「こんにちわ、ゆっくり霊夢だよ
「こんにちわ、ゆっくり魔理沙だぜ」
「今日はビアク島の戦いを解説していくぜ」
「ビアク島の戦い?あんまり聞いたことが無い戦いね」
「この戦いはマリアナ諸島の戦いにおける前哨戦と言った戦いだ。しかしながら激戦中の激戦を繰り広げていたんだ」
「霊夢が知らないのも無理は無い。基本的にはマリアナ諸島の戦いばかりが注目されがちだが、この戦いも重要なものだったと言える。マリアナ諸島の戦いの勝利に大きな貢献を果たしている訳だ。今日はそんなビアク島の戦いについて解説していこうと思うぜ」
「宜しくお願いするわ」
「1945年11月、アメリカ軍はマリアナ諸島に来襲。結果としてマリアナ諸島の戦いが勃発したわけだ」
「それは知っているわ」
「その一か月ちょっと前に勃発したのがビアク島の戦いだ」
「マリアナ諸島の戦いより時を幾らか戻して、1945年9月13日の話だ」
「この時、米軍は豪北方面に来襲していたんだ。具体的に言うとパプアニューギニアにあるビアク島という島だ」
「米軍はなんでそんなところに来襲したの?」
「この島は平坦で地質は石灰岩質という、広くて平坦な飛行場設営において有力な適地だったんだ。実際日本軍は1943年に占領してすぐに海軍陸戦隊の工兵隊を送り込んで大規模な飛行場を3つも設営し、陸軍と共用しながら運用している」
「さらに言うとここは日本軍にとっても米豪軍にとっても重要な戦略的要地だったんだ」
「どういうこと?」
「地図を見て欲しいんだが、フィリピン北部にもマリアナにもそれなりに離れていてそれなりに近いという距離間なのが分かるか?」
「……確かに。これぐらいの距離ならB‐17やB‐24の爆撃半径内に収まるわね」
「そうだ。だから米豪軍はこの島を占領して爆撃機の拠点として整備したあとに爆撃機を多数進出させてマリアナ諸島に対して爆撃を行ってマリアナ諸島に存在する日本軍航空兵力を叩こうと考えていたわけだ」
「なるほど。そう考えれば米軍の行動にも合点が行くわね。それに爆撃で日本軍の飛行場を叩くことが出来れば空母機動部隊はその分消耗をしなくて済むし、そうなったら日本海軍機動部隊との戦いに全兵力を投入することが出来るものね」
「その通り。だから米豪軍としてはなんとしてでもこのビアク島を占領してマリアナ諸島に対して爆撃を仕掛けたかったんだ」
「それだけじゃなくてここには第101燃料廠が開発、操業していたクラモノ油田と採掘された石油の精製所が置かれていたんだ。このクラモノ油田とクラモノ製油所は東部ニューギニア以西に対する燃料供給の一手を担っていたこともあって重要度は増していたんだぜ」
「だけどそう都合の良い話は無かったってことでしょ?」
「その通り。日本側だってこんないい場所があるってことはとっくの昔から知っていたし、何より山田中将がそんな場所を放置する訳が無い。彼は例え戦力的に勝っていても確実に勝てる作戦や方法を何重にも張り巡らせて戦うタイプだからな」
「結果、このビアク島は日米双方にとって、マリアナ諸島を巡る戦いにおいて最重要地点の一つになったと言うわけだ」
「この島にはどれぐらいの兵力がいたの?」
「歩兵第222連隊、歩兵第223連隊、歩兵第224連隊、歩兵第225連隊の4個連隊を基幹戦力とした第36師団、他に八八式7糎高射砲、九九式8糎高射砲を合わせて70門ほどの高射砲部隊と戦車25両を有する二個戦車中隊、野戦重砲兵第6連隊が主兵力となっている」
「それ以外に海軍から機動九〇式野砲45門の提供を受けて編成された野砲兵第12連隊と陸軍輜重兵連隊がトラック200台を有し、他に各飛行場の設営や修理、地下陣地構築に携わっていた3個工兵中隊があったぜ」
「海軍からは戦闘機30機、搭乗員、整備兵、管制等基地要員しか無く、敵地上兵力に対する警備と防衛は陸軍に一任していたぜ」
「結構大規模な兵力なのね」
「そうだな。歩兵連隊だけで1万5千名ほどの人員に加えて2個砲兵連隊、2個戦車中隊だからな。純粋な戦闘部隊としては中々の兵力を誇るし、何よりこれら部隊は当時の日本軍部隊としては屈指の優良部隊だ。これだけの装備を持っている陸軍連隊は他にはマリアナ諸島に配備されている陸軍部隊ぐらいしかなかったぜ。満蒙国境の対ソ戦に備えている部隊や中国戦線で戦っている部隊でも中々見ない、数えるぐらいだろう。全兵力を合わせれば2万5千名を超える兵力を誇る」
「それに70門の高射砲、高射機関砲も多数といった具合で確かに数字上の兵力は大きい。だが戦闘部隊である歩兵連隊や砲兵連隊を除けば実は結構まずい状態だったんだ」
