初対面なのに彼女面してくるノノミ&ミカ&カズサ&キキョウ………etc   作:ハッピーエンド大好きクラブ

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第三話「十六夜ノノミのトラウマ・前編」

 

 

頭部は花のように開き、赤い後輪を背負った巨大な怪物──ベアトリーチェ。

彼女は今、とてつもない高揚感に包まれていた。計画はカナタの介入により失敗したものの、彼の持つ「破滅のカード」の力を取り込むことが出来た。

彼の左腕を食い千切り、摂取する形で手に入れた邪な神秘。

 

他の神秘を寄せ付けない圧倒的な美の肉体。

もはや儀式などどうでもいい。

 

────見よこの力を。腕を振るうだけで建物は木っ端微塵と化し更地へ還る。

 

────目に焼き付けよ我が姿を。遂に至高の存在へ至ったのだ。「色彩」なんぞに頼る必要はない、究極の高みへ到達した。

 

 

ベアトリーチェの視界に、カナタが映る。生きていた事実を知り、今度こそ止めを刺すために動き出す。

カナタが腰を低くして単身で突っ込んできた。ベアトリーチェは頬が裂けるほどの嘲笑を浮かべる。

 

"馬鹿め。痛みで思考を溝に捨てたのか"

 

頭の中でどう殺害するか考える。よし、握り潰そう。先生とサオリ達の前でカナタを握りつぶし、肉片をぶち撒けてやる。

 

その思考は、カナタの蹴り一発で吹き飛ばされる。

 

『──────!?!??!!』

 

カナタの動きに反応できなかった。ベアトリーチェはいつの間にか空中に身を踊らせている。

腹部に強い痛みを感じ、攻撃されたことを理解した。

 

『グゥっ……!!ガ、カナ────』

 

「何言ってるか聞こえないよ!」

 

一蹴りでベアトリーチェを上空まで飛ばしたカナタは地面を蹴って彼女の元へジャンプする。

体を折りたたみ、ベアトリーチェの顔面へ思い切りドロップキックをぶちかます。

 

『ブかァッ』

 

無様な声を上げて住宅地へ落下する。痛みにもんどり打つベアトリーチェは顔から滴る液体に気づく。

それは血だった。顔を手で覆い、ベアトリーチェは驚愕する。

あり得ない、この肉体に傷をつけるなんて。

 

『私の……高貴な…………血を……くっ……薄汚れた、下賤で、憎たらしい、一番に搾取されるべき餓鬼が………私に血をををををを!!』

 

「自分の血で化粧すれば少しはマシになるんじゃない?只でさえ不細工なんだから」

 

怒りに囚われたベアトリーチェ。カナタと猛烈な肉弾戦を繰り広げながらアリウス自治区を破壊していく。

カナタは事あるごとにベアトリーチェを挑発し、彼女が冷静さを欠くよう仕向けていく。

けれど彼は決して優位に立っているわけではない。

 

寧ろ劣勢なのはカナタの方だ。利き腕を失い、破滅の力の殆どを奪われた状態でまともに戦えるはずがない。

意識は徐々に朦朧となっていく。体から力が抜けていく。

内臓機能が著しく低下。カナタは口から真っ黒な血を大量に吐いてしまった。

それにより動きが止まる。ベアトリーチェはニヤリと笑って巨大化させた手のひらでカナタを包む。全力で握り締めたあと適当な方角へ投げ飛ばした。

 

 

 

音速に近い速度で投げられ、一軒家を何軒も貫通して吹き飛んでいく。カナタはなんとか体勢を直し、地面に右手を突っ込んで勢いを殺していく。

地面は抉れ、幸いにも速度を殺しきることができた。

 

「ごふぁ………はぁ…………ぐ…………がへぁっ」

 

また吐血する。

アリウススクワッドは力を使い果たした、ゲヘナ風紀委員は全滅、正義実現委員会も同様。

カナタと一緒に戦える生徒は誰一人残っていない。

 

「…………………くそっ」

 

ノノミにあんなことを言ったのに、足の震えが止まらない。逃げ出したい、あんなの放って我武者羅にこの場から離れたい。

帰って美味しい柴関ラーメンをお腹いっぱい食べてお風呂に入って温かいベッドで眠りたい。

 

