初対面なのに彼女面してくるノノミ&ミカ&カズサ&キキョウ………etc   作:ハッピーエンド大好きクラブ

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第四話「十六夜ノノミのトラウマ・後編」

 

 

 

「駄目っ!死んじゃ駄目だよカナちゃん!お願いっ……息をして!ほら、ほらカナちゃん!」

 

カナタの口を塞ぎ酸素を吹き込む。そして胸に両手を重ねて胸骨圧迫を30回行う。

これをひたすら繰り返す。ノノミは汗だくになりながら、これまで出したこと無いくらいの大声でカナタに呼びかける。

 

だが事態は一変しない。カナタの心臓は動かず、顔色は白に染まっている。

 

 

 

ホシノは救護騎士団を呼びに走った。ヒナとミカの二人は事態を呑み込めず棒立ちでいる。

 

 

 

 

ノノミは涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃに歪ませながら心臓マッサージを続ける。

もし、もしこのまま目覚めなかったらと最悪の結末を想像してしまう。

 

「嫌っ!!」

 

 

────────そんなの嫌だ。

 

 

「起きて!お願いだから起きて!死なないで!お願い…………息をして………!私を見て………………!そうだ、どら焼き買ってあげるから!カナちゃんが好きなどら焼き好きなだけ買ってあげるから!だから、ねぇ、なんでこんな、あぁ…………あああ…………ぁ"あ"あ"あ"あ"あ"!」

 

 

ノノミはもうどうしたらいいか分からくなり、頭をがりがりと掻き毟りながら泣き叫ぶ。

絶望が彼女を呑み込んでいく。

 

丁度その時、ホシノが救護騎士団を連れて戻ってきた。タイミングは最悪と言っていい。

死体になりつつあるカナタと、傍で発狂を起こしているノノミ、その光景を呆然と見つめる二人。

まるで地獄絵図だとホシノは思った。恐いほど冷静でいる自分が嫌になってくる。

あとの対応は救護騎士団に任せてホシノはノノミを落ち着かせるのに専念した。

 

 

 

 

 

 

救護騎士団の迅速な対応のおかげでカナタは奇跡的に息を吹き返した。

助かったはいいものの、外傷は決して軽くない。

食い千切られた左腕は発見できず、腹部には穴が空いていて手術に時間を要した。

胃の一部を切除することになり、肺には折れた肋骨が刺さっていた。

顔全体に大きな裂傷、左目は潰れていて機能を失っている。

全身に広がる青痣、両足は骨折していて右手の靭帯は千切れかけていた。

 

重症も重症。生きているのが不思議なくらいだ。けれど意識はまだ回復していない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………………」

 

────眠れない。あれから二週間が経つのにカナタは起きてくれない。

ノノミはベッドの上で蹲ったまま動かない。ここ最近まともな食事をせず、睡眠も満足にとれない。

面会に行けばカナタに会えるのに目覚めない彼を前にすると心はきつく締められる。

眠る彼の頬に手を当てて、声をかけても返事はない。

 

 

 

ノノミの心は限界に近かった。

 

 

 

不意に彼女の頭が上がる。何か思い出したような表情でベッドから降りて、机に向かった。

引き出しから分厚い封筒を出した。封筒には「辞表」と書かれている。

これはカナタがノノミへ渡した物。中に遺書が入っていると言っていたが、ノノミはいつ開ければいいか分からず今の今まで大事に保管していた。

 

開けるなら今だろうか。ノノミは二三度深呼吸をして、手を震わしながら封を切った。

中を覗くとカセットプレーヤーが目に入る。

取り出して確認してみれば既にカセットテープがセットされていた。

あとは再生ボタンを押せばいいだけだ。

 

「………………カナちゃん」

 

ノノミは再生ボタンを押した。再生が始まり、カセットプレーヤーからカナタの声が聴こえ出す。

 

 

 

 

