特撮勢の恋愛相談は俺には荷が重い! 作:新帯睦己
「次は伊佐夜商店だね。あそこは何回か行ったことがあるよー」
「あそこいろんなものが揃うからな。地味に普通のスーパーが扱ていないものも置いているし」
「惣菜も安くていいよね」
「だな。ま、アミュールでバイトしているもんな」
「そういう事」
次の瞬間———、
突如、爆音が奔った。
「カールカルカルカル!」
ケタケタケタと笑い声をあげながら白色の怪人が剣と盾を無茶苦茶に振り回して周囲を破壊していた。
その姿はまるで骸骨。いや、よく見ると骸骨を模した鎧だ。まさに外骨格と言うべきモノ。
骨の剣と縦を携えているその姿は正に騎士だが、でたらめに暴れまわる姿からそうは思えない。
またかよ。だけど幸運なことにまだ距離は遠い。
3日に1回は遭遇している気がするな。
ここまでくるともはや怪人から逃げるプロになっているんじゃないだろうか。
そのプロが出した最適解はコッチに気づく前に逃げる事。
チラリと焦野さんを見やると大きく目を見開いている。
ショックを感じているだろうな。
俺が何とかしないと・・・。
「焦野さん」
大きく声を出さないようにしつつも焦野さんにはハッキリ聞こえるように呼び掛けた。
揺れる眼差し。どうすべきか迷っているのだろうか。
だけど迷っている時間はない。
「ゴメン」
彼女の二の腕を掴み近くの魚屋まで引っ張る。
「わ・・・」
~
「ここまで来れば大丈夫だよな。大丈夫か、焦野さん?」
何とか無事にたどり着けた。
転ばさせないように走ったから息が切れた。
「ええと、その・・・、基成っちは・・・」
何か言いかけようとしたが、それは中断された。
「カカカカ、カ」
奴がまた来たからだ。なんでこっちに来るんだよ!
物陰に隠れつつもチラリと状況を確認する。
奴は魚を一尾持ち上げると鞘から抜刀するように尾を引っ張ると、骨だけがスルッと出てきた。
何そのカミワザ。
そして器用に口元に放り込む。骨、なるほど。カルシウムって事か。
この隙に逃げ出したいところだが、こっちにも注意を払っている気がするんだよな。
とにかく、今は焦野さんを逃がすことだけを考えないとな。
恐らく怯えている筈・・・。そう思って横目で見る。
だが、彼女は毅然とした表情で怪人を見据えていた。
更に俺を制し、前に進み出る。
「焦野さん・・・?」
軽く握った拳を首元に構える。
「基成っち、下がって」
このパターンってまさか・・・、2号戦士?
「人前ではやりたくなかったけど、しょーがない」
胸骨の上部をデコピンの要領でトン、と弾いた。
すると、弾いた場所から小さな白色のキューブが無数にあふれ出し、焦野さんに降り注いだ。
【Replace Oxegen】
キューブが止むと、雪化粧をした地面の上に佇む純白の姿が露になる・・・って、怪人(ソッチ)かよ!
ていうか、見覚えがあるような・・・。
この間のカマキリみたいなヤツと戦っていた竜の手甲を持つ炎を纏う白の怪人の姿がフラッシュバックした。
つうか、この前に見た怪人じゃん。
竜の尾のようなポニーテールをなびかせながらこちらを向く。
「・・・後で説明するよ」
ヒュゴゥとマフラーから火炎がたなびく。
刹那、骨の怪人を巻き込んで外に飛んで行った。
「速っ!」
店の外に出て、外を見上げる。
「何だアレ・・・」
空中に怪人が浮かんでいた。
どうして、と思う間に幾重もの炎のラインが怪人の間に縦横無尽に伸びていた。
いや、焦野さん―オキシジェン・プレヴィクターかな?が空中コンボで拘束しているのか。
(あの固め性能、格ゲーじゃ出禁だろ・・・)
「せーのっ!」
最後は両拳を合わせてハンマーのように振り下ろした。
ドォオオオンという爆音を響かせながら地面に叩きつけられる骨怪人。
あまりの衝撃に地面が揺れたぞ。
怪人はもはや動かなくなっていた。オーバーキル・・・。
「カル、あんた酸素足りてなかったね」
ヨイショっとエコーがかった可愛らしい声で骨怪人を抱え込んだ。
再び彼女のマフラーから炎が漏れていく。
「基成っち、どいてー」
先ほど飛び出た時のように今度は店に突っ込んでいった。
俺も店の中に入って、中を覗き込む。
ダラリとした骨怪人をに心配そうに呼びかけていた。
ヤッたの、オキシジェン(焦野さん)じゃん
声はよく聞こえなかったが、どういう事だ?
