AFO と OFA 殴り合え
ヴィランとは何か。
第一に出てくるのは犯罪者という言葉。
法を犯した者たち。
法とは?
日本で制定されている『個性の無断使用の禁止』という今では当たり前になった法。
個性の禁止。
これがとても厄介である。
そも、個性とは身体能力に直結している。そしてソレを十全に使いたい、利用したいと思うのは割と普通の事である。
勿論悪意を持ってソレを利用する者も居るが、そうでない……個性に支配された者も居る。
その結果として、個性の発動の結果が暴力に属する為にヴィランと呼ばれる者も一定数居る。
始めこそ違ったかもしれないが日向から日陰へ移ると中々日向へは戻れない。
やがてその場に慣れ、凶暴性に染まり、自ら進んで悪事に手を染めた者も居る。
そんな彼らが大手を振って歩ける未来が来るかもしれない可能性を知った。
ならばそれを後押ししたい。自由を謳歌する為の一助になる。
そう思うのも無理無い話である。
どこか浮ついた気持ちがあっただろう、勇んで現場に乗り込んだ彼らは現場で冷や水を浴びせられる。
端的に表現しよう。
地獄である。
あらゆるヴィランが地に伏せていた。無名も、ネームドも関係なく地面に転がっている。
絶命した者、四肢を折られた者、四肢をもがれた者。
そんな地獄を作り出しているのは見た目30代、実年齢200歳を超えているという意味の分からない男。本当に意味が分からない。
男は確かに近づいてヴィランを殴り、蹴りを淡々と放っている。
しかし近づく動作が全く見えない。気が付けば殴られ、蹴られ、血煙を上げて地に付している。
攻撃された箇所が文字通り消失した者も居れば、五体満足で倒れている者も居る。
男に一切の遠慮は無かった。
命を取る事への禁忌感が微塵も無い。
ヴィランでもヒーローでも無い。
ヴィジランテ。
そのまま言葉の意味を体現していた。
そんな地獄を作り出してるおじさんです。
今日の為に久しぶりにステータスを全開活性化させ、十全な状態にしたのだが加減が上手くいかない。
それでもやる事は変わらないので島を回りながらヴィランを擦り潰して回る。
遠くから戦闘音が響き始めた。あの二人がちゃんと闘ってるっぽい。
戦闘音を聞きながら上陸してきた奴を大体倒し終わった。大体小振りなのしか居なかったから本命はこの後かな。
「(一旦は落ち着いたか?)」
ヴィランの波が引いたのを感じて今日の為に雇った監視チームに連絡とってヴィラン上陸時に再連絡をもらう様にして二人の闘いを見に行く。
全盛期同士のぶつかり合い。
今回の件に回復間に合わせる為、オールマイトはヒーロー業を一時休業してたし、オールフォーワンは個性の収集を頑張ってたらしい。
あの世界基準でLV5位か。
本当の意味で壁を越えてないから器の昇華は無いけど、単純な戦闘ならオラリオでも上位だなぁ。などと考えながらインカムから連絡が入った。
『ナイトメア、海岸線でヒーローとヴィラン、一部ヴィジランテが交戦してます』
「……なんて?」
海岸に来たら大乱闘騒ぎが起きてた。
一部おじさんが最近勉強したトップヒーロー10の人がいる。ヴィランの方は……多分AFOの手勢だろう複数個性が数人と……何かオールマイトもどきも居るな。
それにすきまを縫うように動いてヴィランを抑えてるオールマイトみてーなパーカーの人とか。
あれがヴィジランテ?
よくわからん。
辺りを見ていたらちょっと奥の方で火が上がった。
赤と青。二つの炎がせめぎ合ってる。
NO2と……何時ぞやの不健康少年じゃん。何か罵り合いしてるし知り合いか? ほなええか。
暫く突っ立って見てたけど天秤が何方にも傾かねぇ……。
仕方ないので【トラベラー】でビーチパラソルとチェアを取り出しパーティ会場に向けて拡声器で声を掛ける。
「終わったら教えてくれ〜」
「「「お前も戦えやっ!」」」
息ピッタリか。
「ええー、君達で潰し合いなよ。その方が見てる視聴者は盛り上がるよ。おじさんがやるとただの作業だし」
「やはりヴィジランテか、こんな輩はキッチリしたい所だが……」
デニム……何だあれ? デニム素材の謎服着てる人が周りを拘束しながら愚痴ってる。
「ジーニスト! そいつの事は無視しろ!」
「判っていても口に出さないと気が済まない事もある!」
シャチみたいな人が叫びながらヴィラン吹き飛ばしよる。たーまやー。
「クソヒーローどもがよぉ! 俺の復讐の邪魔すんじゃねぇ!!!」
一際大声をだしてこっちに向かって来る筋肉マン。いや、筋肉むき出しマン。
「えっ、剥き出しって神経どうなってんのソレ。つーか復讐?? ……どっかで会ってたっけ???」
「怒怒怒!!!!」
思い出そうと暫く避けなが観察するが一向に思い出せん。コレがボケ? ……やだなぁ。
ごんっ!