『これを聴いているってことは多分、僕は死んでると思います。もしギリギリ生きてて皆に聴かれてたらすっごい恥ずかしいね』

 

 

 

 

『文字に起こそうかなって思ったんだけど、こういうのは音声のほうがいいかなって。う〜ん、何言えばいいんだろう…………そうだなぁ……………』

 

 

 

 

『僕ね、最初は怖かったんだ。初めての土地、初めての環境、初めて出会う人達。上手くやっていけるのか物凄く不安だったんだ。ここは僕の世界とは何もかもが違うし、銃火器なんてありふれてないからね。いやほんと怖くて怖くて堪らなかった。みんな平気な顔して銃ぶっ放して手榴弾投げたり、挙句の果てには戦車まで…………僕よく生きてたな』

 

 

 

 

『でもね、今は違う。皆はこんな僕を受け入れてくれた。辛いことも苦しいこともあったけど僕にとっては大切な日々だったよ』

 

 

 

 

『あとはそうだなぁ…………………ノノミさん』

 

 

 

 

「────ッ!?」

 

 

 

心臓がドクンと跳ねた。これは先生を含めた生徒達に向けた遺言だ。なのにカナタは明確にノノミの名前を口にした。

テープを再生するカセットプレーヤーからはカナタの気恥ずかしい声が聴こえてくる。

 

 

 

『えっと…………その………僕、僕ね、貴女のこと………………』

 

 

 

『………………貴女にもう一度だけ耳かきしてほしかったなぁ………膝枕のオプション付きで』

 

 

 

 

『こんなこと言っててもキリないよね。じゃあそろそろ最後にしようかな』

 

 

 

 

『みんな、ちゃんと明日を生きてね。明日のために今を大事にしてほしい。みんなは幸せにならなくちゃいけないんだから。僕は幸せでした、みんなと過ごしたこの毎日は。僕にとってかけがえのない宝物です。ありがとねみんな』

 

 

 

 

『あと先生!徹夜ばっかりしちゃ駄目ですからね!ユウカさんにこっぴどく怒られますよ!体は大事にしてくださいね。じゃあこれで終わります。えっと……多分再生したのは先生かな?………………ユウカさんに先生が隠してたレシート密告したの僕です。ごめんなさい』

 

 

 

 

再生は終了した。

 

涙がポロポロと落ちて机を濡らす。ノノミは封筒にまだ何か入っていることに気づく。

それは数枚の写真だった。カナタが撮ってきたこれまでの思い出。

 

ノノミは一枚の写真を手に取った。

アビドス高等学校でお泊り会をした時にノノミとカナタがお互い身を寄せ合って撮ったもの。

写真に写るカナタの照れた顔に思わず微笑む。

 

 

裏返すと写真の裏には薔薇の絵が書かれていた。薔薇が五本、綺麗な色合いで描かれている。

 

「あ」

 

気づく。薔薇の数の意味に。

 

 

 

一本の薔薇は「ひとめぼれ」、「あなたしかいない」

 

 

二本の薔薇は「この世界にはあなたと私だけ」

 

 

三本の薔薇は「あなたを愛しています」

 

 

四本の薔薇は「死ぬまで気持ちは変わりません」

 

 

そして、五本の薔薇には「あなたに出会えて本当によかった」という意味が込められている。

カナタがノノミへ向けた感謝の言葉。

 

 

 

彼の意図に気づいたノノミは声を我慢できなかった。

 

 

 

「うぅ"…………ぐぅあ………!ぁああ…………!カナちゃん…………!」

 

 

 

 

嗚咽を漏らしてひたすら泣きじゃくる。

カナタへの想い、救えなかった後悔、何も出来なかった無力感、弱い自分への怒り。

蹲ってカナタの名前を口にする。何度も何度も、消え入りそうな声色で。

 

「カナちゃん…………カナちゃん………………カナちゃんカナちゃんカナちゃんカナちゃんカナちゃんカナちゃんカナちゃんカナちゃんカナちゃんカナちゃんカナちゃん………………カナタ」