彼女は意を決したようにうなずくと、両手を翳す。
すると、金色の光の粒子が骨怪人にのびていった。
「お願い、戻って・・・!」
光の粒子が骨怪人の体に流れ込んでいく。
怪人の体が徐々に輝き出す。
少しすると光が弾け人の姿を取り戻した。
「くっ、これは」
青年が唸るように声を絞り出す。
その声を聞いた焦野さんは怪人化を解除して、焦野さんから安堵のため息が漏れた。
「良かった・・・」
何か元に戻ったぞ。しかも記憶がありそうだな。
「・・・アル、いる?」
え、新キャラ?
『いますよ、幹部オキシジェン』
今、何もないところから声がしたぞ。
しかも、焦野さんが幹部!?マジかよ。
「彼を連れて、身を隠して」
『仰せのままに』
直後、骨怪人だった青年は始めからいなかったようにこの場から消え失せた。
「今回は間に合ってよかった・・・」
今回は・・・?うまくいかないこともあったのか?
「えっと、焦野さん・・・」
「あー、うん。ちゃんと説明しなくちゃだよね」
一瞬、ハッとなるも所在なさげに瞳を泳がせる。
ここで敢えてぶっこむ。それが俺。
「焦野さんが特撮怪人だったってコト?」
「特さ・・・。ん、ちょっとついてきてもらっていいいかな」
ガシッと肩が捕まれる。
あれ、コレ地雷踏んだ?
~
グイグイ引っ張られ、俺達は商店街の裏通りに連れこまれる。
こんなところあったっけ?
【Replace Oxgen】
いきなり怪人化かよ。
「もしや処される?」
「クラスメイトにそんなことしないってば。よっ、と」
パッと火炎のカーテンが周囲に広がり、周囲を包み込んだ。
逃げられないヤツじゃん。
「こうすれば、ダブルでジャミングできるからね。他言無用のお話をするならなおさらだよ」
「他言無用ね・・・。あ、そうだ。言い忘れたいたけど、前回も今回も助けてくれてマジでありがとう。ホント命の恩人だよ」
「あはは、身内の不祥事だからね。むしろ申し訳なさすぎるよ・・・」
スッと沈痛そうな面持ちになる。
幹部って言っていたし。責任を感じているんだろうな。
「まぁ、今生きてるし。交通事故みたいなもんだろ」
「いや、これは私達が引き起こした問題だからね。とにかく、私達は普通はああならないの。イオニックエナジーが極端に少なくなるとああやって暴走するようなの」
「暴走って事は自分の意志で暴れないって事か」
「そうだよ。アタシたちの目的は、今までの日常通りに生きる事」
そして、と区切り、まなじりを上げる。
「アタシ達をこんな体にしたヤツの正体を突き止めて、元の体に戻る事!」
「怪人化させたヤツがいるのか・・・!?」
コレ、すげぇ重要な情報なんじゃないか。
真の黒幕がいるって事だよな・・・。
「うん、だけど手掛かりが全くないんだ。怪人化させた時にチラっと見ただけだし」
「むぅ、俺も何とか協力したいところだけどなぁ」
「ありがと、気持ちだけ受け取っておくよ。でもキミは関わっちゃダメだからね」
「わかったよ。あと1つ教えてほしいんだけど、焦野さんは大丈夫なのか?友達が街で暴れるところなんて見たくないぞ」
最悪、淡海さん―エキュアとの殺し合いになる。それだけは避けないと。
「アタシなら大丈夫。イオニックエナジーはめっちゃあるからね。伊達に”放課後同盟”の幹部じゃないからね」
ドヤっておる。
「んって、ことはさっきの光って元素エナジーなのか?」
「お、鋭いね。なくなりそうなら補充すれば何とかなるからね」
「ますます、心配になるんだけど・・・」
本人が大丈夫って言っているなら大丈夫だと思いたいけどな・・・。
「そういえば、”放課後同盟”って、なかなか個性的なネーミングセンスだな。誰が作ったんだ?」
「そうかな?カッコよくない?とにかくこの話は一旦終わり。私も1つだけお願いがあるんだ」
え、なんかあるの?待てよ・・・。このパターンは、まさか・・・!
よくみると、周囲の炎のカーテンが揺らめいている。
「基成っちって、灯矢クンと仲がいいもんね。私が言っていることが分かるよね」
小首を傾げる白色怪人。普段そう言ってくれればプレッシャーはないのだが、今は命の危険を感じるぜ、ヒュウ。
「・・・」
やっぱり、このパターンかよ!
どっちについてもヘルモードじゃねぇか!
ラブコメ主人公よ、ここから先が地獄だぞ!
ヒロイン達が特撮ヒーローと怪人な模様。
11話 友達になったあの娘は、特撮怪人
「ちなみに、私達はストレスが貯まるとイオニックエナジーが減って自分を保てなくなるから、頼んだよー」
絶対、軟着陸させてやる・・・!
次回は明日の18:00に投稿予定です