「こんにちわ、ゆっくり霊夢だよ」
「こんにちわ、ゆっくり魔理沙だぜ」
「今日は海軍特別陸戦隊について解説するぜ」
「海軍特別陸戦隊?名前からして海軍の陸戦部隊ってことは分かるけど、そんな語るような存在だったの?そもそも海軍なのに陸戦部隊って意味が分からないんだけど」
「確かに海軍なのに陸戦部隊ってなんなんだと思うのは順当な疑問だと思うぜ。だがな霊夢、陸戦隊は日本軍の激戦地に度々投入されて大きな戦果を残しているんだぜ」
「そんな陸戦隊の解説をしていこうと思うぜ」
「元々陸戦隊ってのは一般の水兵、乗組員を必要に応じて兵を武装させて陸上戦闘に充てることがあって、これを海軍陸戦隊と呼んでいたんだぜ」
「特別陸戦隊は乗組員以外の、鎮守府などの陸上要員から構成されるものだ。どちらにも共通していることは常設部隊ではない、と言う事だぜ。それを1938年に常設部隊として特別陸戦隊を連合艦隊指揮下の下で再編成することになったぜ」
「なんで常設部隊として再編制されることになったの?」
「元々は陸海軍での対立だとかで設立されたりした経緯があったんだが、再編成の理由で一番大きなものは陸戦隊を上陸作戦を行える精鋭部隊にしよう、っていうものだ」
「そうなったのにはそれまでの陸海軍による上陸作戦の研究結果が元になっている」
「上陸作戦ってのはざっくり言ってしまえば陸海空が緊密に連携を取って行わなければならないものだ。だが軍とは言えども陸軍と海軍は違う組織で、連携を取るには結構面倒なところがあったんだぜ。そこでそれら一切の役割を丸ごと任せてしまおう、と言う事で海軍特別陸戦隊が再編成の上で常設されることになったんだぜ」
「なるほどね。陸軍と海軍の間で面倒なやり取りをしなくても上陸作戦を出来るようにしたかったってことね」
「そうだ。実際特別陸戦隊は初陣こそハワイ諸島攻略作戦だが、この作戦では上陸の先遣隊として投入されているしハワイ要塞無力化の特殊任務を任されてそれも無事に成功させているぜ」
「でもそこまで解説するほどの部隊だったの?」
「それが陸戦隊ってのは霊夢が思っているよりも大規模で重装備かつ、日本軍地上部隊の中では最高練度を誇ると言ってもいいし、何より参加した戦いはそこまで多くは無いんだが、参加した作戦のどれもが重要なもので実際戦闘の勝敗に直結するような活躍を残していたりする重要な部隊なのぜ」
「なるほどね。それじゃぁ解説宜しく」
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「陸戦隊の編制は以下の通りで、見ただけで単一組織として大きなものだと分かるものだ」
陸戦隊編成概要
司令部 砲兵司令部
↓ ↓
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↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
歩兵大隊 砲兵隊 工兵中隊 衛生中隊 輜重大隊 通信隊 葬儀小隊
↓ ↓ ↓ ↓
歩兵大隊 観測隊 架橋小隊 輸送中隊
↓ ↓ ↓ ↓
歩兵大隊 重砲隊 道路小隊 整備中隊
↓ ↓
歩兵大隊 軽砲隊
「確かにかなりの規模ね」
「陸戦隊の主兵力は四個歩兵大隊からなる歩兵連隊だ。この部隊は他の日本陸軍部隊とは違って基本的な戦闘単位が小隊ではなく中隊からになる。まずここが明確に違うところだ。そして小銃、機関銃は日本陸軍と同じものを使っていたが、日本軍の中では珍しく短機関銃を大々的に使用していた部隊でもある」
「日本軍で短機関銃を?確かに珍しいわ。それ以外だと空挺部隊ぐらいしかまともに運用していたのって聞いたことないし。となると一〇〇式短機関銃を使っていたのね」
「いいや、実は陸戦隊で使われていた短機関銃はドイツから製造機械や技師を丸ごと輸入したMP40だったんだ」
「MP40!?よくドイツがそれを許したわね」