「というと?」
「というのも歩兵連隊を除く、野戦重砲兵連隊、野砲連隊、輜重連隊、高射砲部隊、高射機関砲部隊、工兵隊などに所属している兵士の殆どは、確かにそれぞれの専門職務を行う為の装備やら備品は十分にあったんだが、小銃が全く不足していて、高射砲部隊や高射機関砲部隊は大砲や機関砲はいざって時の小銃は各砲に付き1丁みたいな状態だったわけだ。後方職種に至っては小銃が無いのが当たり前で、射撃訓練を行う為に歩兵連隊から小銃を借りてこないとならないって状態だったんだ」
「なんでそうなってしまったのかしら?」
「本来なら彼らにもちゃんと装備が支給される筈だったんだが、その装備を輸送している輸送船が運悪く米潜水艦に撃沈されてしまったんだ。この時の輸送船団は7隻で、被害はこの1隻だけ。小銃弾を運んでいた輸送船は無傷で到着したから、お陰で後方支援部隊用の小銃弾は使い切れないほど山ほどあるのに撃つ為の小銃自体が無いって状況だったんだ。幾ら護衛艦隊に守られていても損害は出てしまうからな」
「その時の輸送船の被害はその1隻だけって、本当に運が悪かったのね。でもそれならそれで普通は後から送られる筈なんじゃないの?」
「元々その予定もちゃんとあったぜ。米軍がビアク島に来襲するのは確実だったからな。だがこれも米軍来襲時期が予想よりも早かったってのが大きく関与している。既に手配はされていたんだが来襲時期が予想よりも早かったってことで間に合わなかったんだよ」
「あー、この点に関しては米軍に大きく裏を掻かれたってことね」
「その通り。日本軍としては後々のマリアナ沖での決戦作戦の事を考えればビアク島陥落は何が何でも阻止する必要があるし、米豪軍からすればここを奪えばただでさえ言われている練度不足の差を何とか埋めることが出来るし、マリアナ諸島攻略作戦がより簡単に進めることが出来る」
「お互いがお互いに、ってことね」
「ちょっとした余談だが、海軍の部隊には主力装備として九九式小銃が主に配備されていたがそれ以外にイタリアからムッソリーニからの好意で提供されていたベレッタM1938が配備されていたぜ。少なくとも整備兵を始めとした人員に配備されていたようで、250丁が配備されていたようだ。弾薬はMP40と同じ9mmルガー弾だから弾薬供給には苦労しなかったようだ」
「倉庫に入れられていたやつ?」
「そうだな。弾薬もかなりの量があったようで射撃訓練には困らなかったそうだ」
「このような状況でマリアナ沖決戦における前哨戦、ビアク島の戦いが幕を開けるぜ」
「1945年9月25日。米軍はビアク島に対しての爆撃と艦砲射撃を開始するぜ。これと同時にビアク島守備隊は『敵艦隊来襲、偵察機ヨリ敵輸送船見ユ。敵上陸ノ公算大、至急増援ヲ求ム』の電文が発せられた」
「とは言えビアク島は石灰岩質の土壌であるのに加えて日本軍はこの島でも地下陣地を構築していたから艦砲射撃も爆撃も殆ど意味が無かったぜ。日本側の資料によれば艦砲射撃と爆撃で破壊されたのは3つの機関銃陣地と1つの砲兵陣地、そして陸戦になったら使い道のない飛行場だけだ。高射機関砲と対空砲は内陸部に移されて徹底的な偽装と隠蔽を施され、敵上陸の際は敵地上部隊に砲撃を加えることになっていたから全くの無傷。一応流れ弾に当たって高射砲が2門破壊されたらしい」
「ビアク島自体が幅40km、長さ90kmだから距離もあるし艦砲射撃も中々有効打にはならない。爆撃も熟練搭乗員ならまだしも碌に訓練を積んでない新米搭乗員じゃ飛行場の滑走路に命中弾を与えることは出来ても的の小さい、それも徹底して偽装と隠蔽を施された陣地や大砲なんてそもそも見つける事すら出来ない訳だからな」
「あーあー……。もう何となく結果が見えてきたわね……」
「これで日本軍陣地を徹底的に破壊したと思い込んだ米軍は一斉に上陸を開始するぜ。戦力は米軍が3個師団、豪軍が一個師団だ」
「日本側がだいたい2万5千名ってところだから、ざっくり3.5倍ぐらいの戦力差があるわね」
「日本軍守備隊は来援求ムの電文を発したものの、一応の形として発しただけで司令官以下、実は滅茶苦茶やる気満々だったらしい」
「……?」
「その顔になるのも分かる。戦力差なんて明らかに劣勢なんだからな。だが実際問題としてビアク島守備隊は装備優良に加えて練度も抜群だったし迎撃態勢は万全だったぜ。米軍の協力な火力に突撃せずに徹底した持久戦闘を展開するってなればそのための訓練をビアク島で積んできたんだ。兵士一人一人が地理も徹底的に把握していたしな」
