知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう   作:鐘楼

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必要があれば他人に頼ることくらいできる。今は

 「グゥアアアアアアアア!」

 「よっと」

 

 まっすぐに向かってくる旋に対して、上に飛んで回避。と同時に、重力を吸う。こうすれば、俺は半永久的に宙に浮いたまま。相手に飛び道具がなければ、これだけで負けることは無くなる。

 

 さてと、どうするか。一度殺さず無力化することを選んだのにそれを相手によって覆されるというのは癪だ。故に、旋は助ける。これは確定している。しかし、どうすればそれができるのか……それを考えるために安全地帯に移動して時間を稼いでいるのだが、そもそも今の旋はどういう状態なんだろうか。分析は苦手じゃないが……取っかかり……いや。

 

 ふと、ただ俺を見上げるフェンニバルと目が合う。

 

 いや、丸投げでいいじゃん。

 

 「フェンニバル! そいつどうやったら助けられる?」

 「自我が埋没しているうえに壊されとる……お前だけでは無理じゃな」

 「そうか、じゃあ頼む。手伝ってくれ」

 

 俺の頼みに、フェンニバルは一瞬フリーズし、破顔した。

 

 「……しかし、智龍様は中立なのでは……」

 「よかろう」

 「良いのですか!?」

 「……あいつが他者を頼る。儂はその成長に報いたい……まぁ、贔屓じゃな。では、行ってくる」

 

 アッシュスティングと何か話した後、フェンニバルは飛んで俺の隣まで来た。

 

 「なんか機嫌良さそうだな」

 「あぁ。説教は無しにしてやろう」

 「急になんだ、さっきまで叱る気しかなかったくせに」

 「理由はなんであれ、儂はお前が人助けをしようとしているだけで嬉しいのだ」

 

 親か? ……親か、ほとんど。“レヴィン”の名を与え、切っ掛けを与えたのがじじいなら、それを育んだのは……あ、やっぱやめよう。薄ら寒い。

 

 気を取り直し、標的の方を見る。旋はといえば、なんとか俺に攻撃を当てようと跳躍しては凶悪な形に変じた腕を空振っている。届かないぎりぎりの位置に陣取っているからそうなるのは必然だ。

 

 「で、どうすればいい?」

 「お前にしかできないが、簡単なことだ。奴に表出している厄災の力を全て吸え。後は儂がなんとかする」

 「シンプル~」

 

 やることがハッキリしたので、重力を戻して地上へと加速しながら戻る。俺の“吸収”(アブゾーブ)のルールとして、魔力を持つ生命体の扱う力は直接触れなければ吸うことができない、というものがある。重力やそこらを漂うマナは制限なく一定の範囲でいくらでも吸えるが、こういう場合はそれなりの時間直接触れなければならない。その点、さっきの減圧攻撃はあくまで相手を含んだ空間を対象としていることでその制限を無視できる分便利だったりする。

 

 「グゥアアア、ア、ア!?」

 

 急降下しながら握った剣を伸ばす。この剣は地獄でじじいと編み出した技で、蓄えた力を消費して生成する。そして、力を使うほどに伸ばせるので、その長さには実質的な制限がない。

 

 「これをあと五本、くらいな!」

 

 光剣の切っ先を変形させ、旋の身体を刺すのではなく地面に押しつける。続けて生成された五本の光剣によって四肢と頭を拘束。これで身動きできなくなったところで、ゆっくりと近づき厄災の力を吸う。間違えて生命力とか吸わないよう気をつけながら慎重に。

 

 一応の懸念点だった厄災エネルギー(仮称)の毒性だが、やはり問題はなさそうだ。今の俺の身体が英霊の魔力生命体なのもあるかもしれないが、適合したらしい旋と輪であってもあの時の俺みたく厄災の全部のエネルギーを吸ったら死ぬんじゃないだろうか。

 

 「……あん、た……ごしんた……」

 「ん? なんて?」

 

 吸い終わってみれば、旋の身体は元通りになった。そして何かを呟いたかと思えば意識を失ってしまった。なんだったんだ。

 

 「よくやったぞ、レヴィン。後は任せろ」

 「頼んだ」

 

 フェンニバルと交代し、俺の役目を終える。フェンニバルは何やら高度な魔法を旋に使っているが、どうせ俺には理解できないので丸投げする。魔法についての学習もフェンニバルに勧められるが、どうしても興味が湧かない。じじいの本ではイメージひとつで魔法が使えたのに、現実の魔法は小難しすぎる。

 

 「あれ、輪は?」

 「あ……逃げた、か……失態だ、私としたことが貴様や智龍様に気を取られて……」

 「ふーん……仲間はもう助からないと踏んで自分だけ……まぁそれならそれで良いだろ、気にすんな」

 

 敵の片割れ、輪がいなくなっていることに気づき、気落ちするアッシュスティング。真面目だな、ほんと。

 

 「レヴィンくん……」

 「デザイア、なんだ……あ、殺すなよ? 旋は生かすって決めたんだからな」

 「なんで私を頼ってくれなかったの!?」

 「そっちか」

 

 なんでって言われても簡単な話だ。ただの適材適所である。

 

 「決まってるだろそんなの。お前旋を助ける方法あったの?」

 「あんな奴殺すに決まってるでしょ!」

 「ダメじゃん」

 

 なんで張り合ってるんだよ。そもそも、殺す、壊すことなら自分で大体できる。役に立ちたいならもっと俺ができないことをやれるように……って言ったら面倒そうなんで黙っておく。

 

 「終わったぞ。じき目覚める」

 「仕事はや……」

 

 多くの人々に最高峰の知恵者と言われるだけあり、フェンニバルはこの短時間で自我が壊されているらしい少女を治してみせたという。どうやったんだ一体。

 

 さて、助けたのは良いが、どうするか。ブラックデザイアが殺してしまう前になるべくさっさと去ってもらうのが一番か。俺たちと遭遇したことを忘れてもらうのも良いかもしれない。

 

 「オレ、は……」

 「あ、ほんとに目覚めた」

 

 目覚めた旋は、記憶を整理しているのかしばらくぼんやりとしていた。こうしてみるとあの凶悪な姿は想像できない。普通の美少女に見える。よわそう。

 

 そんな旋はやっと正気に戻ったのか、表情に緊張を取り戻し。

 

 「ごっ、御神体様、どうか今までの無礼にお許しを……仰せの通り、この身、血の一滴、魂の一片に至るまで全て、貴方様に捧げますので……!」

 「……………………あ、俺に言ってる?」

 

 全然正気に戻ってなかったわ。

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