「右がリータスで、左がノーチェ」
ヘルゴンザの言葉に、二匹のイーブイは「ブイブイ」と抗議するように泣いた。
「ノーチェ」
レオが名を呼ぶと、右のイーブイが返事をする。
「リータス」
今度は、左のイーブイが返事をした。
それを見て、ヘルゴンザは頭を抱える。
「見分けがつくわけねえだろ。どっちも同じようにしか見えねえ」
「よく見ると違うぞ」
「どこが?」
ヘルゴンザは、まじまじとノーチェとリータスを見比べる。
「ノーチェの方が1センチ背が高い」
「誤差の範囲じゃねえか?」
「0.2~0.4キロの範囲で重い」
「誤差だろ!!!!」
そんなもの見て、わかるわけがない。
「リータスの方が少し長毛だ」
「それも誤差にしか思えねえ。触っても分からねえよ」
軽く撫でてみても違いが判らない。おとなしく撫でられているノーチェとは裏腹に、リータスは不機嫌そうに『ブイブイ』と鳴き声を上げる。
「毛並みは全然違うってさ」
「……わからねえ」
ほかに見分ける方法はないのかと問えば、レオはしばらく考え込んでから口を開いた。
「ブラッシング用のブラシを手にしたとたんこっちに来る方がリータスだ」
「つまり、リータスの方が身だしなみに気を使ってると」
「リータスは、俺が泥だらけになったり、機械油まみれになっていると絶対近づかない。ノーチェは気にせず甘えてくる」
つまり、ノーチェの方が可愛い性格なのかと、ヘルゴンザが思ったその時
「ヘルゴンザに悪戯しようとすると、一緒についてくる方がノーチェ」
まったく可愛くなんてなかった。というか、そんなことをしていたのかと、レオの頭を小突く。
せめてどっちかがメスだったら、しっぽの模様でどっちがどっちがわかるだろうに、あいにくと両方ともオス。尻尾の模様の違いも判らない。
なのに、レオは一目でどちらがノーチェでどちらがリータスか見分けることができるのである。他の団員は目の前のイーブイがノーチェなのか、リータスなのか、まったく見分けがつかない。
「ノーチェは少し野性的な顔立ちで、リータスのほうが少し上品で中性的な顔立ちだ」
「……どっちも可愛いイーブイにしか見えねえよ」
くりくりした大きな目と小さな鼻と口が配置された顔はどう見ても可愛らしいポケモンそのもので、野生的だの上品だのと言われても全くわからない。
「ヘルゴンザの口から可愛いって言葉が出ると、なんか変な感じするな」
レオの言葉に、イーブイ二匹も『ねー』というように顔を見合わせた。