知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう 作:鐘楼
「……ん? なんかデザイアの力萎んでないか?」
なぜか泣き出したブラックデザイアを観察していると、あることに気づいた。泣くほどに、高まっていたデザイアの力が弱まっているのだ。
「……本当だ。これは……」
アッシュスティングも同じことに気づいたらしいが、当のデザイア自身は未だに泣いたまま。デザイアの力はどんどんと弱まっていく。
「どういうことだ、これ」
「おそらくだが……デザイアの力は負の感情で増幅されると話しただろう。これは……その逆だ。デザイアがプラスの感情を感じるほど、高まった力が弱まっていっているんじゃないだろうか」
「プラス? 泣いてるのにか?」
「お前な……これはどう見ても嬉し泣きだろう」
「……あぁ、これが“感涙”か!」
「……もういい」
デザイアの“感涙”効果による弱体化は凄まじく、彼女の力は後もう少しで昔と同程度にまで落ちそうになっていた。俺はどうでもいいが、デザイアの力を頼りにしているらしいアッシュスティングにとっては死活問題だろう。
「く……このままでは洒落にならん……」
「アッシュスティングって頭抱えてばかりだよな」
「誰のせいだと思っている!」
「なんか、お前を見てると知り合いを思い出すな」
「……いるのか、貴様に……私のような知り合いが……だとしたら、この苦労を分かち合い仲良くなれそうなものだが」
思い浮かべるのは、じじいの話の知識に偏っていた俺を矯正して、常識を叩き込んだ存在。
「あー、いるぞ。フェンニバルって言って、ずっと旅をしてたんだが」
「──待って」
アッシュスティングと緩く雑談していたつもりが、非常に冷たい声で遮られその空気は霧散する。見れば、ブラックデザイアがさっきまで泣いていたとは到底思えない顔でこっちを見ていた。
「私、その話知らない」
「言ってない話知ってたらおかしいだろ」
「……その人、女の子?」
「人じゃないけど女だな」
瞬間、ブラックデザイアの魔力が吹き荒れた。
「──おかしい、おかしいよ。レヴィンくんと旅をするのは私だけの特別だったはずなのにそもそも他の人と旅をしている間に私は島で無駄な時間を過ごしてたってこと? 許せない許せないよそれにレヴィンくんもレヴィンくんだよなんですぐに私のところに来ないで他の人と一緒にいるの──」
「おぉ! 魔力が戻っていくぞ! これは……前以上じゃないか!? おい貴様、もっと何かないのか!」
「なにかってなんだよ」
俯きぶつぶつと何か言いながら魔力を高め続けるデザイアと、珍しくテンションを上げるアッシュスティング。なかなか面白い絵面だが、目の焦点が合っていないデザイアにはどこか見覚えがあった。
「──決めた、そのフェンニバルってひと殺そう」
「いや、無理だろ」
「レヴィンくんはその子の肩を持つの!?」
「子、って……肩を持つとかじゃなくて公平に見てお前じゃ敵わないって言ってるの」
「じゃ、じゃあ! 今すぐレヴィンくんを私のものにして……」
「それはもっと無理……あっ!」
「おぉぅ、急にどうしたんだ」
ここまでデザイアの言葉を聞いて、ようやくピンときた。
「お前ヤンデレなのか!」
「やん……なに?」
当然語彙にない言葉だったからか、首をかしげるブラックデザイアと、何かを予感したのか眉間をおさえるアッシュスティング。そんな二人に、俺は霊子書籍を操作してまた別の作品を見せる。そう、『四六時中ヤンデレに愛を囁かれて監禁されるけど悠々自適~えっ!?毎日別のヤンデレが攫いに来るので眠れないんですか?~』である。
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「……私、こんなんじゃないもん」
「いや、これに関してはかなりデザイアに似ていたと思うが……」
俺の解説を聞いていたデザイアはだんだんと顔を赤くし、終わる頃には先ほどまでの恐ろしい雰囲気は完全に霧散してしまった。
「って、おい! デザイアの魔力がもとに戻ってしまったじゃないか!」
「知らんがな」
「今からでももっと嫉妬を……っ!?」
会話の途中で、突然アッシュスティングが真面目な表情を取り戻し何かを警戒し始める。
「どうした?」
「島に侵入者だ……只者ではない……」
「へー、なんでわかんの?」
「スティングはずっと島の自警団みたいなものだったから、その時に作った防衛システムがまだ生きてるんだよ」
「ふーん」
なんだ、そんなことか。
「この力……教団の幹部だとしてもおかしくはないぞ……!」
「……スティング、本当?」
アッシュスティングの言葉を聞いたデザイアにも、真剣な表情が伝染する。が、俺はそんな二人に待ったをかけた。
「まぁ待てよ。行っても良いが、まずはクルスたちにぶつけようぜ」
話中身ない回