知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう   作:鐘楼

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たまにはライブ感を重視したっていい

 「……あ? 誰かと思えばロクルス十世じゃねぇか」

 

 クルスに気づいた(セン)が、そんな台詞を吐く。四つん這いで。こいつ、俺以外が相手だとキャラ戻るんだな……なんてどうでもいいことを考えてしまうくらいには、この状況への言い訳が思いつかない。

 

 「あ、あなたはさっきの……い、いえ……えっと……一体なにをして……」

 「坊主には関係ねぇだろ。もう坊主に興味はねェんだ、失せな」

 

 ……旋のやつ、俺とクルスの関係知らないのか。教団のリサーチ力が大したことないのか、単にコイツが適当なのか。なんてことはどちらでも良いのだが、この状況はどうすればいいんだろうか。

 

 そもそも俺がクルスに過去を知られまいと頑張っていたのは、クルスに関して一定の責任を負ったからには教育にも気を遣わなければと思ってからで、昔の俺のサイコパス戦闘マシーンキャラは悪影響だと判断して秘匿していた。隠すのが上手くなっただけでサイコパス気味なのは治っていないんじゃないかと思わないでもないが、これでもクルスの視界で人を殺したりはしていない。その観点で言えば、今。美少女に四つん這いで靴を舐めさせるというのはもちろん教育によろしくない。

 

 何か……何か言い訳を……と周りを見渡す。しかし、今この状況で一番頼りになりそうなアッシュスティングはデザイアに吹き飛ばされたきり伸されていた。使えん。デザイアは上の空だが……アイツは口を開けば誤解を生みそうなのでむしろ好都合だ。そして、フェンニバルは……ただ黙って静観していた。目配せしてみれば露骨に目を逸らされてしまう。

 

 味方が……いない……大体いつものことだが……。

 

 「関係なくなんてありません! あなたたち……拝淵教団は、僕の祖国を……!」

 「へぇ? 今更それを知ったのか? どうせできることもねぇのに」

 「そんな教団の人が……どうして、レヴィンさんと!」

 

 震える瞳で、クルスが俺を見る。すまん、シンキングタイムをくれ。

 

 「あァ? 決まってんだろ。この方がオレの主様だからだよ!」 

 「えっ」

 「な……」

 

 何を口走ってるこのバカは?

 

 「そん、な……嘘だ……」

 

 確かに旋は俺に取り入りたいだのなんとか言っていたが、当然認めた覚えはない。面倒臭いなコイツ……やっぱりクルスがどっか行った後で殺そうかなぁ。フェンニバルやアッシュスティングは余計なことしないし妄想癖もないし貴重だなぁ。もうちょっとアッシュスティングに優しくしようかなぁ。

 

 ……まさかとは思うが、フェンニバルやアッシュスティングからは俺が旋やデザイア側の存在だと思われてるんだろうか。やだなそれ。

 

 「おい、適当言うな。お前なんかまだ認知してな──」

 「レヴィンさんが……教団の人だったなんて……」

 「……げぇ」

 

 やべぇ。クルスの誤解があらぬ方向へ発展していく。が、落ち着け。所詮、旋はクルスにとって敵陣営の尖兵以上でも以下でもない存在。俺とこの女の言葉、クルスがどちらを信じるかと言えば当然俺の方だ。普通に否定してやれば終わる話だ。靴舐めの件以外は。

 

 「嘘だと……嘘だと言ってください! レヴィンさん!」

 

 ……だが。涙目で声を上げる少年。信じていたはずのものが覆りそうになっているのを必死に否定しようと吠えるその姿は。

 

 ……悪くないな!

 

 「嘘じゃない」

 「……ぇ」

 「コイツの言うとおり、俺がその……なんだっけ、は……肺炎? 教団のリーダーだ」

 「そん、な……」

 

 乗ってやろう! その誤解に! 動揺するクルスの姿があまりにも印象的なワンシーンっぽかったから仕方がない! よくよく考えてみれば敵ポジションをよく分からん連中に投げるよりも、俺が担った方がコントロールが効いて良いじゃないか。おお、どんどん良いアイデアな気がしてきたぞ。

 

 どや、とフェンニバルの方を見れば、彼女は目を覆いながら天を仰いでいた。

 

 「バレたんなら、お前はもう要らない。じゃあな──クルス」

 「嘘だ……嘘だぁぁぁ!」

 

 余程ショックだったのか、クルスは来た道を走って行ってしまった。速いな……火事場のなんとやらか、成長か……はともかく。

 

 「……よし、これからどうするかな」

 「そんなことだろうと思っていたが、お前なにも考えずにあんな大嘘を……」

 

 さっきまでずっと黙っていたフェンニバルが、呆れきった様子で口を開く。

 

 「って、フェンニバルはなんでずっと黙ってたんだよ」

 「あれであの少年がお前に幻滅して離れるのならそれが一番少年のためになるからに決まってるじゃろうが……結果は斜め下の最悪じゃが」

 

 そこまで言うと、フェンニバルは目つきを咎めるようなものに変えて俺を見る。

 

 「レヴィンよ。分かっているのか? 今お前がしたのは悪意ある嘘じゃ。それは人間関係など容易く破壊す……」

 「いや、分かってるよそんなの。舐めすぎ舐めすぎ」

 「なら……」

 「でも、俺がクルスに嫌われたら、なんだよ?」

 

 言った途端、フェンニバルの説教モード特有の雰囲気は霧散し……再び、嘆くような、哀しむような、苦しむような。そんな表情で俺を見る。

 

 「……そうか。あの少年でも、結局お前は……」

 「儂とケイも、そうなのか」

 「フェンニバル? 正直鬱陶しい時の方が多いけど、恩あるし、必要な時もあるしな。ケイ、は……死んでるし……死人のことなんか、どうでも……」

 「……レヴィンよ。そこまでじゃ。儂の友を侮辱することは許さぬ」

 

 もう、すっかり思い出すことのなくなった名前を口に出し、息を吹き返した当時の感情が口から漏れそうになったところで、フェンニバルに制される。そして、もう話すことはないとばかりにフェンニバルは宙に浮き、俺に背を向けた。

 

 「あ、どこ行くんだよ?」

 「アフターケアじゃ。クルス王子のな」

 「え……ど、どこまで言ったり……」

 「言うべきことは全てじゃな」

 

 と言い残して、フェンニバルは飛んでいってしまった。あれ、普通にさっきの大嘘のことも訂正されるのでは……? いや、一度決めた道だ。一度詰まるまで貫こう。

 

 「……へへ、レヴィン様、オレのこと認めてくれたんスね! じゃ、まずあのガキどうします? 追いかけますか?」

 「げぇ……追わなくていいし、手を出したら殺す。お前を」

 

 そうして、俺は完全に認められた気になっている旋と、妄想真っ只中のブラックデザイアと、意識のないアッシュスティングと共に残されたのだった。

 

 

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