お前のミスでした   作:せんせいすこ

2 / 2
どうして?

「ちょっと、どうしたの?すごい顔してるけど」

「あぁ、ごめんごめん、ニュース見ててびっくりしちゃっただけ」

 

そりゃあすごい顔にもなる。なんで対策委員会編で先生が負傷してる?何があった?どのタイミングで?アロナバリアは?疑問は尽きない。記事を隅々まで読むが当たり障りのないことしか書いていない。

 

一緒に下校していた友達と別れ、情報を探す。ニュースに載っていないならSNSだ。思いつく単語を次々に検索していく。シャーレ、先生、アビドス、怪我、風紀、便利屋、カイザー、⋯⋯

 

見つからない。さすがに戦場で悠長にスマホを触ることは無いか⋯⋯。

しかしどうにか情報が欲しい。SNSでもダメとなると⋯⋯アレしかない。

ここはアビドスの皆に倣うとしよう。

 

 

翌日、地元から電車に乗って1時間ほどして着いた場所は、一見すればただの雑多な繁華街だ。しかし目に入る街頭広告はヤバそうな武器屋や金貸しの広告など怪しげな物が殆どであり、更に道行く人は皆顔を上げずに目だけで周囲を観察するようにしながら歩いている。

というわけでやって来ましたブラックマーケット。ここなら何かしらあるだろうと踏んで来てしまった。具体的には情報屋とか。たださすがに情報屋がわざわざ「情報屋です!」と書いて広告を出すわけもないので、どう探したものか。

そんなことを考えながら宛もなく歩き回っていると⋯⋯

 

タタタタタタタタン!!

「おい待てコラァ!!!!!」

 

ん?

 

「う、うわああああ!ついてこないでくださいー!!」

 

おっとこれは⋯⋯。

 

「そうはいくか!こないだはよくもやってくれたなぁ?!」

「ごめんなさいー!!」

 

ほんとに懲りないんだな⋯⋯あの娘⋯⋯。

でも今は彼女のそのクセの強さに感謝しなくては。

 

「はぁ⋯⋯ひぃ⋯⋯!どうしてこんなことに⋯⋯っ?!わわわっ、そこどいてくださいー!!」

 

探していた情報源が向こうから走ってきてくれたのだから。

 

 

「ふぅ⋯⋯た、助かりました⋯⋯」

「なんとかなって良かったね」

いや本当に。なんとかなってしまった。銃の扱いなど私が知るはずも無いのだが⋯⋯。仮にもブラックマーケットの不良達を不意打ちとはいえ鎮圧できてしまったのだ。体が覚えていたとかそういうヤツだろうか?

「と、とりあえずこの場を離れましょう!他にも人が来るといけませんし⋯⋯!」

「そうだね、あっちの方に行こうか」

 

阿慈谷ヒフミ。トリニティ総合学園の2年生で、現在は帰宅部。基本的にはこのキヴォトス全体を見ても珍しいくらいの常識人であり、とても温厚な人物である。本人曰く「平凡で普通な生徒」。

だがそんな彼女もやはりキヴォトスの住人らしく一癖ある(一癖の範疇には収まらないかもしれない)。

彼女はこのキヴォトスに流通するマスコットキャラクターシリーズ、モモフレンズの1匹である「ペロロ」というキャラクターの重度のマニアなのだ。なぜそんな趣味の1つが特筆するようなことになるのか?その理由は彼女のペロロ⋯⋯いや、ペロロ"様"に関わる事象に対して発揮される行動力にある。彼女はペロロ様の為ならばなんでもしてしまうのだ。例えそれが学校の校則であっても、留年に関わるような定期試験であっても、限定ペロロ様グッズを手に入れるために並んでいる他の客であっても、彼女にとっては障害にはなり得ない。そのことごとくを無視ないし排除してペロロ様に辿り着こうとする。

 

そう、だから今日もこの敬虔な信徒は貴重なペロロ様グッズを手に入れるためにブラックマーケットに足を運び、その結果不良に目をつけられて追いかけられていたのだった(n回目)。

 

「あらためて、ありがとうございました!あなたのおかげで、また学園に迷惑をかけずにすみました⋯⋯」

 

そう言う彼女の表情は反省の色をしているが、これで懲りるなんてことはないだろう。

 

「どういたしまして、そう言って貰えると助けた甲斐があったよ。それにしても、何回もこんな目にあってるのによくこんな所に来る気になるね?」

「い、いやぁ、あはは⋯⋯って、あれ?どうして私が前にもここに来ていることを⋯⋯?」

「そりゃあ見てたもん、前に貴女が不良達に追っかけられてるところ」

 

もちろん嘘である。

 

「み、見られていたんですね⋯⋯はい、お恥ずかしながらその時も他の生徒さんに助けて貰ってしまって⋯⋯」

「まぁ、ブラックマーケットにわざわざ来るなら、ちょっと襲われたくらいじゃ諦められないような理由があるだろうしね。かくいう私もそうだけどさ」

「そうなんですか?」

「うん。私は⋯⋯情報屋。そう、情報屋なんだよね。だからここには探してる情報があってきたの」

 

これも一部嘘である。

 

「なるほど⋯⋯」

「それでね?貴女に1つ聞きたいことがあるんだよ」

「わ、私にですか?分かりました、先程は助けて頂きましたし、私に答えられることなら⋯⋯」

「ありがとう!それでね、聞きたいことって言うのが⋯⋯」

 

ここで少し賭けに出る。阿慈谷ヒフミが以前もブラックマーケットに来ているのは彼女の発言からほぼ確定していたが、今から聞くことは私の知っているストーリーから外れているこの世界では起こっていない事かもしれない。それはそれで確認ができるが、さて⋯⋯。

 

 

「前に貴女がここで襲われた時、大人の人も一緒にいたよね?」

 

 

「!⋯⋯はい」

 

ビンゴ!だが少し表情が曇ったような⋯⋯。

 

「そう、聞きたいのはその人のことなの。その大人の人は、多分この間赴任してきた時に少し話題になった、先生⋯⋯だよね?」

「⋯⋯はい」

「⋯⋯それで、その先生について昨日もニュースが出ていたんだよね。先生が負傷したって」

「⋯⋯⋯⋯は、はい⋯⋯」

「⋯⋯先生が負傷した時の状況とか、もし貴女が知っていたら聞きたいんだけど⋯⋯だ、大丈夫?」

「は、はい!問題、ありません⋯⋯」

 

⋯⋯これは思ったより深刻そうだ⋯⋯。

 

「そ、そっか。なら良いんだけど⋯⋯それで、知ってる?先生に起こったことについて⋯⋯」

「⋯⋯知っています。先生が、どうして怪我をしてしまったのか。⋯⋯と、言うよりも⋯⋯」

「⋯⋯言うよりも?」

「あれは⋯⋯あれは、わ、私のせいで、私のせいで先生が⋯⋯う、うぅ⋯⋯!」

 

 

⋯⋯本当に、何が起こったんだ⋯⋯?

 




評価と感想ありがとうございます、次が書け次第更新していきます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。