「ドイツが欲しがっていた希少金属類などと交換したんだぜ。ドイツはその辺の希少金属を自国で産出出来ないし、ドイツは既に第二次世界大戦で連合国と戦っていたから資源があって困ることは無かったからな。ここら辺は山田中将が色々と交渉とかで手を回していたみたいだぜ。彼の父の会社には一次大戦で職にあぶれたドイツ人技術者やその家族が大勢いたから割と融通が利きやすいってのもあるかもしれないな」
「また出たわね」
「まぁ山田中将は何かと日本軍の事柄に絡んでくるからな。そもそも陸戦隊の常設化や再編成とかもこの人が主導でやったことだし」
「それにしても、なんで山田中将は100式機関短銃(以後100式と表記)を採用しなかったのかしら?」
「それにも明確な理由がある。100式は性能的には別段劣っている部分は無かったんだ。強いて言えば弾が弱いぐらいだが近距離での撃ち合いなら問題は無い」
「なら山田中将は何を問題にしたのかしら?」
「100式の生産性、コストの悪さだ」
「コストの悪さ?」
「100式は生産するにあたって切削加工と木製銃床を採用していたんだぜ。そのため製造に時間が掛かるし高価で、大量生産に不向きっていう欠点があった。それに南方の高温多湿な環境下で、木製銃床は簡単に腐ったりして駄目になる」
「100式と比べて、当時の各国軍が採用していた機関短銃は加工に手間の掛かる切削加工と木製銃床を省いて、その代わりにプレス加工を多様していたぜ。だから安価で短期間での大量生産を可能としていたんだ」
「ところが当時の日本の技術ではプレス加工で一〇〇式機関短銃を製造するってのは無理だったんだ。そこで技術習得の為なども兼ねて、ドイツから生産設備と技術者と丸ごと一緒にMP40を幾らか輸入してライセンス生産を行うことになったんだ」
「確かに兵器として生産性が悪いとか、コストパフォーマンスが悪いっていうのは良くないわね」
「あぁ。だからMP40を採用したんだ」
「自分達で開発するって選択肢は無かったの?」
「開戦予想時期まであまり時間が無かったし、それにさっきも言った通りプレス加工技術で日本は欧米諸国と比べると劣っていたからな。必要な性能はどうやっても出せないと判断されたのさ」
「一応言っておくとどうやらこの機関短銃の候補にはアメリカのトンプソン、イタリアのベレッタM1938、フィンランドのスオミKP/-31、ソ連のPPsH-41なんかも候補だったんだぜ」
「各国の傑作銃ね」
「それぞれの不採用理由は、トンプソンはそもそも仮想敵国で互いに戦端を開く可能性があるってことでアメリカから拒否された」
「イタリアのベレッタM1938は100式機関短銃と同様に削り出し加工を用いている事から生産性が悪いことから選定から落とされた」
「スオミKP/-31はそもそもフィンランド自体がソ連と冬戦争をやっていたりしていた影響で、日本に生産設備と技術者を丸ごと輸出する余裕が無かったってのと、銃本体だけで6kg以上、ドラムマガジン装填時は7kgを超えるってことで重量過大として不採用となった。そこまで重いなら別に軽機関銃で良いわけだしな」
「PPsH-41はまずそもそも配備されて間もないってのも理由だし、配備され始めた頃は独ソ戦が始まった頃で余裕なんで無かった。日本に設備と技術者を丸ごと輸出するだけの余裕なんて全く無かったし、何より技術者が共産主義スパイの可能性があると言う理由で選定から落とされた」
「MP40は確かにドイツも戦時中ではあったものの、同盟国だからという理由と、日本軍が太平洋、アジア方面で多数の英軍を引き付けてくれることを期待してヒトラーからの命令で生産設備と技術者を丸ごと数セット、格安のライセンス生産料で輸出したぜ」
「だから採用されたのね」
「そうだ。まぁそれぞれの短機関銃を試験用なんかに少数輸入しているし、ベレッタM1938に関しては500丁分と弾薬多数がムッソリーニから贈られているぜ」
