知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう 作:鐘楼
「……へっ、丁度良い。お前を刻めなくてこっちは不完全燃焼だったんだよ……!」
二人組の片割れ……斧持ちの方がアッシュスティングを睨み好戦的な笑みを浮かべる。
「
「なっ……マジかよ、追ってきたのか!?」
が、遠距離の方はこっちのフェンニバルの容姿も知っていたらしく衝突を避けたいようだ。斧の方も智龍がいるとなれば戦う気はないらしい。ほんと有名ですね……ってそうだ。
「今思い出したけど、おいフェンニバル! 今みたいにお前が空であの場を見下ろしてたせいでクルスたちの戦いが途中で終わっただろ! どうしてくれんだ」
「はぁ? こやつらが勝手に逃げただけで儂は何もするつもりはなかったわ! というかあのままやっていれば王子は無事では済まなかっただろうしそもそも本当ならお前が前に出るところじゃろうが!」
文句を言ったら筋の通った反論を倍にして返されてしまった。
「……何もするつもりはない、とは本当か、智龍」
だが、そんなフェンニバルの言葉に教団の幹部らしき少女が食いついた。
「……そうとも。貴様らがまた儂を狙うような真似をしない限り、儂自身はお前たち拝淵教団と直接事を構えるつもりはない」
はっきりと不干渉を宣言するフェンニバル。教団に関してもやはり不干渉の信念は貫くらしい。
「でも援軍連れてきてたじゃん」
「あれはついでだ。儂は最初からお前を叱りに来たのだ」
「げぇ」
その割にはアンリエッタを連れてきてクルスに与した気はするのだが、あくまでそれはついでだからセーフらしい。適当な。
「……へぇ、良いこと聞いたぜ……だったらここで借りを返しても良いわけだ」
斧の方が改めて好戦的な笑みを浮かべ、得物をアッシュスティングに向ける。だが、そのアッシュスティングの表情にクルスたちといた時のような焦りは見られない。
「状況が分かっていないようだな」
「なに?」
「智龍様が中立を選ぶことは想定外だが、智龍様が……いやそれこそ私などいなくても、お前たちは詰んでいる。なぜなら」
言って、アッシュスティングは俺の方を向く。当然、そのせいで全員の視線が俺に集まる。
……あ、俺? もしかして俺を頼りにしていらっしゃる?
「……なんだ、そいつが一体……いや、どこかで……」
「…………! まさか、そんな……そんなはずは……」
俺をまじまじと見て、主に遠距離の方が急に焦り出す。なんだ、顔が割れてたりするのか? ……まぁそれはどちらでも良いが、俺としても折角こうしてクルスの敵役候補に接触できたのだから、しておきたいことがある。
「はい注目」
ぱん、と手を叩き、思考の沼に嵌まろうとしていた二人組を引っ張り出す。
「とりあえず話をしようぜ。あんたらの事が知りたい」
悲しい過去があるのかどうかとか、教団にどれくらいの忠誠心があるのかとか、ヒロイン適性があるのかとか知っておきたいしな、女だし。
「……はぁ、話だと?」
「おい貴様! 自分で言っただろうもし目の前に教団が現れたらその時は殺すと!」
「あぁ、じゃあそれ撤回で」
「この……っ!」
梯子を外され、敵に見せるシリアスな顔を捨ててまで怒り出すアッシュスティングをなだめる。
「面白い聞き間違いだな……オレたちを殺す? お前がか?」
「あぁ聞き間違いだな。で、名前は?」
「……
「そっちは?」
「……
「ほうほう」
あわよくば喧嘩を売ろうとする旋の話の出鼻を挫き、自己紹介させることに成功する。あっさり名前を言う当たり、旋の方は乗せられやすそうだ。もし会話の相手が俺じゃなくてフェンニバルだったら言いくるめられて寝返るまであり得るんじゃないだろうか。警戒心が強そうな輪の方もなぜか従順そうだが……いや、これは従順なフリをして機を窺っているように見える。
「まず聞きたいんだが、二人はなぜ教団に?」
「……どういう意味」