「物資が少ないってなれば話は変わったかもしれないが、弾薬食料水医薬品と言った物資もしこたま貯め込んでいたからな。それに航空兵力こそ地上で撃破されてしまったものの搭乗員は全員退避してフィリピンに脱出済みだからその気になれば航空兵力による反撃も加えられる。なにより航空機に搭載されていた機銃やそれの弾薬、航空燃料が山ほどあったぜ。それらは防御強化に一役買っている。貴重な高オクタン価の航空燃料を火炎瓶にしたりするのには勿体無いと言うか、気が引けるが色々と用途はある」
「それで、米軍はどうしたの?」
「上陸地点は沢山あったからな。あちこちから一斉に上陸を開始したんだ。どうやら日本側の火力と戦力分散を狙ってのものだったらしいが、そもそも日本軍は海岸線に部隊も陣地も一つも配置してないからな。無抵抗で上陸を果たしたわけだが、海岸線を見渡す台地にはいたるところに頑丈な天然の洞窟もあったし、それら全てが工兵によって拡張連結されていたし、必要な場所には頑丈な鉄筋コンクリート製のトーチカやら陣地やらが相互支援が可能な様に計算され、至る所に設置してあったんだ」
「ひぇっ……」
「そんな中に上陸した米豪軍は悲惨だったぜ」
「飛行場に接近した米軍は大した反撃も無かった為に簡単に占領出来ると考えたんだが、飛行場周辺に到達した辺りであちこちの部隊から地雷による多数の被害が報告され始めた。実は飛行場周辺には大量の地雷や航空爆弾を幾らか改造した即席地雷が大量に敷設されていたんだ。本来ならこれらの地雷や即席地雷は艦砲射撃で吹き飛ばされて丸ごと爆発して使い物にならない筈だった」
「しかし米軍は早急な飛行場の運用を可能にするために飛行場には幾らか砲撃を行っただけで済ませてしまっていたんだぜ。この撃ち込まれた砲弾は格納庫と滑走路に命中していて航空機運用は出来なくなっていたものの、地雷原は全然問題無く、殆どの地雷が生きていたんだ。そこに突っ込んでしまった訳だから、そりゃ当然被害も出るよな」
「しかも埋設されていたのはその多くが跳躍地雷、簡単に言うと分で起爆すると地雷の部分が1.5m~1.7m程の高さに撃ち出されて空中で起爆して周囲に鉄球を始めとした飛翔体を撒き散らすと言う地雷だ。この地雷は対人殺傷性能が兎に角高くて、そんな地雷原に突っ込んだ米豪兵はその地雷に周りを巻き込みながら次々にやられて行ってしまったんだよ」
「米軍の建設能力なら飛行場を穴だらけにしても問題無く復旧出来たでしょうに」
「それなんだ。まぁ上の上から色々圧力が掛かってて功を焦ったってことだろう。なんにせよ地雷などで数百名ほどの死傷者を出した米軍は3つの飛行場を無事に占領して、そこで陣地を構築して天幕を張り始めたぜ。米軍は日本兵の死体が一つも無い事になんら疑問を持つことも無かったんだ」
「このままじゃなんにもしないで占領されちゃうわね」
「ところが上陸から2日目の夜、突如として3つの飛行場に対して凄まじい砲撃が加えられたぜ」
「日本軍は米豪軍を飛行場に全て入って設営を始めるまでひたすら息を殺して待っていたんだ。丸三日間、山中に人が潜んでいると一切悟らせずにいるだなんて尋常じゃない執念と精神力が無ければ到底出来ない事だ」
「米豪軍は三日目の夜に砲撃と銃撃見舞われ、修復と地雷除去が進められていた飛行場は砲撃を食らって使い物にならなくなってしまったぜ」
「でも近海に空母が居るなら最悪使えなくても、護衛空母一隻か二隻いれば十分でしょ?」
「いや、米海軍は最初の艦砲射撃と空襲以外は援護の為に巡洋艦3隻と駆逐艦10隻、哨戒用の潜水艦を幾らかビアク島沖に配備していただけで、それ以外の戦艦、空母、護衛空母を始めとした主戦力は軒並み豪州近海に撤退してしまったんだ」
「それは何故なの?」
「米海軍はそのままビアク島近海に艦隊を遊弋させていた場合、日本海軍の反撃があると考えて、ビアク島近海で戦力を失う、或いは損耗するのをどうしても避けたかったんじゃないかと思うんだぜ。なんせマリアナ諸島攻略作戦っていう本命中の本命までに戦力を下手に喪失したり艦載機や搭乗員を失いたくなかったんだろう」
「米海軍は艦艇こそ、それなりに整っていたんだが内情、乗組員や搭乗員は即席、インスタントも良いところってレベルだ。そんな米艦隊が開戦以来戦い続けている、飛行時間数千時間が当たり前の熟練母艦搭乗員やその艦艇でずっと勤務している熟練乗組員ばかりの日本海軍とぶち当たったら結果は見え切っているからな」
