「こんにちわ、ゆっくり魔理沙だぜ」
「こんにちは、ゆっくり霊夢だよ」
「今日は日本軍の補給、食事情を解説していこうと思う」
「でかい作戦だったり、軍艦や航空機がどうとか、そっちに目が行きがちな戦争だが、戦争をする上で最も重要なのは兵站、つまりは補給だ」
「そうね。私達も食事や水を摂らなければ生きていけないし、ましてや過酷な戦闘行動が伴う軍隊となれば余計よね」
「だから日本軍、特に山田大将はそこを最重要視していたんだ。幾ら優秀な兵器や武器があっても弾薬や燃料が無ければ戦うことは出来ないからな」
「そんな日本軍の補給事情を今日は話していくぜ」
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「日本軍の補給を語るには、1937年末にまで遡る必要がある」
「この時期は日米関係が悪化しつつあった年で、半年前から始まっていた日中戦争の影響もあって悪化の一途を辿り、日米開戦に突き進んでしまっていた時期だったんだ」
「そんな中、当時大佐だった山田大将は、山本五十六、米内光政、古賀峯一、井上成美と言った、いわゆる海軍左派の面々に海軍省に呼び出されていた」
「山田大将は彼らと面識があって、交流があったんだ。なんせ海軍一の天才とか言われていたんだからな」
「山田大将も対米開戦反対派だったものね」
「あぁ。とは言え海軍右派とも繋がりがあったし、なんなら陸軍とも深い繋がりがあったから、山田大将の人脈は軍、政界、財界と幅広かった」
「そこで山田大将は彼らに対米戦となった場合についての意見を聞かれたんだ」
「確か、ざっくり言うと負けるっていったんだったかしら?」
「そうだ。そこで山田大将は対米戦となった場合について多くの意見を残していて、その殆どが採用されている」
「空母の増産や、戦艦扶桑、山城、伊勢、日向の空母への改装などが代表になるが、そこで採用された意見の一つが海上輸送航路防衛、護衛艦隊の設立だ」
「それまで日本には護衛艦隊は無かったの?」
「残念なことに、島国、海洋国家でありながら一切存在しなかったんだ。第一次世界大戦で大西洋や地中海で通商護衛戦に参加していたのにも関わらずな」
「当時の日本の最大の貿易相手はアメリカだ。仮想敵国、それも最も戦争になる可能性が高い相手であったのにも関わらずその相手に石油、鉄鋼などの輸入を頼っていたんだ」
「そう聞くと支離滅裂よね」
「だろ?補給線を叩いて敵を疲弊させるなんて兵法の常道中の常道だし、通商破壊戦は戦艦や大型空母と言った戦力を用意しなくても潜水艦や小型空母さえあれば絶大な効果を発揮することが出来る。小さな味方で大きな敵を叩くことが出来る戦法だからな。米軍がそれをやってこないわけが無い」
「南方資源地帯と日本本土の距離は少なくとも5000km。実際にはニューギニアやソロモン諸島にまで行ったわけだから8000km以上の距離になったわけだ。それを無防備に敵の攻撃に晒せばどうなるかは分かりきっている」
「まぁ、速度の遅い輸送船なんて潜水艦や航空機の良い獲物にしかならないわよね。小さい爆弾でも物資を満載している輸送船からすれば一発で致命傷になり得るし、タンカーなんかに命中した時は火の海よ」
「だからこそ護衛艦隊の設立の必要性を説いたんだ。結果、護衛空母の建造が正式に決定されたぜ」
「それとは別に、輸送船、タンカー、補給艦、工作艦などの増産が決定され、敵に対して通商破壊戦を展開する為の潜水艦の大規模建造なんかも決定されている」
「輸送船も建造する必要があったの?」
