知らんうちに弟分がおねショタハーレム主人公になってて狂いそう 作:鐘楼
「この辺りで良いか」
この森では極めて珍しい、視界の開けた丘の上。そこで不思議そうな顔をしたレヴィンと向かい合う。目的は、本人ですらロクに把握していない吸収の力の仕様を検証するため。
「……と、今から運動するわけじゃが、一応聞いておく。腹は減っておらんか?」
「別に」
「そうか。ま、英霊のお前は食事をエネルギーにする手段は持っておらんはずだが……さっきの鼻血といい、かなり人間に近いタイプのようじゃから、気分的には食事もいるかと思ってな」
英霊を含む魔力生命体が活動するためのエネルギーは、言わずもがな魔力である。しかし、妖精などと違って英霊は自力で魔力を捻出できない。これは召喚者の魔力に依存せざるを得ない状況にすることで反逆を防ぐセーフティであり、レヴィンは自前の能力によってマナを吸収して魔力にすることでこれを突破している。
が、それはそれとして英霊は元々人間であった英雄に違和感が生じないよう、なるべく身体の機能を人間に近づけることが召喚の際のセオリーだ。魔力生命体にはよく調べなければ生物と判別がつかないタイプもいれば、首を跳ねようが血が出ないようなタイプもいる。英霊は前者が基本であり、そういう場合は必要がなくても生前のように腹が減る……という事例を踏まえての配慮だったのだが。
「物を食べるなんて死ぬ前からしてなかったし」
「なに……? 人間の頃からその力で……マナやら何やらを吸って生き延びていたということか?」
「たぶんそう」
そんなことが可能なのか? 十中八九こいつは分かっていないだろうが、人間の……生き物の身体は複雑だ。魔力一本で動く単純な物とは違う。それでもし支障なく活動できていたのなら、レヴィンは吸収したエネルギーをビタミンやミネラルにも変換できていたことになる。とんでもない応用範囲だ。
……その短い生で食の楽しみを知れなかったことに思うところがないわけではないが、押しつけるようなことでもない。
「……なら良い。始めるぞ」
「何を」
「お前の能力の検証じゃ。今は分かっていないことが多すぎる」
「それ、必要?」
「必要に決まっとるじゃろ」
言っても、レヴィンの表情は変わらない。重要性をまるで理解していないのは明白だ。
「……はぁ、お前儂を舐めておるな?」
「だって俺の方が強かったし、今のままの
「アブゾーブ?」
「俺の力。じじいが勝手に名付けた」
「ふん、そうなのか」
名前を付けるのは良いが、その自称大作家はこいつの能力を調べたりはしなかったんだろうか。そちらの方が重要だと思うのだが。
「よし、今からお前の傲りを粉々に砕いてやろう。聞くが、痛みは耐えられるか?」
「平気。……最後に怪我したのなんて大昔だけど。何すんの?」
「儂が今からお前に攻撃する。その
「反撃禁止って……」
「不安か?」
「……別に、どうせ怪我なんかしようがないからいいけど」
言ったな。最初にレヴィンと戦った時、儂は反撃の策を用意できていた。その一端を見せ、自分が無敵などではないということを思い知らせてやらねばなるまい。
「行くぞ」
「あぁ……──ッ!?」
開始の合図。それと同時に、レヴィンの左肩、腕の付け根のある空間を分断する。吸収……
だが、その攻撃は儂の身体を貫き……ただそれだけで終わる。幻像魔法。直接知覚に干渉する幻覚魔法は、動力である魔力を吸収され不発に終わる可能性が高いが、儂の姿を投影した虚像を映し出す幻像魔法であればその心配はない。以前の戦いで、接触がなければ他人の魔法を吸収できないことは判明しているし、レヴィンにはロクな知覚手段がないのでこれで騙せる。
呆気に取られるレヴィンに、次の攻撃。何の変哲もない攻撃の魔法……シンプルな魔力弾に見せかけたそれを浴びせる。当然、レヴィンはそれを吸収してやり過ごすが、それこそがこちらの思惑。細工した魔力を取り込んだことで、酔いが回り平衡感覚を失ったのか倒れるレヴィン。欠損から上手く受け身もとれず倒れ伏すも、すぐさま取り込んだ魔力を放出。正常な感覚を取り戻す。……ふむ、今のは素直に褒めるべきか。
欠損した腕や指を再生させ、最大限の警戒をするレヴィン。体勢を立て直したのは良いが、今のレヴィンに隠れた儂を見つけるのは不可能だろう。ここで叩き込むのは……光と音。感覚器官を壊す為の魔法で、爆音と光を発生させる。すぐさま光と空気の振動を吸収して対策するレヴィンだったが、それは悪手だ。光とは視覚であり、振動とは聴覚だ。有害なそれと必要なそれをフィルターできないレヴィンは、自分で情報源を全てシャットアウトしたに等しい。
必然、大きすぎる隙を晒したレヴィンの背に移動し、殴りかかる。しかし、無防備に見えても物理攻撃を吸収する力は生きている。普通に殴ったのでは吸収されて終わりだろう。だがそれは衝撃や威力を0にされるというだけで、触れられないわけではない。そして、触れさえすればレヴィン自身の魔力を使って干渉することができる。魔力生命体のメカニズムも知らないレヴィンでは対応は不可能。この時点で核の破壊もできるが、衝撃と痛みを与えるだけにとどめる。それによって儂の位置に気づいたレヴィンが反撃にでようとするが……残念ながら儂の一手の方が速い。
「爆」
もう一つの布石。超小型の爆弾。レヴィンが気づきもせず呼吸と共に取り込んだそれを腔内で爆破。どうやら身体の内側からの攻撃など想定していなかったらしく、爆発のエネルギーを吸収しきれず、顔周りに半端と言うにはあまりに痛々しい傷が残った。
「はい、終了じゃ。まぁこんなところじゃな」
「……」
これで逆上されたらどうしようか、なんて考えてもいたが、こちらを見るレヴィンの目に恨みの類いは宿っておらず、どちらかと言えば不信、責めるような視線に思えた。そのままレヴィンは黙って傷を再生させるも、やはり黙ったままだった。
「なんじゃその目は」
「……嘘つき」
「嘘とは?」
「参ったっていったじゃん」
参った、とは……あぁ、最初に戦ったときの話か。不満げなレヴィンは、あの時儂がこんなにも余力を残していたのに降参したのが気に入らないらしい。
「アレか。レヴィンよ、覚えておけ。大人はタダで本気の勝負に乗ったりなどせん。お前には儂を本気にさせるだけのカードを持っていない、という話じゃ」
「……」
どう見ても納得していなさそうなレヴィンは、今の体験を反芻するように儂から目を逸らして黙する。まぁ、手加減されるなんて初めてなんだろう。これまでの戦いでは相手に命を賭けさせるほどのパワーバランスが当たり前だったのだろうが、儂はそうはいかない。実を言えば、今も龍の本体は虚数空間に籠もっていて、今の身体が破壊されるくらいではなんともない……それくらいに生き汚いのが儂という存在だ。
「さて、儂の言葉を聞く気になったか?」
「……うん。でも、その前に今の戦いのことが聞きたいんだけど」
「良いだろう、感想戦じゃな」
多少は素直になったのか、儂の言葉に耳を貸すようになったレヴィンと今の戦いを考察するとしようか。
ストックはある
でも投稿作業の方を忘れていた
スマン