おじさんが旅する話   作:タラバ554

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過去に悪魔と呼ばれた男

遂に始まった体育祭。学生さんは目一杯会場で体を動かして会場を沸かせてる頃、おじさんは見回りしてるヒーローと連携して運営業務に勤しんでいた。

この学校、ヒーロー科で有名なので迷惑客は基本居ないが、客数が多いとトラブルは起こる。

迷子や小さな喧嘩、中には個性使ってのスリもいたり。

 

んで、午前中はそーいった事で忙殺されてたが正午からは保健室でリカバリーガールと待機。主に何かあった時用。

いうてリカバリーガールが基本対応するんだけど。

 

そして午後は個性アリアリの個人戦をヒーロー科全学年で行う為、ちょこちょこ二、三年が来て怪我を治していく。

で、一年はと言うと……。

 

「怪我多くねぇ?」

「一年は毎年こんなだよ。二、三年になれば加減とか色々覚えてくるから大きな怪我も少なくなるけど、一年はどうしても出力高めでぶつかり合う子が多いからね」

「まぁ子供が加減知らない状態でぶつかればそうなるか……ん-、でも飛行少年は平気そうだったけどなぁ」

 

過去に会った少年を思い出しながら棚に置いてある薬を手渡す。

 

「何にせよけが人は待ってくれないんだ、次はそっちの包帯を取っとくれ」

「ま、いいけどさ。治療はこの学校の人間だけだぞ、それ以外はやらんからな」

「解ってるよ、それも私の手に負えない場合のみだね」

「解ってるならいいけど」

 

と言ってもおじさんの手が必要な子は居なさそうだな。

 

「大体が個性の使い過ぎでの体調不良ね」

「皆それだけ必死なんだよ」

「このイベントでインターン先が決まるんだっけ?」

「向こうから声が掛かればね」

 

変な制度だなと思いつつ1年の会場を映してるモニターを見る。

 

「それじゃ何でイズク君はショウト君に速攻掛けてないんだろね?」

 

明らかに戦い方が矛盾してる。自損があるなら最初からパワーで捻じ伏せて損耗率を下げるべきなのに何やってんだか……。

それを見てリカバリーガールが盛大に溜息を吐く。

 

「あれは師匠が悪いよ……まったく、ちゃんと弟子を育てなと毎回言ってるんだがね。……あんたアレ、治せるかい?」

「そりゃ当然治せるけどさ、その前に一度イズク君の精神的なケアしたら?」

「……ケア?」

「イズク君は何か必死というより脅迫観念に怯えてる様に見える。ちょっと違うけどスラムで必死に生きてる子供」

 

おじさんの感覚を素直に伝えると黙り込むリカバリーガール。

 

「まー、それはショウト君も別ベクトルで似た様な感じだけど」

 

そんな話をしてたら決着が着いた。結局イズク君が場外で負け。

最後の一発出す時は何か二人共良さげだったけど、こーいう心のケアって誰が専門なんじゃろか。

頭を掻きながらロボに運ばれてくるイズク君の受け入れ準備を進める。

暫くしてイズク君が運ばれてきたが見事に右手はボロボロ。治療開始直後にガイコツマンが来たが……どうやらイズク君はコイツの弟子らしい。

 

「……もーちょい気にしてやれやガイコツマン」

「返す言葉も無い」

「オールマイト……、中真先生は……」

「私の事かい? 知ってるよ」

「今はそんなの気にしなくて良いから寝とけ」

 

頭を押さえつけて痛みを打ち消しながら腕を固定していく。リカバリーガールと口裏を合わせたので、最終的におじさんが治す事になりそうだが今は黙っておく。

処置を一段落させたら1-Aの子達がちょっと来た。彼等のやり取りを暫く見てたがイズク君はそれどころじゃない。

ガイコツマンに悔しいと謝っている。そしてガイコツマンもソレを肯定しながらもソレはヒーローの本質だと肯定もしている。

 

今は敢えてなにも言わずにこの空気は壊さないでおこう。何よりこの子、今から手術するしね。手術前のモチベーションって大事だから。

 

手術後にリカバリーガールが治癒を掛けたイズク君に警告を出す。

 

「こういう怪我は今後、もう治癒しないよ。こんな破滅的な方法じゃなくて、この子のやれる別の方法を模索しなさい」

 

その言葉を受けるガイコツマンとイズク君。

その顔を見て分かった。コイツ等考えてないなと。

 

「ガイコツマンは明日イズク君にどんな指導してんのかおじさんに紙で提出しな」

「えっ、て、提出ですか?」

「あんまり口出ししたくないけど見過ごし過ぎると今以上に抉れそうだからね」

 

 

 

恙なく(?)体育祭も終わった翌日、ガイコツマンから渡された紙に書いてあったのは意外にもまともな体作りの為のトレーニングだった。

 