「当時、日本軍が算出した戦時における必要船舶量は軍需用だけで陸軍110万トン以上、海軍で180万トン以上の合計300万トン程度とされていたんだ。そこに民需用300万トンを加えると600万トンを超える船舶量が必要になる計算だ」
「しかしながらこの時日本が保有していた船舶量は630万トン。しかし喪失分を考えるとこれに更に100万トンぐらいは必要になる計算だ」
「全然足りないじゃない」
「しかもこの時日本が保有していた船舶の殆どは明治大正に建造された古い船舶が大部分を占めていたんだ。新しく建造された船舶は精々100万トンしかない。戦時ともなればこれら優秀商船は軍にどんどん徴用されていってしまうし、どう考えても足りないってのが結論なんだ」
「民需を満たすためには、可能な限り海軍が自前の輸送船で賄う必要もあるし、何より問題だったのは石油だ」
「あぁ、日本って今でこそ海底油田とかあるから良いけど当時はそんなものないもんね」
「そうだ。当時の日本が戦時必要石油量は年間556万キロリットルとされていた。これを輸送するには最低でも50万トンのタンカーが必要という計算になる。ところが当時日本が保有していたタンカーは僅か47万トン、50万トンを満たしていないんだよ」
「不味いでしょそれ。普通に石油不足になるじゃない」
「そうだろ?しかも軍に徴用されたり、小型過ぎて外洋航行に使えないタンカーなんかもあるわけだ。それらを引いて考えても、資源地帯と日本本土を往復して石油を運ぶことが出来るタンカーはどれだけ甘く見積もっても20万トンしか無かったんだ。必要船舶量の半分以下だぞ、信じられるか?」
「意味が分からないんだけど。それで戦争やろうって考えてる奴がいるって言うのが信じられないわ」
「だから山田大将はそれを丁寧に一から説明したんだよ。当時の事を手記にこう記している」
『書面と共にこれを説明すると、山本さん、米内さん達は皆総じて顔を蒼褪めていた。なんせ今までそんなことを真面目に考えたことが無かったものだから、いざ事実を突き付けられた訳であるから、当然とも言えよう』
『今我が国に必要なのは、一隻の戦艦よりも20隻の輸送船と、20隻のタンカーなのである』
「こうなると需要を満たすことが全く出来なくて、結果として作戦行動や訓練にも大きく制約を付けられることになるし工場の稼働も出来なくなるからな」
「こうして海軍は専用のタンカーと輸送船の建造を進めることになった。それ以外にも兵員輸送船、戦車揚陸艦、揚陸艦の建造も進めている」
「護衛空母や駆逐艦、輸送船、タンカーなどの本格的な建造が開始されたのは④計画だ」
「この計画は新型巡洋戦艦2隻、空母4隻、護衛空母3隻、阿賀野型軽巡洋艦4隻、陽炎型と夕雲型駆逐艦20隻、秋月型防空駆逐艦15隻、海防艦20隻、潜水艦30隻が戦闘艦艇としては建造が進められた」
「それとは別に、高速輸送船10隻、高速タンカー10隻、敷設艦、駆潜艇、掃海艇がそれぞれ10隻」
「輸送船20隻、タンカー20隻、戦車揚陸艦10隻、揚陸艦6隻の建造が決定されて進められている」
「かなりの数ね」
「このために全国各地に造船所を建設したりして建造能力を大幅に高めているからな。元々あった建造能力だけじゃ到底足りない。だから全国中から建設作業員を集めているぜ」
「艦艇の建造だけじゃなくて、航空隊の増強も行われている。15隊の母艦航空隊、5隊の陸攻隊、5隊の飛行救難隊が新設されているぜ」
「だけどこれだけ造ってたらお金足りなくない?」
「実は本来の建造費よりもかなり安くなっているんだ。というのも駆逐艦や巡洋艦、護衛空母、輸送船、タンカーなんかは溶接とブロック工法を多用したことで建造費を安く抑える事に成功しているんだ」
