おじさんが旅する話   作:タラバ554

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悪夢の日①

苛立ちを感じた瞬間、既に死柄木の体は動いていた。

自分の持つ崩壊の個性を発動させながら目の前の男の頭を鷲掴みにする。マスターピースとして調整を終えた死柄木は正しく刹那の間にその手の中に男の頭を掴んでいた。

そして自身の個性、崩壊を使い……その手を払い除けられた。

 

「は?」

「いや、何人の頭掴んでるんだ?」

 

信じらればいとこっちを見る死柄木。呆れながらAFOをみればこっちも信じられないという顔をしている。

 

「飛行少年、コレはどう受け取るべきかな」

「誓ってボクの意思じゃない」

「先生……あんた頂点に立ったのならソレらしい振る舞いってのが有るだろ」

 

そう言いながら戦闘体制に移る死柄木。それに焦るAFO。

イラついている所に直接手を出されたおじさんは深く考える事を止めた。体から余計な力が抜け落ちてだらんとした仕草となる。

それを見た死柄木は身体に搭載されたあらゆる個性を総動員して攻撃を開始。

 

関節の可動域を無視する『液化』と速度を上げる『加速』、他にもパワーの底上げや感覚器官の強化、拡張。

超加速を体現する個性の組み合わせを維持しながら攻撃も増強する肉弾戦特化の個性の組み合わせ。

たとえ第一線にいるヒーローでも倒せる個性の組み合わせ。それを維持しながら死柄木から放たれる右の崩壊。

マスターピースとして強化され、正しく人外の領域へと足を踏み入れた死柄木。

 

ドゴッ‼‼‼

 

そんな一撃は死柄木さえ知覚が出来ない速度で叩き込まれた打撃に黙らせられる。

 

「~~~~っつ!?!?!???!?」

 

痛みを自覚する時には既に次の攻撃が完了しているという攻撃速度。叩き込まれる乱打。

一撃で打たれた箇所が文字通りはじけ飛ぶ。普通なら超再生の個性で直ぐに治るのだが、再生が全く追いつかない。

そんな攻撃は死柄木の身体の7割が弾け飛んだ所でおじさんの首を狙って開くゲート。見た瞬間に無詠唱で手元に開く【テレポート】で黒霧の実態部分に裏拳を叩き込む。

 

「ヴグッ‼‼」

 

時間にしてたった3秒の戦闘。

ヒーローを圧倒したヴィランが恐るヴィジランテの実力がそこにはあった。

 

「つい手が出たけど……どうする?」

 

やる?

 

そう問いかける様にAFOへ向けて問いかければ両手を上げて戦闘拒否のポーズ。

 

「ボクに戦闘の意思は無いよ……弔、それに黒霧……戦闘前に手を出さない様に伝えてたはずなんだけどね。

まあ良いや、魔王は二人も要らない。黒霧の個性が無くなるのは正直痛いけど……ナイトメアを敵に回すよりマシだね。処分していいよ」

「そ?それじゃ」

 

軽いやり取り。それが死柄木弔と黒霧が最後に聞いた会話だった。

 

 

 

AFOは観察を続けていた。オールマイトと戦う一方でナイトメアの戦闘を監視させていた。

苛立たしい事に未だに目の前の男を殺す算段がつかない。自分の夢が成ったというのに目の前のコブが排除しきれないというジレンマ。

時間が解決する事は分かっているがつい手を探してしまう。

黒い思考を巡らせているAFOの内情を何となく察しつつも無視しておじさんはかかってきた電話に出る。相手は皇居に居た班長。

 

「もしもし? あ、お疲れ様。あーわかった? ふんふん、へーそんなに?

んーーいいよコッチでやるわ。あー折角だし配信ここままでやるか。ほんじゃの」

 

そう言って電話を切る。AFOを見てやりたい場所を聞く。

 

「N国、C国、K国、R国どこの国やりたい?」

「ほう、4カ国か……その中ならR国だね」

「おk、因みにどんな風にやるの?」

「折角だからジワジワやろうかな、あそこならツテがあるからね」

 

そう言うAFOをぼけっと見ながら丁度いいので残りを全部貰う事にする。

 

「ふーん、じゃあ残りこっちでやるな」

「地理的にも隣接してるし、そっちは任せるよ」

 

OKと言いながらふと思い出した事を聞く。

 

「……そういや抽出した弟? あれ、どうなった?」

「ああ、ちゃんとボクの中に居るよ」

 

ニヤリと笑うAFO。うーん、何かヤベェ薬キメてる奴みたいな笑顔だなとか思いつつもスルーする。

 

「君があの筋肉ダルマに弟を移し替えてくれてたお陰で無事に取り返せたよ」

「家族が一緒なのは良い事だからな。とりあえず……サクっとこっちはヤルか。うっし、配信だー」

「それで? そっちはどうやるんだい?」

「うん? どうって……自然災害的な?」

「自然災害??」

「おう、手っ取り早く見せるか……衛星カメラとかの映像を配信に回しとけー」

 

とか言って軽いノリで報復を開始する。

 

 

 

最初に水を呼んだ。

大瀑布が街を、国を押し流す。

そこに住む人も動物も洗いざらいを押し流した。

 

次に雷が落ちた。

濁流を媒介して電気が全てを舐めていく。

 

次に隕石が降りて来た。

雨が降る様に、冗談のような光景が広がった。

 

最後に熱が奪われた。

深々と建物も、植物も、僅かに残った命も区別無く全てが凍った。

 

 

 

これが後に悪夢の日と呼ばれる騒動の序章である。




何か暑さにやられてるかも……
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