知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう   作:鐘楼

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厄災(Ⅰ)

 “厄災”。

 

 この世界に巣くう病巣。その滅びには人も魔も関係がなく、故に共同戦線を張った人魔は幾度目かの会談を行っていた。

 

 片や、魔族の長たる魔王とその護衛。もう一方は、新興国にして超大国のロクルス王国の長、ロクルス二世を代表とする人界代表団。

 

 「……逃避だな」

 

 しかし、今の会談の場は暗く、重い。最初の数回の頃のような、過去の因縁から来る険悪な雰囲気すら見られない。両陣営が、分かりきった敗北という絶望に呑まれていた。

 

 「妾には、この会談に意味があるとは思えん。悪いが、帰らせてもらう」

 「しかし魔王、それでは──」

 「……騎士団長は、帰っておらんのだろう?」

 「ッ!」

 

 引き留めようとする人類の代表者……ロクルス二世に、魔王は核心を突く言葉を言い放つ。

 「貴重な戦力を使い妖精島に手を出し、原因も分からず全滅だ」

 「な、なぜそれを……」

 「我々もだからだ。ふふ……できるのならば妖精の利用を進言してきた者と命じた妾を殴り飛ばしてやりたいわ」

 「で、では……」

 「……四天王が二人、帰っておらん」

 

 陣営の絶望の一因。更なる戦力拡充を狙って妖精島へと送り込んだ主戦力が帰っていないこと。仮に彼らが健在だとして“厄災”に太刀打ちできるかは別問題として、決戦前に重要戦力を失ったことは戦力面はもちろん士気の面でも大きな悪影響を及ぼしていた。

 

 「……もう人間の戦力には期待できぬ。時間の無駄だ」

 「それでは我々は……!」

 「共同戦線は解消! 今滅ぼされんだけありがたいと思え……!」

 

 あまりに後ろ向きな理由で、人魔共同戦線という奇跡は崩れ去った。

 

 「……本当に、勇者は生まれていないのか」

 

 立ち上がった魔王は、先ほどの突き放す言葉とは打って変わって、縋るような声色でそう尋ねた。

 

 「……未だ、確認されず……」

 「そうか……」

 

 それは、歴史の重要な局面で現れ、幾度となく魔族を苦しめてきた存在である勇者に一抹の希望を託しているが故に出た言葉だった。しかし、人類の中からそのような強者が現れたという報告はなく希望は暗闇の中だ。

 

 「……父が、生きてさえいれば……」

 「ロクルス一世か……あれは凄まじい男だった」

 

 ロクルス二世の実の父にして建国の父たるロクルス一世の勇名は、魔族の間でも知れ渡っていた。曰く、圧倒的な個の力で国々を統一した覇王であったが、平和を好む側面もあって魔族を攻め滅ぼすこともなかったという。

 

 「……無い物ねだりであるな。まったく、奴が人間の寿命で死んだときは安堵したのだが」

 

 しかし、かの覇王は“厄災”の予兆が観測されるよりも早く没してしまっていた。そして、息子である二世は彼の力を引き継いではいなかった。

 

 「……いや、ネクロマンスや召喚なら或いは……」

 「……残念ながら……悪用されぬよう先王の遺体は既に焼いた後で……召喚の方も……取得できた者がおらず……」

 「……そうか。なら、やはり会談は終わりだな」

 

 魔王は今度こそロクルス二世たちに背を向ける。

 

 「……意味があるかは分からぬが、最後に忠告しておく。どうやら“厄災”を祭り上げる愚か者どもが暗躍しているようだ」

 「まさか……では、島の件も……」

 「それは分からぬ……分からぬが……これは目の前の“厄災”を乗り越えてから気にすべきことだ……余計な不安を与えたかも知れぬな」

 

 そして、魔王は部屋の出口に手をかけ、最後に振り返って口を開く。

 

 「……最後に。我々はイデモナ平原に戦線を張る。せいぜい悪あがきの準備をしておけ」

 

 そう言い残し、魔王は去って行った。

 

 残された人類の代表者は、あまりの絶望に加えて内憂の疑惑に打ちひしがれ、しばらく誰も口を開かなかった。

 




遅れた上に箸休めで短いだと? 舐めてんじゃねえぞ(ゴッゴッ
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