「そうだったのね」
「それだけじゃなく、秋月型防空駆逐艦なんかはもっと安い。水雷屋が魚雷を載せろと騒ぐのを抑えて、魚雷発射管を一つも装備しないことにしたんだ。魚雷発射管と魚雷は艦艇装備の中でも高価な部類に入るし酸素魚雷発射管ともなれば金だけじゃなくて製造に時間も掛かるからな。それを15隻分も節約出来るってのは滅茶苦茶デカかったんだ」
「そして魚雷を載せる筈だったスペースには機銃などの対空兵装を搭載している」
「それ以降も続く⑤計画では装甲空母2隻、護衛空母3隻、軽巡1隻を夕雲型及び陽炎型20隻、秋月型駆逐艦25隻、海防艦40隻、中型潜水艦35隻となっている」
「大型艦艇が少ない分、小艦艇の建造数がかなり多くなっている。しかしながら小艦艇なら海軍工廠や大規模造船所でなくても各地の小さな造船所でも大量建造が出来る。全国中にドックを建設して、工員も掻き集めていたからな」
「この⑤計画では数を揃えることになっている。上記以外に敷設挺、駆潜艇、掃海艇を各十五隻」
「輸送船15隻、油槽船12隻、兵員輸送船8隻、戦車揚陸艦15隻、揚陸艦3隻が建造されている」
「更に航空隊26隊が新設された。15隊は防空を目的とした航空隊であり、5隊が母艦航空隊、3隊が陸攻隊、3隊が飛行救難隊として編成されたぜ」
「⑥計画では装甲空母2隻、航空母艦2隻、護衛空母4隻、軽巡2隻、夕雲型20隻、秋月型駆逐艦25隻、海防艦40隻、中型潜水艦35隻、水上機母艦二隻、駆潜艇、掃海艇、敷設挺を各10隻」
「戦車揚陸艦14隻、揚陸艦4隻、輸送船20隻、油槽船10隻、補給艦3隻が建造されたぜ」
「航空隊23隊が新設され、10隊が母艦航空隊、6隊が防空航空隊、4隊が陸攻隊、3隊が飛行救難隊として編制されたぜ」
「合計で何隻になるのかしらね」
「それでも損耗分を考えれば輸送船は足りていないという計算になるんだからとんでもないぜ」
「これら艦艇を建造する為に造船所は8時間交代制で24時間フル稼働で常に建造を進めていたぜ。なんせ建造とは別に既存艦艇の改装なども大量に予定されていたからな。人手は常に不足状態だったんだ。だから地方や農村部から大々的に募集を掛けて人手を搔き集めているぜ」
「こうして揃えられた護衛空母や軽巡、駆逐艦、海防艦は、連合艦隊とは全く別の指揮系統を有した形で護衛艦隊として編制されたぜ」
「それとは別に海軍が建造した高速輸送船や高速油槽船と言った高速輸送船舶は艦隊随伴を除いて直接護衛艦隊の編成指揮下に置かれた」
「戦時に於ける船舶航行に関しても詳細に規定され、戦時は単独航行を前面禁止とし、護送船団方式の全面採用とする法案を通した」
「この時、各民間商船会社からは猛反発を受けたようだが、戦争になった時に敵に攻撃されて撃沈されても知らないぞ、と本来なら守らなければならない存在相手に脅しを使ってまで納得させているんだから、どれだけ山田大将が本気で取り組んでいたかが伺えるな」
「まぁ、商船会社も出来れば被害なんて出したくないし、そう言われたら渋々でも納得するしか無いでしょうね」
「この護衛艦隊設立の際、実は陸軍もかなり協力している。まぁそれまで陸軍は海軍に対して船団護衛を必死にお願いしても取り付く島も無く無視されたり鼻で笑われたりしていたんだから、そんな中で船団護衛専門の艦隊を創設するってなって大喜びしたらしい。陸軍のある参謀は手記にそれはもう喜びをひたすら書き綴っているぐらいだ」
「この影響はかなり大きく、陸軍は自前の護衛艦艇を揃えようとしていたんだが、その資材を全て大砲や戦車、トラック振り分けることが出来たんだ。お陰で陸軍の兵器事情はそれなりに改善したぜ」
