知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう 作:鐘楼
「ひ……久しぶりだね……へへ、れ……レヴィンくんって呼んでもいい……?」
「構わないが」
しばらくして。
拠点の中に招かれた俺は、130年ぶりにブラックデザイアと対峙していた。いたのだが、いまいち眼前の妖精が記憶の中のブラックデザイアと重ならない。理由の一つは、気質というか、雰囲気だ。あの頃のブラックデザイアはキッズ俺がいくら適当な扱いをしてもめげずに俺についてくる明るい気質だったはずだ。それが今のブラックデザイアはこの拠点が似合うほど暗い印象を受ける。まぁ、何かあったんだろう。俺も大きく変わった自覚があるし、お互い様だ。
もう一つは、その力量。記憶にあるブラックデザイアとは見違えるほどに今の彼女は強い。俺にとって脅威だとは思わないが、クルスたちでは厳しいんじゃないだろうか。
そんなブラックデザイアは俯いて俺の顔をチラチラ見ながら口を開きかけては口ごもるという不審な挙動を見せていた。埒が明かないので、素直に気になったことを聞くことにする。
「お前強くなったよな」
「え……うん……そうなんだ……こ、これはね? キミのおかげなんだよ」
「俺の?」
「あなたを失って……苦しくて憎くて悔しくて……そうしてあなたのことを思うとね、どんどん力が高まっていくの。もう失った後なのに、遅い、遅いって思ってた……でも……!」
「答えになってなくないか?」
想いが力になる……というのは現実の戦士も物語の中でも時たま聞く理屈だが、現実的ではないと思っている。今にして思えば色々な想いを背負っていた戦士たちと戦ってきたが、中身など一切ない虚無そのものだった昔の俺に敗れているのだ……という話をしたら、知り合いが『意思の力が覆せる力量には限度がある……いずれにせよ、お主がそれを体感できるほどの相手が現れるとは思えんがの』と言っていた。この意見が正しいとしても、ブラックデザイアのそれはその限度を超えていると感じる。
「……デザイアの力は、ネガティブな感情に呼応して増大していく。その性質に、こいつはお前が散ってようやく気づいたんだ」
「なるほど」
アッシュスティングの非常に分かりやすい補足によると、ブラックデザイアは元からそういう妖精だったらしい。正直言って、妖精にはそこまで詳しいわけじゃないからそういうものかと飲み込むしかないが、今度は別の疑問が生まれる。
「……お前俺のことそんなに引きずってたの?」
「当たり前だよ……! 私と君は運命で結ばれた番いなんだから!」
「知らねぇ」
……死んだ時、うっかりであの“厄災”とかいう奴のエネルギーに毒されて斃れた時、俺は自分の死に大した意味を見いだしていなかった。しょうもない死に方をしてしまったことは残念だったが、まぁしっかり相手を殺して引き分けだし別に良いか、なんてことを思っていたのだ。当然だろう、今は違うかもしれないが、あの頃の俺に死んで失うものなど何もなかった。なので、まさか自分が死んだ程度のことを130年も引きずる奴がいるなんて今日まで考えたこともなかった。
「……貴様の認識は薄々察していたが……いや、あの頃からそもそも脈な……ごほん、デザイアはお前のためを思って外の世界で30年活動し、ここで100年準備していたんだ。その一途さくらいは認めてやってくれないか」
「つまり……130年間も未亡人面して暗躍してたのか? 俺の知らないところで?」
その事実を理解した途端、ブラックデザイアが得体の知れないものに見えはじめた。いや、俺に理解ができないものなど世界に腐るほどあるけれども、なにか寒気を感じるような、初めての感覚だった……まさか、これが恐怖……?
にしても、外の世界で30年間か。俺が復活したのが100年前だから、奇跡的な入れ違いだ。
「も、もう未亡人じゃないよ……ずっと一緒だから……キミさえいれば、もう準備なんか必要ない……! だから、今すぐ奴らに復讐するの……!」
「……それだよ、なんなんだ? さっきから憎いとか復讐とか、あのデカいのなら壊したはずだろ?」
「……そっか、知らないんだ」
ブラックデザイアが所々口にしていた、『憎い』『復讐』といったワード。まるで俺の仇がいるような言い方だったが、全く心当たりがなかった。あの“厄災”とやらは倒したはずだし、もし実は奴を倒せていなくて復活していたのだとしたらこの世界はもう終わっているだろう。
「……私はその場にいたわけではないが、“厄災”との戦いが終わった直後に突然現れた輩が貴様の死体を強奪したそうだ」
「それが、《拝淵教団》」
ご存じないですね……。