知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう   作:鐘楼

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ブレなければ口喧嘩に負けはないんですよね

 「して……どういう状況なんだ、これは……そしてその御仁は……」

 「あ、おかえりスティング」

 

 フェンニバルに睨まれていると、アッシュスティングが戻ってきた。

 

 「ほら、あのドラゴン。あれがあの人で、レヴィンくんがさっき言ってた一緒に旅してたフェンニバルって人らしい」

 「……道理で只者では……あの男がデザイアでは敵わないと再三言っていたわけだ……」

 

 デザイアの吹っ切れ方がおかしかっただけで、アッシュスティングはフェンニバルに畏れを抱いているようだ。それほど、戦場を見下ろすフェンニバルの姿は印象的だったのだろう。

 もっとも、今はアッシュスティングのことを気にしている暇などない。

 

 「余所見をするんじゃない! 子供の身でなぜ保護者なぞが務まると思ったのか言ってみろ!」

 「いつまで子供扱いしてるんですかね。俺もう齢100歳超えのじいさんなんですけど」

 「精神の話をしているのじゃ! お前の成長は百年かけて屁理屈覚え立てのガキにしかなれておらん! 百年のほとんどを同じ男の小説を反芻して過ごしたお前とでは貴族社会に揉まれて育ったあの王子の方が成熟しておるじゃろうな!」

 「そりゃ発達がまともなら最初から殺人鬼になってないと思うしなー」

 「都合の良い知識ばかり身につけおって……だから屁理屈覚え立てのガキだと言っておる!」

 

 旅が半ば喧嘩別れのように終わってからというもの、フェンニバルと顔を合わせればいつもこれだ。彼女以外と口喧嘩などしたことがないのに、フェンニバル相手だといつの間にかこうなってしまう。……俺のことをよく知っていて、俺に堂々と文句を言えて、なおかつ生きている相手など、もう彼女くらいしかいないのだから、それも当然か。

 

 「そこで開き直るのだ、分かっているはずだろう。お前が他人の命に責任を持てるような者ではないことを……そんなにもロクルス一世の著書が記録された霊子書籍が欲しかったのか?」

 「は? なんでそれを知って……」

 

 俺がクルスを引き取ることを了承する切っ掛けとなった対価。じじいの霊子書籍。その存在はアンリエッタから聞いて初めて知ったし、受け取ってからフェンニバルと会った覚えはない。

 

 「あれは七十年前に儂が既に発見したものだ。お前に言うことを聞かせられる絶好の材料になるだろう、と信頼できる者に伝えていたのも儂だからじゃ」

 「七十年前!?」

 「情報収集能力……コネクションの差じゃな。お前が放棄したものじゃ」

 

 確かに、俺は積極的に他人と関わる生き方を捨てたが、問題はそこではない。俺が追及したいのは、俺がどれほどじじいの作品の供給を求めていたのかを知っておきながら七十年間も霊子書籍の存在を黙っていたことだ。だが、そこに答えるつもりはないとばかりにフェンニバルは話題を変える。

 

 「とにかく、あの騎士……アンリエッタに頭を下げて王子を返すべきじゃ。案ずるな。儂が共に謝ってやるから」

 「いらねーし、そんなつもりはない」

 「……霊子書籍のことなら、儂が口添えしてやる。そもそも、王子の面倒を見るよりも……直接教団の殲滅を対価にした方がお前も楽だろう」

 「っ!」

 

 フェンニバルの言葉に、アッシュスティングが喜色をあらわし、ブラックデザイアも好意的な反応を見せる。確かに、俺も惹かれる部分のある提案だ。それこそもっと前……この島でのクルスの英雄的な経験を見る前であったら頷いていただろう。

 

 「確かにその方が楽かもしれないが、生憎もう契約は成立してるんだ。俺がクルスの保護者をやって、対価はじじいの霊子書籍。これはもう動かない」

 「……いや、既にできてないじゃろ。今とかあの少年から思いっきり目を離してるし」

 「いつでも対応できる距離にいますー。警備は万全ですー」

 「そもレヴィンお前、人を守るの得意じゃないじゃろ。確かにお前は攻撃と自己防衛では最強かもしれぬが、真っ向勝負だけが戦いではないのだ。それだけでは謀略や不意打ちから仲間を守ることは──」

