おじさんが旅する話   作:タラバ554

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おじさん、ヒロアカに流れ着く

生存報告って事で一つ


おじさんが旅するだけの話

響く轟音

揺れる地面

 

場に似つかわしくない歌声が聞こえる。

 

う~み~はひろい~な おおき~い~な~

つ~き~がのぼる~し ひがし~ず~む~

 

まるで戦争のただ中の様な光景の中で男が唄う童謡が響く。

 

う~み~はおおな~み あおい~な~み~

ゆ~れて どこま~で つづく~や~ら~

 

誰もが知る有名な童謡

それがある男が到着したというサイン

 

う~み~におふね~を うかば~し~て~

い~ってみたい~な よその~く~に~♪

 

童謡を歌い終わる

時間にして2分も無い

そんな短い時間でその場で起きていた事件は全て解決していた。

 

これは拗らせたおっさんが旅をしてフラグを圧し折る物語である。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

話は男が死ぬところから始まる。彼は奇妙な道程を辿っていた。

輪廻を繰り返す度に記憶、経験、能力を引き継いで生まれ直す。

男が知る普通な世界もあれば、何かが特出した世界に生まれる事もあり様々だ。そんな中でも今回生まれた世界は殊更特殊だった。

生きる人の大半が程度の差はあれど特殊な能力を有した世界。

能力が個性と呼ばれ異能が日常になった世界。

 

そんな世界に無個性として生まれた所から話は始まる。

 

 

 

「勤続年数50年……ついに俺も今日で退職かー。社長、お世話になりました」

「いやいや、こっちこそだよ。中真君居たからウチの会社が存続出来た事が何回もあったし」

 

会社で開かれた慎ましやかな送別会の席で社長と昔話に話を咲かせながら酒を飲む。

 

「それで中真君はこれからどうするんだい?」

「いやー、もういい歳だし、家族も居ないから余生はふらふら旅でもしながら暮らそうかなと」

「いいねぇ、ボクもそんな風に出来たら良かったけど若くないし」

「なーに言ってるんですか。俺よか10コ下なんだからまだまだでしょ!」

「それ言われると困るねぇ」

 

年配同士で年の差トークしながら余生の過ごし方を話し合う。

 

「ヒソヒソ(えっ、中真さん……幾つなんですか?)」

「ヒソヒソ(あれで75超えてる)」

「ヒソヒソ(え”!? そういう個性っすか?)」

「ヒソヒソ(いや、あの人無個性だぞ)」

「ヒソヒソ(えぇー……どう年上に見ても30そこらでしょ……)」

 

滞りなく送別会は終わり会社から出る。会社の駐車場に止められた乗用車に乗り込み一度自宅へ。

帰って寝るだけの家。田舎の戸建て。自分の城。

精神年齢バグって感覚が変になったけど一般人的行動はシュミレート出来てる……はず。

良い年齢まで働いたし、後は気楽に暮らして適当な年齢でおっちねば良い。そういや一時期会ってた飛行少年は今頃何してるんだろ?

彼に会うのも良いかもな。

そんな事を考えながら用意してた地図に向けてダーツの矢を放つ。

行先は……静岡!

車のキーを回してアクセルを踏む。いざ行こう! ガンダムとガンプラの聖地へ!

 

 

 

数日かけて静岡に着いた。

福岡から静岡まで下道で色々と寄り道しながらなので結構な時間が掛かったがその分色々な出会いがあった。

旅は良い。ゆったりと過ごす時間もそうだしちょっとした人助けも気分が良い。

これで隣に居るのが美人とかなら更に良いが現実は顔を顰めた警察官である。

 

「そうは思わんかい? 警察官の君」

「……本当に76歳ですか?」

「運転免許証にちゃんと書かれてるだろ。生年月日」

「そう……ですね」

「んじゃ、もう行って良い?」

「いやいや、その……個性の無断使用の方は……」

「一緒に見せたやろ、診断書。おじさん無個性よ」

「……」

 

そんな苦虫噛みつぶした様な顔されてもなぁ。

 

「ちょいと悪さしてる子を叩いただけやぞ? まぁ手を出してる点は間違いないけど逮捕ってレベルじゃなかろうて」

「いや、そうじゃなくて」

 

