知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう   作:鐘楼

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(相手にとっての)デスエンカ

 「智龍様……! あの……」

 「儂を知っているか。お前のような実直で勤勉な妖精は得難い存在じゃろうな」

 「いえ、とんでもない……!」

 

 デザイアたちの拠点へと帰る道すがら、フェンニバルはアッシュスティングと打ち解けて……いや、敬われていた。教団とやらの件にしても、俺よりは世界について詳しいらしいアッシュスティングである。当然智龍の名は知っていたらしい。反面、ブラックデザイアの方はピンときていなさそうな顔をしている。

 

 本当なら俺はあれから何食わぬ顔でクルスたちに合流するつもりだったのだが、俺がクルスに昔の自分を隠していることを知ったフェンニバルに脅され今に至る。

 

 「して、ブラックデザイアといったか。見違えたな。初めて見かけたときとは似ても似つかん力だ」

 「なに? お前ら知り合いだったの?」

 「……見てたんだよ、この人。レヴィンくんが厄災と戦っていたところ。なのに見殺しにしたんだよ!? こんな人に──」

 「へぇ。まぁ、フェンニバルらしいな」

 

 フェンニバルは争いに対して不干渉に拘る傾向があるのと、歴史の転換点は見届けたいとも言っていたのであの場をこっそり覗いていたというのもまぁそうするだろうなという感想だ。

 

 「はぁ。嫌われたものじゃの……儂と話しているレヴィンの様が見たことのないようなものばかりで悔しい……といったところか?」

 「っ……」

 「安心せい。正直に言ってお前の想いが報われるとは思わんが……応援はする。まぁ……お前なら良いじゃろう」

 「おい。どの立場から言ってるんだ。デザイアなら良いとかなんとかって」

 「実を言うとな、レヴィンに言い寄る娘は少なくないのだ」

 「!? ちょ、ちょっとその話詳しく……!」

 

 親キャラみたいなことを言い出し、挙げ句に俺の知らない俺の話をするフェンニバルにブラックデザイアが食いつく。なんだ、俺に言い寄る女って……覚えがない……いや、俺は興味のないものをすぐに忘れるタイプなのに対して、フェンニバルの記憶の正確さは凄まじい。故に、俺とフェンニバルの認識のどちらが正しいかと言えばフェンニバルなのだ。

 

 「なんじゃ気になるか? 乙女じゃな」

 「う……い、いいから教えて!」

 「……ま、知っての通りレヴィンは強い。そこに惹かれる者は一定数存在する。大きく分けて、その力を利用しようとする者と純粋にその力に惹かれる者。前者は論ずるに値しないとして、後者もな……価値観が合わぬ。レヴィンは強さに価値や尊敬を感じないから、その齟齬は不幸を生むじゃろう。なにせ、焦がれるほどの強さを持つ男がその強さを足蹴にして生きているのじゃ。毒にもほどがある」

 「……私は違うってこと……?」

 「お前は盲目的……ごほん、相当に一途で尚且つレヴィンの行動指針を理解しようと歩み寄ることができる……ように見える」

 「……!」

 「そーなのか? ってか、不幸を生むのなんのって俺じゃなくて女の方の心配か」

 「当たり前じゃろ。今更お前の幸せを……と、ここで話すことではないな」

 

 俺について知ったようなことをペラペラと話すフェンニバル。いや、実際俺よりも俺に詳しいのかもしれない。じじいの作品だってフェンニバルは笑うことなく興味深そうに『この世界のどこにもこれに類する作品はない……人の文化に特異点などありはしないはず……』とかなんとか言って真面目に読んでいた。それに、俺がじじいを建国王、つまりはクルスの先祖と知ったのはつい最近、アンリエッタに契約を持ちかけられた時だ。なのに、フェンニバルは七十年も前に俺の愛読書の作者が建国王ロクルス一世であることに辿り着いていた。流石に考えたくないが、俺を構成していると言っても過言ではないじじいの著書への理解すら先を行かれている可能性もある。

 

 「って、結局その俺に言い寄って来た女って誰だよ。本気で覚えがないんだが」

 「ほら、居たじゃろ……力量も見抜けずお前に決闘を挑んで負けたかと思えば勝者に全て捧げるとか言い出した……」

 「あー……あぁ?」

 「ちょ、ちょっと! どうしたのその相手!?」

 「どうもこうも何もなっとらんし、もう生きてはいないじゃろう……己が妖精で良かったのうデザイアとやら。コレの愛情を勝ち取るには人間の寿命ではとても足りんだろうからな」

 

 本当に好き勝手言ってくれるフェンニバルだが、デザイアを揶揄っているのかやけに楽しそうだ。クルスをイジっている時の俺もあのような感じなのだとしたらクルスが哀れだ。止めないが。

 

 「……智龍様。ここです、着きました」

 「おぉ、まさに隠れ家……む」

 

 フェンニバルが、その次にアッシュスティングが、そして俺が、最後にブラックデザイアが。異変に気づいた。

 

 「お前たちは……!?」

 

 いや、異変と呼ぶまでもない。ただの偶然で、運の悪い遭遇。相手にとっての。

 

 「テメェ……さっきの」

 「不測。まさかこんなところで──」

 

 デザイアとスティングの拠点に、クルスたちと戦った二人組がいたのだった。

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