知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう   作:鐘楼

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実況モノをやるには解説枠が足りない

 「スティング、行っちゃったね」

 「そうだな」

 

 島に強そうな侵入者が来たと聞いて三人で現場へと確認に赴いたのは良いものの、アッシュスティングは妖精を蹂躙する相手に我慢ができず突っ込んでいってしまった。先んじて対応していたクルスたちに加勢した形になるが、相手の力量を見るにむしろアッシュスティングの加勢込みでちょうど良いくらいに見える。

 

 「で、あの二人なんなの?」

 

 妖精をボコボコにし、今まさにクルスたちを圧倒している黒衣の少女二人組。何やら懐かしい力を使っていることから既に嫌な予感はしているが、一応ブラックデザイアに心当たりがあるか聞いてみる。

 

 「……拝淵教団の幹部、で間違いないと思う」

 「……アレがそうなのか」

 

 改めて二人組を観察するが、確かに中々の強さに見える。クルスたちにとっては紛れもない強敵だろう。が、アッシュスティングの言うような世界の危機を引き起こそうとしている輩の幹部としては拍子抜けだ。普通に魔王の方が強いんじゃないだろうか。

 

 そして戦況はと言えば、斧持ってる方はアッシュスティングと一対一で微妙に優勢といったところか。しかし、逆に言えばいまいち押しきれずにアッシュスティングに時間を稼がれているともとれる。なんせ、あからさまな近距離タイプと遠距離タイプのコンビだ。アッシュスティングは組ませたらマズいことを認識して斧の方を長く引きつけ時間を稼ぎ、クルスたち四人に遠距離の方を倒してもらおうとしている……ように見える。

 

 だが肝心のクルスたちは敵の攻撃を捌くのが精一杯のようで、普通に考えればこれは負け筋だ……しかし、あの場に立っているのはクルスなのだ。主人公なら、きっとこの苦戦も俺の思わぬ奇跡を起こして乗り越えてくれるはずだ。

 

 「……あァ、やっぱりムリだよ。我慢できない……ねぇ、私も行ってきていいかな? あのきもちわるい奴らを掃除しなきゃ……!」

 「いや、もうちょっと我慢してくれよ。まだ逆転は早いって」

 

 なんたら教団の幹部を見て、復讐心が沸き立ってきたらしいブラックデザイアが魔力を増やしながら加勢を申し出るが、もう少し待ってくれとストップをかける。

 

 「……ん? 気持ち悪い奴らってどういうことだ?」

 

 ブラックデザイアが敵を気持ち悪いと評したことが腑に落ちず、尋ねる。敵の見てくれは普通の少女で、むしろ一般的な感覚で容姿は整っているように見える。一般的に生理的嫌悪を感じさせるような要素は見当たらなかった。

 

 「……言ったでしょ? 奴ら幹部はみんなレヴィンくんの身体を取り込んでるって……! あいつらも……!」

 「え、まじ?」

 

 そうだ、教団の幹部はみんな俺の細胞を取り込んでいて、その中にクルスの母親もいるって話だったか。まさかこんなに早く実物を見ることになるとは思わなかったんで、そこには驚いたが。

 

 「……それであんなもんなのか? 俺要素どこだよ」

 

 そも、戦い方に俺の痕跡を感じさせない敵の方に問題があるだろう。単純な強さにしても戦い方にしても俺の身体を連想させる要素は全く見られない。可能性、という意味ではクルスの方が上のように見える。

 

 「だから、あの男の子が例外なの。レヴィンくんの身体を使うのはあくまで残留した厄災の力が目的だし、その効果は出てるでしょ?」

 

 ブラックデザイアの言うとおり、幹部の二人は俺を殺した厄災のエネルギーを完全に使いこなせているように見える。出力はデカブツと比べるべくもないが、知能がある分応用ができてもいる。

 

 「奴らがあの子みたいにレヴィンくんの力が眠っているのかは……レヴィンくんがあの子にしたのと同じように教えてみないと分からないと思う……けど」

 

 ブラックデザイアはそこで一度言葉を切り、またも130年募らせたんだろう炎を宿して俺を見る。俺が死んだくらいでよくそんなにも感情を滾らせられるなと、少しだけ羨ましく思う。

 

 「あいつらにも教えるなんて言わないでよ。これ以上あいつらがレヴィンくんのものを我が物顔で使うなんて許せない……!」

 「それは事の流れによるなぁ」

 

 そんなブラックデザイアの要望はさておき、クルスたちは絶体絶命の危機に陥っていた。遠距離の方が痺れを切らしたのか、大技で一気に勝負を決めに動いたのだ。

 

 「…………あと十秒経って無理そうなら助けるか……」

 「……レヴィンくん、それ本当に間に合うの?」

 