怖くてたまらない。死にたくなんか無い。まだ生きていたい。

カナタは涙を拭った。恐怖を理性で押さえ付ける。

ベアトリーチェにダメージを与えられるのは自分だけだ。

皆を助けられるのも自分だけなんだ。ならやらないと。言い訳も後悔も全部捨ててベアトリーチェを殺す。

 

命を賭けて。

 

食い千切られた左腕、その断面から灰色の突起物が突き出る。

迫りくるベアトリーチェを視界に入れたまま、カナタはその突起物を掴んだ。

 

「う"う"」

 

気を失いそうになるほどの痛みを我慢し、徐々に徐々に突起物を引っ張っていく。

 

カナタの不可解な行動にベアトリーチェは思わず動きを止めてしまう。目を細め、注意深く観察する。

 

う"ぅぅ"………うぅうぅぅがぁぁああああ!!!!

 

『なっ──────』

 

ベアトリーチェは目を疑った。左肩から生えた棘のようなものを引っ張ると、血と共に異形の腕が飛び出したのだ。

思わず数歩後退してしまう。

 

『な、何故腕が……………私が奪ったはず!』

 

カナタは答えない。異形の腕からは漆黒の電雷が迸る。

 

 

ベアトリーチェが理解したのは彼がより深く破滅と繋がったことだ。

 

『それが何だと言うのです!私は究極の高みへ至った!貴様のような餓鬼が、何をしようと全て無駄、無駄無駄無駄無駄、ききっ、うばで、きゃぃたのゆつえの』

 

「……………?」

 

『きぎぎぎぎぎ、こ、な、何が、私は、な、何をしたカナタァッ!!』

 

「何もしてないよ。大体察しはつくけどね」

 

ベアトリーチェに起きた異変。言葉がうまく発せず、思っていないことを口走る。体の制御が効かず、所構わず暴れ出してしまう。

正常なのは思考だけ。まるで操り人形のような気分だ。

 

ただただ不愉快。ベアトリーチェは雄叫びをあげて肥大化させた腕をカナタへ伸ばす。

だがそれよりも速く、カナタはベアトリーチェの懐へ移動していた。

手のひらを腹部に当てて、目一杯前方へ押し出す。

自分よりも遥かに小さい子供に体を持っていかれている事実にベアトリーチェは怒り狂う。

腹部から触手を生やし、カナタの肉体を貫く。だが止まらない。

血反吐を吐いても、痛みに負けそうになっても、足を止めない。

 

カナタは自分にひたすら「頑張れ!」と言い続ける。

 

先生と生徒から出来るだけベアトリーチェを引き離す。

腹を切り裂かれても、足をへし折られても、顔面を潰されても一秒にも満たない間に再生する。

ベアトリーチェにはない力だ、彼女は何度傷を付けても止まらないカナタに背筋が凍りつく。

 

すると、カナタは口をあんぐりと開けた。喉奥から灰色の光が灯り、だんだんと強く輝き出す。

 

がぁっ!!

 

破滅の力をエネルギーへ変換し、それを口内からビーム状として解き放った。

灰色の光線はベアトリーチェの左半身を根こそぎ灼き尽くす。

 

『くぎゃぁぁあああああああああ!!』

 

焼け爛れた口内はもう再生を終えた。痛みに耐えられず暴れ出すベアトリーチェの腹部に左腕を突き刺し、黒い電雷を放出する。

 

『馬鹿な……!破滅の力は私が取り込んだはず!貴様のような餓鬼にどうして!私は……私は至高の存在へ至ったのよ!!』

 

「言ってればいい!お前はここで死ぬ!僕がお前を殺す!」

 

『巫山戯るな巫山戯るな巫山戯るなぁあああああ!』

 

『私から何を奪うつもり!?私から、一体、何ををぁををを"!!?』

 

「────お前の全てだ!」

 

殺意の込められた瞳、鬼の形相で叫ぶカナタを前に、

ベアトリーチェはやっと気付いた。自分が目の前の子供に殺されることを。

人の形をした化物(カナタ)に、惨たらしく殺されるビジョンが浮かんだ。

 

『──────ひぃ』

 

