なぁAFO……ラプラスの悪魔って知ってる? 作:YY:10-0-1-2
「短い間でしたが、ありがとうございました!」
「んだよ、もう行くのか? まだ休んでりゃあいいのによ〜」
「いやぁ、そういう訳には行かなくって……」
ミルコさんの家の前でお礼を言ってから苦笑いを浮かべる。
事実、いまバッグに入れてる携帯が恐ろしいほど震えを上げているのだ。もはや振動でバッグだけ震えている感覚に陥るぐらいの。
ミルコさんは、頭をポリポリと掻きながらくぁ、と欠伸をする。
「まぁ、私のやった事は少ししかないけどな」
「いえ、十分教えてもらいましたよ。脚の使い方とか……」
僕がそう言うと、ミルコさんはニヤッと笑う。
「それで、何のためにヒーロー目指すか、決まったか?」
その答えは、等に決まっていた。いや。決まったと言うべきか。
「今回の件で、僕はステインに立ち向かいました」
けれども、緑谷君も、飯田君も……傷ついてしまった。
僕は大した怪我を負わなかったから、いいけれど、飯田くんは左腕に後遺症が残ってしまったらしい。
「だから……もう、誰も傷つかせない……誰かが危険な目に遭う前に救うようなヒーローを目指します」
「へぇ、いい夢じゃねぇか……やるからには絶対ぇ叶えろよ!」
「はい! ありがとうございました!!」
ミルコさんからの言葉に背中を押され、僕はニッコリと笑顔を浮かべてミルコさんの元を去るのであった。
「で、なんで母さんからの電話で唯がいるのかなぁ……」
『ん! ん!!!!(そんなことどうでもいいよ! 大丈夫だったのか聞いてる!!!!)』
「う、うん! 大丈夫だったよ! 目立った怪我はなかったから!」
僕は、電車に乗る前に母さんに電話しておこうと思い、電話をかけたのだが……実際に出たのは唯だった。なんで?
その後、母さんの声が聞こえてきた。
『なにか事件に巻き込まれないと気が済まないのか?』
「いやぁ、今回は偶然だよ……心配かけてごめんなさい……」
『もしも何かあったら私はすぐには行けない。それに、公安の目があるのも分かってるだろ?』
公安……か。
僕もプロヒーローになったら公安所属になるのかな?
『とにかく、今回は無事で良かったよ。強くなったな』
「……はい…!」
『ただし、帰ってきたらすぐに特訓だからな。思い上がるな?』
「感情がジェットコースターだったりする!?!?」
どうやら、帰っても僕は修羅場らしい……。
『ん……(後で話しね……)』
小さく唯が呟いてから、通話が切れた。
なんだろう……。
■
家に帰ってくると、鬼のような形相の母さんが立っていた。
その後、胃酸を吐くぐらい特訓させられてから、夕食を食べて……。
唯に連れられて近くにある公園に来た。
母さんに内緒で外に出たなんて…バレたら殺されるかもしれないけど。
今の僕は、そんな事を考えている場合じゃなかった。
「……唯」
「ん……(心配した……)」
唯は、小さく言った。
「ん…(居なくなったら、どうしようと思った…)」
「ご、ごめ………」
僕は謝まろうとして、止めた。
唯は、その目にウルウルと涙を貯めて、僕を見ていた。
「……今回の件は…本当にごめん。土下座してもし切れないぐらい、心配掛けさせちゃった……」
「……ん(……うん)」
「でも、唯……君を泣かせる気はなかったんだ」
唯は、僕の言葉に涙を流し、手で涙を拭く。
僕は近づいて、唯のことを抱きしめる。
「ごめん……本当にごめん。もう、心配掛けさせないから…」
「……ん…!(……約束してね…!)」
「うん。約束する」
僕は、静かに泣いている唯を強く抱きしめる。
もっと、力があれば楽に勝てたのだろうか? もっと頑張れば心配かけさせる事も無かったのかな?
僕は、自分で自分に問う。
唯は、泣き終わったらしく、僕の体に手を回す。
えっと……?
「ゆ、唯……?」
「……ん(……心配かけさせた罪)」
「……そうだね。でもさ、流石にやばいよ……男女二人、しかも人気のない公園、夜。整っちゃってるんだよ……!」
僕が言うと、唯は顔を少々真っ赤にする。
やめてくれ! そんな顔しないでくれ! 僕耐えれなくなっちゃうから!
「……ん(……暫くこのままね)」
「ううん? さっきの話聞いてたかな……?」
僕は唯を見る。
唯は、こちらの顔を見て、ニッタリと笑う。
どうやら、僕の言葉は、虚しくも夜空に消えていったらしい。