「だから米艦隊はビアク島でちょっとの実戦訓練を積んで豪州沖に撤退してそこで訓練、ってわけなのね」
「あぁ。だから飛行場が使えないってのは中々致命的だったんだ。一応ビアク島沖に残った重巡3隻、軽巡2隻、駆逐艦8隻の13隻の艦隊は日本軍に対して砲撃を加えて反撃したんだがまぁ、戦艦ですら有効打を与えられないんだからそれよりも威力も小さい砲弾でどうにか出来る訳が無いんだよな」
「日本側は増援を送るとかしなかったの?」
「飛行場の使用が出来なければそれで良かったんだが、流石に小銃も持ってない後方支援部隊や砲兵、高射砲兵、高射機関砲兵が多数ってのは流石に不味いってことで、紆余曲折あった末に、フィリピンの第16師団から歩兵第33連隊、第48師団から歩兵第47連隊をそれぞれ転出することを決定し、それと共にビアク島現地部隊用の武器弾薬と砲弾を送り込むことが決定されたぜ」
「なるほどね。それをどうやって運ぶの?」
「重巡3隻、軽巡2隻、駆逐艦8隻を主力艦隊から緊急派遣し、フィリピンにいた護衛艦隊から護衛空母1隻と駆逐艦4隻と海防艦4隻を引き抜いたぜ。歩兵第33連隊と歩兵第47連隊、そして物資を運ぶのは輸送船10隻、それと偶々居合わせた輸送艦5隻だ」
「合計戦力は護衛空母1隻、重巡3隻、軽巡2隻、駆逐艦12隻、海防艦4隻の22隻の護衛艦艇に、兵員輸送船3隻、輸送船7隻、輸送艦5隻の15隻の輸送船団だ」
「でもどうやって上陸するの?流石に敵陣に上陸なんて出来ないでしょ?」
「実は戦いの主戦場になったのは飛行場周辺のビアク島東端で、その真反対であるビアク島西側は米軍は全く手を付けていなかったんだ」
「ソロモン方面から全面撤退したとは言え、未だにニューギニア島は日本軍が占領していたからな。その気になればニューギニア島守備に就いていた第18軍や第2、第8方面軍、第4航空軍からの支援や増援を受ける事も可能だったんだよ」
「でもニューギニア島からの支援はされていないわよね?」
「そうなんだ。実はこの時ポートモレスビーを始めとしてニューギニア島各地に連合軍の爆撃が行われていて、ビアク島に続いてニューギニア島にも連合軍上陸と言う可能性を日本軍は捨てきれていなかったんだ。結果的にこの連合軍による爆撃はビアク島攻略作戦の際にニューギニア島から増援が送り込まれたり支援されたりすることが無いようにするための牽制、所謂陽動作戦だったんだけどな」
「なるほど」
「そこで日本軍はニューギニア島は、山田中将がニューギニア島に連合軍上陸の可能性はかなり低いと言っていたものの、とは言え万が一に備えてフィリピンから増援を送ることを計画したぜ。フィリピンは安定していたし農作物の生産も随分と軌道に乗っていたから余力があったんだ。そこでフィリピンから物資と兵力をビアク島に送り込むことを計画したぜ」
「フィリピンには軍用レーション製造工場なんかも幾つかあったしな」
「普通ならビアク島守備隊への増援は諦めるところだが、ところが日本軍はビアク島を縦断、横断するように幾つもの道を切り開いて川には橋を架けたりして整備していたんだ。だから陸路の輸送手段、例えばトラックとかハーフトラックとかさえあれば物資は幾らでも運べるって状況になっていたんだ。幸いビアク島守備隊には200両ものトラックがあったから輸送手段には困らないしな」
「で、フィリピンからビアク島西端に物資を揚陸して、街道を使って物資を運び込む計画を立てたぜ」
「近海に展開していた潜水艦や航空機による偵察の結果、日本軍は米軍に空母を始めとした航空戦力が存在していないということを掴んでいたんだ。護衛空母1隻でも米軍側は飛行場は使えないし空母もいないから十分だ。これだけの戦力があれば戦うことを主眼に置いているわけではないし、限定的とはいえ対地支援攻撃も出来なくはない」
「これで敵艦隊撃滅と米豪軍地上部隊撃滅を狙ったら増援はこんなもんじゃ済まないもんね」
「あぁ。あくまでも日本軍はマリアナ沖で米軍に決戦を挑んで撃滅を狙っているわけだから、幾ら重要地と言っても敵が飛行場を使えない程度でいいってことだ。それにビアク島に主兵力を配置しようとしても時間も足りないし、そんな事している間にマリアナが手薄になって陥落、なんてことも全然有り得るからな」
「結構いろんな人が誤解しているんだが、米軍が陸海軍、海兵隊に至るまでボロボロって思っている人がいるんだ」
「違うの?」
