なぁAFO……ラプラスの悪魔って知ってる? 作:YY:10-0-1-2
試合開始直後、轟君の取った行動はやはり開幕に全力で潰してくること。
超巨大な氷塊が観客席すらも覆い隠していた。
だけど、そんなもので僕がやられるわけが無いだろう?
氷は、意外に硬かったりする。
だからこそ、僕も全力……それも、
だから、だからさ……!
「君も、全力で来てね…!」
僕の声は、小さく、轟君には聞こえていないだろう。
だけど、僕は、この思いが伝わってくれることを願うばかりであった。
■
『どうなった?! 何にも見えねぇぜ!!』
すると、轟は羅符素のことを目視する。
超巨大な氷塊の上に、立っている羅符素を。
「いきなり潰してくるとは……もし僕が全力でジャンプするのをしてなかったら、負けてたかも」
『立っているゥゥ!!! 筒美が立ってるぞ!! すぐそこに!!』
羅符素は、氷塊からの高みの見物……もとい、轟を見下ろしていた。
「だけど、愚策じゃない?」
その言葉を
羅符素は拳を既に振りかざしていて、轟の顔にクリーンヒットさせる。
「緑谷君との試合、見てたよ。君にも、事情があるんだろう?」
轟は沈黙する。
だが、それを気にしないように羅符素は続ける。
「僕だって色々あるよ。だけどさ! それをここで出さないでくれるかい!?」
「……!」
羅符素の言葉に緑谷を思い出す轟。
轟は氷を出して、羅符素から距離を置こうとして、置けなかった。
その氷は、羅符素によって壊されているからだ。
「緑谷君が言ったように、僕達は皆全力でやってる!! だからさ!!」
轟の腹に蹴り込む羅符素。
ちっ、と舌打ちする轟にさらに突撃して体当たりを食らわせる。
「だからせめてさ! 笑おうよ!! 全力で楽しもうよ!! この試合を! 体育祭を!!!」
「……るっせぇ!」
「捕らわれるなよ!! 僕にはその事情がどれだけ深刻なのか知らないし、知られたくないだろうし!!」
轟の氷を次々に破壊していき、顔面に蹴りを入れ込む羅符素。
だが、轟もタダで食らうわけなく、何とか腕をクッションにして、威力を減らしていた。
そして、決め手となる技を決めるために、羅符素は因果律を見る。
それを見て轟はマズイと心の中で呟く。
地面を抉るほどの蹴りを地面に放ってから、肘打ちを腹に決める。
だが、轟は吹っ飛んだものの、氷を後ろに置いて、場外に出ることは無かった。
しかし、ダメージはあり、ゲホッと咳き込んでいる。
「君に言ったぞ!! 僕も負けないって!! 君も負けるなよ!!!」
キュルルルルと右目の魔法陣が回転する。
因果律を見るということは、それ即ち「現在の状態を完全に指定すればそれ以後の状態はすべて一義的に決まる」、簡単に言えば「こうすれば、そうなる」と言った奇跡の状態を見れる。
彼の見ているものは、その因果律だ。
轟がどう避けるのか、どう躱すのか、どう対処するのか、それを全て見れる。
つまり、
「セリャァァァ!!!」
リミッター上限値20%にも満たすかも分からない拳を全力で振るう。
それが轟の顎を掠めるようの当たる。
「っ…!」
轟君は膝をつき、倒れ込む。
勝機が見えた! と羅符素は轟のことを持ち、全力で場外へとぶん投げる。
だが、脳震盪しているはずの轟は氷を壁のように使い、ズザザと氷を滑って羅符素を殴る。
ゴロゴロと転がり、立ち上がるも息が上がっている羅符素。そして、脳震盪のせいで膝をついている轟。
お互いの出せる全力をぶつけ合い、そして、認め合う。
格段に強いと。
「……これが最後だ…轟君!」
腕を噛み、ブチブチブチと血管が浮かび上がり、髪が逆立つ。
轟もそれを見て、全力を出そうと左手を握る。チラッと炎の発する熱が観客席にまで届く。
先程の爆発を見せるのか……! と観客達は身構え、そして羅符素は走り出す。
「ォォォォォォォォオオオオオオオオオ!!!!!!」
だが、轟はそれを見て━━━……
「…悪ぃ」
そう呟き、炎を消して氷の壁だけを作る。
SMASH!! と大きな爆音がなり、辺りに小さな氷塊がキラキラと雪化粧のように舞う。
『お前のクラスマジでどうなってんだよイレイザー……っつうか決着ついたのか!?』
『今見えるだろ』
ステージに立っているのは、拳を震わせて悔しそうな顔を浮かべる羅符素の姿と、場外に出ていた轟の姿だった。
『轟焦凍場外…!! 筒美羅符素が決勝進出だぁぁ!!!』
はぁ、はぁと息切れをしている羅符素は、轟の方に近づく。
そして轟の腕を自分の肩に回し、立ち上がらせる。
「…最後、炎消しちゃったね」
「…」
轟は黙りこみ、羅符素はそんな轟を見て、少しだけ微笑んで言った。
「楽しかったよ!」
轟はそんな羅符素の顔を見て、顔を俯かせた。
■
「ん!!(決勝進出だよ!!)」
「そうだね。ありがとう」
「すげぇな、あんな奴に勝つなんて」
「いや、あれは…甘えなのかもしれない」
出張保健室で腕を診てもらっていた僕。その付き添いで来てくれた2人。
そう、唯と心操君だ。
唯は僕のことを褒めていて、心操君はそう呟いた僕のことを不思議そうに見ていた。
最後の炎。消してしまったのには、やはり理由があるのだろう。
あぁ、ムシャクシャってよりも、不甲斐なさってよりも、モヤモヤした気持ちがなぁ……。
「うん! 大丈夫! 僕なら勝てる!!」
「ん!!(その意気!!)」
「張り切りすぎだろ…」
心操君は気だるそうに頭を掻いてそう言う。
「それと、お前なんだよあの威力」
「え? ……あぁ、あれ?」
氷の壁を破り、全力で轟君をぶん殴るために拳を握ったのはいいんだが……。
「僕も感情が上がりすぎて、つい……」
「ついってレベルの威力じゃねぇからな……?」
「…上がるのは言いけれど……次、あの威力を放ったら
僕は自分の腕を見て、リカバリーガールの言った言葉を考える。
次……か。
僕の右腕はもうボロボロだな。怪我のしすぎだ。
骨折のし過ぎはいけないな……。筋力低下にも繋がってくるかもしれない。
「次は、壊さない程度に…!」
僕はそう呟いて拳を握るのであった。