知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう 作:鐘楼
輪の放つ遠距離攻撃は、紫色の炎のような弾を射出するものだった。一見、ただの魔法攻撃のようにも見えるそれが、ただの魔法ではないことをクルスと妖精達はアッシュスティングから説明されていた。
クルスたちが指示通りに避けるよう努めていると、クレイプレシャスが口を開く。
「フム……術式自体はごく基本的な魔法と同じものだが……そこに魔力ではない別の力を流し込んでいるようだネ」
「分かるんですか!? クレイプレシャスさん!」
「アァ……人間の魔法には自信があるのサ」
相手の力を見破ったにも関わらず、クルスの目にはクレイプレシャスの表情があまり嬉しくなさそうに映った。クルスがその理由を聞くよりも前に、敵である黒衣の少女が口を開いた。
「そこまで分かっているのなら、勝敗はもう見えているはず」
輪はそう吐き捨てると、今度はクルスの目から見ても一段階強力だと思われる攻撃を展開した。
「な……!」
「……あの攻撃が魔法を基にしているということは、基盤とする魔法の種類を変えることでいくらでも応用できる、という予想……外れて欲しかったんだがネ」
「投降しろ、ロクルス十世。さもなければ一匹ずつ妖精を殺す」
「ど、どうして僕のことを狙うんですか!」
「答える必要はない……ふん、本当に何も知らないのか」
クルスには自分が狙われる理由に王国からの追手以外の心当たりがなかった。そして、眼前の黒衣の少女たちは明らかに王国の騎士には見えない。そもそもクルスは自分をレヴィンに預けた護衛騎士、アンリエッタの真意すら詳しく聞いていないのだ。
「爆ぜろ」
輪がそう口にすると、先ほどまでのものとは比べものにならない規模の火球がクルスたちに襲いかかる。避けようにも、これでは逃げ場がどこにもなかった。
「っ! み、皆さん! 僕の後ろに!
「
一か八か、レヴィン直伝の
「……不可解。何をした」
「ナに、防げなくともやりようはあるということサ」
クレイプレシャスが使用した
「……フレア君。アッシュスティングに加勢するんダ、さすがに一対一では分が悪そうに見エル」
「あ、あぁ!」
クレイプレシャスの指摘通り、戦斧を操る旋がアッシュスティングの動きに慣れつつあり、徐々に戦況が敵に傾きつつあった。あそこにフレアルビーが加われば、完全に見切られる前に押し切れる……というのがクレイプレシャスの見立てだった。
「ボクと坊やとサニー君でこっちの敵ダ……良いネ?」
「わ、分かったよ!」
「はい……!」
「……坊や、一応言っておくケド、もう
「……はい」
そもそもクルスの習得している
「そして……大見得を切ったは良いガ、今の防ぎ方はハッタリでね。連射してくる弾を全て逸らすことはできない。さっきみたいな大技だけは必ず対処して見せるケド、あまり当てにしないでくれ」
「分かりました……」
「……ねぇ、ロクルス十世って、クルスくんのことなの?」
「それは……」
「サニー君。後にするんダ……聞かせてくれるんだろう?」
「すみません、必ず……」
「心配せずとも、坊やが何者だろうと今更態度を変える妖精はいないヨ。ボクはそもそも秘密が多い方が好きだしネ」
これで話は終わりだとばかりに、遂に三人は輪と向き合う。対する輪は、冷めた目でクルスを見ていた。
「別れの話は済んだか」
「……貴方たちが何者かは分かりません。でも、僕は貴方たちの思い通りにはならない!」
「……本当に気に入らない。なぜお前などが
決意を示すクルスを、輪は心底忌々しいものを見るような目を向ける。そこには、明らかな私情が含まれているようにクルスは感じた。当然、クルスにそのような想いを抱かれる心当たりはない。
「! 来るよ、クルスくん!」
「はい!」
輪が再び攻撃を仕掛けようとしたのと同時に、クルスは伝承の剣を携え駆けだした。