おじさんが旅する話   作:タラバ554

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悪夢の日々①

AFOとオールマイトの対戦後は日本は大混乱となった。

街中に出て暴れまわるヴィラン。それに便乗する潜在的だったヴィラン予備軍。

一般の人は戦々恐々でその日の夜を過ごした……のは1日だけだった。

 

翌日早速AFOの統治が始まり直ぐに記者会見が開かれた。

 

「やあ、これから日本は民主主義から軍事国家に切り替わる。力が全て……とは言わないが弱ければ奪われて当然、だから国民は全員力を磨く事を国是としよう。

それからヒーローとかヴィランとか……そういったモノは全て無しだ。等しく国民であり力の過多で物事を図る。

個性由来の衝動が抑えられない者、暴力を求める者、禁忌を是とする者……全員ボクの元へ来ると良い。

君たちには君たちの住みやすい場所(ステージ)がある。腑抜けた世間(ステーション)で暮らす必要なんて無い、相応しい場所をボクが用意しよう。

力ある者には力を振るう場所を、そうでない者には適切な場所で働く事でボクの力になれ。全てはボクの為に。

君たち(国民)ボク()の庇護下に入る。それを努々忘れない様に、

それと、むやみやたらに国民を傷付けるのもナシだ。国民とは言い換えればボクの財産のようなものだ。ボクのモノを他人が傷付ける……そんな不愉快で対応が面倒な事はしないでおくれ、殺すのだってタダじゃないんだ。

ただ、やられたら当然報復は行う。その為に協力してもらう事もあるだろう。

その際は進んで協力してくれるとボクとしても手を煩わせずに済むのでとても助かるね」

 

そんなスピーチの後、Webで公開された詳細なルール。

AFOが宣言した通り、元ヴィランと呼ばれた者たちが集まり一部の地方は彼らの為の場所となった。

法律とは別のルールが敷かれ、弱肉強食に近いルール。当然ながらその頂点に立つAFO。

ヒーローという称号は消えたがヒーローとして活動していた者たちは国に拘束され軍隊へ強制参加が決定され、今では治安維持の一員になっている。

 

暗黒の時代を予想していた一般人の予想を裏切り、ある意味縦割りの社会を形成する事で今まで歪んでいたものが単純化され世界は回り始める。

元怨敵であったオールマイトですらその活動はAFOに監視、運用されている。

意外だったのは運用がまともだった事。

戦々恐々としていた一般人は何時しか歪な日常に慣れて行った。

 

 

 

「決戦から1年経つ訳どさ……何時までおじさんの監視するのさ?」

「もちろん君が死ぬまでさ」

 

おじさんは相変わらず雄英に勤めてるしオールマイトも同じく。変わったのは一日の最後がAFOと過ごす事だろうか。今は夕食後のお茶タイム。

AFOとしても脅威は見える範囲に縛っておきたいだろうし、オールマイトが変に地下に潜るのを防ぐ為にもその方が良いのは間違いない。

 

「しかし飛行少年がおじさんの案を素直に実行するとは……結局運用は上手く行ってるの?」

「ああ、それなりに有能な人材を抱えていたのと、名実ともに国のトップって立場は色々と融通が利くからね。そこの生ゴミ(オールマイト)もちゃんと指示通りに動いてるお陰で問題らしい問題はないさ」

「AFO……いい加減私の事を生ごみと呼ぶのは止めろ」

「負け犬の遠吠えは聞かない主義でね。ボクに勝てる様になったら考えてやるよ」

 

政治的に邪魔の入らない決定権を持ったAFOは宣言通り社会構造を二つに分けた。

根底にあるAFOをトップとして据えた国だが基の国としての動きを残した部分は問題なく機能し、暴力を是とした新たな社会も問題はありながらも運用されている。

AFOとオールマイトも最初こそギスギスしていたが、AFOからしたら格付けが決定した上に弟という最大の問題が解決したお陰で精神的にとても余裕が出来た。お陰でオールマイトの大半をスルー出来る余裕がある。

 

「そういや死柄木ってさ……飛行少年の精神を移植してた?」

「……何でソレを知ってる?」

「いや、ほら。あの日、おじさん死体を袋詰めしてたじゃん。特にお前さんら二人が戦った場所のは全部おじさんがやったし……」

 

AFOが紅茶を飲みながら『あー』とか言ってる。オールマイトは曇り顔。何せオールマイトがAFOのいう事を聞いてる理由が元1-Aの蘇生が条件だったりする。

因みに青山少年は真っ先に蘇生したし、彼と彼の両親は顔を別物に変えてから引っ越してる。万が一の時はオールマイトが動くというとっても皮肉の聞いた契約付きで。

最近確認したら三人とも元の体系と比べて痩せ気味だしストレス値も高め。思うところがありそうだ。

 

「ふむ……まぁいいか。そうだね、ナイトメアの言う通り弔にはボクの個性を移植したのと同時にボク自身を埋め込んでいたよ。あのまま行けば何れは新しいボクになっていただろうね」

「ほーん」

「第二のAFOか……」

「勿論それだけじゃない……オールマイト、君へのサプライズもあったんだがね。それを披露する間も無くボクの勝利が決まったから無駄になったよ」

「……お前が私をまともに呼ぶって事は禄でもない案だったんだろうな」

「おやおや、酷い言われようだが内容は感動的になるはずだったんだぜ?」

「どんな?」

 

おじさんが質問するとニヤニヤするAFO。

 

「弔の正体だよ」

「正体?」

「どういう意味だ……」

 

首を傾げながらつぶやくおじさんと、思わず聞いてしまったオールマイト。

 

「君と所縁のある人物って事さ」

「私と?」

 

AFOの言葉に眉を顰めるが聞かずにはいられない。そして出てきた言葉は……

 

「志村転弧、君の師匠の孫さ」

「……は?」

 

立ち上がりAFOに殴り掛かるオールマイト。それに手を伸ばして止めるおじさん。

止めた右手がビリビリする、決戦の時よりパワー上がってね? 