「このベレッタM1938は海軍の基地要員用に前線に配備されたという記録が残っているぜ」
「トンプソンも試験用と研究用として輸入した分は、開戦後に鹵獲した分と合わせて鹵獲兵器の取り扱い訓練用として陸海軍にそれぞれ配備されている」
「他の部隊は分かるけど、この葬儀小隊ってなに?」
「これは戦死した部隊員や敵兵の検死を行い死因などを記録し、最終的に所定の手続きを行って火葬し遺体、或いは遺骨を日本本土に送ることを目的とした部隊だ。モットーは『全てに対する畏敬』だ」
「それ以外には、道路小隊は道路敷設を担う部隊、架橋小隊は川に橋を架けたり海岸に桟橋などを敷設する部隊だ」
「砲兵部隊の中の観測隊はオートバイを装備して前線で直接砲撃の観測を行う」
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「余談だが、日本がドイツから得た兵器は多数あるが、中でも有名どころであるMG151機関砲について少し話そうと思う」
「出たわねマウザー砲」
「高性能高威力、Bf109やFw190と言ったドイツ空軍戦闘機たちに搭載された事で有名なマウザー砲だが、霊夢も知っての通り日本軍も配備していたぜ」
「ええ。陸軍が零式局地戦闘機と九九式双発汎用機に搭載した機体があったわよね」
「その通りだ。潜水艦輸送によって、機関砲本体1500挺、高威力で有名な薄殻榴弾200万発がドイツから日本に向けて送られたぜ。これらは400機の零式局戦と120機の九九式双発汎用機に搭載され、各地で活躍している。有名なのはやはり米軍爆撃機相手の迎撃戦だ」
「記録によれば、以下のように搭乗員達は話していたそうだ」
『威力抜群で頑丈な米軍爆撃機の主翼が一連射が命中しただけで圧し折れた』
『不時着した米軍機を調査したところ、主翼と胴体、尾翼に直径1mを超える大きな風穴が空いていた』
『弾道特性が良く、狙ったところに素直に飛んでいく高い命中精度』
『装填不良、二重装填を始めとした問題もボタン一つで解決する信頼性の高さは日本が開発した機関砲にはない利点である』
「とまぁ、異口同音であれどMG151を使った経験のある搭乗員は賞賛していたらしい」
「まぁ陸軍は機関砲開発に手間取って中々有効打を与えられなくて歯痒かっただろうしね」
「海軍でも100挺と弾薬を20万発ほど輸入したが、そもそも海軍には性能的にもマウザー砲には及ばないものの、そこそこの性能を持つ20mm機銃があったからあんまり興味を示さなかったぜ」
「それに海軍はマウザー砲を本来の性能通りに製造出来るか疑問視していたってのも大きな理由だろう。銃本体もそうだがマウザー砲は薄殻榴弾と言う特殊な弾薬を用いる事で有名だが、なんせこいつの製造には高いプレス加工技術を必要とするとんだが、少数生産ならばまだしも大量生産となると不可能だと判断したらしい。結局余った弾薬は陸軍に送られている」
「陸軍もドイツから輸入した弾薬を撃ち切ってからは細々と製造したものを各地に供給しているものね」
「あぁ。まぁ一応生産はされていたんだが生産数が毎月2万発と圧倒的に少ない。だから最終的に陸軍のマウザー砲装備機は日本本土の防空任務に全て回されて、時折派遣されるって感じに留まっている。前線投入時は猛威を振るったが本土防空用に配備されて以降は実戦を経験しないまま講和、終戦を迎えたぜ」
「それでもマウザー砲が日本に与えた影響は大きく、技術を取り入れた海軍の20mm機銃は信頼性が劇的に向上している」
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「話を戻そう。陸戦隊は完全機械化されている部隊で、霊夢も知っての通り機械化率が絶望的だった日本軍の中では指で数えられる程度の貴重な完全機械化部隊だ。なんせ一個陸戦隊だけで数百両ものトラックやハーフトラックを保有していたからな」
「凄い数ね」
