知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう   作:鐘楼

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あんまり感情の起伏が激しいと考察が追いつかないので勘弁してほしい(前)

 「えーっと、つまり? なんとか教団の幹部は全員厄災に汚染された俺の細胞に適合してて? 王国の王妃がその幹部だからその息子であるクルスにも俺の因子が受け継がれてて? だからクルスも“吸収”(アブゾーブ)が使えるって?」

 「そうだよ……ほんとに知らなかったの?」

 「いや……あー、はい、知りませんでした」

 

 ブラックデザイアから告げられた衝撃の事実に、俺は柄にもなく呆気にとられていた。『俺の尊厳が奪われている』という言葉がまさかこれほど具体的で生々しく、かつ身近なところにその影響が出ているとは思わなかったのだ。

 

 「……待て、デザイア。その話は私も聞いていないぞ」              

 「……言いたくなかったの。これは私がレヴィンくんの身体を守れなかったせいだから……」

 

 俺の死体がパクられたことに相当責任を感じているのか、ブラックデザイアは悲痛な表情を浮かべる。別に死んだら死体の面倒よろしくだなんて頼んでないし、今はともかくあの頃のブラックデザイアじゃ無理だろう。むしろ俺が死んでから敵に襲われてどうやって生き残ったんだろうか……あー、確かあの時魔王もいたんだったか……記憶が曖昧だけども。

 

 「だとしたらマズいだろう……! 拝淵教団の幹部は皆この男の力を……!」

 「それは大丈夫だよ。前に一人と戦ったことがあるけど、“厄災”の使った変な力を使われただけで魔力が吸われるなんてことなかったし、あくまで吸収した“厄災”の力の方がメインなんだと思う」

 「たとえ俺と同じ力を持った奴が量産されててもクルスレベルなら何人いても別に……まぁ世界の方は終わりかもしれないけど」

 「……とにかく、この男の力に目覚めたのはあの少年だけと考えて良いのか? デザイア」

 「……レヴィンくん、あの子に何かした?」

 「え? あー、“吸収”(アブゾーブ)が俺以外にも使えるのかなと思って教えたが……まさかそれか?」

 

 クルスが“吸収”(アブゾーブ)を使えたのは教団の血が入っていたからだとして、目覚める切っ掛けは俺が与えた、というのは確かにしっくりくる。じゃあ、その幹部にも俺が教えれば“吸収”(アブゾーブ)が使える……ということになるか。

 

 「……これで分かっただろう、《拝淵教団》は野放しにしていい輩ではないんだと……!」

 「いやだから、世界の危機とか興味ないって。幹部がクルスの母親でも……ん?」

 

 俺の細胞話に気を取られていたが、クルスの母親は世界に仇なす組織の幹部らしい。そして、クルスは世界の危機となれば普通に戦おうとするタイプに見える。

 

 「母子対決……それはそれで……っぽいな……」

 「……おい、分かるぞ。貴様ろくでもないことを考えているな!」

 「よし、さっき頼んだ『黒化現象続けてくれ』っての、撤回だ」

 「レヴィンくん、もしかして」

 「クルスたちをその教団にぶつけよう!」

 

 ブラックデザイアたちよりも、その教団とやらの方がクルスと因縁があることが分かった。つまり、絶好の敵役が天然物で存在していたのだ。これを活用しない手はないだろう。

 

 「貴様、あの少年をなんだと思っているのだ!」

 「そりゃ、じじいの物語を現実にしてくれるかもしれない存在だよ」

 「……レヴィンくん、その物語ってなんなの? さっきも読んでたやつのこと?」

 「そうだ。特別に見せてやろう」

 

 興味を示したブラックデザイアに取り出した霊子書籍を見せる。もちろん、見せるのはクルスの状況に酷似した『おねショタハーレム愛ランド~そこはダメだよお姉ちゃん~』である。

 

―――――――――――――

 

 「……と、こんな感じだ」

 

 俺の解説を聞いた二人の反応は対照的で、ブラックデザイアは聞きながら熱心に霊子書籍のページを捲っているのに対し、アッシュスティングは頭を抱えていた。

 

 「……なんというか、人の欲を感じる物語だな……意外だが、貴様にもこういう願望があるのか……?」

 「……いや、別に……」

 「……ますますわからん……いや、この物語については把握した。これがクルス少年の境遇と似て……似て……む……似ていると貴様が思っていることも分かった。しかしだ、貴様が物語をあの少年に押しつけようとする理由が分からん! そもそもこの物語には邪悪な敵組織など登場しないだろう!」

 「いや、そこはクルスのガードが堅いからさ、ラブコメが上手くいかなかった時のためにバトル路線も用意してリスクヘッジしてんだよ」

 「……ダメだ、今の貴様が今までで一番理解できん」

 

 理解を諦めたとばかりにアッシュスティングはかぶりを振る。そこで、ブラックデザイアが霊子書籍のページを指さし声を上げた。

 

 「ね、ねぇ……この『おねショタ』ってさ、昔の私とレヴィンくんみたいじゃない……?」

 「いや、ないない」

 

 何を言うのかと思えば、ブラックデザイアは見当違いなことを言ってきた。熱心だと思っていたが、ちゃんと話を聞いていたのだろうか。

 

 「な、なんで!?」

 「俺とデザイアじゃどう頑張ってもショタおねにしかなんないから」

 「……それ、何が違うの?」

 「あ、お前……それ間違えると殺されるぞ……」

 「え!? だ、誰に……?」

 「……いや、俺も知らないけど」

 

 じじいがそう言ってただけだし。

 

 「……で、なんで私とレヴィンくんが『おねショタ』じゃないの?」

 「そりゃ主導権が常に俺にあるからな……おねショタってのは女の方がリードしてるものをいうんだよ」

 

 確か。半分聞き流していたが、俺が作品を読んでいる横でそんな説明を何時間か熱弁していたはずだ。

 

 「んで、俺はおねーさんに主導権を渡したことなんてないはずだからな」

 

 昔、あの頃は確かにブラックデザイアと旅をしていたが、デザイアは本当にくっついてきただけで彼女の提案に俺が乗った覚えなどほとんどない。そんな指摘をしたのだが。

 

 「ぁ……いま、おねーさん、って……」

 

 デザイアはなぜか泣き出してしまった。こわ。




*実際過去編のレヴィンとデザイアがどっちなのかは諸説あり
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