警察官は言葉に詰まる。何せ目の前の見た目が年齢にそぐわない老人が殴り倒した相手は連続殺人を行っている凶悪犯の『マスキュラー』

プロヒーローと警察が連携して市民の避難誘導をしている最中に何処からかふらりと現れてマスキュラーを殴り飛ばしたかと思えば負傷して命の危うかったヒーローを治療してしまった。

助けられはしたが個性の無断使用は分類的に法律違反。その為警察としても連行が必要になるが目の前の人物が見せて来たのは身分証明書と無個性の診断書。

 

「兎に角、おじさんは無個性だし暴れてる子を叱って止めただけだから別に悪い事はしてなかろう?」

「それはそうなんですが」

 

書類上何も悪さをしてない人物を若い(中年)の警察官は止める事が出来なかった。

どう書類を提出するかと頭を悩ませる事になるがありのままを提出すると意外にすんなり書類が通り肩透かしを食らう事になる。

後々知る事になるが『N案件』として扱われるソレは全国各地で偶に発生するのだと上から教えられた。

 

「ところでお兄ちゃん」

「はい?」

「ガンプラ工場ってあっちで合ってる?」

「えっと……この国道を……」

 

おじさんはカーナビをあえて使わない旅が楽しいと思う。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

何かふらふらしてたら工場到着まで1年以上かかった。だが! 遂に来たぞガンプラ工場!!

途中で変な村寄ったり子供の話聞いたり半グレにビンタしたりもあったが……警官にお縄になってないからヨシ!

 

「あの~、先日工場見学の予約した中真ですが」

「いらっしゃいませ。本日の見学は中真様のみですので直ぐにご案内しますね」

 

ガンプラ工場は非常に面白かった。あんな繊細な代物が一度に大量に作られる様は何故にこうも心に来るのか……おじさんがどれだけ年を取っても男の子って事なのだろうか。

工場でお土産のガンプラを大量購入し、工場案内してくれた職員さんにお礼としておじさんお手製の掌サイズのAI搭載型ガンダム(コントロールデバイス付き)をプレゼントして次の目的地をダーツで決めようとしたがダーツの旅やるならもうちょっと精度の高い地図が欲しい。

というか自分で場所検索するのが今更面倒になった……アプリが欲しい。

 

「うーん、この辺でそーいうの売ってる所あるか?」

 

車に購入したガンプラを積んでからキーを回す。こーいう時は電気屋に行けばあるし、無くても店員が教えてくれるのだ。

 

 

 

「っちゅー訳で、ダーツで当たった土地の名前とかが詳しく見れるアプリとか無い?」

「うーん……、でっけぇモニターになりますけど連動してる奴なら……」

「おっ、ソレいいじゃん。それで良いよ」

「えっ、でもデケーっすよ?」

「良い良い。いくら?」

「〇万っすね」

「買うわ」

「あざーっす」

 

町の電気屋というのも案外悪くない。欲しいと思ったモノがピンポイントで見つかるとめっちゃ嬉しい。

るんるん気分で何か食べようと商店街を歩いてると何やら聞こえてくる。何かの破裂音。

商店街で買ったコロッケを片手に進むと何か泥っぽいのが爆発しとる。あと野次馬多数。

 

「んー、なぁ」

「危ないから下がって!」

「いや、あの子助けんのか?」

「この場に居るヒーローじゃ個性の相性が悪いんだ! 相性の良いヒーローが直ぐに来る!」

「ほーん……」

 

首をコキコキと鳴らす

 

あんたが~たどこさ ひ~ごさ

ひ~ごどこさ く~まも~とさ

 

腰を捻って身体を動かす準備

 

せん~ばや~まに~は た~ぬき~がおってさ

それ~をりょ~うし~が てっぽうでうってさ

 

少し沿ってから一歩飛ぶ

 

にてさ

 

おじさんと同時に飛び出す少年が居た

 

やいてさ

 

そんな少年が泥に近づく前に頭上から拳を振り下ろす

パンッ!

