知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう   作:鐘楼

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憧れも理解もようわからんけど遠いらしい

 「そんな……バカな……」

 「本当に? あの人が教団のリーダーなの?」

 

 サニーウインドとアンリエッタはほとんど同じスピードで森を駆け、同時にロクルス十世……クルス少年を発見、合流した。

 

 しかし、二人が発見したクルス少年の様子はおかしかった。俯きながら、辿々しく歩みを進める幽鬼のような姿。当然、少年の異常を察知し話を聞くと、その口から衝撃の事実を知ることになる。

 

 クルスの保護者レヴィンは、拝淵教団の首魁であった。

 

 そのことをクルスの口から聞かされ、動揺する二人。そこに、クルスと二人に置いていかれたメンバーがやってくる。

 

 「運んでくれてありがとう! 褒めて使わすわ!」

 「あー……言っとくけど、ここでは人間の身分なんて関係ないからな?」

 

 道中で拾ってきたのか、ミストリアを抱えたフレアルビーが到着し、少し遅れてクレイプレシャスが合流。これにて全員が揃い、改めてレヴィンのことを告げると、やはり衝撃だったようで皆が困惑の表情を浮かべる。クレイプレシャスだけは、いつも通りに薄く笑っていたが。

 

 「ほ、本当なのかよ、少年? あいつが教団の……」

 「レヴィンさんが……そう、言ったんです」

 

 他でもないレヴィン自身が認めた、と聞いて、やはり本当なのかと重く沈黙する一同。なお、クレイプレシャスは「イヤ、お兄さんの言葉なんかに大した信憑性はないだろう」と思っていたが、やはり黙ったままだった。

 

 「……なぁ、そうだとしたら、どうしようもないんじゃないか? アタシは前に一度あいつに勝負を挑んだが、まるで敵わなかったぞ」

 「……たしかに、もしレヴィン卿が敵なら、私たちではどうしようも……」

 「……いえ」

 

 力強い声。いまだ俯き、震える声で発せられた否定の言葉。だというのに、それには人の注目を強く引く力が宿っていた。

 

 「僕が、止めます。レヴィンさんが間違っているなら……レヴィンさんが教団として悪さをしているなら……!」

 「あぁ、あれは嘘じゃ」

 「へ……?」

 

 決意を燃やすクルスの心に、水をぶっかけそのまま火を消すような言葉。その声は上空から響いていて、皆が上を向く。

 

 「智龍様!」

 「先生!」

 

 彼女のその姿を知っているアンリエッタとミストリアが、喜色をたたえて彼女を呼ぶ。呼ばれた智龍フェンニバルは、そのまま静かに着地し、一同の顔を見回した。突然の登場に驚いた面々だったが、まず声をかけたのはクルスだった。

 

 「本物の智龍様……『レヴィン騎士物語』の……!」

 「……ふふ、儂がレヴィンのおまけか」

 「あ……ご、ごめんなさい!」

 

 先ほどまでの鬼気迫る雰囲気が霧散し、憧れの物語の登場人物を見てはしゃぐクルス。そんな少年に、フェンニバルは苦笑する。一般的に、“あの智龍と知己である”ということがレヴィンの大きな箔づけになっているのであって、レヴィンの物語に智龍が登場するからフェンニバルが有名という順序ではない。故にクルスのような認識は珍しかったのだが、それはそれで悪くないと考えながらフェンニバルはクルスに顔を上げさせる。

 

 「気にするでない。少し新鮮に思っただけじゃ……にしても、ここまで妖精に慕われる人間とは……」

 

 クルス、サニーウインド、フレアルビー、クレイプレシャス、アンリエッタ、ミストリア。フェンニバルは奇妙な一団を興味深そうに観察する。

 

 「智龍様、お目にかかれて光栄でス」

 「お前は……研鑽の香りがするな。妖精とは思えん」

 「クレイプレシャスと言いマス。どうか後ほどお話ヲ……」

 「プレシャスが敬語だ……」

 

