生徒が林間合宿に行く少し前。
おじさんはリカバリーガールとジャンピング少年の二人と共に学校でガイコツマンの体調回復を図っていた。
字面を見ると治療の様だが実際はジャンピング少年からガイコツマンへの扱きである。
おじさんはソレをリカバリーガールと共に観察。
「あんたの見立てだと何処まで戻ってるんだい?」
「4割位かな?本人曰く全盛期って頃の動画との比較だからちょっと不透明だけど」
そう言ってから手元のノートに書き込む。
オールマイト(全盛期)
Lv推定4前半~4後半のステイタス
映像だからステイタスの詳細は分からんが大体のLvは推し量れた。頭オカシイ。
いや、この世界の人物が基本強くなれる下地が細胞的にあるけど、それでもプロヒーローでLv1後半かLv2なのにLv4って……。
その一方で今のステイタスはこちら。
オールマイト(現在)
Lv3
力:360
耐久:450
器用:620
敏捷:530
個性:18%
うん、強いね。弱ってもコレなら十分No1ヒーロー名乗れるわ。
「比較対象が無いから分からないね。他の子のステイタスは無いのかい?」
「他かぁ」
相澤
Lv2
力:103
耐久:79
器用:571
敏捷:409
個性:146%
「こんな感じ?」
「余計に分からなくなったよ。力とかの数値は如何いう意味だい」
「んー、一般20代の成人男性でLv1のステイタスがALL30位で個性の項目はどの位個性因子が活性化してるか。Lvはどの位他に影響を与えれるか」
「300で10人分の力って事かい?」
「ちょい違うけど捉え方はソレでいい」
個性因子があるからか、ある程度鍛えていくと勝手にLV上がるのよなこの世界。
「けどソレならオールマイトよりイレイザーヘッドの方が早い計算になっちまうよ?」
「あーソレはLvが関係してて……大まかにステイタスが上がるとLvが一つ上がってステイタスが0に戻る」
「Lv差ってのは本当の意味でLVが違うって事かい」
「Lvはステイタスを乗算的に加算させて、行動の規模を指数関数的に伸ばす。で、ここに個性の%が最後に加味されるけど……範囲が万別過ぎて一概にいえねぇや」
個性は最終出力値に関係する値だが加算だったり減算だったり、乗算、べき算もあれば除算される場合もある。
オールマイトは乗算タイプで対象は自分。相澤は除算タイプで対象が相手ってのがミソ。
「ヒーロー活動も色々みたいだし、あくまでも指針程度だね」
「それでも数字で分かるなら鍛える際の目安にはなるだろ?」
「そうだけどさー、数字だけ見て判断するアホ出そうで公にはしないほうが良さそうじゃね?」
「……ソレはありそうだね」
教師って面倒くさいなーなんてお茶しばいてたらジャンピング少年が戻って来た。
「っち、敏則の奴、大分鈍ってやがる」
「ガイコツマンのびてる?」
「やれやれ、程々にしないと治癒出来ないんだけどね」
「大きな怪我なんざさせてねえよ。それよりナイトメア。敏則をもうちょい治せねえのか?」
治せないのかと聞かれれば大体治せるってのが答えだが……ガイコツマンの身体で治してない部分あったっけ?
首を傾げてるとのびてるガイコツマンを指差すジャンピング少年。
「あいつのトゥルーフォームだよ。個性を使ってない時の状態はもうちょいどうにかならんのか?」
「あー、ソレは無理。いくら身体が治っても治った端から自分を苛め抜く馬鹿は一生治らん」
「「は??」」
呆れながらおじさんが言うと老人二人組は困惑の表情を浮かべる。そこでおじさんが用意した資料をノートPCに写して二人に見せる。
「これ、おじさんがガイコツマンを治した日付。んでこっちがそれまでのガイコツマンの事件解決件数。反対側が治療後。
見て分かる通り、アイツ治療よりもヒーロー活動優先してんのよ。そんな状態で身体が治ると思う?」
説明したら修羅の様に怒る老人二名。
今まで自分より他人を優先する生活をし過ぎた結果、自分の治療を後回しにしてしまうオールマイト。
廃人にするとかならまだしも、流石のおじさんでも他人の思考を弄る事は出来ません。
◆◆◆◆◆
そんな風に目上から叱られるNo1ヒーローを見ながら治療という名のトレーニングを続ける事数日。