 「うるせーな! 何言われてもクルスは手放さないぞ」

 

 フェンニバルの言うとおり、俺の油断でクルスはこの島に連れ去られ半年間探し回った羽目になったが、ここで言っても不利になるだけなので黙っておく。

 

 「……まさか、あの王子に拘っているのか? お前が人に執着を──」

 「そうだ。クルスは……主人公になれるかもしれない逸材なんだよ。それをこんなに良い立ち位置で確認できる機会を逃すわけないだろ」

 

 一瞬、驚きと期待に染まりかけたフェンニバルの顔は、俺の返答で凍り付いた。

 

 「……レヴィンよ……お前はまだ……」

 

 フェンニバルの表情が歪む。それはまるで……痛みを堪える人間の表情に似ている。だが、勘違いだろう。あのフェンニバルが痛がるわけもないし、ましてや心の苦痛など、今の話でそんな顔をされる筋合いはない。

 

 「……この世界はつまらないし汚れてるし夢がない、だからロクルス一世は物語を追い求めた……のではなかったのか」

 「!」

 「……レヴィンくん……?」

 「おぉ、本当に物覚えが良いよな」

 

 フェンニバルが口にした言葉は、俺が彼女と……あともう一人との旅が終わったときに口にした言葉でもあり、結論だった。

 

 向こうで散々じじいの創作を聞かされた俺は現世に召喚された当初、この世界に希望を持っていた。そんな俺が危なっかしいと、フェンニバルはガイドのような事をしてくれて、それに甘えて色々なものを見る旅をしたのだ。

 

 それで、結局現実はじじいの創作とはかけ離れていて、どうしようもないことばかりだった。ので、じじいはこの世界からの逃げ道として創作に励んでいたのだと結論をだし、それを期に俺は世界への興味をなくした。

 

 だというのに今更何を、とフェンニバルは言いたいのだろうが、それは愚問である。

 

 「だから、それを覆してくれるかもしれないのがクルスなんだって! 分かりますかね?」

 「分からぬわ! いや、あの少年にそこまでの魅力があるかなどは関わりのない儂では判断できんが! 世界の方を捨てたとはいえ、お前が創作と現実を混同する悪癖を卒業したことは成長だと思っておったんじゃぞ儂は!」

 「やっぱり世界が面白いかもしれないなんて可能性があったら見届けたくなるだろ普通!」

 「お前の興味は多方面に迷惑がかかるから言っておる! 第一、その理屈ではつまり真に少年のためを思って行動しているというわけではないということじゃろう! ……断言するが、もしあの王子が危機に瀕したとしても……それがヒロイックで感動的な死に方ならばお前は勝手に満足して助けることなどしない……そうじゃな?」

 「…………それは…………そうかもしれない」

 「そんな者に童の保護者が務まるわけないじゃろ! 解約じゃ解約!」

 

 暗い雰囲気はどこへやら、最後には元通りでフェンニバルと言い争う。俺の昔の発言を聞いて顔を顰めていたアッシュスティングやブラックデザイアも呆気にとられている。言い争いと言っても、口の上手さや理屈でフェンニバルに勝てるはずがない。ので、結局俺は意地を張るしかない。

 

 「そんなこと言われてもなー、肝心のクルスはなんだか知らんが俺を慕ってるみたいだし、保護者解約ってなったらアイツの方が渋ると思うぞ」

 「なんじゃと? お前を? 慕う? ……確認するが、かの王子とは数日の付き合いではないのじゃろう?」

 「そうだけど」

 「お前の性分を知った上で慕っていると……?」

 「……あ、今あれか? 失礼だってキレるタイミングか?」

 

 どうやらフェンニバルは、俺とクルスの関係がどうしても腑に落ちないらしい。

 

 なお、なぜクルスが未だに俺を慕っているかについては俺も分からない。




読者としては明るくて抜けてるタイプの主人公の方が好きなのにぼんやり新作構想を立ててたらいつの間にか主人公から人の心が消えて共感性が抜け落ちてる
なんで……??
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