知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう   作:鐘楼

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これが俺流の手加減だ!

 「死に晒せェェ!」

 「うおっと」

 

 俺の指摘に激昂し、襲いかかってくる旋。とりあえず後ろに跳んで躱すが、すかさず二撃目が来る。旋の攻撃が普通の物理攻撃であれば避ける必要もなかったのだが、あの斧には俺をショボ死に至らしめた力が込められている。ので、警戒して避けてしまった。

 

 「旋、待て! その男は……!」

 「うるせぇ輪! 言っとくが手を出すなよ! こいつにはオレ一人で本当の立場ってのを分からせるッ!」

 

 果敢に俺を攻撃しながら、旋は仲間に向かって手を出さないよう要求する。自分の方が強いということを証明するためには一対一じゃなければ意味がないという考えだろうか。毎度思うが、こういう意地や戦士のこだわりというのは全く共感できない。現実の話なら確実な勝ちの方が重要だし、趣味的な話なら協力して強敵に打ち勝つ方が良いと思う。

 

 「レヴィンくん! 私も……!」

 「あー、要らない要らない。デザイアの出る幕じゃないよ」

 

 だって目が血走ってるし。絶対復讐する気じゃん。こいつらはクルスの敵だ。ここでデザイアに殺されたらたまらない。

 

 「オラオラァ! どうしたよ、避けてばっかりじゃねェか!」

 「試してみるか」

 「ア? ……ッ!?」

 

 “吸力”(キネティック・アブゾーブ)。とんでもないスピードで振るわれていたはずの斧が、音もなく俺の手に受け止められる。旋の顔が驚愕に染まるが、無理もない。前のフレアルビーのように、俺に運動エネルギーを吸われる形で攻撃を防がれた者は皆この反応をする。相手からすれば、込めていた力や感じていた速度がいきなり0になり、さらにそれ以上力を込めても動かせないという感覚で……曰く、すごく気持ち悪いだとか。

 

 「レヴィンくん、なんで!? そいつの武器には……!」

 

 だが、問題はここからだ。アッシュスティングに教団や厄災の話を聞いた時、感じたこと。厄災エネルギー(仮称)、気をつければなんとかなるのではないかという考え。それを検証するため、俺は厄災の力が込められている旋の斧に自ら触れに行ったのだ。

 

 「……か、かかったな! この戦斧に込めた厄災の力はなぁ。オレたち選ばれた者以外には猛毒同……然……だ……」

 「……やっぱり、大した問題じゃないな」

 

 ダメそうだったらさっさと吸った力を放出するか真っ先に毒される腕を切り落とすかなどするつもりだったが、今のところその気配はない。というか、驚いた。俺が死んだあの時と比べてあまりに厄災エネルギー(仮称)の量がしょぼすぎる。まぁ、大元の厄災の力を根こそぎ奪ったあの時と、そのほんの一部を取り込んだ旋のただの一撃で規模が違うのは当たり前なのだが、違いはそこにある。要は程度の問題で、あの時は膨大な厄災の力を一気に吸ったせいで死んでしまったが、この程度なら支障はない。

 

 昔フェンニバルが「勧められても異種族の薬は口にするな、身体の違う者の薬は毒に変じる可能性が往々にしてある」だとかなんとか言っていたが、それと同じだ……多分。

 

 「さてと、検証は終わったし……どうしてやろうかね」

 「ぐっ……」

 「安心しろよ、俺はフェンニバルに修行をつけられてるんだ」

 

 手加減の修行を。

 

 「どこに安心する要素……が……あ……?」

 

 効いてきたのか、旋に異変が生じる。言葉で虚勢を張ろうとするが、それもかなわずフラつきだした。

 

 「あの男に修行を……? 智龍様、本当なのですか?」

 「修行というか……儂はレヴィンに能力の検証をさせて応用を提案したにすぎん」

 「応用……今敵の身に起きている、あれが……」

 

 そう、今旋に使った技を考えたのはフェンニバルだ。こうすると楽に相手を無力化できる、というもので、原理は……えー、確か……なんだったか。

 

 「何を……した……!」

 「えっとだな、知ってるか? 人間は常に空気に押されてる……らしいんだよ。俺はお前に掛かっているその力を吸って解放しただけだ……そうすると……なんかそんな風に体調が悪くなる」

 「“吸圧”(プレッシャー・アブゾーブ)。レヴィンによってお前の周囲の気圧が一瞬にして標高七千メトリ……二万二千レング相当に減圧され、お前の周囲だけが低酸素状態になり、酸欠による頭痛、倦怠感、めまいの症状が現れている。そのままでは脳か肺が壊れて死ぬ。旋とやら、降参するべきじゃな…………してレヴィンよ、いつも言っているが原理の説明もできない技を使うな、理解の及ばぬ力を扱うことはいつか誤りを……」

 「あー、はいはい、すみませーん」

 

 うぜぇ。本当にフェンニバルがいるときに喋ると無限に苦言が飛んでくる。帰ってくれないかなぁ。

 

 「……その技を、私にも……いつでも仕掛けられるということか」

 「ん? そうだな」

 

 相当戦慄しているのか、終始クールだった輪が冷や汗を浮かべながら俺に問う。実は大した射程がないからそんなに便利でもないんだが、それだけ脅威に感じるほどには膝をついて苦しむ旋の姿は印象的だったんだろう。

 

 「……みとめ、ねぇ……!」

 「おぉ、執念」

 

 苦しいだろうに、旋は未だに折れていないらしく、俺を睨む瞳が一層強くなる。その台詞や執念は成長したクルスに負けた時に発揮して欲しいなぁ、などと思っていると、旋の中の厄災の力が一気に表出していく。

 

 「ほう」

 「認めねぇぞぉぉぉ!」

 「! やめろ、旋! それを使えば……!」

 「うるせぇ! ここまで虚仮にされたらオレは……死んでも勝つって決めてんだ……!」

 

 旋が、哮りと共に異形へと変じていく。普通じゃないな、あれは……とてもコントロールできているようには見えないが……まさかとは思うが、捨て身か? 捨て身なのか? ここで? やめてくれよ、それはクルスみたいなのに使って命を奪うつもりはなかったのに相手が死んでしまう展開をするためのものだろ。俺に使ってもなんの感慨も生じないんだが。

 

 「……輪さん、あれはなんですかね?」

 「我々の最終手段、自爆のようなもの……旋はもう……助からない」

 「えぇ」

 「……下手に判断能力を奪ったツケじゃな、レヴィンよ……どう取り返す?」

 「……」

 

 変身を終えた旋……いや、旋だったものが先ほどまでとは比べものにならないスピードで俺に迫る。俺は無言で掌に剣を生成した。

 

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