「確かに米海軍はボロボロだったが、だからと言って米陸軍や海兵隊は全然そんなことは無い。確かにフィリピンやハワイ陥落で多数の捕虜や戦死者を出していたとは言っても全然余力があった。米陸軍航空隊管轄のB‐17やB‐24は太平洋戦線に約2700機は存在していたし、B‐29だってこの時期にはもう既に工場で大量産されている。パイロットだって熟練がそれなりに揃っている。だから下手に上陸されると海軍がボロボロでも陥落する可能性は十分にあったんだ」
「なるほど。マリアナ諸島に上陸してくるだろう米軍地上兵力は間違いなく精鋭のはずだし、精鋭で固めた日本軍でも海空の援護が無ければ、ってことね」
「その通り。だから日本軍は態々兵力損耗を招くような事はせずにビアク島守備隊には持久戦闘と飛行場を使用出来ないようにするぐらいでいいって命令が来ていたわけだ。ビアク島飛行場さえ使えなければマリアナ沖での戦いに寄与することは出来ないからな。日本軍は必要以上の労力を投入せず、マリアナ沖での決戦に全力を注ぐことを決めていたんだ」
「確かにビアク島に兵力を注ぎ込んでもそこまで意味があるものだとは言い難いものね。まぁ米豪軍4個師団を殲滅出来るってメリットもあるけど、殲滅しても引き付けていても米軍はいずれにしても4個師団は使えないってことだし、それ以上の米軍兵力を叩くことが出来るマリアナに比べてしまえばね」
「その通りだぜ」
ーーーーーーーーーーー
「輸送船団の指揮を執ったのは三川軍一小将。指揮下には重巡高雄、摩耶、最上、護衛空母雲鷹、軽巡天龍、龍田、駆逐艦12隻、海防艦4隻、輸送船団15隻。規模は小さいが船団護衛任務としてはかなりの兵力だし、結構バランスの取れた纏まった兵力だな。軽巡天龍に将旗を掲げて駆逐隊を率いるのは吉川潔大佐だ」
「兵員輸送船3隻に2個連隊の兵員が乗り込み、残り隻に現地部隊用の小銃等火器類、砲弾薬と食料水医薬品、嗜好品などが積み込まれたぜ。揚陸艦には野砲などの重装備だ」
「各輸送船には甲板上に特大発動艇6隻、大発動艇10隻が搭載され、揚陸を速やかに出来るように工夫されている。輸送艦は重装備の揚陸を終えたら輸送船に横付けして物資を受け取って搭載し、大発動艇と共に海岸との往復に従事する計画が立てられた」
「積載量的には割と余裕があった編成なのね」
「あぁ。1隻当たりに積載量の余裕があればそれだけ揚陸時に余裕があるってことだからな。無理矢理ぎゅう詰めにするより、余裕を持たせて迅速に揚陸が出来ることを優先したわけだ」
「作戦名『は号作戦』とされた」
「高雄、摩耶は第3主砲塔と魚雷発射管を撤去してその分10cm連装高角砲と機銃、機関砲を増設して対水上レーダー、対空レーダー、アクティブソナー、パッシブソナーも備えている。*1最上も同様に第3主砲塔と魚雷発射管を撤去し、元々あったスペースと合わせて10cm連装高角砲を2基増設し、他に機銃や高射機関砲を増設している。同じくレーダー類、ソナー類も装備しているぜ」
「軽巡天龍、龍田の二隻は艦橋を改装によって近代化されて大型化、指揮通信能力を大きく向上している他、14cm主砲と魚雷を全て撤去しその代わりに4基の10cm連装高角砲、第一、第二魚雷発射管があった場所には機銃、高射機関砲群を装備している。艦後部には対潜爆雷投射機を6基、爆雷投下軌条を2本装備している」
「これとは別に各艦20発づつの機雷を積んでいたぜ。余裕があればビアク島とニューギニア島の間に敷設する予定があったぜ」
「この巡洋艦5隻は高雄、摩耶、最上、雲鷹率いる甲部隊、天龍、龍田率いる乙部隊の二つに分けられていたぜ」
「甲部隊を直接率いるのは三川軍一少将で、乙部隊を吉川潔大佐が率いていた。彼らは輸送船団の守りに徹しつつ敵艦隊が来襲してきた場合は迎撃するというのが任務だ」
「甲部隊は敵艦隊が接近してきた場合に阻止する任務が与えられ、乙部隊は輸送船団の直接護衛を担っていたぜ」
「それぞれ2個駆逐隊(8隻)を指揮下に置いている編成だ。彼らは11隻の輸送船と輸送艦を守りながらビアク島を目指すわけだが、任務としてはそこまで難しいものではない。米軍側には空母はいないし強力な戦艦もいないんだからな。敵戦力は同じぐらいの巡洋艦と駆逐艦。護衛空母がある分日本側が若干有利ってところか」
「撃ち合いになったら数の上ではどっこいどっこいってところね」
「あぁ。護衛空母は砲雷撃戦は出来ないし戦闘機と偵察機、対潜哨戒用の艦攻があるだけだから対艦攻撃能力は全く無いが危険を承知ではあるが戦闘機で機銃掃射を仕掛けるとかぐらいは出来るからな」