「お前さん意外とトレーニング組んだりするの得意?」

「そのっ、自分のお師匠と一緒になってあれこれ行ってたので……割と得意です」

「ほえー、体作りのメニューは良いじゃん、ほんじゃ個性特訓のメニューは?」

「えっ?」

「へぇ?」

 

流れる沈黙。えっ、いやいや。まさか。

 

「個性の特訓メニュー……もしかして無い?」

「その……私は受けついて直ぐに使えていたのでどう説明したらいいか……」

「まじかぁー、うーん、あの子の身体壊すやり方ってこの本に書かれてる子供時代の暴走だよな?」

「『個性学』ですか?」

「幼少時代に力の加減が分からずに使うと自分や周りに被害を出すって書いて会ってな、そーいう子供には緩やかに個性を馴染ませたりするらしい。方法は千差万別なんだけど……あの子にそういうトレーニングは?」

 

首を横に振るガイコツマン。

 

「……一度あの子も一緒に話すっか」

「お願いします」

 

 

 

三者面談を行ってみた所……全員個性の鍛え方に難がある‼‼‼‼

ガイコツマン、元無個性で個性を受け継いでから直ぐに使えた天才肌。

イズク君、元無個性で個性に振り回されている最中、色々と考えてるけど思考の幅がちょっと狭い。

おじさん、そもそも無個性。

 

「うーん、呼び出しといて何だけどおじさんも無個性だから個性制御は本からの受け売りになるけど、イズク君はもうちょっと個性を低出力には出来ないの?」

「へぁ? えっと……今は兎に角一部に100%を引き出す様にしてて……」

「いや、ソレだと身体壊れるんだよね。壊れない出力って出来ないの?」

「それはえっと……分かりません」

 

落ち込んじゃった。ガイコツマンもどうしていいか分からずに焦ってるし。

 

「うーん、君って理論派みたいだし理詰めで行くか。今は0or100で運用してる。100だと自損する。なら自損しない%を引き出すのがまず第一だ」

「そう……ですね」

「後さ、ガイコツマンは力を使う時に身体の一部に集中させるの?」

「えっ、しませんけど」「えっ」

「「え?」」

 

二人共そーいう所は仲良いな。

 

「やっぱりか。強化系の子って全身で個性使う割にイズク君って何でか攻撃する時だけ、攻撃に使う箇所にのみ個性発動させてるっぽいから変なんだよね。ガイコツマンってそーいう個性じゃないから違和感凄かったし」

「言われてみれば確かに……そうか、そもそも全身で使えば……ブツブツブツ」

「第三者から見るとそうなるのですね」

「……ガイコツマンって他に頼れる人居ないの? トレーニング関係に強い人とか」

「トレーニングに強い……アッ」

「「あっ?」」

 

ガタガタガタガタガタガタガタガタガタ。

何かガイコツマンが全身震え出した。それ見てイズク君は戸惑ってる。

 

「どーしたのよ」

「あっ、あっ、あの!

その……一人居ます、名前はグラントリノ。……私の師匠の盟友です」

「ほーん、連絡取って見たら」

「いやっ、その……とても厳しいというか、実戦形式な人なので緑谷少年には少々ハードかと」

「ほなちょっと相談って事にしたらいいや。お話だけでも聞いて下さいーって」

「いっ、良いんでしょうか?」

「何が? 他人頼るのは普通じゃね?」

 

なぁとイズク君と顔を見合わせたら無言で頷くイズク君。それを見てほっと息をついてから携帯を取り出すガイコツマン。

盛大に電話口で叱られてるがそーいうスキンシップなのだろう。

数分後、電話が終わると例の盟友さんが後日コッチに来るそうだ。序でにイズク君の職場体験先にも立候補するんだとか。

 

で、結局その日はイズク君の許容値は分からなかったが全身で個性を使う事には成功。あとは慣らすだけなのでソレで一日動くメニューをガイコツマンと一緒に組んで実践させた。

……自分でやらせて何だけど寝てる時も常時使うって今一分からん。おじさんも就寝中にゴライアスモードを維持してみるか。

 

 

 

寝起きでもゴライアスモードを維持出来てたのは良かったが、そーいう時に限って人が来るのは何故だ。というか雄英高校の一室を借りてるからそういう事は発生しないと思ってたが……女性の行動力おそるべし。

 

「という事で、さっきのは忘れてくれ」

「えーっと……忘れる代わりに何かしていただけます?」

「何かって……見た目をそれ以上若くすると年齢と離れすぎるんじゃ?」

 

既にミッドナイトの見た目は下手すれば10代後半と言われても通用する位にはなってる。化粧であえて年かさを増して見せて居るが流石にこれ以上は若返りすると言い訳も通用しないぞ。

 

 

 

ミッドナイトの猛攻撃を躱し、日を跨ぎ集まった三人に加え老人一名。

そしておじさんを見て固まったかと思えば唐突にガイコツマンにキレた。

 

