知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう   作:鐘楼

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若き日の過ちって色々あるけどこれはそのうちに入りません

 「……で、なんで生きてる? お前は“厄災"との戦いで死んだと……それにその身体は」

 「まるで負けたみたいな言い方はやめてくれ。んで今の俺はな……」

 

 当然というべきか、俺が人間ではないことに気づいたアッシュスティングに、英霊のことについて大まかに説明する。彼女はクレイプレシャスとは違って魔法に詳しいわけではないようで、ざっくりとした説明になってしまったが、重要なのは英霊召喚の仕組みではないから問題はないだろう。

 

 「そんで、不本意にも100年前に現世に呼び戻されて……」

 「……待て。100年前だと?」

 「あぁ、それが?」

 「100年もあって、デザイアに会おうとしなかったのか?」

 「別に会う理由なかったしな」

 「……」

 

 復活した頃の俺は、柄にもなく好奇心に動かされていて過去を想う隙間などなかった。他に確かめたいことが沢山あって、ブラックデザイアのことなど完全に頭から抜けていたのだ。

 「……貴様、それ絶対にデザイアに言うなよ」

 「なんでだ?」

 「面倒なことになるからだ! そもそも私がお前を迎えに来たのだってアイツが『こ、これって運命なのかな?』『ついに私の思いが届いた!』なんて楽観したかと思えばウジウジと『私、あの子供に酷いことしちゃってるけど……私の方が大事だよね?』とか『そ……そもそもちゃんと話せるのかな……』だとか抜かして埒が明かないから来たんだぞ……! あのアホがそれを聞いたときのケアを考えるだけでも……!」

 「あー、なんか苦労してるのだけは伝わったわ」

 

 よく分からないが、アッシュスティングが苦労しているのと俺がありのままブラックデザイアと接するとアッシュスティングに被害が及ぶらしいことは分かった。要するに何も問題はないということだ。

 

 「んで、なんでクルスたちと敵対してたんだ?」

 「……それは……我々があの少年と妖精達が追っている黒化現象の首謀者だからだ」

 「なんだ、ワルだったのか」

 「違っ……いや、その誹りを受ける覚悟はしてある……」

 「俺に申し訳なさそうにされても知らんが」

 

 クルスたちが半年間追いかけ、戦っているらしき相手。それがこのアッシュスティングとあのブラックデザイアらしい。そして、少なくともアッシュスティングにとっては不本意な所業だと言うことは見て取れた。だからと言って、俺がなにかするような話には思えないが。

 「……だが! 貴様さえいれば! もう我々がこんなことをする必要はない!」

 「俺? どういうことだ?」

 「黒化現象というのは、デザイアの能力の応用で妖精達を操り、我々の戦力とする実験のことを指している。その目的は……アイツは復讐かも知れないが、私は世界の……妖精のために……」

 「あー、つまり?」

 「……詳しくは必ず後で説明するが……要するに、お前が生きているのならもうこんなことはしなくて済む。これは私もデザイアも同じだ」

 「……えー……」

 「なぜそこで微妙な顔をする!?」

 

 それじゃあまるで俺が来たせいでクルスの物語が途中で終わったみたいな感じになってしまう。それはまずい……いや、なんとかラブコメ路線に切り替えれば持ち直せるか……? しかし、奥手なクルスでは共通の目的がないとまともに物語が進行しないんじゃないか? いや、奥手主人公ならそれはそれで話のやりようはあるが、それにはあの妖精達の方に積極性が必要だ。彼女たちは十分に肉食系と聞いてはいるが、俺としてはいまいちその現場を見たことがないのだ。本当に物語になるのか……?

 

 「おい、おい! 聞いているのか!」

 「いや、ぜんぜん」

 「おい!」

 「んで、つまりは俺の協力がいるってことだよな……えー……」

 「なぜ渋る!? 世界のためなんだぞ……!」

 「別に世界が俺に何かしてくれたことないしなぁ」

 「きゅ、急に闇を覗かせるな!」

 「いや、ただの事実ね」

 

 アッシュスティングが危惧している世界の危機とやらはさっぱりだが、俺にその危機をどうにかさせようとしているらしい。途轍もなくやる気が起きない。

 

 「とにかく、詳しくは我々の拠点で話す。来てもらうぞ」

 「まぁそれはいいけどさー」

 

 戦う気は起きないが、話を聞くことはもう決めている。俺は言われるがまま、アッシュスティングについて行った。

 

―――――――――――――

 

 「ここだ」

 「暗……なんかジメジメしてね?」

 「……私の趣味じゃないぞ」

 

 連れてこられたのは、妖精島の外れ、妖精の気配もないような場所にある洞窟を改造したアジトだった。

 

 「デザイア。帰ったぞ」

 「スティング~? 今開ける~、どこ行ってたの?」

 

 ガチャリ、と。施錠されたドアが開くと、確かにブラックデザイアが現れた。髪も服装も乱れに乱れた。

 

 「うお、まじで生きてる」

 「……ぇ……」

 「お前のタイミングとやらを待っていたら埒が明かないからな。だから──」

 「……スティングぅぅ~~!!」

 「うわっ」

 

 俺を視界に入れて数秒フリーズしたかと思えば、ブラックデザイアはアッシュスティングの手首を強引に掴んで二人で中に入ってしまった。

 

 「おーい、ゲスト放置すんなよなー、帰ってよろしい?」

 「ま、待て。話をすると言っているだろう! おい、どうでもいいだろ今更身だしなみなど……」

 

 長くなりそうなので、俺は霊子書籍を開いた。

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