「そんな部隊を率いて三川少将はダバオから出撃したぜ。この時三川少将が最も警戒したのは敵潜水艦だ。敵機の心配は薄かったそうだ」
「それは何故なの?」
「偵察の結果でビアク島沖に米空母や戦艦が居ないってのが分かってたからってのが主な理由なんだが、それ以外にもこの時既に航路近くにある各地の陸軍航空隊や海軍基地航空隊に連絡機を飛ばして上空直掩の為に戦闘機を出してもらえるように手配をしていたからだ。バカン島の先、ハルマヘラ海を幾らか超えたニューギニア西端ぐらいまでなら基地航空隊から直掩機を就けて貰えるし、ニューギニア島に展開する航空隊に要請すればそこからも航空支援を送ってもらえる。それに護衛空母も一隻いる。数こそ多くないものの、産油地帯で連日訓練を積みながら船団護衛任務に従事してきたスペシャリスト達だ。米軍にそこまで長距離飛行が出来る航空機が皆無だったってのもあって空襲の心配はしていなかったんだ」
「逆にビアク島周辺には、小島が点在していたりするから潜水艦が隠れるのに向いていたんだ。だからこそ隠れている敵潜水艦を最も警戒していたんだ」
「なるほど。で、船団はどうなったの?」
「特に問題も起きずにビアク島西端に到達して物資、兵員の輸送を完了しているぜ。道中で対潜哨戒機である艦攻が何度か敵潜水艦発見したものの損害は無し、発見した米潜水艦に対して爆雷を投下している。日本側は5隻撃沈を報告しているが、米側の公式記録によれば確かに日本軍機から爆雷攻撃を受けたという潜水艦は5隻だそうだが、実際にはガトー級潜水艦2隻とバラオ級潜水艦1隻の計3隻が撃沈となっている。まぁ他2隻は戦果誤認ってやつだな」
「良くある話ね」
「ビアク島に送り込まれた歩兵第33連隊と歩兵第47連隊、武器、物資はビアク島西端にある海岸に揚陸を果たし、ビアク島守備隊のトラックで運ばれたぜ。そこで行き掛けの駄賃と言わんばかりに雲鷹から発艦した戦闘機が米艦隊と地上部隊に機銃掃射を行っている。効果はあんまり無かったがビアク島守備隊の士気高揚には絶大な効果があったそうで、逆に米軍は味方機はどこだ、何をやっているとなったらしい」
「艦隊は最終的にビアク島、ヤペン島間、ビアク島西端とニューギニア島ランシキ辺りを結ぶ二つの線に機雷を敷設したぜ。米艦隊は迎撃を行おうとしたものの雲鷹航空隊に攻撃を受けて撤退してしまったんだ。理由はいろいろあるだろうが戦力保存というのがやはり大きい」
「でもワンチャン日本側の輸送船を叩けていれば結果は幾らか変わっていたんじゃない?」
「確かにそうだが、かといって航空支援も無しの練度不足で頭を抱えている米艦隊が、航空支援アリの来るならやってやる、寧ろ来い、来ないならこっちから行くぞの練度抜群な日本艦隊と真正面からぶつかってもまぁ勝ち目は無いだろうからな。米艦隊指揮官の判断は批判はされたが、状況や状態を考えると妥当なんだよ」
「でも米豪軍地上部隊は納得しなかったんでしょ?」
「そうだ。米海軍は敢闘精神が全く無いって猛烈に批判したんだ。米豪地上部隊は戦う気の無い臆病者と海軍を批判し、米海軍は妥当な判断だった、数倍の戦力を有しながら勝てないのは陸軍や海兵隊に問題があると批判すると言う、溝を深めるだけの結果に終わってしまったんだぜ」
「この増援と補給の後、ニューギニア島マノクワリから特大発動艇、大発動艇を用いて継続してビアク島守備隊は物資の補給と戦病者の後方移送を行っている。この補給は一日辺り3~5トンの物資を送り込んでおり、少ないとは言え補給が継続されているという状況は現地守備隊にとって大きな心の支えになっていた筈だ」
ーーーーーーーーーーーー
「歩兵第33連隊、歩兵第47連隊を加えたビアク島守備隊は武器と物資の補給も受け、かなりの余裕が出来たことで毎日朝から晩まで150発以上の砲弾が米豪軍陣地と飛行場に撃ち込まれ、それだけに留まらず夜間に嫌がらせのように夜襲まで仕掛けていたんだ」
「うわぁ……。普通なら精神がおかしくなるわね」
「あぁ。何が嫌らしいってハラスメント攻撃の為に行われる夜襲が全然突破を目的としていないから米豪軍陣地に適当に小銃や軽機関銃で射撃を加えたら戦果の有無関わらずさっさと撤退してしまうことだ。お陰で日本軍にも米豪軍にも双方20名ぐらいの負傷者が出たぐらいだったんだが、米豪軍に与えた心理的圧迫は凄まじかったと記録されている。多くの米豪兵の手記に当時の状況が記されているぜ」