「護衛空母は大鷹型護衛空母として命名され、最終的に12隻が建造されている。その内の2隻は潜水艦狩り専門部隊として編制されているぜ」
「さて、艦艇のざっくりとした解説はこれぐらいにして、補給戦について解説していこう」
「お願いするわ」
「日本軍の補給は基本的に船団護衛方式によるもので、それに護衛艦隊が就くと言う形だ。護衛艦隊は基本的に護衛空母1隻、軽巡1隻、駆逐艦8隻、海防艦12隻の合計22隻で編成されている。かなり多い数だが、南方方面などに関しては輸送船だけで40隻を超えることも珍しく無く、何か大きな作戦をやる時に関しては輸送船団が100隻、200隻なんてのもあったぐらいだ。だからそれを十分に守る為に多数配備が進められたぜ」
「初期の頃は護衛艦隊も主力艦隊も艦艇が足りなくて、護衛艦隊は旧式の峯風型、神風型、睦月型が充てられていたぜ。旧式とは言えども合計36隻の駆逐艦だから、艦艇が足りない初期は貴重な戦力だったぜ。これら3艦種の駆逐艦は新型駆逐艦や海防艦が揃うにつれて徐々に退役、解体されて新造艦の建造に回されているぜ」
「護衛艦隊にはこれら戦力とは別に輸送船とタンカーがそれぞれ割り当てられており、日本本土に向けて各種物資や資源、石油を運んだり、日本本土から重油や航空燃料、ガソリンなどを各前線に向けて運んでいたぜ」
「これら輸送船やタンカーは必要に応じて主力艦隊への補給任務を行うこともあり、重要な存在だったぜ」
「このタンカーや輸送船、兵員輸送船は規格化されており、幾つかの大きさに分けられていた。一番大きな1万トン級のものは全長160mにもなるもので、軍、民間問わずに戦前から戦中に掛けて200隻が建造されている」
「兵員輸送船であれば1個連隊約2500名を完全武装の上で載せることが出来る能力を誇り、甲板上には特大発動艇を4艇搭載しており、甲板上で大砲などを搭載して、クレーンで海面に降ろして発進すると言う、重量物の揚陸や積み下ろしも出来るようにされていたぜ」
「兵員輸送船って、海軍に必要あるの?」
「まぁ基本的には陸軍部隊の輸送に使われていたが、海軍陸戦隊の輸送や各地へ海軍基地要員などを運ぶためなどにも使われているぜ。1個連隊もの輸送能力があるなら8隻も揃えれば1個師団は運べるからな。20隻もいれば2個師団+αは余裕だ」
「海軍は兵員輸送船を通常の輸送船として使う事も頻繁にあったし、各地に停泊する艦隊などの補充要員や交代要員を運ぶこともあった」
「開戦初頭、フィリピン攻略とマレー半島攻略部隊を載せた輸送船団を守る為に海軍はそれぞれ2個づつの護衛艦隊を船団護衛任務に就けている」
「これとは別に英東洋艦隊の脅威があるマレー半島に向かう輸送船団には長門、陸奥、駆逐艦8隻が加えられて英東洋艦隊に備えているぜ」
「かなりガチガチに守っているのね」
「まぁ、輸送船団だけで90隻近い船団だからな。これが狙われて大損害を被ったら目も当てられない」
「と言っても護衛艦隊は護衛空母こそ有していたものの、駆逐艦は半分ほどが睦月型駆逐艦だった。海防艦こそ新型のものだったが、それでも若干不安の残る陣容だ」
「輸送船団はフィリピン沖で主力艦隊が勝利した後にフィリピンに上陸を開始。それの支援に当たりつつ、特にバターン半島とコレヒドール要塞攻略戦では主力艦隊と共に支援攻撃を行っている」