 以前からフェンニバルに興味があったらしいクレイプレシャスが仲間にも初めて見せる敬語で自己紹介をする。サニーウインドとフレアルビーは智龍の名を知らなかったが、敬語を使うクレイプレシャスという異常事態に智龍の凄さを初めて実感した。

 

 「智龍様、先ほどは助けていただいて……」

 「儂はあそこに居ただけじゃ。危なくなっても手を出すつもりはなかった。己の運に感謝せい」

 「しかし、実際に我々は智龍様がいたからこそ……っと、そうでした、レヴィン卿の言葉が嘘とはどういう……」

 「言葉通りじゃ」

 

 アンリエッタが口に出した本題に、面々の緊張が舞い戻る。

 

 「レヴィンが教団の者なわけがなかろう。あんなのに組織がまとめられるわけもなし、人に従うなどもっと無理じゃ」

 「それは……」

 

 フェンニバルの言葉に、なんともいえない雰囲気が場に漂い始める。クルスやアンリエッタは一応の反論をしようとしたが、言葉の先が続かない。全員が「たしかに……」と納得してしまっていた。

 

 「じゃ、じゃあなんでレヴィンさんはあんな嘘を……」

 「……」

 

 当然の疑問を口にするクルスに、フェンニバルは静かに息を吐いた。そして、哀れむような目でクルスの顔を見つめる。

 

 「な、なんですか……」

 「あーっ!」

 

 しかし、フェンニバルによる残酷な宣告は、サニーウインドによって中断された。

 

 「あなたもクルスくんを狙ってるんでしょ!?」

 「はぁ?」

 「……サニー君、少し黙ろうカ」

 「ちょっと、先生になんてこと言うのよ!」

 

 暴走したサニーウインドはクレイプレシャスとミストリアに抑えられ、口を塞がれた。

 

 「ムーッ! ムーッ!」

 「……はぁ、色ボケした妖精というのはどうしてこう……」

 「あ、あの、それで……どうしてレヴィンさんは嘘を……」

 「……少年。遊ばれているのだ、お前は」

 

 言って、クルスが苦しむことをフェンニバルは分かっていた。だが、今の状況は誰のためにもならないと考え、端的に告げる。

 

 「ど、どういう……」

 「師を討たねば、そう葛藤するお前を見て楽しんでいるのだ、あいつは」

 「え……」

 

 言葉の意味を受け止められずにいるクルスに、フェンニバルは畳みかける。

 

 「だから、あんな男のことは忘れろ。アレがいなくとも、お前にはここに仲間がいるだろう。このままレヴィンを側に置けばお前の仲間まで危うくなる」

 「し……信じられません!」

 

 フェンニバルは、本気で少年を気遣っている。それ故の言葉だったが、それは少年の心には届かない。高名な智龍。憧れの一部。ではあっても、依然として少年の中でフェンニバルはレヴィンという存在を覆すに足る存在ではなかった。

 

 「きっと……あの嘘だって、何か別の理由が……きっと僕のためを思って……」

 「少年。お前はレヴィンの何を知っている?」

 「え……」

 「あいつが何のために行動し、何を重んじ、何が根底にあるのか……お前はそれを何も知らない。お前が信じるレヴィンなどどこにも居ないというのに」

 「っ!? あなたに何が!」

 「生きている者で儂よりレヴィンを知る者などいない」

 「っ……」

 

 駄々をこねる子供を切り捨てるように、フェンニバルは淡々と歪みを指摘していく。もはや言い返せなくなったクルスだったが、それでも納得した様子はない。そんな膠着状態で、先に降参したのは意外にもフェンニバルだった。

 

 「……はぁ……わかった。少年、一つ提案がある」

 「……なんですか」

 「儂とレヴィンの話をしよう……それを聞いてから、お前がどうするか決めるのじゃ」

 「え……そ、それって……」

 「あぁ、お前の言う『レヴィン騎士物語』……の元ネタじゃな」

 

 その話は、クルスがレヴィンに聞いてもはぐらかされていた話で……少しテンションが上がり、複雑な気分になるクルスだった。

 

 「……長くなる。里に戻ってから話すぞ」




第一部完!
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