特撮勢の恋愛相談は俺には荷が重い! 作:新帯睦己
誤字報告して下さった方、ありがとうございます
「ママー、アレすごいねー」
結城(ゆうき)商店街のとある一角に、まばらながらも人だかりができている場所があった。
その中心地にはドラゴン型の着ぐるみのがバランスボールに乗っている。
竜は玉乗り仕込まれるべきなのだ。宇宙一の武道家もそう言っていた。
ゆるキャラ風だが、その動きは機敏。
ヨーヨーの先に錘をつけてヌンチャクの如く振り回していた。
そんな事ができるのはこの俺、基成準一である!
最後に決めポーズをして、ヒーロー着地をかます。
「”キルドラ”くんの生パフォーマンスはいかがでしたでしょうか?キルドラくんの握手会は此方でどうぞ。結城商店街のレシート3000円分で一口とさせて頂きます」
因みにチェキは5000円のレシートが必要になるぞ。
ひーふーみー、今日は30人か。
前から思うんだけど、このやり口汚くね。
”キルドラ”くんを作った俺が言う事じゃないけど。
かつて斜陽気味の結城商店街が起死回生の秘策としてゆるキャラをトーナメント形式で募集。
予算もなかったので、各々が完成品を持ち込むことになった。
あの日の話は長くなるので割愛だ。
蓮の妖精のゆるキャラを打ち負かし、結城商店街専属のゆるキャラの座を勝ち取ったのだ。
三点で相手を吹き飛ばす『トライブレードアタック』の敵ではなかったという訳だ。
サイン&チェキ会を終えた俺は商店街の共同休憩所で着ぐるみの頭を取って一息吐いた。
「あ~、疲れたー。蒸しアチぃ」
そんな感じでウダウダしているとーーーー、
「キルドラくんの中身が基成っちぃーーー!?」
「焦野さん!?ていうかウェイトレス姿が似合い過ぎ!」
喫茶アリュームの制服は近未来ファンタジー感がある金属の装飾が施されていて、普通ならコスプレっぽくなるところだが、超美人の焦野さんは着こなしている。
「ありがと。でも、キルドラくんの中身が基成っちなのは、衝撃なんだけど」
「ゆるキャラの中身は得てして、そんなもんよ。そもそも、キルドラくんの製作者は俺だぞ」
「マジ!?」
「原案・製作全てやったからな。結城商店街のゆるキャラグランプリを勝ち上がっての採用なんだぜ」
「そうなんだ。そういえば、キルドラ君って商店街で引っ張りだこよね。お給料もいいんじゃない?」
「それならよかったんだけどな。商店街の商品券しかもらえないぜ」
一応、着ぐるみに中の人はいない設定だから現金もらえないんよね。
最も現金換算すると、割といい値段にはなる。だけど、1度使える制限があるからもらうものに対してあまり使えないんだけどな。
「それは残念。給料がよかったら、そっちもやってみたかったな」
「焦野さんって苦学生なん?」
私服も着飾っていてお洒落でお金に不自由する感じがなさそうなのに意外だな。
待てよ?むしろ逆か?