「この戦いでは米軍輸送船を物資丸ごと7隻を鹵獲し、13隻の米軍輸送船を撃沈している。米軍はバターン半島、コレヒドール島に向けて物資を送り込もうとしていたんだが全て日本軍に阻止されており、運び込めたのは潜水艦で細々とした補給をしていたようで、それでも必要物資量には到底足りず、最終的には極東米陸軍最高司令官ダグラス・マッカーサーが白旗を掲げて守備隊は降伏している」
「マレー作戦も護衛艦隊に守られ上陸し、作戦自体も支援を受けつつ順調に進んだ。英東洋艦隊は輸送船団攻撃を考えていたようだが、護衛空母に載せられていた250kg爆弾の多数命中と長門、陸奥の二隻が護衛に就いているということを知って断念している。護衛艦隊は敵艦隊の攻撃を断念させて輸送船団を守ったんだ」
「最終的に英東洋艦隊の戦艦2隻と駆逐艦3隻が鹵獲されることになるがその話はまたいつかしよう」
「最終的にマレー作戦は、しっかりとした補給線維持によって、陸軍は『成功するべくして成功した』と豪語するほどの大成功を収めることになる」
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「それとは別に大きな活躍を残したのは戦車揚陸艦だ」
「この戦車揚陸艦はそこそこの速さを発揮することが出来て、尚且つ砂浜や海岸に直接、意図的に乗り上げて戦車を送り込むことが出来たから桟橋などの港湾設備が無い場所でも物資を迅速に揚陸して運ぶことが出来た。この戦車揚陸艦が大きな活躍を残したのはソロモン諸島の戦いだ」
「ソロモン諸島の戦いは日米共に輸送船にかなりの被害を出しており、特に速度の遅い輸送船の損耗率は日本側5割、米軍側8割近くに達するほどの激戦だったんだ」
「なんでお互いにそんなに被害を出すことになったの?」
「日本軍も米軍もお互いに通商破壊戦をやっていたからだ。お互いに相手の補給線を絶とうとして潜水艦が行動していたもんだから被害が大きくなったんだ。特に米軍は主力艦隊ですら艦艇、人員が不足気味で輸送船に十分な数の護衛艦艇を回すことが出来なくてより被害が拡大することになってしまったんだ」
「結果、日本側はソロモン諸島への輸送を高速船舶によるものに切り替えて、速度で敵潜水艦を振り切る方向に舵を取った。そこで活躍したのが戦車揚陸艦なんだ」
「戦車揚陸艦はその特性上、桟橋などが無くても直接砂浜や海岸に乗り上げて物資を降ろしたらすぐに出港して逃げられるという利点があった。そこで陸海軍は大規模な輸送任務以外はこの戦車揚陸艦を用いて物資や兵員を送り込んでいたんだ」
「なるほどね。そうすれば被害を減らせるって算段なわけね」
「とは言ってもやはりソロモン諸島を巡る戦いでの被害は大きかった。付近に展開して通商破壊戦に参加していた潜水艦は、23隻を失い13隻が損傷していた」
「しかもこの頃になると米軍はF6FやF4Uを始めとした新型機を次々に投入し始めていて、烈風が配備されるまで日本軍航空隊は厳しい戦いを強いられる事になる」
「輸送船にも被害が出ていて、1943年4月頃までにソロモン諸島近海で沈められた輸送船は20隻、28万トンもの物資が失われている」
「更に悪い事に、1943年5月3日にはガダルカナル島に米軍が上陸してきたんだ。ガ島航空戦力130機は夜間砲撃によって一瞬で粉砕されてしまったし、栗林中将以下ガ島守備隊は山中に逃げるしかなかった。兵員への被害こそ100名程度に抑えられていたが、彼らの状況は決して良くはなかった」
「装備類は事前に察知していたことで無事だったが、問題は物資の方だった」
「流石に物資を運ぶ時間までは無く、砲撃によって殆ど失っていたんだ。砲弾はトラックに無理矢理積んで運べた各門30発づつ程度、高射機関砲は各基200発あるかどうか」