 

 

 

──────守らなきゃ。傍に居させないと。また怪我をしちゃうから。誰も目のつかない場所で守らないと。

 

 

 

 

 

十六夜ノノミのトラウマは、同時に彼女の心を歪めてしまった。壊れたのではない。もう二度と直せないくらい捻じ曲がったのだ。

捻れてはいけない方向へと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つ、疲れたぁ……………」

 

時刻は夜の九時前。カナタは自宅のベッドで横になっている。それもかなり疲弊した様子で。

無理もない、トイレから戻るとノノミにこれでもかと絡まれ、アヤネにもさり気なく手を握られた。

ホシノからはあいも変わらずじっと見つめられて顔面が削れるかと思った。

 

出勤初日でこんなに疲れるだなんて。明日はどんな破茶滅茶な日になるんだ。

 

考えていても仕方がない。カナタはホットミルクをちびちび飲みながら軽くストレッチを始める。

 

「明日はトリニティか」

 

明日はトリニティ総合学園でティーパーティーと書類作業を行う予定だ。

因みに先生は一緒じゃない。護衛が付くと言っていたが誰かはまだ知らされていない。

 

「ま、明日は明日の僕に任せよう」

 

──────インターホンが鳴った。

 

カナタは「誰だろう?」と呟いて玄関まで歩く。ドアスコープを覗かず、ロックを外して扉を開けた。

 

「はい、どちら様────」

 

ドアノブを捻った瞬間、扉は強引に開かれた。カナタはびっくりしてドアノブから手を離す。

 

「久しぶり。元気そうねカナタ」

 

黒い猫耳に二本の尻尾。まるで猫又を連想させる容姿の少女が立っていた。

彼女のとても落ち着いた様子にカナタは困惑しつつも「え、ええ……どうも」と返事をした。

初対面なのに名前を呼ばれた。いや、名前に関しては調べればいくらでも出てくるだろう。

 

なぜ彼女は「久しぶり」と言った?初めて会うのに。

 

「あの……貴女は誰ですか?」

 

そう尋ねると、彼女は面食らったような表情を浮かべてすぐに真顔に戻った。

 

「あの装置は本物だったのね。まあいいわ、教えてあげる。私は桐生キキョウ。忘れないで、あんたの恋人の名前なんだから」

 

 

──────バタンッ!

 

 

 

 

ドアを閉めてロックを掛けチェーンロックをかける。

リビングへ走り窓を全開に。次に寝室まで全速力で走り、ベッドに置いてあったスマホを手に取る。

先生に連絡しようとすると玄関の方から破壊音がした。

 

"ドアが壊されたのか!?一体何故…………僕を殺しに来たのか!?なんでだ!!"

 

先生への連絡は間に合わないと判断したカナタはベッドの下へ潜り込んだ。

息を整え、口を手で塞ぐ。出来るだけ呼吸音が聞こえないように。

 

 

 

 

気配を殺す。リビングに仕掛けた罠に引っ掛かってくれと心の底から願う。

 

 

だがカナタは知らない。桐生キキョウの恐ろしさを。

 

 

 

気配を殺し身を隠しても、匂いまでは消せない。

 

 

 

 

「見つけた」

 

 

 






そういえばカナタのプロフィール書いてなかったので載せますね。

青蓮寺カナタ

年齢 15歳

誕生日 7月4日(本人が適当に付けた)

身長 154センチ(栄養のあるものを食べさせてもらえなかったため低い)

好きなもの どら焼き

趣味 読書、散歩

まあこんな感じです。



さてと、次回からはカナタくんに地獄を見続けてもらうぜ!!
ここで皆さんに問題です。

Qタイムリープ前のカナタは右腕を使えませんでした。それは何故でしょう。

ヒント 
破滅の力を使ってとある生徒の右手の状態を肩代わりしたため。
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