就寝中の夜中に叩き起こされた。
眠気が抜けない頭で電話口に耳を当てて聞いてると襲撃に遭ったらしい
ふわふわしながら意識を電話口に向けると攫われた、爆轟、ヴィラン連合のキーワード
ソレを聞いておじさんは再び眠りに堕ちた。
明けて翌日
ラジオ体操をして朝食済ませてから全体会議室へ入るとお通夜モードの面々
「おはよう。カツト君攫われたって?」
空気を読まずに話題を投げる。
「ああ、今は救うための会議中さ」
「まあ助けるのは良いとして……ヴィラン連合の事何か分かった?」
「調査を進めて裏にAFOが居るであろう事は推察したけど、実態はサッパリさ」
「……専門用語で話されると分からんな、おーるふぉーわん? それは何?」
「……え???」
流れる沈黙。
「待って欲しいのさ! 君はAFOに対峙した事があるはず! 何故知らないんだい!?」
「……いや、おじさんは暴れてる子とか突っかかって来た子をしばく位しかして無いからAFOとか言われても……」
「じゃあ君がヴィジランテをしてる時に苦労した相手とか居なかったのかい?」
「……居たっけ? うーん、周りに合わせた身体スペックに落としてるけど今まで特に困らなかったからな。よく分からんな」
肝心のAFOに関して知らないので校長から説明を受けるが思い当たる相手が浮かばない。
「今まで本当に苦戦した事が無いのかい?」
「うーん、大体ジョークグッズで解決出来たし。話に聞くほどの奴ってのはちょっと思い浮かばんなぁ」
「ジョークグッズ?」
「一時期おじさんの異能を再現出来ないか試してた末に出来た道具の一つ」
ポケットをまさぐる仕草でトラベラーから玉を一つ取り出す。
「当たった相手の感覚を300倍にするボ~ル~」
ダミ声で玉の名前を言う、尚、正式名称は無い。無いったら無い。
「感覚を……」
「300倍?」
(対魔〇だ!)(対魔〇……)(アレか)
一部の者を除き全員が首を傾げる。もう遥か昔のコンテンツだしね、しょうがないね。
「本当はこれの10倍にしたかったけど……それはさておき、全感覚を300倍にするボールでね、当ててからダメージ受けたら発狂もののデバフアイテムだよ」
「……それって脳死するんじゃないかい?」
「するよ」
「殺人してたのかYO!」
プレゼントマイクが反応するが大丈夫。
「捕縛してから脳を治したから死んで無いし」
「パワープレイすぎる……」
全員がドン引きしている中一つだけ思い出した。
「あ、居たわ一人だけ」
「AFOかも知れない相手かい?」
「ソレは分からんけど……ボール当てても汗かくだけで耐えてた子居たわ。飛ぶから飛行少年って呼んでたけど、あの子位かな。おじさんに何度も挑んで来たのって」
「多分ソレだ。ボクが共有されてる情報だとキミはAFOと複数回戦闘してる筈さ」
「ほーん、そっか……あのデスアクメった少年がねぇ」
会議室に居た全員が全力で呟きを無視してヴィラン連合への対策を進める。
魔王のデスアクメというパワーワードなんて無かったと一同の脳裏にこびり付いたワードを忘れようと会議は回るのだった。
◆◆◆◆◆
皆が仕込みを終えて爆轟君救助に向かった学校でのんびりみかんを食べるおじさん。柑橘類の甘味に舌鼓を打ちつつリカバリーガールと一緒にTVを見る。
「皆今頃頑張ってるかねぇ」
「全員生徒の為に必死さね」
生徒の為に心砕けるってのは良い大人……いや、良い先生の証拠なんだろうねぇ。となると全く響いてないおじさんはやっぱ此処に居るべきじゃないと思うがどうなんじゃろか。
そんな事を考えてれば緊急ニュースが流れて来たと思ったらオールマイトが何かとやりあって……飛行少年じゃね?
「なー、リカバっちゃん。あれ、オールフォーなんちゃら?」
「ああ、聞いてる限りそうだろうね」
「ふーん」
何だかんだ元気に……いや、顔潰れてるじゃん。何で?
割と整った顔してたはずなのに何があった??
うーん、分からん事が多いな。しゃーない。
「リカバっちゃん。おじさんちょっと少年と会って来るわ」
「は? 何を言って……」
「対象『飛行少年』【テレポーテーション】」
◆◆◆◆◆
「だから、負けないんだよ!」
「いや、そこは止めとけバカタレ」
ドゴン!