「燃料が入れられていたドラム缶は僅か57本のみ。小銃や機関銃の弾薬は各人が携行していた分と、トラック5台分約18トンほど」
「満足に運び込めたのは最優先で運んだ水、食糧、医薬品ぐらい」
「何にしても、まずはガ島守備隊のために物資を運び込まなければならなかったぜ」
「この時、日本海軍は6個艦隊、10個護衛艦隊、1個ハンターキラー艦隊を有していたぜ」
「6個主力艦隊は基本的には日本本土、ハワイ、ブルネイ、バリクパパン、リンガ泊地にそれぞれ交代で停泊していたぜ」
「なんでこんなに移動距離がある場所を点々としていたの?」
「日本本土には休養と整備の為に、ハワイは米国本土に対する最前線の為に、ブルネイとバリクパパン、リンガ泊地の3箇所は豊富な燃料を有していることから艦隊訓練地としてそれぞれ活用されていたんだ」
「特に大型艦艇の整備は日本本土かハワイぐらいでしか出来なかったんだ。一応工作艦や浮きドックもあるにはあったが、これはどちらかというと野戦整備で、本格的な修理をやるにはどうしても日本本土の工廠か、ハワイにあった工廠で修理整備を行う必要があったんだ」
「逆にブルネイ泊地、バリクパパンでは豊富な燃料を直接補給することが出来て、艦艇だけでなく航空隊も訓練時間を沢山取ることが可能だった。輸送の都合上、どうしても燃料使用に制限を掛けざるを得ない日本本土に居るよりも断然良かったんだ」
「そんなに違うものなの?」
「海軍には補給廠と呼ばれる、あらゆる補給や整備を司る部門があるんだが当時、ブルネイとバリクパパン、リンガ泊地にはそれぞれブルネイ燃料廠とバリクパパン燃料廠、リンガ燃料廠が設置されていて、産出される石油を精製した各種燃料やアスファルトなどを管理していたんだ」
「その燃料廠が、連合艦隊に対して『連合艦隊は幾ら豊富な燃料があるからと言って、たった一度の訓練で重油タンク6個、航空燃料タンク2個を丸々使い果たすなど使い過ぎである。訓練計画の見直しや燃料節約を正式に要請するものである』と滅茶苦茶に抗議されたんだ」
「えぇ……」
「この時、艦隊を率いて訓練していたのは山口多聞だったんだが、抗議に対してあるなら使わせろ、と逆に文句を付けている」
「無茶苦茶過ぎない?」
「てなわけで、訓練、休養整備、ハワイというローテーションを組んでいたわけだな」
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「ガ島に米軍が上陸した後、日本軍はすぐに輸送船団を編成して送り込むことを計画したぜ。陣容は輸送船12隻、弾薬輸送船8隻、戦車揚陸艦6隻の合計26隻だ」
「弾薬輸送船にはガ島守備隊が殆ど失っていた小銃弾、迫撃砲弾、各種砲弾を満載しており、輸送船には取り合えず長期間補給線が断たれた場合を想定して保存の効く乾パン、缶詰、飲料水、医薬品、そして各種機材が満載状態にあった」
「缶詰の内容は米、牛肉、鶏肉、豚肉、野菜類、果物類。医薬品も不足しがちなビタミン剤、抗マラリア薬などが大量だ」
「戦車揚陸艦にはガ島守備隊の車両用に燃料を入れた200Lドラム缶を積載していた。万が一被弾しようものなら火だるまになるな」
「なんでタンカーじゃなかったの?」
「単純に海岸から内陸部に燃料を運ぶためのパイプラインが無かったからだ。守備隊が立て籠もっていたのは山中で、奪われた飛行場などならばパイプラインが繋がっていたものの流石に山の中にパイプラインを通しているわけが無い。だからドラム缶に詰め込んで運ぶことになったんだ」
「なるほどね」