「ほら、あるだろ。他に行くところがないとか、家族人質に取られてるとか、頭イジられてるとか」
「ひっどい聞き方もあったもんじゃな……」
「なんだァ? まさかオレ達が無理矢理従わされてると考えて、寝返りを期待してんのかァ? だったら──」
「いや別に」
「……そ、そうか」
旋の見当違いな推察を否定すると、フェンニバルとアッシュスティングが微妙な顔をする。当然だ、仮に彼女たちがいかにも救われ待ちみたいな過去を背負っていても、俺がどうにかするような話ではない。あくまでクルスの敵だから、フレーバーとして少しでも背景を知っておきたいだけなのだ。
「……私たちは孤児。この身を拾って下さった
「へー。じゃあお二人はそのあまねさまのために動いてるって認識で良い?」
「待てよ。輪はそうかもしれねーが、オレは違うぜ」
「……旋、貴様……!」
「なんだよ、お前があの人に惚れてるのをオレにも押しつけんじゃねぇ」
旋の方はあまねさまとやらへの忠誠が行動原理というわけではないらしい。二人の話しぶりから察するに、輪が特別に忠誠心が強い……か或いはそれ以上の感情を持っているだけで、旋の方は輪ほど熱心ではない……という風に見える。
「じゃあ旋の方には何か別の動機が?」
「あァ……オレはな、スラムのクソみてぇな生活で学んだんだよ。この世界は力が全てなんだ! オレが教会にいるのは力を齎す場所だからだ! 強い本当のオレを世界に知らしめてやるためになぁ!」
「へぇ~」
推測だが、そのスラムでの孤児生活で相当つらい思いをして、その反動で強者の身振りに固執しているんだろうか。俺も親はいないが、物心ついた頃には既に虐げる側だったんで共感はできない……けれども、そういうこともあるだろう。
「……ふざけるな」
地の底から響くような怒りの声。
見れば、アッシュスティングが俯きながら震えていた。勝手に俺は納得していたが、彼女は飲み込めないらしい。
「虐げられる痛みを分かっていながら、貴様は……私の同胞を、無辜の妖精達を──!」
「オイオイ、オレたちのせいにすんなよ? 奪われるのは雑魚だからだろ? アイツらが弱かったから、弱者に相応の末路が来たってだけだ。あんな雑魚どもは無条件で全てを差し出さなきゃなんねぇんだよ!」
「貴様……! それはかつて貴様を虐げた者と同じ事をしていると分かって……!」
「当たり前だろォ! 教えてやるよ、スラムのクソどもはなァ……オレの強さを思い知らせるためにもう使った! 最高の気分だったぜ、奪う立場ってのは……!」
急にヒートアップするアッシュスティングと旋のやり取りをぼんやりと眺める。まさに平行線だ。どう着地すんのかなぁなんて思っていると、アッシュスティングは急にこちら側を向いた。
「奴は……間違っている! そうだろう、デザイア……」
「……あの薄汚い身体にレヴィンくんのからだを取り込んだっていうの? あー悍ましい認めない気持ち悪い許せないどうしようどうやって殺そうどうすれば後悔してもらえるのかな──」
「…………智龍様! どうか、あの者に貴方の言葉を──!」
「すまん。儂は人間の価値観に意見する言葉を持ってはおらん。何を言おうが儂のような永命の者の言葉は、人間のような定命の者に対しての説得力に欠けるからな」
「……そう、ですか……じゃあ……レヴィン……」
「じゃあとか言うくらいなら俺に振らなくてもいいんだけど」
味方を求めたはずが二人にパスされ、いかにも渋々と言った様子で俺の方を見るアッシュスティング。なにか……力こそ全て理論に言うこと……まぁ、あるにはある。
「まー意見を言うなら、どんな自分ルールでもちゃんと守るぐらいの一貫性がないのはちょっとなぁ……」
「ア? どういう意味だ?」
俺の苦言に、旋は眉を顰める。意味も何も、言葉の通りなんだけど。
「いや、弱いと無条件で全てを差し出さなきゃなんないんだろ?」
「それがどうした」
「え、
あ、今確実にブチッって音聞こえた。旋から。
もっかい評価、クレメンス(இɷஇ )