そう言いながらガイコツマンにチョップするおじさん。ちょっとだけギアを上げてるおじさんのチョップに耐えきれずにガイコツマンは地面に沈んだ。
「は?」
「えっ……おーるまいと……」
「まったく、折角治してやったのにまーたこんなにボロボロになってからに。治してやらんぞバカタレが」
地面に伏せたガイコツマンの状態を確認してからゆっくり立ち上がる。あの頃の面影は欠片も残って無いが対面してみるとやっぱり飛行少年だ。
「よっ、お久」
「貴様……まさかこのタイミングで出てくるか。
「お前もおじさんの事を悪って付けるんかい。ひでーな、ワシ一般人ぞ?」
「貴様の様な一般人が居てたまるか!」
そう言って繰り出される右腕は何か凄いことになってた。太いし棘生えてたり、変な突起もあるし。
……こーいう生えてるのって外したくなる。試しに一本棘を抜くが割とあっさり抜ける。
「脆っ、ちゃんと飯食ってんのか?目とかも無くしてるみたいだし、どーなってんのよ」
「っぐ、クソがぁあ!黙れえええええ!!」
両手を肥大化させて殴って来る飛行少年の腕を適当に弾きながら会話を続ける。
「以前突っかかって来た時に手の届く範囲に余計な事しなけりゃって話したの覚えてるか? もう20年以上前だと思うけど」
ラッシュ速度が上がって来るが手のひらで受け止める。当たっても子供の体当たり程度の威力なので痛みは無い。
色々と決別した直後位ならもうちょい痛かったかもしれんが今となってはだ。
「LV4位かな……うんうん、強い強い」
「このっ、ああああああああっ!!!」
カウンターが発動しない様に優しく受け止めながらちょいちょい棘を抜く。なーんかこういうの取りたくなるのは何故だろうか、瘡蓋とか。
「そんでさぁ、最近おじさん元いた所から全国行脚っつーの? 老後の楽しみとして旅してたらソコに転がってるガイコツマンに教師としてスカウトされてさぁ」
「ヴウゥアアアアァ‼‼ ラアァアアアアアア‼‼‼」
流石に鬱陶しいので防御ついでに飛行少年の両手を圧し折る。
「あっ、あああああ?!! ガアアアあああ!!」
折れた両腕をそのままに今度は左脚を変化させて蹴りを出してくる。そして運悪く斬る系の個性を使って来た為に思わず反射行動で迎撃してしまった。
その結果……
ズパッ!!
「あっ」
「~~~~っっ!!!?!!??!」
ライトセイバー擬きで足を焼き切ってしまった。
ここまでやってしまったら仕方がないので妙に手加減するのも止める。
抜刀状態のセイバーを解除しながら左手でおじさんストライク。身体をくの字に折り曲げられたAFOがビルを複数突き抜けてやっと止まる。
内臓へのダメージがあり血反吐をまき散らすAFOの首根っこを掴んで持ち上げオールマイトの居る場所へ戻る。
「よし、無理矢理にでも話聞いてもら……ヘリうるせぇな」
上でめっちゃ飛んでるヘリが邪魔くさい。足元に転がってるコンクリート片を(人の頭位)を片手に持ってヘリのローターへ投げる。
BOOM!
墜落していくヘリを周りで見ていたヒーローが助けた為に人的被害は無さそう。ヨシ。
「そんじゃ、改めて聞いてもらうぞ。あぁ、ついでにガイコツマンが守ろうとしてた子を助け……」
とか考えてたらジャンピング少年が要救護者を助けてこっちへ来た。
「こっちで助けたよ。オメーはまた力技でやりやがって……こりゃ隠ぺいなんて出来ねえぞ」
「あーん、まぁいいんじゃね? 元々乞われて教師やってるだけだし、余命尽きるまでならソコ数年根無し草すりゃ良いだけだろ」
「オメーがソレで良いなら良いけどな」
救助された子のケガだけパっと治して近づいてきた警察関係者にジャンピング少年が引き渡す。
「さてと」
AFOの顔を右手で触れて【幸運脂肪】で顔を治す。削がれた鼻を作り、潰れた目を再生して瞼を作る。
「ほれ、止血と痛みは消したし顔は治したからゆっくり眼を開けて見ろ」
「うっ……」
AFOが苦しそうにしながら目を開けて此方を見る。
「よう、少年。何十年ぶりか忘れたけど……おめーも年とったなー」
「……貴様は変わらないな悪魔」
「見た目だけはな、さっきも言ったがボチボチ寿命だし死ぬまでに全国色々見に行くかーって旅してたらよぉ」
「は? 寿命?」
「そうそう、多分後数年だと思うぞ?」
「くそっ、開始のタイミングを見誤ったか」
「あるよな、もう少しタイミングが違えばー何て。つーか顔どしたん。治したけどグチャグチャだったぞ」
「以前、ソコの元筋肉ダルマにやられてね」
ふーん、と言いつつガイコツマンを見る飛行少年の目を覗き込む。
増悪じゃない何かがある。
「因みにガイコツマンに何したかったの?」
「そりゃ勿論復讐さ、身体をぐちゃぐちゃにされたんだぜ?」
「それだけじゃ「貴様何をやっている!!!」……?」
会話の邪魔されて声の方を見れば火を纏ったマッチョ。
「復讐にしちゃ回りくどいから何か有るかと思ったんだけど」
「ああ、弟を取り返したいのさ」
「無視するなあ!!!!」
no2ヒーローの必殺技、ヘルスパイダーが繰り出された。