程度にしかならない。

 

「違う」

 

 が、1機の戦闘機がMSを傷つけて絶望の淵にあったひとりの人間を蘇生させ、ふたりの人間の奮闘が時間を稼ぎ、数千の将兵が操る艦艇が戦果を挙げ――そのすべてが本来ならば死んでいた人々を救った。

 その結果が、いま彼ら侵略者の眼前に顕現した。

 

 一閃するビーム。

 それに遅れて現れる、赤、白、青の色彩。

 主翼と尾翼に青い星を描いたひとつの機影が、地を這うように突進する。

 

「奴らビーム砲を戦闘機に――」

 

 120mmザクマシンガンを構えていたザクⅡの上半身がメガ粒子の奔流を浴び、次の瞬間には頭部ユニットを大空へ噴き上げながら爆発四散する。超低空にもかかわらず力任せの超音速で翔け抜けていく青い星を、ジオン軍将兵は見送ることしかできない。

 否、見送る余裕などない。

 降り注ぐメガ粒子砲の連続射撃。

 しかも凶悪なのはコア・ブースターのメガ粒子砲は、“弾切れ”までかなり余裕がもてることであった。コア・ブースターはコア・ファイター側の小型熱核融合炉2基に加えて、拡張部分に備えられた熱核融合炉によってミノフスキー粒子を生成し続けることが可能であり、それをメガ粒子に加工してビーム砲へ供給できるようになっている。つまりメガ粒子の使用量に供給量が追いつかなくなるまで戦闘が可能であり、コア・ブースターは実体弾に頼る従来型の戦闘機よりも、遥かに継戦能力が向上していた。加えて熱核ジェットエンジンと熱核ロケットエンジンを併用するコア・ブースターの航続距離は極めて長い。

 

「粘着してくださぁああい! 敵が全滅するまでぇえええ!」

 

 とは癖原少佐の言葉であったが、確かにそれが可能なだけのスペックがあった。

 

◇◆◇

 

 とはいえ、万全万能の兵器というものはこの世には存在しないものである。

 

「なんですかぁあああ! このレポートはぁあああ!?」

 

 ジャブローに研究のための一室を与えられた癖原少佐は、言いながらも何が起きたのかを理解していた。航空宇宙第1統合戦闘団をはじめとしてコア・ブースターの先行運用をはじめた部隊では、メガ粒子砲の故障が相次いだ。故障の原因は、熱核融合炉からメガ粒子砲に至るまでのシステムではなく、メガ粒子を放つ砲身まわりにあった。

 

(現行のシステムと出力で大気圏内運用すると、砲身命数が短くなりすぎるんだ)

 

 癖原少佐は天才であり、即座に直接的原因の候補に思い至る。

 発射直後から膨大な熱エネルギーを有するメガ粒子のビームを大気圏内で放つと、即座に周囲の空気をプラズマ化させる。どうやらその熱量に砲身や発射基部が耐えられないのではないか、というのが彼女の推論である。

 

(勿論、予想していなかったわけじゃない)

 

 だが癖原少佐が思い描いていた一戦闘における発射回数と、実際の戦闘における発射回数にはかなりの隔絶があった。

 

「おい涙ふけよ」

 

 偶然にも別の用件で居合わせたクローバー・ボー・セブン大尉が、“ぬ”を大量に印字したぬのハンカチを差し出すのを彼女は無視して、「これはぁあああ! まず使用制限(リミッター)をかけるべきですぇえええええ!?」と叫んだ。

 

「使用制限なんか守られるわけねえだろぉ!」

 

「じゃあどうすればいいんですかぁあああ!」

 

「うるせぇええええええええええええええ!」

 

 と叫びながら、クローバー・ボー・セブン大尉には幾つかの解決策があった。

 

 その代表的な案のひとつは、砲身が故障したとしても、整備工場に送らずに簡単に交換できる仕組みにすることだ。いま問題になっているのは、コア・ブースターのメガ粒子砲が固定武装であり、さらにジェネレーター直結型だからというのが大きい。だから具体的には“携行火器”にしてしまう。たとえば彼が開発に携わるMSに使わせるのであれば、ライフル形状にしてしまえばいい。自動小銃に弾を込めるイメージで、メガ粒子はパッケージ化して外部から補給しなければならないが、故障しても母艦に戻ればすぐに交換できる。

 陳腐な名前だがビーム・ライフル、といったところか。

 しかしこれを戦闘機に使わせる、となると――。

 

「やっぱ戦闘機にも腕が必要じゃねえか。あとは有線分離型ガンバレルとかもいいか」

 

「ギャグを言ってる場合じゃないんですよぉおおお!」

 

「こっちは真面目だっつうのぉおおおおおおおおお!」

 

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