『日本軍の夜襲部隊は規模は小さいが、練度が高くかなりの至近距離に近付いてくるまで察知出来ない。どうやら陣地突破を目的としている夜襲では無いようだが、かといっていつ飛行場奪還の為の本格的な夜襲が行われるのか、毎晩毎晩緊張しながら夜を過ごさねばならない。殆どの兵士は敵が何時来るか分からないという状況で碌に睡眠を取る事も出来ておらず、しかも昼間の内に日本軍は我々の陣地を詳細に調べ上げているので夜間でも正確な砲撃が撃ち込まれる。今私が考えているのはただただ早くここから出て行きたいということだけだった』
『日本軍の夜襲は大きな問題で、誰も彼もが肉体的にも精神的にも大きな負担が掛かっている。ここ最近では疲労から来るものなのか食事も喉を通らなくなってきている。夜襲だけでは無く、昼間には凄まじい砲撃が朝から晩まで常に加えられ、夜になれば夜襲が来る。時折夜襲で死んだ日本兵の死体が見つかるが、それも殆どない。これで日本兵の死体が100、200と積み重なっていればまた話は違ったかもしれない』
『ここ最近は昼間の砲撃、夜襲に加えてフィリピンの方から日本軍機が来襲して爆弾を落としていくようになった。数は30機ぐらいと多くは無いが、シャーロット*2が爆弾だけでなくロケット弾や、機銃掃射まで加えて来る。攻めている筈の俺達にはエアカバーが無いのに、守っている日本軍にはエアカバーがある。シャーロットが飛んでくると必ず、十数個の陣地や十数門の大砲が吹き飛んでいく。すぐそこにいる海軍の連中は当たらない対空射撃をするだけで、俺達は頭がおかしくなりそうだ』
『今日もまた何十人もが精神をやられて後方に送られた。毎日の砲撃と爆撃、銃撃で何十人もの戦死者が出る。俺も陣地に居たときに爆撃を食らったが運良く生き延びた。だけど俺のいた小隊は30人以上が死傷して戦闘力が無くなった。にも関わらず交代の部隊がいないからって俺達はそのままこのクソ島に残らなきゃならない!クルーガーのやつは何をやってるんだ!?ルーズベルトは何やってるんだ!?ヒューラーは弱腰で更迭された。俺達の先行きは暗い。あぁ、早く家に帰りたい』
『海軍の臆病者が、昼間の爆撃でシャーロットからの爆弾を一発食らったからって逃げやがった!俺達は毎日毎日朝から晩まで爆弾とロケット弾の雨、砲弾銃弾の雨を食らっているっていうのに!海軍からの支援が無くなったら俺達はいよいよおしまいだ。海軍が居なくなったのを見て日本軍が飛行場を奪い返しにくるかもしれない。戦車なんて最初のうちに集中攻撃されて、碌に無い俺達にはどうしようもない。俺達はこの島に見捨てられたんだ!こうなったら日本軍に降伏したほうがまだマシかもしれない。ハワイが占領されたときに日本軍が送り返してきた民間人と話したとき、とても丁寧な扱いを受けたと言っていた。少なくとも俺達の軍よりはマシかもしれない』
「もう無茶苦茶じゃない。捕虜になる事を考えてる時点で部隊としての戦闘能力なんて無いに等しいものだと思うけど」
「実際に夜間に部隊を脱走して日本軍に投降する事例が少なくとも138例、人数として211名が確認されている。どうやら1人での脱走、投降だけでなく数人での脱走と投降も起きていたようだ」
「投降した米豪兵はビアク島西端から大発動艇などでマノクワリに送られ、そこからフィリピンに輸送機で送られた。そしてフィリピンのマニラやバギオ、トゥゲガラオと言った各地の捕虜収容所にそれぞれ送られ、何か病気になっていた場合は現地の捕虜病院や必要に応じて日本本土の捕虜収容所病院に送られている」
以下、ビアク島の戦いにて投降した米豪兵による収容所内での手記
『あの島に比べればここは天国だ。日本軍の砲撃や爆撃に怯えずに済むし、精神医が毎日大丈夫かと話を聞いてくれる。健康に何かあればすぐに医者が見てくれる。何か欲しいものがあれば可能な限り答えてくれる。ナイフとかは無理だが、同じ収容所の英兵はサッカーを楽しんでいるし、俺達はこの前野球ボールとバット、グローブを一式貰った。トランプは掛けをして喧嘩が起きて禁止になったが、代わりにハナフダというカードゲームが流行ってる。コメが主食なのが少し変な感じがするが、冷たい缶詰や不味いレーションに比べれば温かい美味しい食事を三食食べられることがとても幸せだ』
米海兵隊アルフレッド・ターナー一等兵
『毎日、朝7時に起床のラッパが鳴って、朝食を食べて身嗜みを整えたら8時から労働が始まる。労働と言ってもキツイ訳じゃない。麻を繊維にする作業とか梱包作業だ。12時から13時まで昼食を食べる。労働も16時には終わる。昼休憩が1時間あるから7時間ぐらいの労働だ。それが終わったら夜20時まで自由時間だから、野球をしたりサッカーをしたり、カードゲームをしたりと思い思いに過ごせる。21時ぐらいまでに夕食を食べてシャワーを浴びて寝る準備を整えたら22時には就寝だ。生きている中で一番充実した人生を送っている気がする」