「俊典! 何でコイツが此処に居る!?」

「え? その……この人は事件現場で度々会う方で…。一時期継承者に考えたのですが断られてしまって……その後も縁があったのと、シンパシーを感じたので教師に誘った訳ですが……」

「怒怒怒怒怒怒怒‼‼‼‼‼」

 

老人の顔がマスクメロンへと変化し、目にも止まらぬスピードで殴られてる。わぁ、ガイコツマンがおきあがりこぼしみたい。

暫く続いたサンドバックの刑が終了して盛大に溜息を吐く老人。

 

「くそっ、お前にあえて教えなかったのがこんな所で裏目に出るとは思っても見なかったぜ」

「グラントリノはこの人を知ってるのですか?」

 

ガイコツマン、顔ぱんぱんなのに良く喋れるな。

 

「ああ、よーく知ってるぜ」

 

そう言いながらおじさんを指差す。え?面識あったっけ?

 

「こいつは警察から認識されてる最古のヴィジランテ。

 AFOに打ち勝つ事が出来る奴だが法で縛ろうにも()()()()()()()()()()()個性に縛られない異能者。最悪を想定したらその想像を超えてくる悪夢。通称ナイトメア。

 警察内部じゃN案件なんて言われてるな」

「……初耳です、塚内君にも特に言われませんでしたし……」

「オメーは腹芸出来ないタイプだからな、扱いさえ間違わなけりゃ敵にはならんから長く秘匿されとった」

 

何か三人から珍獣みたいに見られてる。それにしてもこのジー様、何処かで会ってたっけなぁ?

 

「先生ってヴィジランテだったのにヒーローになったんですか?」

「ん? ヒーローにさせられただけで活動一切してないね」

「?????」

 

イズク君が混乱しとる。君はそのまま純粋で居てくれ。

 

「まあ、おじさんの話は後にして。今はイズク君のトレーニングの話しない?」

 

本来の目的からズレてるから軌道修正。

イズク君がOFAを薄く発動させて全身運動をしている。何というか……良いんじゃない? 昨日までと比べてめっちゃ良いぞ。

 

「緑谷少年! 昨日までと動きが全然違うじゃないか! どうやったんだ!?」

「その、昨日帰ってからOFAを1%発動させたまま生活してみたんです……そしたら今までスイッチの切り替えに割いてた思考がクリアになって、その分動きに集中出来るようになりました」

「ほぅ……昨日電話口で聞いてた分、体育祭の映像と合わせても印象が大分違うじゃねえか。よし、俺に撃ち込んできな」

 

暫く老人に対して暴力は~なんて言って進まなかったからイズク君の肩をトントンと叩いて事実開示。

 

「イズク君」

「あ、はい」

「おじさん、グラントリノより多分年上。君と、っていうか君のクラス全員と戦闘してもピンピンしてるんだから案外平気平気」

「へ? グ、グラントリノよりも年上……なんですか?」

 

困惑しているイズク君を横目にグラントリノが此方に矛を向ける。

 

「さっきも言ったがコイツは警察が認識してる()()のヴィジランテだぞ。オレがガキの頃からコイツは見た目変わってねえよ」

「うーん、おじさん君と会った事あるっけ? 思い出そうとしてるけどまったく思い出せん」

「あぁ?! てっめ、ワシの事をポンポン投げ転がした癖に忘れてやがるだと!?」

「(グラントリノを?)」

「(ポンポン投げ転がした?)」

 

キレ散らかしながらおじさんに食って掛かる老人。うーん、覚えてない。

次の瞬間には個性で鋭角的に移動し、おじさんの後頭部に蹴りを入れようとしてきたので左脚を下げながら首を動かして避けながら足を掴む。そんでもってその勢いのままジャイアントスイングでガイコツマンに老人を投げ渡す。

さっきのやり取りでピンと来た。

 

「君、ジャンピング少年か‼‼‼」

「やっと思い出しやがったか‼‼」

 

改めてまじまじと老人を見る。曲がった腰に縮んだ身長。

面影はあるものの当時と今の印象は全然違う。

 

「40年ぶり位? 印象まったく違うっつーか、身長とか変わり過ぎて分からんわ。そもそもおじさんと会った時って警察官だったじゃん」

「あの頃はあんたの担当だったからな。その後色々あってヒーローに転身したんだよ」

「はー、あんな偉丈夫って感じだった子が……こんなに小さくなって」

「おめーが変わらなすぎなんだよ! とっくに100超えてるはずだろうが! 何でそんなに変わらねぇんだ!」

「そーいう生体って事で」

「納得できるか!」

 

色々あったがイズク君の個性トレーニングは良い感じに収まった。個性の扱いというデータも取れたからおじさん的にもにっこり。

これ、旨くやれば疑似的にステータスを数値化出来ねぇか試すか。

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