 渋々構えを取るが、結果として俺が立ち入るような状況にはならなかった。なんとクレイプレシャスが魔法が効かないはずの厄災攻撃を逸らして見せたのだ。

 

 「お~、どうやったんだ今の……」

 「……流石だね、クレイプレシャス」

 「あれ、お前アイツ知ってんの?」

 「……あの男の子の取り巻きだから、ここ半年戦ってきたっていうのもあるけど、それ以上に有名だし、年上だからね」

 「え? 年上? デザイアの?」

 

 ブラックデザイアよりも年長者ということは自動的に俺よりも年上ということになる……そういえば、前に『キミがおじいさんならボクまでおばあさんになる』とか言ってた気がするが、本当だったのか……って、そんなことが問題なんじゃなく。

 

 クレイプレシャスがデザイアよりも年上ということは、つまり俺がこの島でやんちゃしてた頃には既に存在していたことになる。

 

 ……バレているのか? 知らないふりをしているのか? もしクルスにチクられたら俺の努力が無駄になってしまう。

 

 「……おかしいだろ。クレイプレシャスは昔の俺を知っているような素振りは見せなかったぞ」

 「それはおかしくない……と思う。クレイプレシャスは用心深くて、ある程度力をつけるまで同じ妖精からも隠れて生きてたんだよ。だから、あの頃のレヴィンくんを実際に見てないっていうのは無理もないんじゃないかな」

 「……なるほど……」

 

 そうか……なら問題ないんだろうか。そういえば、クレイプレシャスは例のデタラメ伝承には否定的ってちらっと聞いたような……いやそもそも、あの話はどうしてああもねじれて伝わっているんだ。これもアッシュスティングが帰ってきたら聞かなきゃな。

 

 「……! 加速した……!」

 「またクレイプレシャスの魔法か? 凄いな……クルスにアレが合わさったら俺でも見切れるかどうか……」

 

 まぁ、俺に関しては剣を当てられてもダメージにならないんだがさておき。とんでもないスピードをクレイプレシャスの魔法によって手に入れたクルスは一転遠距離幹部を追い詰める。圧倒的だ。信じて良かった。やはりクルスには俺が求める何かを持っている。

 

 クルスはそのまま、敵を圧倒し、やがて決定的な隙へとたどり着く。

 

 「……え、な、なんで!?」

 

 ブラックデザイアが驚きの声を上げる。無理もない。クルスは引き寄せた決定的な隙に踏み込まず、情けをかけたのだ。

 

 「あの子、なんで……っ! チャンスだったのに、あいつらにかける情けなんて要らないのに……!」

 「あちゃー、まぁしょうがない、そういうのも含めてクルスだからなぁ」

 「……甘い、とかって、言わないんだ、レヴィンくんは」

 「いや、考えてみろって。クルスが今妖精達の助けを……や、クレイプレシャス以外誤差だが、その助けを得て戦えるのはアイツが甘ちゃんだからだ。その甘いところに惹かれて仲間がついてきてるんだから、一概に欠点でもないだろ」

 

 人柄も強さになりえるし、逆に甘さも強さで補える。俺くらい強ければ、敵に情けもかけ放題だ。俺は情けとかないけど。

 

 「……意外。レヴィンくんってそういう考えするんだ」

 「だから、結構頑張って人間を勉強したんだって。アッシュスティングとか半信半疑だったけど」

 

 贔屓目でも何でもなく、俺は生前よりも余程大人になったと思うのだが、アッシュスティングはより酷くなったんじゃないかなどと抜かす。めちゃくちゃ進歩してるだろ。

 

 「ま、勝負は決まってるんだし情けぐらい許してやれよ」

 「……いや、あれが最後のチャンスだったよ」

 「へ?」

 

 言われて、クルスの方を見てみれば、クレイプレシャスの魔法の効果が切れてしまっていた。

 

 「あ……な、なぜ?」

 「クレイプレシャスの魔力は多くないから……魔力切れじゃないかな」 

 「そっかー……」

 

 流石にマズいか。行くか? しかし……などと考えている内に、思いも寄らないことが起こった。

 

 「!? だ、誰……? 人間? 空から?」

 

 空から現れた女騎士が、敵に不意打ちを食らわせクルスを救ったのだ。

 

 「どういうこと……? レヴィンくんは知って……レヴィンくん?」

 

 だが、俺はクルスの戦いやデザイアとの会話に気を回す余裕がなかった。

 

 「会いたくない奴来た……」

 

 上空に、女騎士を乗せてきたと思しき龍を見つけ、俺は気分が沈んだ。

 

 




トッモ「主人公のステイを必死に振り解こうとするチワワみたい…()」
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