「歩兵が基幹戦力で人員一五〇〇~二〇〇〇名程度で構成される。120mm迫撃砲を一個中隊につき一〇門程度有している。さっき説明したMP40は分隊長などが装備している。トラックも二〇〇両ぐらい保有していたり、訓練が無茶苦茶実戦的かつ柔軟性を求められる上に隠密性やらなになら、一般の日本陸軍部隊とは桁違いの火力と技量と練度を持った精鋭部隊だ」
「どうしてこんな重編成にすることが出来たの?」
「単純に整備する必要がある部隊の数が少なかったからだ。陸軍のように数百万人分の装備を用意する必要が無く、すべての陸戦隊を合わせても最大でも2~3万人と幾らか程度分の装備さえ用意することが出来れば良かったんだ。元々六個陸戦隊を編成してそれ以上は編成しないこととしていたしな。まぁ後々に追加で二個陸戦隊が編成、整備されて八個陸戦隊体制に落ち着くんだが、それでも全八個陸戦隊は完全機械化部隊として編制されている」
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「陸戦隊で特筆すべきは完全機械化ともう一つ、当時の日本軍地上部隊では考えられないぐらいの砲兵火力だ」
「陸戦隊最大の火力を有するのは砲兵隊なんだが、この砲兵隊はやはり陸軍のものと比べると圧倒的に重装備なのは言うまでもない。人員は大体一〇〇〇名ぐらいなんだが、特徴的なのは装備していた大砲にある」
「陸軍でも貴重だった機動九〇式野砲を40門も装備している時点で中々だが、それに加えて12センチ榴弾砲24門、15.5センチ榴弾砲20門と合計して84門もの大砲を一個陸戦隊だけで装備していたんだぜ」
「それに加えて大砲を牽引する為のトラックやハーフトラック、砲弾を運ぶための弾薬運搬用トラックを合計して190両以上も保有していたぜ」
「ちょっと質問なんだけど、どうやってそれだけの大砲を用意したの?陸軍から譲って貰うにしても自分達の分もまともに用意出来ないぐらいの生産能力しかなかったでしょ?」
「海軍はその辺も考えて、全部自前で用意したぜ」
「全部!?」
「あぁ。機動九〇式野砲は効率化された生産ラインを海軍が自前で新しく作って生産して、海軍分の生産が終わった後は陸軍用も生産している。12cm榴弾砲は旧式駆逐艦の解体で浮いた砲を榴弾砲に改造し、15.5cm榴弾砲も最上型巡洋艦の改装で余っていたり、搭載予定が無くて倉庫で保管されていたものを丸ごと榴弾砲に改造したんだぜ」
「どうせ要塞砲として配備されるか、鋳潰したりして再利用されるぐらいしか使い道が無かったからな。それにも時間が掛かるし、だったらより効果的に運用が出来る榴弾砲として改造してしまえ、ということになったんだ」
「実際改造に要した期間がかなり短くて、しかも元が艦載砲だから陸戦じゃ大口径榴弾砲ってことになるから威力は抜群、砲身も切ったりしないでそのまま用いている」
「12cm榴弾砲は軽砲に分類されて機動九〇式野砲と共に軽砲隊に配備されていたぜ」
「こいつのスペックは砲身長45口径*1、射程1万5千m。毎分6発ほどの射撃速度を誇る。基本的には各国の重榴弾砲を持ち出せば十分に対抗可能な性能だ」
「15.5cm榴弾砲は砲身長60口径*2射程2万7千m。射撃速度は毎分5発。諸外国の榴弾砲と比べてもその性能は射程だけみても1万mほど長い。これに対抗するには米軍だと240cm榴弾砲辺りを持ち出してくる必要があるが、こいつも4000mほど射程負けしている」
「まぁ単純な射程の長さだけで砲兵戦の勝敗は決まるわけじゃないが、射程が長いってのはそれだけで明確なアドバンテージってのは変わりない。それに陸戦隊は練度は勿論高かったし、訓練も閲覧出来る限りの資料を読んだ限りじゃ実戦想定がリアル過ぎる上に搭載艦艇が無くて倉庫に山積みにされていた砲弾をバカスカ撃ちまくって射撃訓練をやっていたし、通信機器や観測機器なんかも全て最新式のものを最優先で供給されている。だから各国の砲兵と比べても遜色無いと言っていいし、優っている部分すらある」