心の底から悲鳴が漏れる。この時点で破滅の力は完全にベアトリーチェを見限った。

 

『あ、ァ、あああぁ"、そんな、破滅が、破滅の力がぁ!』

 

突然のことにカナタはベアトリーチェから距離を取った。

 

「…………なんだ………?」

 

もだえ苦しむ彼女の体から黒い霧が漏れる。

 

カナタの異形の腕が塵となって風に飛ばされていく。それだけじゃなく、頭上に浮かぶヘイローは粉々に砕け散った。

 

「──────ッ!?」

 

時間制限を迎えた。カナタとベアトリーチェ、二人が共有した破滅の力がただのカードへ戻ろうとしている。

カナタは全速力でベアトリーチェのもとへ走り出した。

 

黒い霧は二人の中心に集まり、「破滅のカード」と成った。

重力に釣られてポトリと地面に落ちる。

 

元の姿へ戻ってしまったベアトリーチェは辛うじて意識を保っている。

肉体の損傷は計り知れない。死ぬのは時間の問題かもしれない。

カナタは走りながら血反吐を吐く。それでも足を動かすのを止めない。突然意識が飛びそうになって、前方へ勢いよく転んでしまった。

 

顔を上げると、二メートルもない距離にベアトリーチェが横たわっていた。

 

「く………来るな!私の側に、側にくるんじゃないっ!」

 

カナタはベアトリーチェの叫びを耳もせず匍匐前進で少しずつ距離を詰めていく。

 

「う"ぅ"………殺す………殺してやる………………お前が死ねば皆助かるんだ……報いを受けろベアトリーチェ……!お前がやってきたことの報いを……!」

 

「いやだいやだいやだいやだいやだいやだ!!死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない!来るな近づくな!やめろ!いやだ、いきたい!私はまだ生きたい!貴様なんかに殺されたくなんかない!」

 

一秒でも早く殺したい者と、一秒でも長く生きたい者の視線が交差する。

怒りと恐怖、死の要求と生への渇望。

 

カナタの手が届く。ベアトリーチェの首へ。ベアトリーチェの上へ跨り、渾身の力で首を絞める。

 

叫び声すら出せないベアトリーチェ。このまま首を折られたら全て終わる。本当に無に帰ってしまう。

嫌だ、こんな餓鬼に奪われるのは嫌だ。生きたい、もっと生きていたい。

左腕に力が戻る。即座にカナタの腹部を貫いた。心臓を貫くつもりだったのに、視界が歪んでいるせいで狙いがブレてしまった。

 

だがもうカナタは死、

 

「脊髄を引き摺り出してやる」

 

「あ──────」

 

枯れ木を折るように、ベアトリーチェの首は捻じ曲げられた。

骨の折れる音が響く。カナタは首を締める手を緩めず、引っ張り上げた。

首は千切れ脊髄が引き摺り出される。それをカナタはゴミのように投げ捨てた。

 

これで全部終わった。

 

立ち上がって、ノノミの元へ行こうと歩きだす。けれど足がもつれ、うつ伏せに倒れる。

 

「あれ………?ああ、そうだった……………………」

 

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

 

 

ノノミは走り続けていた。カナタを見つけるために。彼女だけでなく、聖園ミカ、空崎ヒナ、小鳥遊ホシノの三人も捜索に協力してくれた。

 

 

暫く探し回ってカナタは見つかった。第一発見者はノノミ。

四人はカナタの側に駆け寄る。ノノミがゆっくりとカナタの体を仰向けに動かした。

 

その場にいる四人の思考が停止する。

 

 

カナタの薄く開かれた目に光がなく、口は半開きで血に濡れている。顔に生気はなく、腹部には穴が空いていた。

息はしておらず、ノノミは震える手を胸に置く。心音は聞こえなかった。

 

「カナちゃん?」

 

 

 

ノノミの呼びかけに返事は無い。

 

 

 






かなり長くなったので前編後編に分けさせてもらいました。すんません。今はタイムリープ前の振り返りみたいになってますがこれが終わり次第カナタが彼女面する生徒たちに振り回される地獄をお届けしますので首を長くしてお待ちくだせえ。

そんじゃワイはナギサに淹れてもらった紅茶を飲んで安眠しようと思います。おやすみ!
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