「流行やお洒落の最先端って、割とお金がかかるのか?」
「んー。ま、そんなとこかな。このカフェ、給料良いし」
「なるほど。そういえば、クラスメイトも言っていたな。カードゲームもファッションも流行があるから、金がかかるって」
勝一、秋林がTCGとファッションの類似性を熱く語っていたな。
彼女ができるまでファッションに全く興味がなかった癖に。
「何その変な例え?あ、そうだ!基成っち、いつバイト上がり?」
「夕方かな?何かあるの?」
「今度の勉強会のお菓子、ここで買わない?」
「それはいいな。商品券、結構あるからちょうどいいぜ」
あっという間に約束の時間になった。集合場所はさっきの休憩所だ。
無論、俺は超速で準備した。だって当然だろ、男の子なら。
え、眼中にない?それはそう。
「えへへー、私の方が早かったね」
まさかの向こうの方が早かった。コッチに気づいてにこやかに振り返る。
ショートカットで服もノースリーブだから肩やうなじがよく見えてドキッっとしてしまう。
「スマン、遅くなった。というか、俺も急いだんだけど、なんでそっちの方が早いんだ?」
「今日はちょっとだけ仕事が早く終わったんだ。どこから行くの?ココならではの物を買いたいな」
「だったら、駄菓子かな。猫丁(ねこちょう)菓子屋と伊佐夜(いざや)商店に行こう。両方とも安いし、個性的な商品が多いぜ」
「伊佐夜商店は知ってるけど、猫丁商店街は行ったことがないなぁ」
「道案内は任せろ、キルドラくんは商店街の全ての店に精通しているからな」
「それは心強いね。それじゃ、任せたよっ」
猫丁駄菓子屋、このお店は結城商店街創設当初からある老舗。
店の由来は入口の狭さだそうだ。入口を少し進むと、レトロな空間が広がる。
店内にはS字フックに様々な駄菓子が吊るされていていたり、瓶詰めされていたりと数十年前にタイムスリップしたかのようなお店だ。
「こんなお店があったんだ。知らなかった」
「だろ?商店街から微妙に横道に逸れた狭い場所にあるから見つけにくいんだ。案内する人がいないとマジで気づかないぞ」
俺も爺ちゃんと一緒に来なかったら知らないままだったろうな。
店の戸をガラガラと開けると小柄なおばあさんが奥の畳にちょこんと腰かけていた。
「めんこい子たちが来たねぇ」
分かるのか。見る目あるなぁ。
「やはり、美男美女カップルは様になるって事か・・・イタッ!」
「調子にのんな!」
カツンと脳天にチョップが振り下ろされる。
「メンゴ、つい・・・」
「私は灯矢一筋なんだからねっ」
心外だ、と言わんばかりに可愛らしく頬をプクッと膨らませる。
「そだねー。ところで、ラムネ菓子にミニドーナツはどうかな?」
「その辺は任せるよ。あ、小さいグミがたくさん入った平べったいやつ、可愛くない?」
「そいつも買うか」
こんなもの、俺の商品券なら3600個は買えるぜ。
これだけ買ってもまだ、200円程度。
余裕すぎる。
「あ、当たり付きのお菓子だって、たくさん買えば当たるかな」
指差したのはサッカーボールを模したクランチチョコのお菓子、”チョッカーボール”だ。
「ソレ、マジで当たんねぇぞ。小学校の遠足のおやつで30個買ったけど、全部ハズレだったからな。小当たりですら見たことねぇ」
あの痛ましい記憶は俺の中で”チョッカーボール”事件としてトラウマになっている。
30個の”シュートミス”の文字は今でも思い出す程だ。
「ふーん。じゃあ、1個ずつ買って今食べよ。元々、期待していないんだったら関係ないよね」
「了解」
チョッカーボール、2個入りまーす。
~
「早速、食べてみようよ。当たりは出るかな?」
「やっぱり、アタリを狙ってんじゃねぇか」
こういうのは物欲センサーが働くんだぞ。ソースは俺。
「最初から諦めたら、何事も始まらないよ」
それはそうだが、リターンは10円の駄菓子なんだよな。
「そうだな。折角だから、いっせーのーで食ってから結果をみようぜ」
「それ、おもしろそう!」
「せーのっ!」「せーの」
”シュートミス”
でしょうね。
「わっ、”フリーキック”!」
「小当たりじゃねぇか」
当たりって存在してたのか。名前自体は聞いたことがあるが。
「フリーキックって事はもう1個貰えるのかな?貰てくるね」
「こういうのって、4つ1セットじゃ・・・」
あ、行っちゃった。
しかし、なんで当たりの名称知っていたのかな?
都市伝説かな?子供の頃の噂ってなんでこう由来不明なんだろうな。
それにしても、意外と時間かかっているな。これはもしや。
「お待たせ、もう1個貰てきたよ」
「フリーキックって1個オマケが付くのか?複数枚必要かと思っていた」
「フリーキックだから、もう1回チャンスがあるって事じゃないの?」
確かに。リアルで考えたらそうだよな。
「はぁ、そういうことか・・・待てよ。という事なら”ゴール”だと何がもらえるんだ?」
「おばあちゃん、何も言ってなかったなぁ」
俺達はどんな景品がくるのか話をしながら次の店に向かった。
次回は明日の18:00に投稿予定です