思わず足で蹴ったが剥き出しマンは耐えた。
「筋肉が消えたけど……、へぇーダメージを肩代わりもするんだ。面白」
「俺の筋繊維は鎧で筋肉! 纏うほど力も耐久も上がっていく! 上限はねぇ!!!」
関心して剥き出しマンの筋肉を観察してたら何かオールマイトもどきがビーム撃ってきた。
しゃーないので筋肉に手突っ込んで引きちぎりながらビームへ剥き出しマンを投げる。
「はっ?」
剥き出しマンの間抜けな声を聴きつつ、これで良しっ! と現場猫ポーズ決めようとしたら別方向からもビームが来る。
何? 流行り? トレンドはビーム? リボルケイン抜くぞこんにゃろう。
仕方ないので巨岩を目の前に置く。
そうしてビームを防いだら次に大量生産の槍を出して投擲。【トラベラー】のお陰でこういう消耗タイプの攻撃が気楽なのがいい所。
「ほいっ、ほいっ、ほほほいっ」
「ぐっ! SHIT!!」
「くそっ! 反撃の隙が……」
投げた槍は空気を裂いてオールマイトもどきとビーム撃ってきた奴へ向かう。ビームで迎撃しようとしてるが数本投げる毎に1本を【テレポート】で開けた穴に投げ入れるので認識外から槍が飛んできてもどきは苦労している。ビームマンには普通に当たった。
というか反応出来るの地味に凄いな。
ついでに槍を周りにいる奴へ無差別に投げておく。
数人に当たったが大体防がれた。最初の来客と違って練度が高い……協力してるインカム先に有名どころを聞いたら名前が途切れない程度には練度の高い連中が多いらしい。
「……全方位一斉爆破とかしちゃだめかな」
『止めてください』
元も子もない事を考えてたら、腰にぶら下げてるクソデカ頑丈衛星電話が震えた。
緊急事態でしか鳴らんのだが……。
「もしもし」
『N、皇居が襲撃を受けている! 繰り返す! 皇居が襲撃を受けている!』
「は?」
『お前が動いた事でほかの国が仕掛けてきた!』
電話口の向こう側では銃撃音。
「国は何処?」
『現在不明! 数、不明! 武装と個性の飽和攻撃を受けてる! 恐らく転移の個性で強襲をしかけられてる!』
「……5分持たせて」
『了解‼‼』
眉間をもみほぐしながらインカムで指示を出す。
「聞こえてたか? 最重要案件。俺は離れるから戦闘停止のアナウンス流せ」
『承知しました』
「食ぅらええええぇぇぇっ‼‼」
剥き出しマンが飛んできた。
「おらおらおらおらっ!」
左右の乱打を行ってくる剥き出しマンの拳、携帯に当たりそうなものだけ止める。
おじさん棒、もとい如意金剛を取り出し……無造作に振る。
ハンマーの頭が剥き出しマンの身体に当たると破裂音と共に剥き出しマン……、マスキュラーの上半身と下半身がなき別れする。
人体が破裂するという中々に見ない現象と音に場が凍る。
男の顔つきが、雰囲気が。先ほどまでの空気から別のモノに。
「お遊戯会は終い」
右手に持ったハンマーが伸びる。太く、長く。それを両手で構えると今度は頭がデカく、重く。
腰をひねりながら振り下ろす為に力を貯めて言葉を発する。
「範囲指定『この島』、対象『敵対者』、【テレポート】一撃必殺『エクステンション』」
この時、この島に上陸、または周囲に待機していた中で明確におじさんへ敵意を抱いていた者は観客も含めて血溜まりになった。
突然の音と共に頭から何かに潰され『弾けた』のである。
後に人が弾けた瞬間を、男の近くで目撃した者は言う。
「わからない。何かをしたのは間違いないけど一振りで大勢の人が死んだ。何の前兆も無く、ただ上から途轍もない衝撃が降ってきたのは隣で感じた」
「でも恐ろしいのはソコじゃない、規模は違うけど個性で似たような事をする奴は居る。本当に恐ろしいのはアイツだよ」
「……アイツ、事を起こした後に何て言ったと思う?」
『よし、次』
「何の気負いもなく、片手間で片付けられる用事を済ませたみたいに一瞬で殺して……『次』なんて言えるか? 普通……。根本から違う生き物なんだよ、あれは」
開いた窓は500位か? 出口多数の穴を開くのはちょっと頭に負荷かかるが……まぁ緊急事態だししゃーない。
「じゃあ向こうに行って来る。何かあれば通信寄越して」
『了解』
「対象『皇居』【テレポート】」
