知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう 作:鐘楼
「会いたくない奴って……え!? な、なに……!? ドラゴン……?」
俺の視線を辿り、ブラックデザイアも空から地上を見下ろすその存在に気がついたのか、驚き慄く。やはり、あいつのあの姿は初見相手には威圧効果があるらしい。
「でもなぁ……今良いところなんだよなぁ」
余計なのが来たのは置いておくとして、たった今クルスを助けた女は他でもない俺にクルスを預けた張本人だ。名前は忘れた。確か彼女とクルスは主従関係だったはずで、久々の再会で早速主の命を助けるとか、二人とも何か持っていると思わざるを得ない。
「ちょっと面倒だが……今帰るわけには……」
「レヴィンくん! あの龍のこと知ってるの?」
「あぁ、ほら言っただろ、智龍フェンニバル。一緒に旅してたって」
「……アレが……」
関係について説明した途端、ブラックデザイアに芽生えていた怯えが消え、空に向かって敵意の籠もった視線を向け始めた。やめとけって、敵わないから。面識もないのに敵対するフェンニバルとデザイアは置いておいて、改めてクルスたちの方を見る。
「……は?」
が、そこには期待外れと言うほかない展開が繰り広げられていた。遅れてフェンニバルの存在に気づいたらしい二人組が撤退を始めたのだ。今日この日にクルスが覚醒して敵を打ち破る、なんて期待はしていなかったが、これではあまりにも拍子抜けだ。いや、この巡り合わせを引き寄せたのもクルスの持つ運命的なものなのかもしれないが、直接の要因がフェンニバルが来たからというのは気に入らない。
「ど、どうしたの?」
「教団の奴らが逃げ始めた。フェンニバルが来たせいだ」
「あ……本当だ」
撤退を始める二人組と、それを追いもせずクルスと騎士のもとへ駆け寄る妖精達。アッシュスティングも敵を追うのではなく、こちらへ戻ってくるようだ。
「……もう終わりか……小言聞きたくないし、ここはもう帰って……ん?」
見るべきものはもうなさそうだと、いざ立ち去ろうとしたその時、視界に見知らぬ少女がクルスへ駆け寄る姿が見えた。気になって、傷を癒やす要領で力を聴覚に寄せる。余計なものまで聞こえてくるが、集中してクルスたちの会話だけを拾うよう努める。
『まぁ、ごめんなさい! ついはしゃいでしまったわ……クルスがお世話になっているわね! 私、クルスの婚約者のミストリアよ!』
なん……だと……?
「ここに来て急展開が……? やはりラブコメ路線か……!」
婚約者。じじいは「婚約者って肩書きがもう踏み台だよね」と言っていたが、結果が見えていても一波乱起きることが大事とも言っていた。これはクルス周りの人間関係が発展する契機になるに違いない。こうなればデザイアに付き合っている暇などない。すぐにでも向こうに戻って観察しなければ……!
「レヴィンよ。見つけたぞ」
「おい、今良いところなんだ! 後にしてくれ!」
「……」
昔馴染みの声が上から聞こえたものの、今はそれよりも大事なものを観察しているのだ。今まさにクルスの周りで揉み合いが勃発しているが、ミストリアというらしい婚約者の少女はクルスの腕を一向に譲らない。なかなかしたたかだ。
「こやつめ……」
「ちょ、ちょっとあなた! あなたがレヴィンくんと旅をしてたっていうフェンニバルって人なの!?」
「いかにも儂はフェンニバルじゃが……なんじゃお前は」
「あなたを消すのは……無理かもしれないけど、レヴィンくんは私のものだから! 覚えておいて!」
「会話になっとらん……と、思い出したぞ。お前はレヴィンとウェスターシャが厄災と戦った場にいた妖精か」
「! な、なんでそれを知って……」
「見ていたからじゃ。儂はあの戦いを見届けていた」
「そ……それじゃああなたはレヴィンくんを見殺しにしてたってこと!? やっぱりそんな人にレヴィンくんは渡せない……!」
「はぁ……なんじゃお前、コレのことを好いておるのか?」
「だ、だったらなに!?」
「いや、そういう話はこのポンコツに愛情が芽生えてからすれば良くないか?」
「……………………たしかに……」
フレアルビーは不満げながらも困惑し、クレイプレシャスは興味深そうに経過を伺っているが、サニーウインドに関しては顔を真っ赤にしてミストリアへ食ってかかっている。その相性は悪いようで、軽くあしらわれてはヒートアップして、クルスやアンリエッタがなんとか場を治めようと必死になっている。
定番。定番だ……これ見たことある。
「おいこら、いつまでそうしておるつもりじゃ」
「……いて」
観察の最中、衝撃。痛覚を感じることなど久々すぎて思わず声が出る。運動エネルギーを吸収する俺にデコピンでダメージを与えられる奴なんて一人しかいないので確認するまでもないが、一応振り返る。
そこには、予想通りいつの間にか人の姿に変わった智龍フェンニバルがいた。
「……こんなに早く手が出るとか、智龍の名が呆れちゃいますね」
「儂は勝手に呼ばれているだけの名に誇りなど持ってはおらん」
久々に見たフェンニバルの顔は、結構不機嫌に見えた。これは面倒そうだ。
隔日の確約なんてしてないからセーフ(震え声)