知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう 作:鐘楼
「王国がその……拝淵教団の手に……さっきの二人組も教団の者で、だから僕のことを……」
「はい。そのために殿下をレヴィン卿に預け、逃がしたのです」
どの道、先ほどの敵二人組のことを説明するなら教団のことは避けては通れないと考えを切り替えたアンリエッタだったが、それでもクルスの母……王妃アマネについて話すことはできなかった。
「あ、あの……そういえば、あの時僕たちを助けてくれたドラゴンは……」
「あの方は智龍フェンニバル様です。私たちをここへ運んでくださったのもあの方でして……」
「えっ、智龍様ってあの!?」
智龍の名を聞いた途端、沈んでいたクルスの瞳が輝きだす。智龍を崇める者たちは世界中にいるが、クルスが喜んだ理由は少し違う。彼にとっての智龍フェンニバルといえば、幼少期のクルスの愛読書である『レヴィン騎士物語』においてレヴィンの次に重要な人物であり、物語の中の人物だからだ。
「……もしそうなら是非会ってみたいんダガ、見当たらないネ」
智龍の名にはクレイプレシャスも惹かれるものがあったらしく積極的な態度を見せるが、その言葉の通りフェンニバルの姿はいつの間にか消えていた。
「あの方はレヴィン卿に会いにここへ来たので、今は彼のところへ向かっているかと……」
「! レヴィンさん……」
その名が他人の口から出たことで、クルスは我に返る。自分たちの身代わりとして消えた師匠。彼と戦っていたはずのアッシュスティングは無傷で、しかも教会とは敵対しているのか加勢までしてきたのに、レヴィンは一向にあの場に現れなかった。
「そうだ……レヴィンさんを捜さなきゃ……」
「……坊や、お兄さんが負けることなんてありえないのは分かっているダロウ? 心配は……」
「分かっています……! でも、こんなにずっと姿を見せないなんて……」
考え始めるほどに悪い予感が増幅していき、クルスの意識はほとんどレヴィン捜索に向いていく。それに待ったをかけたのは、アンリエッタだった。
「そのことなんですが……殿下。レヴィン卿とは、ここまでにしていただきたい」
「え……?」
アンリエッタの言葉の意味を飲み込めず、クルスは困惑で固まり、そして震える口を開いた。
「な、なんで……」
「私が間違っていました。智龍様に聞いた彼の人物像はとても……殿下を任せるには不適で……それに、殿下をこんな危険な島に……」
危険な島、という言葉にカチンとくる妖精達だったが、否定できるわけもなく口を出さない。そして、クルスはそんな周囲の機微を気にかけられるほどの余裕もないほどに取り乱す。
「そ、それでも僕は……! レヴィンさんだから……ッ!?」
しかし、そんな主と従者の衝突は、衝撃音によって未然に防がれた。
「な、なんだ!?」
「……北……あの辺りは妖精も近づかないガ……まさか」
「……レヴィンさんだ!」
音の場所にレヴィンがいる。そう確信したクルスは、一目散に駆け出す。誰も、制止する暇がないほどに彼の動きは速かった。
「く、クルスくん! 待って!」
「クルス! 待ちなさい!」
「殿下!」
サニーウインドが、ミストリアが、アンリエッタがクルスを追いかける。しかし、すぐにミストリアが脱落し、サニーウインドとアンリエッタもなかなか追いつくことができない。アンリエッタは、自分を撒くほどのスピードを出す王子の成長に驚愕した。
「……キミなら追いつけそうなものダガ、フレア君」
「や、なんか圧倒されちまって……」
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駆けて、駆けて。森林の悪路を走って、あたりをつけていた場所に到着してみれば。
「レヴィンさん!」
正解を引いた。会いたかった師匠はそこにいた。だが。
「クルス、よくここが……」
「……レヴィン、さん……?」
視界に入ったその姿は、妖精を傷つけ自分を狙った強敵であり、自分の国を蝕む敵であるはずの女に靴を舐めさせている姿だった。