「余談ではあるが、真偽は定かじゃないんだが、15.5cm榴弾砲は本当は自走砲化する予定だったって話もある。まぁ当時の日本軍の車両事情を考えると現実的じゃないから私はあんまり信用していないのぜ」
「なるほどね。にしても良くやったわね。そもそも上が許可するなんてね」
「山田中将が上手いこと山本海軍大臣や米内光正連合艦隊司令長官を納得させたんだと。何時使うか分からないなら今使えるようにするべきだ、ってな」
「口が上手いというか、交渉事が上手いのよね、彼」
「あぁ、実際政治家のが向いているんじゃないかなんて声も結構あるぐらいだからな。とまぁそんなわけで十分な数の大砲を揃えて、通信装備やら観測機器なども丸ごと一式新型のものに変えられている。しかも陸軍の砲兵とは違って独立した砲兵隊司令部があって、大砲の運用や砲兵指揮においては陸戦隊司令部と同格の権限を持って設置されているからな。海軍軍人なのに陸戦にも精通していたってのはこの辺のことから言われているぜ」
「各歩兵中隊が有する迫撃砲も加えれば一個陸戦隊だけで一八〇門もの砲迫戦力を有する大砲兵火力といって差し支えない。それに最終的に砲兵隊は、榴弾砲、野砲以外に多連装噴進砲なんかも装備することになるわけだからな」
「工兵はそのまま工兵で、やっぱり完全機械化されている。米軍で言うところのシービーだ。工兵小隊は建設の為の重機械、パワーショベルやブルドーザー、ホイールローダーや削岩機などの建設機材を多数保有していて能力はとても高い。なんせ野戦飛行場設営を四日で終わらせてしまったなんて話もあるぐらいだからな。陸軍の工兵がスコップとツルハシなんかが主装備だったのにこっちは建設、土木車両や機械から始まって電動ノコギリやチェーンソーなんかも持っていたぐらいだ。そもそも比べるのが馬鹿らしいってぐらいの差がある」
「通常の工兵小隊だけでなく、道路敷設の為の道路小隊、河に橋を架けたり桟橋を作ったりする架橋小隊、戦闘工兵小隊なんかも有していたぜ。この工兵中隊に属していたのは元から軍にいた人材ではなく、全国から集められた大工や土木建築作業員だ。年齢制限もかなり緩くて編成時の最高齢は五十七歳だったという。戦闘能力に関しては一応銃も扱えるってぐらいの部隊だから戦闘力は低い。だが重要と言える部隊だ」
「これに関して面白い話が一つある。それが創設するときに工兵中隊に所属する隊員を集める際に山田中将があちこちの建設会社とか大工にアポを取って直接出向いて頭を下げながら丁寧に説明して力を貸して欲しいと回ったって話だ」
「えぇ?海軍の、それも中将って高い階級にある軍人が?」
「あぁ。当時の軍の扱いを考えれば中々考えられない行動だ。だがそれだけ真摯に対応していたってことだ。実際それが理由で参加を決意したって人もかなり多かったしな」
「架橋小隊は川幅が広かったりして橋を架ける事が難しい場合など、状況によっては艦艇などから大発動艇などを指揮下に加えて運用する権限も与えられていたぜ」
「大発動艇を用いて川幅のある河川に橋を架けた記録もしっかり残っている。陣地構築に関しても機械化がされていたから陸軍部隊が二週間掛けるものを二日程度で作ったり、飛行場も爆弾孔が開けられても損害によっちゃ次の日には使える状態だったなんて話も多い」
「年齢幅は広かったが、それを補えるような組織編制をしていたんだ」
「そしてこの工兵の中でも異色を放つのが戦闘工兵小隊だ」
「なにその工兵に居なさそうな物騒な名前の部隊は」
「読んで字の如くと言えば良いのか……。いや、行った任務を考えれば特殊部隊だからな。ちょっと工兵の枠には収まりきらない様な部隊だ」
「そんなに?」
「元々は上陸地点や進軍するうえで敵の抵抗の最中なんかで地雷原とか障害物の除去、破壊なんかを主任務として編成されていたんだが、なんせ歩兵大隊よりも真っ先に戦場で戦うわけだからそりゃもう肝が据わっていて尚且つ様々な技量を持った隊員じゃなければならないってことで、そういう隊員が集められている。確かに前述の任務にも従事していたんだが、この戦闘工兵小隊、ハワイ攻略作戦の際にハワイ要塞無力化っていう任務を任されて、しかも完遂しているんだぜ」