米海兵隊ジョン・バーガー上等兵
『この前、馬鹿なショーンが食えると言って収容所の敷地内に生えていたココナッツとバナナを持って来た。それを仲の良い日本兵達と一緒に食べたら全員が腹を壊して病院に担ぎ込まれた。幸い死ぬことは無かったが軍医からそこらに生えているものを易々と口に入れるなと怒られた。3日間の入院で食事は味気無いカユとか麺類で収容所の食事が恋しい』
豪陸軍ジョージ・フォワード二等兵
「しかも米豪軍がちょっと慣れてきた頃になると、休ませないと言わんばかりに第3飛行場に対して凄まじい砲撃が加えられた後に戦車を先頭にして一個歩兵大隊ほどの日本軍が防御陣地を潰して回った挙句、第一防衛線を突破することもあったそうだ」
「手慣れてるというか、なんというか……。米豪軍に戦車はあったんでしょ?」
「あったんだが目立つから真っ先に砲撃の的にされて破壊されているぜ」
「結局この夜襲部隊は第一防衛線を突破するだけ突破して、大量の爆薬を仕掛けて吹き飛ばした上で撤退してしまったんだ。米軍の応援部隊が到着する頃にはもぬけの殻状態。防衛線と防御陣地の復旧の為に工兵隊や歩兵を派遣すればそれを狙って砲撃が加えられるし、かといって防衛線に穴が出来た状態は看過出来ないので損害覚悟で再構築するしかないと言う悪夢だったそうだ」
「マトモな防御陣地は昼間の砲撃で周辺のものと合わせて吹き飛んでいたしな」
「流石に同情するわね」
「米軍も流石に現状打開の為にヨーロッパに派遣予定だった一個師団を、豪軍も2個連隊を増強したものの結局、どうにもならず講和締結に至るまでビアク島では戦闘が続いたぜ」
「最終的にビアク島の戦いは2か月にも及び、日本軍戦死者317名、米豪軍戦死1万1337名、戦傷者約2万2千名、合計約3万4千名の損害となった。これとは別にPTSDなどの精神病を患った兵士が約1万3千名が発生したと言う。事実上投入兵力の半数を損失した結果となったぜ」
「実害として三十倍近い損害を与えつつ米豪軍に飛行場を使用させないと言う戦略的目標を果たしたビアク島守備隊は、ニューギニア島マノクワリから大発動艇で一日に3~5トンほどの補給を受けながら戦い抜いたぜ。戦後彼らには戦死でも無いのにも関わらず、戦死者と武功抜群者には2階級特進、生存者には1階級特進と、両者に対して特別恩賞と金鵄勲章が与えられたぜ。マリアナ諸島の戦いが終わり、日米の講和交渉が開始されるまでビアク島飛行場を一切使用させることは無かったぜ」
「米軍の戦死傷者がここまで拡大した理由は高台からひたすら撃ち下ろされ続けたことと、日本軍に対しての攻撃が全く上手く行かなかったことだ」
「どういうこと?」
「日本軍が立て籠もった場所は高台や山中だったんだ。あちこちに陣地やトーチカが相互支援が可能な様に配置されていた。道中には航空爆弾を改造した地雷なんかも仕掛けてあったから戦車も簡単に通れない。仮に地雷や即席爆弾をすべてクリアしたとしても全方位から集中砲火を食らってしまう状態だったんだ。だから攻略するには難しい」
「しかも昼間は毎日のように15~30機程度の零式双発汎用機や4発重爆による爆撃が行われ、数は少なくても毎日爆撃に晒されれば損害は増え続ける。しかも米豪軍側には防空の為の戦闘機なんか1機も無かったんだからな。頼りなのは沖合で対地支援砲撃を行っていた重巡と駆逐艦の部隊だけだ」
「飛行場が稼働すればまだ話は変わっていたかもしれないがその飛行場は穴だらけで使い物にならない。艦隊からの砲撃支援も効果は無いって訳だからな」
「そもそもここを攻略しようとしたのが間違いだった、って訳だったのね」
「そうだ。米軍は日本との単独講和条約締結後に部隊を撤退させ、豪軍もその3日後に撤退している。日本軍も講和条約に則って3か月掛けて順次部隊を撤退させたぜ」
ーーーーーーーーーー
「この戦いで得られた戦訓は対日戦、島嶼戦における重要な戦訓を含んでいたが、それが分析、マニュアルとして配布される前にマリアナ沖での決戦に米軍は敗れて講和となっている」
「対する日本軍はこの戦術が島嶼戦に於いて有効かつ絶大な効果を発揮すると言う事を改めて実戦で確認し、マリアナ諸島での戦いに挑むことになるぜ」
ーーーーーーーーーー
「今日の解説はこれで終わりだ」
「「ご視聴、ありがとうございました」」