「この輸送船団は万全を期すために第八護衛艦隊と第九護衛艦隊が担当したぜ。戦力としては護衛空母二隻、軽巡二隻、駆逐艦七隻、防空駆逐艦八隻、海防艦十三隻という合計32隻もの護衛艦艇で守りを固めていた。輸送船団よりも護衛艦艇が多いという、物凄く手厚い護衛の下でガ島を目指すことになった」
「なんだ、これだけの護衛が就いていれば簡単に成功したんでしょ?」
「それがそうもいかなかった」
「米軍だって日本軍に増援部隊や物資が送り込まれるというのは何としてでも阻止したかったんだ。米軍は日本軍の暗号を解読することが出来ていなかったが、それでも偵察や哨戒活動によって日本軍輸送船団がガ島に派遣されると言う事を断片的な情報ながらどうにかして手に入れていたんだ」
「なんで米軍はガ島に輸送船団が向かってくると断定したの?裏を掻いてどこか別の場所に強襲上陸を仕掛けたりするかもって考えなかったの?」
「その線も無くは無いが、どう考えてもガ島の日本軍部隊救援の為に行動していると考えた方が自然だからな」
「結果、米軍は日本艦隊の侵入ルートを3つに絞って、最終的にラッセル諸島近辺を通るルートに網を張ったんだ。日本軍は米軍が来ると想定して網を張ったルートでガ島を目指して、網に掛かってしまった」
「日本軍輸送船団を襲撃したのは潜水艦と、米高速空母機動部隊だ」
「機動部隊まで出してきたってことは、米軍は本気だったのね」
「あぁ。正規空母2隻、軽空母2隻の機動部隊は潜水艦と共同して輸送船団を襲撃した。米軍艦載機は全て新型機に一新されていたが、護衛艦隊の艦載機は零戦32機、烈風12機で明らかに多勢に無勢状態だった。戦艦こそ存在しなかったがな」
「結果として空戦と対空戦闘合わせて米軍機110機の撃墜、撃破を記録するも、弾薬輸送船6隻、輸送船10隻が撃沈されてしまう」
「大損害ね」
「あぁ。戦車揚陸艦に被害は無かった。理由は最後に狙われたことで沈んだ輸送船の護衛に就いていた護衛艦が戦車揚陸艦の護衛に就いたからだ。最終的には生き残った輸送船と揚陸艦には1隻当たり、3隻もの護衛艦が護衛に就いていたんだ」
「とは言っても護衛艦隊の損害も大きく、護衛空母2隻は爆弾の直撃を食らって航空機運用が出来ない状態だったし、それ以外の護衛艦も13隻大破、7隻中破の大損害を受け、無傷で乗り切ったのは防空駆逐艦2隻、海防艦6隻のみという状態になってしまう」
「運よく米潜水艦からの攻撃は無かったものの、ラッセル諸島沖海戦と命名されたこの海戦では日本軍は辛酸を嘗めさせられた」
「なんせ慢心するわけでも無く、本腰を入れて輸送船よりも多い数の護衛艦を配備して行ったのにこの結果だからな、凄まじい衝撃を受けたと話している」
「結局、補給はどうなったの?」
「この輸送船団は生存者を救助した後に生き残った輸送船と揚陸艦をガ島に送り届けて、無事に共々ラバウルまで帰還している」
「しかし駆逐艦四隻と海防艦三隻は損傷が酷く、本土に回航された後に解体されたぜ」
「この海戦の後、第一、第四護衛艦隊を主力として、各護衛艦隊や第一対潜艦隊と共にソロモン諸島への激戦極まる輸送船団護衛任務に従事していくことになる」
「これ以降、輸送船団を出すと必ずと言っていいほど1~3隻程度の損害を出し続けることになり、最終的にソロモン諸島近海で日本軍はガ島撤退までに60隻を超える輸送船が喪失、または損害を受けている」
「護衛艦隊はこれ以降も米軍相手に輸送船を守りながら戦いを繰り広げていくことになるぜ」
「今日の解説は以上だ。どうだったかな?」
「次回は日本軍の食事情について解説していこうと思う。短めになると思うから宜しくお願いするぜ」
「それじゃぁ」
「「ご視聴、ありがとうございました」」