知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう   作:鐘楼

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ブラックデザイア(Ⅱ)

 ──妖精島の妖精の里。

 

 危険と無縁だとはとても言い切れなかったが、その場所は確かに妖精にとっての安寧の場所だった。この日までは。

 

  ブラックデザイアが己が運命と邂逅していたその時、里ではかつてないほどの危機が襲いかかっていた。 

 

 「……これですべてか?」

 「はっ! 里の制圧完了。見つけた妖精はすべて隷属処理を完了させております」

 「犠牲は……軽微で済んだようだな。上出来だ」

 

 昨日まで里にて活発に過ごしていた妖精達が、皆一様に虚ろな顔をして並べられていた。そんな彼女たちをまるで物を見るかのような目で一瞥しているのは、部下を引き連れた魔族の男だった。

 

 「そんで……あの、ブルージ様。こんだけ働いたんだ、俺らに褒美を……」

 「……なにが言いたい?」

 

 男の部下の一人……どちらかと言えば魔物に近い容姿をした魔族が、おそるおそる男にそう進言する。その部下は男の残酷さを知らない新参者であり、男のことをよく知る他の部下たちは皆「やめておけばいいのに」と内心で思っていたが、新参者と同じ欲望を淡く抱いてもいた。

 

 「そりゃ、折角こんな上物手に入れたんだ! 一匹くらい……」

 「……」

 

 冷たい視線が自らを射貫いていることに気づき、部下は言葉に詰まる。そんな部下に向かって、男……ブルージは問いかける。

 

 「聞くが。我々の目的はなんだ?」

 「そ……それは……」

 「来る“厄災”、その後に控える人類の殲滅において有用な資源である妖精を先んじて確保するためだ、違うか?」

 「そ、その通りでございます……」

 

 ……今この時、世界には滅びの危機が訪れている。“厄災”と呼ばれる怪物の到来が差し迫り、戦い続けていた人類と魔族は一時休戦という形で手を組んだ。

 

 この厄災に対抗するため、また戦力面で人類を出し抜くために妖精を確保する……というのがこの一団、魔王軍四天王ブルージ率いる部隊に課せられた任務だった。

 

 「そんな貴重な資源を、貴様の浅ましい欲求のために使わせろと、そう言っているのだな?」

 「い、いえ! 決してそのような……」

 「……ふん。だが……そうだな」

 

 部下が弁えたと見ると、ブルージは放っていた威圧感をほんの少しだけ緩め、妖精達の方を見る。そうして、一人の妖精を見定めたと思えばおもむろに歩き出しその前に立った。

 

 「ふん!」

 「っ! ブルージ様、なにを!」

 

 突然妖精の胸を貫いたブルージに、部下達は驚く。だが、一部の者たちは引き抜いたブルージの手に握られている物を見てその意図を察した。

 

 「一応、生け捕りを命じたが……力の弱い妖精に関しては、これだけ確保するだけで十分だ」

 「それは……?」

 「妖精の魔力核だ。戦闘用として使えん妖精の用途など、優秀な魔法使いに配備する予備魔力源の原料に決まっている。それならば、この核だけあれば事足りる。身体は余分だ」

 

 ブルージはそう説明すると、核を抜き取った妖精の身体を新参者の部下に投げ渡した。

 

 「それで良ければくれてやる。そのうち消えるが一晩は持つし腐りもせん。勝手に使うが良い」

 「は、はい! ありがとうございます!」

 「……すべて運ぶのは手間だ! 俺が指示した個体は魔力核だけを持って行く!」

 「「「「「は!」」」」」

 

 ブルージの号令で、部下達は慌てて動き出す。

 

 (……ちっ、道中であのいかれた人間のガキにさえ目をつけられなければ、もっと楽に終わったものを……)

 

 部下達の働きを見ながら、魔王軍四天王最強と謳われるブルージはそう毒づいた。

 

―――――――――――――

 

 「ちょっとちょっと! 身体を綺麗にしてくれたデザイアお姉さんに感謝の言葉があってもいいんじゃないー?」

 「カンシャって何」

 「ほら、ありがとうとか、そういうの!」

 「別にたのんでないし、どうせすぐ血を浴びるし」

 

 血狂いの少年の面倒を見る! と決意したのはいいが、少年はとんでもない難敵だった。少年は私の提案を尽くはね除け、献身の一切を受け取らなかった。少年は本当に私に対して何も求めていないのだ。正直「人間の子供なんだから強がり言ってても実は寂しいんだろう? うん? お姉さんいるよ?」という舐めた気持ちがないわけでもなかったが、ここまで筋金入りに壊れているとは思わなかった。

 

 「だから、私と一緒にいればその度に洗浄魔法を使ってあげるから!」

 

 当然お風呂も拒否され、私の入浴洗いっこという夢は儚く消えた。仕方がないので洗浄魔法を行使し、その実績で自分の有用性をアピールしている、というのが今の状況だ。

 

 「ひつようない」

 

 だが、返ってきたのは拒絶。本当に頑なだ……仕方ない、最終手段だ。

 

 「……ねぇ、探してる相手がいるんだよね?」

 「そうだけど」

 「……最近ここに来た奴らなら、心当たりがあるかもしれない」

 

 嘘である。

 

 だけど、これなら少年を誘導できる。このまま里に連れ帰って、私が付きっきりでメンタルケアを……!

 

 と、暢気なことを私は考えていたわけだが。

 

 「ブラックデザイア! 無事だったか!」

 

 少年を誘導することには成功した。元々当てなどなく闇雲に探そうとしていたらしい少年は私の案内に簡単に乗ってきた。計算外だったのは、里の、この島の状況。

 

 「ど、どうしたの?」

 

 里に近づいてきた時、顔見知りの妖精が血相を変えて駆け寄ってきたのだ。

 

 「……里が襲われた! 魔族だ! 里にいた者は皆──!」

 「え……?」

 

 その言葉を、私は信じられなかった。妖精は人間はもちろん、並大抵の魔族より強い。そんな妖精が徒党を組んで防衛しているのが里だ。そんなことができる存在は限られているのだが、里の方からはいつもの喧噪が全く聞こえない。加えて、この知り合いが冗談を言うような質ではないことを私は知っていた。

 

 ……少年は、混乱する私と知り合いのやりとりをただ観察しているだけだった。次の言葉を聞くまでは。

 

 「恐ろしい使い手だった……! 魔族を引き連れていた青肌白髪の男に、皆手も足も……!」

 「……そいつだ」

 「え……?」

 

 突然の言葉に少年を見ると、少年は口の端を吊り上げていた。……私と話していたときは一切笑わなかったのに。

 

 「案内ありがとう、デザイアお姉さん」

 

 やっと名前を呼んでくれたのに、喜ぶことはできなかった。少年が死地に向かっていて、それを止めることができそうにないから。今度の相手は、私を襲った小物とはワケが違う。万全の妖精複数を正面から相手取る化け物なのだ。

 

 「で、どこ行ったのかおしえてよ。そいつおれが殺すから」

 

 質実剛健な知り合いの妖精ですら、少年の狂気的な笑みに呑まれていた。




どうしてあんなラノベ脳になってしまったの?(素)
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