いくつもの炎のムチがこちらに迫ってくる。急な攻撃に一瞬呆けてしまい無意識の行動をとってしまった。
手近にあったモノをつい使ってしまったんだ……。
「飛行少年バリアー」
「ぐああああああああ!」
肉を焼く匂いについつい眉根を寄せてしまう。
「近くに居たからつい・・・おめっ!少年の顔がまた酷い事に!おのれエンデヴァー!」
「「「おめーだろ!!!!」」」
周囲に居た人間全員が異口同音に叫ぶ。
一瞬
エンデヴァーは風が起きたのを感じた次の瞬間には腹が爆発した。正確には爆発を受けたと錯覚する打撃を受けていた。
「っ……!!?!?!?」
声にならない。息も据えない。
ただただ痛みに行動が支配される。長いヒーロー活動の中で酷いケガを負った事もあるが痛みで行動不能など今までに無い感覚だった。
「飛行少年には昔言ったけどさ、何発も打つ必要無いのよ。意識トぶ攻撃を1発入れりゃ良い」
飛行少年の顔を直しながらエンデヴァーの方を指さす。
「……それが出来ればこんなに苦労してないけどね。それと僕を弾除けにした事は別で許さんからな」
「直したんだから良いじゃん。お前さん下地はあるのに勿体ないねぇ」
バカ共のやり取りを見ながら改めてグラントリノは思う。
『次元が違う』
行動の起こりすら知賞が出来ない、行動の結果、その残滓をやっと捕らえられたと思えば既に行動は終わっている。これでは何もできる事が無い。
少なくとも自分やオールマイトの様に自ら動くタイプは何も出来ずに沈むのが間違いない。そう確信するだけの実力差がソコにはあった。
国から依頼された重すぎる依頼。対象の人となりから多少繋がりのある自分が選出されたらしいが……暴力で止めるのは無理だという事を改めて見せつけられた。
「まったく……生い先短いワシにやらせる仕事じゃねえ」
「なぁ飛行少年……お前は宇宙を感じた事があるか?」
「何をするつもりか分からないが……猛烈に嫌な予感はする」
にやりと笑って動けないエンデヴァーの方を向く。言葉と共に意識を切り替える。
「燃え上がれ
そう言いながら左手を右手の拳に重ね、右手を腰だめに構えた。右手の周囲が暗く、光を……空気を……あらゆるモノを飲み込んでいく。
腕のあった箇所は闇を固めた暗がりとなるが尚も暗がりは濃く、重くなっていく。異常すぎる力に痛みでまともに動けないエンデヴァーは焦りを覚える。
オールマイトが倒された事、巨悪も倒されたが回復している事。怪しい男を攻撃するも自分の攻撃を容易く対処された上に反撃で何も出来ない状態である事。
こんな不穏な状況下でNO2である自分が負ける事はあってはならない。
そんなエンデヴァーの焦り知らないとばかり、おじさんの腕に最後の変化……光が灯り始める。
「右手に宿るのは宇宙。これがおじさんの最新必殺――――
男が距離のあるままに拳を振り抜いたその瞬間。
エンデヴァーは自分に降り注ぐ数百という隕石群を幻視した。
襲いくる衝撃。一度でなく何百回も。
一発一発がオールマイトを思わせるソレはエンデヴァーの意識を一瞬で飛ばした。
意識が飛ぶまでの一瞬、エンデヴァーはオールマイトに対して抱いた敗北感とは別種の、まるで雄大な山を見上げる様な気分を抱いて意識を飛ばした。
BAKOOOM‼‼‼‼‼
キラーンッ そんな効果音が聞こえて来そうな程に空の彼方へ吹き飛んだエンデヴァー。後日エンデヴァーは星になった気分だと語ったとか。
「……と言う訳で、最近知り合ったスペちゃんの個性模倣で出来た新技。どうよ。宇宙っぽいだろ」
「ぽいって言うか、宇宙を内包した拳?」
「おー、鋭いな。宇宙創成の仕組みを体内で再現してそのエネルギーの表層部分をちょろっと拳に乗せて撃つのがミソだ。エネルギー乗せすぎると街が消し飛ぶからな」
アホな事を言うバカと気が抜けてる宿敵。そして近くに転がるアホ弟子。
グラントリノは頭が痛くなるのを我慢しながら口を開く。
「おい、アホ弟子とバカ。そこの宿敵をタルタロスへ送るから準備しろ」
「は? ソレを決めるのはおじさんだが?」
「……は?」
「いや、だって倒したのおじさんだし。どうするかはおじさんが決めるけど」
「何言ってやがんだ! そいつを今タルタロスに入れておかねーと後々面倒になるだろうが!」
ぷりぷりと怒るジャンピング少年だがおじさんからしたらどっちでもいいんだよね。
「ソレはソッチの都合っしょ? おじさんからすると飛行少年が何処に居ても問題ないし……何かあればコイツとオールマイトの両方全快させて戦う場所整えようや」
愕然とした表情でおじさんを見るジャンピング少年と少ない体力で笑う飛行少年。
「おまっ……お前ー!」
「あはははは……はーっ、そうそう、悪魔はそうだね。都合よく動きはしない。そんな事が出来るなら僕ももっと派手に動けたはずなんだ」
「ああ、ついでに飛行少年の言う弟は抽出してお前さんに戻すか。そうすりゃガイコツマンとも本気の本気で殴れ……あっ、違うじゃん。もう別の所に渡ってるのか」
「……個性にも干渉出来るのか」
「個性っつーか体にだな。個性なんて体の一部なんだから干渉出来て当たり前だろ」
「ついでに聞くけど昔も今も……僕の攻撃<個性>の悉くが効かなかったのは何故だい?」
「は? 自分より弱い攻撃を受けても平然としてられるのは普通だろ?」
身も蓋もない言葉に笑いがこみ上げる。昔から知ってる邪魔者。ソレは今も変わらないがその在り方が変わらずヒーローにも向いていると言うだけで気分が良かった。
「悪魔はどこまで行っても悪魔か」
「あん?」
「教師なんてやってると言うからてっきりヒーローになったと思ったよ」
「簡便してくれよ、なんで俺があんな人気商売しなきゃならんのじゃ。きっしょくわるい」
心底嫌だとしかめっ面にますます笑いが深くなるAFO。
(何処までもマイペースかつ、他人に左右されない精神、更に驚異的な肉体強度……ほしい……悪魔を器にすれば僕の夢は盤石じゃないか。真偽を判定する個性が本当だと訴えてくる……寿命だと言ってるのは本当の事、ならその時が来てから手に入れれば良い。力の秘密はドクターが暴いて最悪でもその因子を僕に植え付ければ……)
(多分あくどい事考えてるんだろなぁ)
そんなAFOを見ながらおじさんはのほほんと次にやることに思いをはせる。
「とりあえずガイコツマンと飛行少年を並べて記者会見でもすっか」
「「は?」」