 

「AFO……過去に貴様を憎いと思った事は有ったが……今は過去一に貴様が憎い‼‼‼」

「っぷ、あっはっははは!」

 

腹を抱えて笑うAFO、そしてオールマイトを押しとどめて椅子に座らせるおじさん。激昂してる人押し留めるのって結構力要るのよねぇ。

 

「飛行少年のそーいうサプライズは横に置いとくとして」

「私は腸が煮えくりそうなんですが!?」

 

うるさいのでチョップで黙らす。かなりいい音がしたがコイツなら平気だろう。

 

「話を戻すけど、精神の転写して第二の自分作って……延命考えてた感じ?」

「……まあ端的に言えばそうだね。ボクの寿命にも終わりが見えてきてたから所謂生まれ直しみたいな事を人工的に出来ないか模索していたら運よく目途が立ってね」

「成程ねぇ……余りオススメできねぇけど、分からなくもないか」

 

そう頷いているとAFOが質問してきた。

 

「君は好きに寿命を延ばせるんだろ? 2世紀近くも生きてるんだ長生きには飽きたのかい?」

「別に飽きるって訳じゃないけどよ……刺激は少なそうだなーって」

「刺激?」

 

食後のお茶を入れながら肯定する。ついでにオールマイトのも入れてやろう。飛行少年はワイン飲んでるから要らんか。

 

「うん、多分だけど『最終的に勝てば良し』って思考で計画立てたろ? その最終的な答えが死柄木への精神移植って事を考えると……時間、つまり寿命によって敵が死んでそこから再度盤面の掌握をするってのが計画だったはず」

「へぇ……大体あってるよ」

 

興味深そうにするAFOと痛みが引いてきたのか頭を押さえながら椅子に座りなおすオールマイト。

 

「んでな? 新しい盤面で裏から動こうとする、盤面はリセットされてるけどオールマイト枠の奴は多分どっからか生えて来てただろうし、やる事は今までの繰り返しだったんじゃねーかな。

そうなると面白いっつーか、不愉快というか……大体この繰り返しはループし始める。『確率は収束する』って言葉があるけど、このループが始まるとどうあがいても自分だけじゃ突破出来なくてな。

最悪の場合、延々と前までの生活の繰り返しだったと思うぞ?」

「……ぞっとする話だね」

「因みにコレ、実体験だからな?」

「「は?」」

 

固まる二人、しばしお茶を楽しんだ後に答えを口に出す。

 

「おじさんの特殊能力の一つじゃ」

「……マジ?」

「まじ」

 

様々な考えが駆け巡ったAFOだが、思考の海にいるその最中に電流がはしる。

 

「ちょっと待て、という事はナイトメアは死んでも生まれ変わるって事か?!」

「別に直ぐにじゃないし、この世界かは分からんよ」

「可能性はあるって事かい?」

「さてねー」

 

おじさんの軽い返事に眩暈を覚えるAFOは思わずワイングラスをテーブルへ置く。

 

「最悪だ。死後君の体を調べて長寿になったとしても生まれ変わった君とまた顔を合わせるとか最悪すぎる」

「兎も角、さっき言った様にループし始めると自分の思惑はとことん邪魔される。

んで、生まれ直しに期待しても生前の焼き増しみたいなこと繰り返しから段々と既視感ある生活になって生きるのがつまらない物になるんよ」

「……それの解決法は?」

 

嫌すぎる実体験だがソレを突破してきてるのなら解決方法は是非とも聞いておきたい。

その返答はあまりにもあんまりな返答だった。

 

「兎に角、別の人生を歩む。別の経験を積んで、新しい事やって、面白おかしい人生を送る。

そういう意味だと技術職は結構良いぞ。自分で新しい物生み出せるから」

 

暗に今の計画を全部捨てろという話に本当に頭が痛くなる。自分がそうなるとは限らないが油断は出来ない。

 

「君の前職がマテリアル開発なのもそういう事か」

「そんな仕事してたんですね」

 

AFOが納得すると同時にオールマイトが関心した様に呟く。AFOは半目で視線をオールマイトへ送り呆れ、同時におじさんは苦笑する。

 

「趣味でもの作りする為の素材作りを仕事にしたって感じだな。最後の方は営業とかもやってたけど。

ちょっと話ズレてきたから話を戻すけど、飛行少年。折角ならもっと面白く生きたらどうだ? 何ならおじさんも協力しちゃろう。

その為にお前さんの裏にいた頃の1番の協力者の紹介と計画の詳細教えてくれ。多分個性関係の専門家だろ?」

「……君のメリットは?」

 

うーん、分かりやすかったか?

 

「死ぬ前に終わらせたい依頼があってな。個性の専門家の知識が欲しい。

ついでにオメーさんの計画に思い当たる事があれば指摘しちゃる」

 

少し試案してから携帯を弄るAFO。

 

「もしもし、ドクター? ああ、ボクだ。ちょっとナイトメアと会談してみないかい? ああ、そうだ……そうだな好きに配置して良いよ。

OK、ドクターも乗り気だ。頓挫した計画だし見られても痛くは無い。ドクターを紹介してあげるよ」




流石に遅いし長くなりそうだったのでいったん分ける
次はドクターとの会話
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