知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう 作:鐘楼
「レヴィンさん、遅いですね……」
クルスと妖精達は、ぶつかり合って絆を再確認したのは良いものの、一向に帰ってこないレヴィンに対して大なり小なり懸念していた。
「お兄さんがアッシュスティングに後れを取ることは万が一にもないだろうから、何かあったんだろうネ」
「もっと強いのが加勢してきた……とかか?」
「というよりも……フフ、案外敵と仲良くなっているのカモ」
「いや、あいつそんなタイプじゃないだろ」
思わせぶりな笑みを浮かべるクレイプレシャス。レヴィンが苦戦するような相手を思い浮かべようとするフレアルビー。ただ真摯にレヴィンの身を案じるクルスと、そんなクルスを見つめるサニーウインド。
「み、みんな! 来て! 大変なの!」
そんな四人に、慌てた声がかけられる。
「ソフトレイニーさん、どうしたんですか?」
声の主は、以前レヴィンとクルスの会話を盗み聞きして言いふらしたソフトレイニー。余程火急の用だったのか、息を切らしている。
「変な奴らが現れて……みんなが!」
「それって、妖精の皆さんが襲われてるってことですか!?」
「……ソフト君、相手は黒化妖精ではないのカナ?」
「人間の侵入者だよ! でも、とんでもない強さで……!」
「無関係か……フム……」
「とにかく、行きましょう!」
「りょーかい! クルスくん!」
ソフトレイニーの妖精に従い、侵入者がいるという現場へ、クルスたちは向かった。
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「きゃっ──!」
また一人、妖精が振るわれた戦斧によって地に叩きつけられる。妖精島に侵入した人間に、妖精達は洗礼として悪辣な遊びを仕掛ける。それが悪戯の域で済むのか、拷問じみたものになるのかは妖精によるが、この洗礼を楽しみとしている妖精は少なくない。今回も、そうなるはずであった。
「弱ェ……世界はこんな程度の奴らにビビってたのか?」
「
「わーってるよ、
「ユニットの部品に組み込む。これで適合できない団員でも多少は役に立つ」
妖精を蹂躙したのは、黒衣の少女二人組。輪と旋、そう互いを呼んだ二人の実力は妖精達の想定を遙かに超えたもので、戦闘に長けたフレアルビーと同程度の実力者があっさりと倒されていた。その大きな要因の一つが、二人の扱う力。魔力とは似て非なるそれに、妖精は対策を講じることが叶わず、輪の遠距離攻撃を障壁で防ごうとすれば貫通され、旋の武器と打ち合えばそれだけでダメージを負った。
「へっ、聖体に適合できねぇカスなんざいらねぇだろ」
「旋。
「核ってどこにあんだよ? 心臓抜く要領でいいのか?」
「……旋。お前は何もしなくて良い」
輪は、倒れ伏していた妖精の一人を持ち上げると、魔力核のあるであろう場所に手をかざす。そのまま核を抉り取るつもりだ。
「ひ……や、やめて……」
「ア? なんだその顔は? なんで自分がこんな目に遭うのかわかんねーって顔だな?」 「旋。言葉を交わす必要はない」
「教えてやるよ! 弱いからだ! お前ら弱者は強者に全てを差し出すしかねぇんだよ!」
恐怖に引きつる妖精に持論を浴びせる旋に輪は嘆息すると、今度こそ妖精から核を抜き取ろうと手を振りかざし──かけられた声に再び動きを止めた。
「そこまでです!」
声の主は、急行してきたクルス王子たち。彼らは、数々の妖精が倒れた惨状を目にして改めて状況を理解し、戦意を募らせていく。対して、二人組の方は乱入者に対して違った反応を見せた。
「……このガキ、どっかで……」
「ロクルス十世……! お前が、周さまの……」
「! 僕のことを知って……」
相手が自分の身分を知っていると分かり、クルス王子に別種の緊張が走る。
「おいおい、大手柄じゃねぇか……! なんでこんな場所にいんのか知らねぇが……」
「ミッション変更。ロクルス十世の身柄を確保する」
「! 来るぞ!」
フレアルビーの警告と同時に、旋が戦斧を手に飛び出す。狙われた少年が未だ動揺の中にいたことを察知し、フレアルビーがクルスを庇おうと敵との間に躍り出る。旋はむしろ好都合とばかりに得物を振りかぶり、フレアルビーもそれを受け止めようと剣を構える。そんなフレアルビーに、旋は唇を吊り上げる。
「ククッ、もら──!?」
が、その笑みは横からの思わぬ一撃で崩れることになる。更なる乱入者による不意の一撃に、必殺となりえたフレアルビーへの攻撃が中断されたのだ。
「アッシュスティングさん!?」
「……少年、助太刀する……あいつめ、本気で加勢しないつもりか……!」
「あ、あの……レヴィンさんは……」
レヴィンと戦っていたはずのアッシュスティングが無事でここにいる。その事実に、クルスは嫌な予感が頭によぎり、更なる動揺に陥りかける。
「……少年、今は何も聞かずに目の前の敵に集中してくれ。そして、必要なことだけ言うぞ。あの二人組の攻撃には厄災の力が込められている。普通の攻撃と同じ防ぎ方はできないと思ってくれ。必ず避けることを心がけるんだ」
「……詳しいな、なんだお前」
「アッシュスティング、妖精の味方で、お前たちの敵だ」
「抜かせよ、オラァ!」
そうして、旋とアッシュスティングの戦いが始まる。クルスたち三人をあしらっただけのことはあり、彼女は敵の武器に触れてはならないというハンデを感じさせずに旋と渡り合う。一方で、クルスは未だ動けないままでいた。自分の正体を知り、なおかつ狙っているとも取れる口ぶりの敵に、無事かも分からず現れない師匠と、少年にとって大きな衝撃があまりに多く同時に起こりすぎたのだ。
「坊や、しっかりするんダ……お兄さんは絶対に生きている。坊やが一番分かっていることのはずだろう?」
「そうだよクルスくん! 今はこいつらをやっつけなきゃ!」
「……そうですね、すみません……」
妖精達の言葉で、奮起したクルスは、ゆっくりと歩んでくるもう一人の敵、輪に剣を構えた。
活動報告に創作論ポエムを上げました。特に更新情報とかお知らせとかではないので読まなくていいです