「はぁ?」
「普通は歩兵大隊から選りすぐって、って考えるんだが、この戦闘工兵小隊は任務の特性上、兎に角歩兵としても優秀な成績の者を志願で募って工兵としての能力も付与したっていう部隊だからな。しかも訓練が他部隊よりも過酷で、訓練は常に実弾、爆薬も量を減らしているとはいえ本物を使用して行っていたそうだ。工兵として橋などの構造も勉強していたから、戦略上重要な橋や道路、施設の破壊活動に従事したりもしていたぜ」
「工兵にやらせる任務じゃないと思うけど」
「だから特殊部隊だって言っただろ」
ーーーーーーーーーーー
「通信隊は人員こそ少ないが、陸戦隊の統合された指揮通信を行っていたぜ。陸戦隊司令部の直接指揮下にあった」
「艦隊や航空隊とのやりとり、陸軍とのやり取りなんかも通信隊が任せられていた関係で、通信装備も高性能なものが最優先で割り当てられていたぜ」
「ここには情報収集、情報分析のプロが集められていたんだ。歩兵部隊に偵察部隊が含まれていたんだがこの通信隊にそれらの情報が集められて分析し、それを作戦立案に役立てていたっていう重要な部隊だ」
ーーーーーーーーーーー
「輜重大隊はトラックやハーフトラック、荷台の代わりに燃料タンクを設けたトラックを改造した燃料輸送車を合計して約二〇〇両保有し、陸戦隊全体への補給を担った部隊だ」
「デスクワークの大隊本部、輸送そのものを担う輸送中隊、各部隊の車両や装備の整備を行う整備中隊で構成されていて、一番重要度が高い部隊だ。補給を最重要視していた山田中将らしく、この輜重大隊には人員不足だったり、車両輸送が困難って時には歩兵大隊などから人員を借りてきて人力輸送を行う権限まで与えられていたぜ」
「実際、ある演習ではトラックが使えなくなったって想定で丸々一個歩兵大隊を輜重大隊の指揮下に加えて輜重兵と一緒に砲兵隊の砲弾を一人一発づつ担いで運ぶなんて事もやっている。12cm榴弾で20kg以上、15.5cm榴弾で約50kg。そんなもんを担いで40kmも歩いたってんだから凄い話だ」
「補給は基本中の基本だもんね。補給計画の失敗は敗北への第一歩、なんていうぐらいだし」
「あぁ。実際この輜重大隊の活躍のお陰でビルマ戦線や、その中のインパール作戦は戦線崩壊や作戦失敗の憂き目に逢わずに済んでいる」
「陰の立役者、ってやつだ」
「陰って程でも無かったがな。普通に勲章なんかも与えられているし、この辺りを見ると兵站を重視していた山田中将らしさがある」
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「それ以外には衛生中隊があ軍医と衛生兵で構成された部隊がある。この部隊も完全機械化されている」
「因みに衛生兵は最前線で救護したり後方に担架やトラックを使って負傷兵を運ぶから頭のおかしい連中ばかりだったそうだ。戦闘工兵小隊もあいつらはちょっと頭がおかしいって言ってるぐらいだ」
「えぇ……」
「イメージ的には世紀末モヒカンだな。実際そんな感じのイラストがどっかのサイトに投稿されたりしてる」
「まぁ敵味方の最前線で活動しなきゃならないから肝が座ってて当然なんだがな。じゃなきゃやって行けない」
「それ以外にも陸戦隊には後々対空戦車や対空トラックを持つ対空部隊や、噴進弾車なんかも配備されるぜ」
「確かに陸軍と比べると明らかに重武装だわ」
「合計して約三七〇〇名ぐらいの大所帯となった陸戦隊だが、これからはそんな陸戦隊の戦いを解説していくぜ」
「有名どころはハワイ作戦よね」
「あぁ。だが今回は尺の都合もあるので割愛して次回、戦争後期の戦いから解説していこうと思う」
「残念」
「今日の解説はこれで終わりだ」
「「ご視聴、ありがとうございました」」