という音と共に泥の大半が捕まってる少年からはじけ飛ぶ

 

くってさ

 

捕まってた少年を掴んで駆け寄って来た少年に投げる

 

それ~をこのは~で ちょいとか~ぶ~せ

 

両手を叩いて衝撃波を泥にぶつけると泥っぽい人は脳震盪を起こした。

指差し確認。少年無事、泥っぽいのも無力化。

 

「……ヨシ!」

「「「「ヨシじゃねー!!!!」」」」

「ヒーローって五月蠅いのー」

 

 

 

あの後五月蠅い若造共に年上&無個性と伝えて何にも反論出来なくさせてから帰ろうと駐車場まで移動したら何かガリガリのヒョロゾウに声かけられた。

 

「青年! ちょっと待っては貰えないか!?」

「……なんじゃい、ガイコツっぽい人」

「ガイコッ……んんっ! 名前を教えて欲しい!」

「中真有助だけど……」

「唐突だが、ヒーローにならないか!?」

「……じじぃが余生で旅しとるのにヒーローになる訳ないだろ」

「じじぃ? えっ、あのおいくつで……」

「今年で78? かな」

「えっ!?(グラントリノと同じ位?!)」

「そんで用はそれだけ?」

「あ、いやぁ……」

「ヒーロー勧誘ならさっき飛び出してた少年とか良いんじゃないか? ありゃいざって時動ける奴だろ」

「アッ、ッスネ」

「んじゃーの」

 

何か色々有ったし今からホテル取るのも億劫、今日は適当な場所で車中泊にしよう。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

あれからまた適当な目的地に対して旅を続けてる。偶に癇癪起こした子供見つけてはシバく事はしてるが躾の一環程度なのでお縄になる事も無い。

無いんだけど……偶にガイコツっぽい人が来るのは何でだ? 警官に会った後にしょっちゅうエンカウントするし、妙な縁もあるもんだ。

袖振り合うも他生の縁って奴かぁー。

 

「という訳で、貴方に協力して貰いたくてですね……」

「あっ、ごめん。聞いてなかった」

「辛辣ーー‼‼」

 

血反吐を出すな、血反吐を。

 

「んで何て?」

「貴方を教師にスカウトしたくてですね……」

「いや、おじさん教員免許とか持って無いし」

「それは此方でどうにかしますので……」

 

どうにかするなや、ガイコツ。何気に凄い事言うなぁ。

 

「つーかおじさん年金生活だから今更金稼いでもなぁ」

「そ、そこを何とか!」

「そもそも教師になって何すりゃ良いのよ」

 

人生経験語る位しか出来んぞ。

 

「ヒーローとして強くなる為の事を少年少女に教えて頂ければ……」

「前にも言ったけどおじさん無個性だしヒーローじゃないけど?」

「いやいや、しかし貴方の活躍は!」

「独身老人のじじぃが高校生教師って無理過ぎるわ、しかもヒーローて」

「……私が用意出来るモノなら用意しますので、どうにか教師になって貰えませんか?」

 

ガイコツもしつこいのぅ。

んーーーー。無理っぽい奴で何かあるか? あっ、そうだ。

 

「じゃあ何とかクック? なんかのランキング? に乗っとる奴の飯を毎日無料で食えるとかそーいう特典が有れば考えても良いよ」

「……それはクックヒーローのランチラッシュの事ですか?」

「あー、それ? それが最優先で飯作ってくれる様な特典がありゃ考える(まぁ無理だろうけど)」

「解りました確認を取ります」

「ん?(確認?)」

 

「ハイ、ハイ、エエ、ジョウケンハランチラッシュノ……」

 

数分後

 

「先ほどの条件を雄英高校は呑むそうです。これで構いませんね?」

「………………え、イヤだけど」

「えぇーーーー?! 先程特典があったらと!」

「考えるとは言ったが了承するとは言ってない」

「そんな!」

 

めんどくさくなって車に向かおうとしたらガイコツが腕を掴んで来る。

何かデカくなって力が強くなったな、おい。

 

「えぇい、放せガイコツマン! 俺はこの後山形名物の富士桜ポークを食うんじゃい!」

「ちょっ……マッスルフォームで止めれないとか冗談だろ?!」

「HA☆NA☆SE! 美味い飯が俺を待ってるんだよ!」

「そこを何とか! 頼みます!」

 

この後仕方なくガイコツマンと一緒に富士桜ポーク食べた。

何か胃が無いとかほざいてたから胃は再生してやった。

泣きながら食ってた。




飛行少年:一体誰なんだ

マスキュラー:気が付いたら警察病院

ウォーターホース夫妻:一般人に助けられた

とある村:異形が普通の身体や顔になった

半グレ:ビンタと共に個性の反動を無くされた

ガイコツマン:食欲が……食欲が戻ったぞー‼‼‼
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