こうしておじさんは一時的に国の行く末を掛けたフィールドから離脱する事になった。
その頃、AFOはオールマイトへの最後の一手を打ち込もうとしていた。
互いに万全の状態となり全力でのぶつかり合い。過去の再現……とはならなかった。
AFOは準備をしていた。ハンデを背負った状態で勝つための準備を。そこに身体的ハンデを一切取っ払われた結果、AFOはオールマイトを超えた。
「やっと長年の夢が叶う……さあ、遺恨を潰して新しい僕の幕開けだ」
AFOの拳がオールマイトに向かおうとしたその時。
『会場の全員へ通達。これよりナイトメアが島を離れます。戦闘行為を停止してください。停止命令に従わない場合、ナイトメアの攻撃対象となる場合があります』
そのアナウンスに両者の動きが止まった。
戦闘の様子を配信で見ていたヴィランは怒り、市民は息を吐く。
オールマイトの終わり、それが寸前に来たタイミングでのアナウンス。あまりにもタイミングが良すぎる事で視聴者は仕込みを疑ったがその後に見せられたモノで考えは撤廃された。
テレポートで移動した先に居たのは通信をしてきた皇居の守りを固めているチームの班長。
「おっす、今どんな状況」
「N! 2方向から同時攻撃。皇居の周囲を囲まれてる!」
皇居内に炸裂音が響く。爆弾持ち込んでるっぽい。
「緊急用の転移個性持ち居たでしょ。アイツは?」
「最初にアイツが狙われた! その後は波状攻撃が継続してる!」
「情報漏れてるかぁ、流石にここの襲撃相手だから遠慮無しでやるぞ。ってか今うまく加減出来ないし」
「了解! それとご家族に被害が出てる! 後で治療を頼む!」
思わず眉間にできたシワをもむ。
「……OK、さくっとヤルわ」
【トラベラー】から一本の刀を抜く。
元々は日本にあった刀。それを神へ奉納という形で返還したらおじさんへ下賜された代物。
人が作ったモノだけど神が手に取って認めた事で神造兵器へと変わったシロモノ。
ソレを天に掲げて呼び起こす。
「哭け、布都御魂の剣」
敵を認識して剣が起きる。
途端に天が陰り暗雲が立ち込める。先程までの晴天が嘘の様に辺りには暗く重い空気が漂う。
次第に鳴り始める音。怒りを表す様に鳴り出した天の声は雷轟と共に男の刀身に落ちて来た。
だが雷は男を焼かず、刀身へ立て続けに何度も、何度も落ちて来る。
唐突に止まる雷と掲げていた刀を正眼に直して両の手で握る。
「モード【タケミカヅチ】」
柄を握る手から若干漏れ出たスパークが残滓になりおじさんの姿が班長の前から掻き消えた。
そこから時間にして約1分。戦場に童謡「あんたがたどこさ」が何処からか聞こえては人が斬られ感電していく怪奇現象が発生。
日本に対して秘密裏に仕掛けられた攻撃は実質1分で隊員300超の人員全員が斬られていた。
現場を引き継いだ後、直ぐに皇室へ向かい治療を行う。
「うっし、治療終わり」
「中真、ありがとう」
「うっす。とりあえず試合止めてきちゃったんで戻りますね」
「日本はどうなるかな」
「あんまり変わらないんじゃないですかね。流れ次第ってのもあるし……国民の声がなぁ」
「……程ほどにね?」
「まあ、なるようになりますよ」
そう言って治療を終えて皇居の外へ。外では班長が敵を地面に並べて待っていた。
「さて・・・コレ配信で晒すか」
「流石に数百の手足の無い人間映すのは規制に引っかかるんじゃないのか?」
「配信元の奴に話通してるから平気」
「そっちにも伝手があるのか」
言いながら携帯のライブ配信機能を立ち上げてAFOvsOFAの配信にワイプという形で割り込み、軽く撮影と現状報告をする。
「おいすー、日本で頂上決戦中に失礼。おじさんです。試合中断させてスマンの。
どっかのアホがコレを皇居に仕向けたからちょっと処理してた。試合直ぐに再開させっから待ってて。
因みに所属が分かり次第個人的に報復するんでヨロ」
そう言いながら皇居に並べられた生きた達磨達。鍛えられた人間が肘や膝の辺りから切断されもぞもぞと動く様は子の配信を見ていた人間の大多数に衝撃的な映像になった。
ゲーム配信楽しくて更新速度亀になっちゃってる
この作品は完結がほぼ決まったので改めて執筆しますかね